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1 遺跡測量

本年度における遺跡測量は、66 箇所 90 件の基準点測量および 10 件の写真測量用標定点 測量、撮影作業を行った。内訳は発掘調査 85 件、試掘・立会調査5件である。

写真測量は実測作業者の人手不足や調査面積の広大により年々増加する傾向にある。昨 年度にも指摘したように市街地では規制が多いため 1000㎡以下の調査面積では小型計測カ メラでのクレーンによる撮影作業が適しているが、それ以上の面積ではこの方法では作業 量が多く困難である。最近では、航測用のカメラをクレーンに吊るしての撮影を開始して いる。この方法であれば、写真縮尺1/200 で1モデルに約 1200㎡の図化面積をカバーで きるため比較的効率的である。 

次に写真測量では普通のカメラの利用も可能であるが、精度面は普通のカメラで取る場 合フィルム面の平面性を保つ機能がないために、写真測量本来の長所である一定した精度 をあげることができない。実験では写真縮尺1/200 で平面位置は最大 10cm、標高では最 大 20cm ほどの誤差が生じた。計測用のカメラでは、誤差が最大1cm ほどで収まる。誤差 を考慮すれば、やはり計測用のカメラを用いることが望ましい。

写真測量では図化業務がほとんど航測会社でおこなわれるために、その会社の事情によ り撮影から図化までに日数がかかってしまうという短所がある。また調査担当者は遺構中 心に遺構実測図をとらえ、図化担当者は位置精度や地図の感覚で図面をとらえることから、

遺構実測図に対する理解の違いが生じ、調査担当者にとり満足のいくものになりにくい傾 向がある。これらは後の編集作業の多さとして現われ、作業の長期間化となる。調査担当 者と図化担当者の緻密な事前の対話が必要であり、そのことが両者の信頼関係を生むこと

にもなるであろう。 (辻 純一)

図面縮尺の決定

撮    影 図 化 作 業 図 化 編 集

図 納 品

2 コンピュータ

昨年度に決定した郵政省のお年玉付き補助金によるシステムの導入をおこなった。今回 のシステムはワークステーションをホストに構成している。今回のシステムから前回のも のの反省としてコード化をなくし、すべて文字による検索を可能にし、誰もが使えるよ うに作り換えた。またネットワークを利用した電話線による所外とのデータ通信やコン ピュータ室の統合をはかり、複数人の同時利用をも可能にした。その他、前年度の概要で 報告した方向性に従って、システム構築をおこない、運営している。なお、基本的には従 来の作業を継続している。調査データは840件を入力し合計9691件のデータ化が終了した。

システムの概要図は下記の通りである。 (辻 純一)

図 155 コンピューターシステムの概要図

3 保存科学

1 穴あきフィルムを利用した木製品の保存処理の開発

昨年開発した仮パックによる木製品の保管に利用したポリエチレンフィルムのもう一つ の利用法として、ポリエチレンフィルムに穴をあけ、その中に整理済みの木製品をいれて シールし、整理時の単位のまま遺物を出し入れすることなく保存処理(PEG 含浸法)、お よびその後の収納・保管も可能なシステムを開発した。

2 京都市域出土の木製品の特徴 

京都市域から出土する木製品は総出土量の9割以上を中・近世のものがしめ、全体とし て完形品ないしはそれに近いものが多く、保存状態も比較的良好で均質であることが特長 である。一現場で一万点以上もの木製品が出土することも希でなく、資料としてまとまっ ていることも特徴のひとつといえる。これらの整理方法としてすべてを実測することは物 理的に不可能であり、大部分を略測で済ます整理方法を採用しているが、略測した木製品 には調査現場ごとに通し番号を与え、台帳

を作成している。整理から保存処理・収納・

保管までをいかに効率的に行うかが大量の 木製品を取り扱う場合の最大の眼目であ り、ここに紹介する方法は、整理時の単位 に従って木製品を穴あきフィルムにいれ、

そのまま PEG 含浸槽で保存処理し、処理 後も穴あきフィルムのまま収納・保管する ことができる。

3 穴あきフィルムを利用した保存処理法

(1)穴あけフィルムの作成

市 販 の ポ リ エ チ レ ン チ ュ ー ブ( 厚 さ 0.1mm、幅 300mm、長さ 200 m巻)の梱 包を解かずにロールのまま電動ドリル(ド リル径 6mm)で等隔に穴をあける。電動 ドリルでの穿孔は、力を加えすぎるとポリ エチレンチューブが溶着してロールから取

図 156 穴あきフィルムの作製

図 157 穴あきフィルムに木製品を入れる

りはずすことができなくなるので熟練が必要である。

(2)木製品の樹脂含浸準備

整理済み木製品を1点ずつ穴あきフィルム にいれ、1点毎にポリシーラーでシールする。

箸などの細長い製品は1シートのフィルムに 10 本を単位としていれ、すだれ状にする。

(3)含浸槽に浸漬

穴あきフィルムのまま整理カゴに収納し、

カゴを単位として含浸槽に浸漬して含浸開 始。

(4)含浸槽から取り出し

含浸槽からの木製品の取り出しはシールさ れたフィルムを単位とする。特別な必要がな い限りフィルムごと熱い湯洗いをフィルムの 上から行なうだけですます(貴重品は個々を フィルムから取り出し、乾いた布で表面のP EG溶液を拭い取る。)

(5) 乾 燥

含浸槽から取り出し、湯洗いした木製品は 水切り後、完全乾燥のため、フィルムごと約 2ヶ月間乾燥させる。

(6) 収 納

調査現場単位で遺物を整理し、通し番号に そってコンテナに収納する。

4 結 果

多量に出土した木製品を整理時の単位を崩 さずに収納・保管する方法で効果が得られている。

さらに、厚地(0.1mm)のポリエチレンフィルムを使用することで遺物の損傷も減って

いる。 (岡田 文男)

図 158 含浸層に浸漬

図 159 取り出し

図 160 乾燥風景

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