3.3. 全面禁漁までの経緯
3.3.2. 資源量予測シミュレーションの実施
またこの時期に、県はモデルによるハタハタ資源量予測のシミュレーション
を実施していた。このモデルは全長
15cm
未満放流、底引き網の網目拡大、6 月休漁、沿岸の漁獲努力量20%削減という複合管理
50を実施した場合のシミュ レーション結果のみであったが、全面禁漁という可能性が出てきたことで、こ の場合のシミュレーションも急遽実施した。図図図
図
3-2
シシミシシミミミュュレュュレレレーーシーーシシショョンョョン結ンン結結結果果(果果(((複複合複複合合合管管理管管理)理理)))出所:全漁連(1997)p.19
結果は、当初の複合管理を実施した場合が
5
年間継続して資源量が1.4
倍、10
年間継続したとしても2
倍強にしか増えないのに対して、全面禁漁を実施した 場合は3
年間で現状の資源量の約2
倍に増えるというシミュレーション結果が 示された(図 3-2、図 3-3参照)。51図図図
図
3-3
シシミシシミミミュュレュュレレレーーシーーシシショョンョョン結ンン結結結果果(果果(((全全面全全面面面禁禁漁禁禁漁)漁漁)))
50 「秋田県資源管理推進指針」で示された。
51 秋田県において漁獲されるハタハタ資源は日本海北部系群と呼ばれ、青森県、山形県、
新潟県と同様の資源を利用している。このシミュレーションはK AFSモデル(定常解析モ デル)を用いて日本海北部系群ハタハタに対して実施され、秋田県の漁業者が資源管理を 実施した場合を想定したものであり、隣県における資源管理は行なわないことが前提にな っていた(佐藤1993)。
出所:全漁連(
1997
)p.19
3.3.3.
3年間の禁漁に合意これらアンケート結果とシミュレーション結果をもとにして、地区ごとに多 くの会議が開催された。
9
月1
日のハタハタ底引き網漁業解禁を前に、8
月29
日に開催された全県組合長会議において、3 年間の全面禁漁に対する基本的な 合意が形成された後、県北部漁協の底引き網業者は8
月31
日に会議を開催し 最終的な意思決定を行なう予定であった(秋田県1998,pp.3-4.
)。しかし
31
日当日の新聞に、「ハタハタ禁漁へ」と報道された52ことに対して、県北部漁協の漁業者が反発し、全漁業者による
9
月1
日からの全面禁漁は不可 能になった。この出来事は、行政からマスコミに対する情報公開の難しさを浮 き彫りにした。この新聞発表がきっかけとなり、県北部漁協の全面禁漁参加に 対する態度が硬化するという状況が生じた(表 3-3参照)。
表表表
表
3-3
県 県県県北北部北北部漁部部漁漁漁協協の協協ののの全全面全全面面面禁禁漁禁禁漁漁漁参参加参参加ま加加まままででのででののの経経緯経経緯緯緯
52 ・ハタハタ禁漁へ、県内漁協資源回復で自主規制―底引き網漁から(1992年8月31日 秋 田魁新報)
・資源回復へ英断、ハタハタ3年間禁漁します―秋田の各漁協、自主規制へ(1992年8 月31日 北海道新聞夕刊)
内容 新聞報道
代表者会議
禁漁減収の補償および山形、青森両県も同一 禁漁規制を適用しない限り10 月1 日から禁 漁自主規制を解除(県北部漁協発言)
・「ハタハタ禁漁」に補償を、秋田県北部 漁協、融資では不十分(1992年9月7日 河北新報)
・ハタハタ漁で県北部漁協、県に減収補 償要求へ(1992年9月8日 毎日新聞)
秋田県議会 本会議
①日本海北区6 県水産協議会(21 日開催)
でハタハタ広域管理について協力要請する
②水産庁、青森、山形、新潟県に対しては既 に事情を説明、できる限り協力する旨回答あ った
③今後開催される関係県の漁業関係者が出席 する各種会合でも自主規制について理解求め る
④近く県漁連と漁協が県に提出する支援要請 を受けて納得を得られるような対応策を講じ たい
(知事発言)
・秋田県議会本会議、ハタハタ全面禁漁 で知事見解、他県にも協力要請(1992 年 9月17日 河北新報)
・ハタハタ資源保護、日本海側各県へ要 請―3県は「協力」回答、漁業者の経済支 援も検討(1992年9月17日 読売新聞)
・ハタハタ禁漁、5県に協力要請へ、日本 海北区協議会で県(1992年9月17日 朝 日新聞)
・ハタハタ禁漁は従来見解のまま(1992 年9月17日 毎日新聞)
役員協議会
「補償」を「支援対策」に変更(県北部漁協 発言)
・ハタハタ禁漁に見通し、秋田県北部漁 協、支援対策で妥協(1992年9月19日 河 北新報)
県漁連
県漁連から県に対して支援策要望書提出(県 漁連)
・ハタハタ自主禁漁、無利子融資の適用 を―県漁連、知事に支援を要望、県、来 月にも方策まとめる(1992年9月26日 秋田魁新報)
・ハタハタ自主禁漁、「14 億円無利子貸 し付け」、秋田県漁連(1992年9月26日 河北新報)
・ハタハタ禁漁減収、13 億円の無利子融 資など―県漁連、県に支援策を要望(1992 年9月26日 毎日新聞)
その後、底引き網漁業者が漁を自粛し、沿岸漁業者もそれに同調して、9 月
29
日の全県組合長会議において、3 年間の全面禁漁に合意した。そして、10 月1
日付けで1992
年10
月1
日から1995
年6
月30
日までの間、秋田県地先 海面におけるすべての漁業種類について、ハタハタ採捕を全面禁止する「はた はた資源管理協定」が、海面の全12
漁協長のほか県機船底曳網漁協と県漁連 の14
の組合長および会長によって締結された(附録 5参照)。53
53 一部の漁業者の禁漁に対する強い反発もあった。例えば男鹿市漁協では組合員の一人が 組合理事11人に対して、禁漁協定を結んだために漁ができず損害を被ったとして、200万 円の損害賠償を求める訴えを起こした。結果的に男鹿市漁協では訴訟後に組合長を含めた 理事15人全員が辞職し、漁協が新体制となったことから、組合員は「漁協が新体制とな り、今後は定款を順守して運営することを確約した」として訴えを取り下げた。
「はたはた資源管理協定」の内容は次のとおりである(全漁連
1997,p.21)
。ア.協定の対象となる海域 :秋田県地先海面 イ.協定の対象となる海洋水産資源の種類:ハタハタ
ウ.協定の対象となる漁業の種類 :沖合底びき網、小型機船底びき 網、
定置網、さし網、地びき網、ワッ カ
網54その他のハタハタを採捕する 漁業
エ.海洋水産資源の管理の方法 :県漁連が定置網漁業で採卵用親 魚
の捕獲を目的に行うもの以外は、
ハ
タハタ採捕を全面禁止する。
オ.協定の有効期間 :平成
4
年10
月1
日から平成7
年6
月
30
日までカ.協定に違反した場合の措置 :
10
万円の違約金を支払う。また、構成員たる漁業者を
10
日間休漁さ せる。違反により漁獲した漁獲物 及び違反に使用した漁具を没収する。
キ.協定への参加、脱退に関する事項:県漁連に参加あるいは脱退申込 書
を提出
ケ.協定の変更又は廃止の手続き :協定参加者全員の合意による。
コ.行政庁への斡旋を求める場合の手続き:協定参加者全員の合意によ る。
図図図
図
3-4
全 全面全全面面面禁禁漁禁禁漁漁漁合合意合合意意意ままでままでででののプののプロププロロロセセスセセススス
54 袋状の網にロープを付け、岸から海に投げ、ロープを曳いて漁獲する方法。はたはた資源 管理協定締結
や 調査
3年間の 全面禁漁に
や 調査
の結果をもとに