4.2. 発見のまとめと考察
4.2.6. 合意形成と地域活性化
1
つの資源管理に導入されている事例であるといえる(表 4-4参照)。漁業者は、実際の資源管理を行なう過程において、科学的知識の持つ普遍性や有効性と、
他の漁業者あるいは他地域の持つ土着的知識の妥当性や信頼性を確認する機会 を得た。結果的に、漁業者がこれらの知識を管理計画として用いたことにより、
科学的知識の提供元である研究機関(県)と土着的知識の提供元である他の漁 業者に対する理解が進み、それぞれに対する合意形成が促進されることにもつ ながったと考えられる。
表 表表
表 4-4 土 土土土着着的着着的的的知知識知知識識識とと科とと科学科科学学学的的知的的知知知識識の識識ののの比比較比比較較較
土着的知識 科学的知識
• 質的(qualitative)である
• 直観的な構成要素からできて いる
• 全体主義(holistic)
• 精神と物質は互いに尊重され る
• 精 神的 (spiritual)な もの で ある
• 経験的観察や試行錯誤による 事実の積み重ねに基づいてい る
• 通 時的 (diachronic) なデ ー タに基づいている
• 量的(quantitative)である
• 純粋に合理的なものからでき ている
• 還元主義(reductionist)
• 精神と物質は分離される
• 機 械 論 的 (mechanistic) な ものである
• 実験や体系的で計画的な事実 の積み重ねに基づいている
• 共時的(synchronic)なデー タに基づいている
出所:B erkes(1993)p.4および
G renier
(1998)p.52をもとに作成非組合員である地域住民の参画が求められることが予想される。そのためには、
資源管理に対して住民が関心を持ち、事前にある程度内容を理解していること が要求されると考えられる。
漁業者と地域住民との合意形成
ここで、ハタハタ資源管理問題に対する地域住民(秋田県民)の考え方を表 わす
1
つのデータを示す。表表表
表
4-5
ハ ハハハタタハタタハタハハタタタにに関にに関関関すするすするるるアアンアアンンンケケーケケートーートトト調調査調調査査査のの結のの結結結果果(果果(部((部部部分分詳分分詳詳詳細細)細細))) 年齢別区分 計 19歳 以下
20〜
29
30〜
39
40〜
49
50〜
59
60〜
69
70歳 以上 問1 回答者数 100.0 1.8 4.5 20.9 31.0 17.2 19.1 5.4 男 19.1 - 0.9 1.8 5.5 4.5 5.5 0.9 女 80.9 1.8 3.6 19.1 25.5 12.7 13.6 4.5
問 8 はたはたを買うと
きの産地について
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
秋田県産 51.8 100.0 20.0 52.2 47.1 47.3 61.9 66.6 県外産 3.7 - 20.0 - 2.9 5.3 4.8 - 輸入品等の安い方 1.8 - - 4.3 2.9 - - - 品質の良い方 20.9 - 40.0 17.4 23.6 15.8 23.8 16.7 産地は意識しない 19.1 - 20.0 26.1 20.6 26.3 4.8 16.7
その他 1.8 - - - 2.9 5.3 -
- 無回答 0.9 - - - 4.7
-問 9 はたはたの漁獲量
を 規 制 ( 資 源 管 理 型 漁 業)していることを知っ ていますか
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
知っている 95.5 50.0 100.0 95.6 100.0 100.0 90.5 83.3 知らない 4.5 50.0 - 4.4 - - 9.5 16.7
問 10 はた はたの 漁獲
規制を今後どのようにし たら良いと思いますか
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
現行のまま継続 50.0 - 60.0 60.9 44.1 63.2 38.1 50.0 資源量が大きく回復
するよう厳しく規制
20.9 - 20.0 21.7 17.6 10.5 38.1 16.7
現在より規制を 緩やかに
21.8 50.0 20.0 17.4 26.5 26.3 14.2 16.7
規制しないで自由に 4.6 50.0 - - 5.9 - 4.8 16.6
その他 1.8 - - - 5.9 - -
- 無回答 0.9 - - - 4.8
-単位:%
出所:東北農政局秋田統計情報事務所能代出張所(1999)p.33
全面禁漁が実施されてから数年が経過した
1998
年7
月30
日に、東北農政局 秋田統計情報事務所能代出張所は、県民に対してハタハタに関するアンケート 調査を実施した。この調査は、能代市内の大手スーパーマーケットの買い物客200
人にアンケート用紙を配布して、後日郵送により110
人(55%)から回収 したものである(附録12
参照)また附録 13からわかるとおり、アンケート調査を実施したスーパーマーケ ットという場所の性質上、女性が全体の約
80%
を占めている。よってこのアン ケート調査結果が、全体層の意見を代表しているとは考え難いものの、秋田県 における世論の1
つの方向性を示していると解釈することは可能であろう。このアンケート調査結果で特に注目されるのは、問
8、問 9、問 10
の回答で ある(表 4-5参照)。まず問8
についてであるが、ハタハタの産地を秋田県産 にこだわるという被験者が全体の約50%
を占めており、この傾向は30
代と年 配層に強くみられる。「輸入品等の安い方」に回答した被験者は、全体の約2%
という低い結果に留まっている。また問
9
は、県民のハタハタ資源管理の取り 組みに対する認知度が非常に高いことを示している。問10
は、今後の資源管 理について「現行のまま継続」を支持している被験者が、全体の50%
を占めて はいるが、一方で全体の約20%
は現在よりも緩やかな規制を望んでいるという 側面を覗かせている。これらの結果から、被験者のハタハタ資源管理に対する 認識が高いレベルにあることが示された。またこれらの結果は、被験者だけで はなく能代市民、さらには秋田県民のハタハタ資源管理に対する認識も同様に 高いという可能性を示している。よって今後、現在の管理主体である漁業者と地域住民との対話の機会を設け ることで、漁村コミュニティが形成される可能性があるといえる。同時に、対 話することによって、ハタハタ資源管理における漁業者と地域住民との間で情 報の共有化が行なわれることにもつながり、双方の合意形成がなされ、新たな 関係が構築される可能性もある。
内発的発展論と漁業資源管理
先に述べた地域共同管理における漁村コミュニティの考え方は、保母(1996)
が示した内発的発展論における「地域の実態に合った事業実施主体の形成」と いう考え方とも重なる。
島(1995)は、内発的な地域発展が日本漁業の再構築に重要であるとして、
漁村共同体に代わる新しい漁村地域システム形成の必要性を提起した。彼の主 張する漁村地域システムの形成とは、「第
1
に漁業を核とした地域組織体の形成、第
2
に漁協を核としたコミュニティの形成を基軸とする地域構成主体の地 域連帯によるシステム構築」(pp.32-33.)を内容とするものである。さらに彼 は、今後は第2
のコミュニティの形成が重要であり、特にそこで女性の果す役 割は大きいとしている。ここで、先に示したアンケート調査結果(表 4-5参照)において、回答者(被 験者)のハタハタ資源管理に対する認識が高いレベルにあり、さらに
30
代〜50 代の女性が回答者全体の約6
割を占めていたことに注目したい。主婦層にとっ て、ハタハタ資源管理の問題は食と密接な関係にあることから、購入時の金額 等の問題も含めて関心が高いと考えられる。島(
1995
)が、漁村地域システムの必要性を提起した目的は、漁業を通じた 漁村地域の活性化にあったために、その役割は漁業資源管理に留まらず、地域 漁業の再生をも実現するものでなければならなかった。秋田県の場合、ハタハ タ資源管理問題に関する主婦層の関心の高さから、彼の指摘する、女性の役割 が重要視されるという漁村地域システムが形成される可能性は高い。しかし、その役割を単に漁業資源管理に留まらず、漁業を中心とした漁村地域活性化の 実現まで発展させるためには、佐久間(