2. 経済効果、自治体財政への影響に関する調査・分析
2.3. 財政影響分析
「生涯活躍のまち」形成に伴う自治体財政への影響(歳入・歳出の増減)について以下のフ ローに沿って検討を行う。
① 「生涯活躍のまち」の形成を通じ、他地域からの移住者が増えることによって、歳入・歳 出が増減すると考えられる自治体会計の絞り込みを行う。
② ①で絞り込んだ会計を対象に、歳入・歳出のすべての項目について変動要因を検討し、移 住者が増えることによって影響を受けると考えられる項目を特定する。
③ ②で特定した歳入・歳出項目ごとに、移住者が増えることによる影響(増減額)について データ収集方法と算定方法を検討する。
④ 経済波及効果推計において設定した「生涯活躍のまち」のモデルケース(移住者の規模・
属性等)を前提とし、「生涯活躍のまち」形成に伴う自治体財政への影響の分析を行う。
「生涯活躍のまち」の自治体財政分析に関する分析手法の検討の流れ
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「生涯活躍のまち」の自治体財政分析に関する分析手法の検討の流れ
検討の流れ 節 節の内容 検討項目
1.「生涯活躍のま ち」形成による影響 の分析対象とする 自治体会計の絞り 込み
2.3.2
「生涯活躍のまち」の形成 を通じ、他地域からの移住 者が増えることによって、
歳入・歳出が増減すると考 えられる自治体会計を絞り 込み。
検討対象とする自治体会計 の絞り込み2.「生涯活躍のま ち」形成により影響 を受ける自治体の 歳入・歳出項目の 特定
2.3.3
1で絞り込んだ会計を対象 に、歳入・歳出のすべての 項目について変動要因を検 討し、移住者が増えること によって影響を受けると考 えられる項目を特定。
各会計の「生涯活躍のまち」の形成による変動要因の検 討
分析対象とする歳入・歳出 項目の特定3.「生涯活躍のま ち」形成による各項 目の増減額の算定 方法の検討
2.3.4
2で特定した歳入・歳出項 目ごとに、移住者が増える ことによる影響(増減額)
についてデータ収集方法と 算定方法を検討。
分析項目ごとの増減額の算 定方法の検討4.モデルケースに 基づく自治体財政 影響の分析
2.3.5
経済波及効果推計において 設定した「生涯活躍のまち」
のモデルケース(移住者の 規模・属性等)を前提とし、
「生涯活躍のまち」形成に 伴う自治体財政への影響を 分析。
分析に関する前提条件の整 理
自治体における各会計への 影響の推計
収支バランスの経年変化の 分析65
「生涯活躍のまち」形成による影響の分析対象とする自治体会計の絞り込み
<概要>
「生涯活躍のまち」形成による影響の分析対象とする自治体会計として、移住者の増加によ る影響があると考えられること、また、多くの自治体に関連があることという観点から、一般 会計に加え、水道事業特別会計・下水道事業特別会計・国民健康保険事業特別会計・後期高齢 者医療保険事業特別会計・介護保険事業特別会計の6つに絞り込むこととする。
自治体財政への影響を分析するにあたり、都道府県と市町村とは分けて考える必要があるが、
ここでは住民に最も近い立場でまちづくりに関わることとなる市町村の財政を対象とする(以 下、「自治体」とあるのは市町村を念頭に置いたものとする。)。
自治体の会計には、「一般会計」のほか、自治体ごとに多くの「特別会計」が設置されてい る。「一般会計」とは、福祉・教育・土木・衛生などの基本的な施策を行うための会計である。
一般会計のほかに、特定の収入をもって特定の事業を行うために設けられているのが「特別会 計」である。
自治体会計の一般会計・特別会計の種類
会計 概要
一般会計 福祉・教育・土木・衛生などの基本的な施策をおこなう なうための収入・支出を管理する会計
特別会計
( 公 営 事 業会計)
公 営 企 業 会計
水道事業 上水道事業・簡易水道事業に係る収入・支出を管理する 会計
工業用水事業 工業用水事業に係る収入・支出を管理する会計 下水道事業 下水道事業に係る収入・支出を管理する会計 交通事業 交通事業に係る収入・支出を管理する会計 電気事業 電気事業に係る収入・支出を管理する会計 ガス事業 ガス事業に係る収入・支出を管理する会計 病院事業 病院事業に係る収入・支出を管理する会計
港湾整備 港湾整備事業(埠頭用地、上屋、荷役機械、引船、貯木 場等)に係る収入・支出を管理する会計
市場 卸売市場に係る収入・支出を管理する会計 と畜場 と畜場に係る収入・支出を管理する会計
観光施設 観光を目的とする施設に係る収入・支出を管理する会計 宅地造成 用地を造成し企業等に売却する事業(臨海土地造成事業 及び内陸工業用地等造成事業、流通業務団地造成事業、
都市開発事業、住宅用地造成事業)に係る収入・支出を 管理する会計
有料道路 有料道路事業に係る収入・支出を管理する会計 駐車場整備 有料駐車場事業に係る収入・支出を管理する会計
・・・ ・・・
国民健康保険事業会 計
国民健康保険(市町村国保)の運営における収入・支出 を管理する会計
後期高齢者医療保険 後期高齢者医療保険の運営における収入・支出を管理す
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事業会計 る会計
介護保険事業会計 介護保険の運営における収入・支出を管理する会計 収益事業会計 公営競技(モーターボート競走事業、自転車競走事業、
競馬事業、小型自動車競走事業)や宝くじの収入・支出 を管理する会計
交通災害共済事業会 計
交通災害共済事業(交通事故被災者への見舞金支給を目 的とする事業)の運営における収入・支出を管理する会 計
農業共済事業会計 農業共済事業(災害発生時の農家への共済金支払を目的 とする事業)の運営における収入・支出を管理する会計。
公立大学附属病院事 業会計
公立大学附属病院事業の運営における収入・支出を管理 する会計
(出所)総務省「地方財政の状況(平成
26
年度)」「地方公営企業法の適用に係る検討課題について(平成25
年)」 等を参考に記載。地方公営企業の事業数、および単独で上水道事業・下水道事業を行っている市町村数を勘案 すると、7~8割の自治体において下水道事業及び水道事業が行われており、この割合は他の 地方公営企業に比べて突出している。そのため本分析では、上表に示す「公営企業会計」に関 しては、水道事業・下水道事業の2つを対象とすることとする。
地方公営企業の事業数(平成 26 年度末時点)
出所)総務省「地方公営企業年鑑(平成 26 年度)」
単独で上水道事業・下水道事業を行っている自治体数(平成 26 年度末時点)
単独で上⽔道事業を⾏っている市町村数: 1,223
単独で下⽔道事業を⾏っている市町村数: 1,409出所)(公社)日本水道協会「水道統計(平成
26
年度)」、(公社)日本下水道協会「下水道統計(平成26
年度)」事業種類 事業数
下水道 3,638
水道 2,097
病院 639
介護サービス 577
宅地造成 443
観光施設 316
駐車場 225
市場 164
工業用水道 154
港湾整備 97
交通 91
電気 85
と畜場 62
ガス 28
有料道路 2
その他 44
計 8,662
67
また、(公営企業会計を除く)その他の特別会計について、全体収支に着目して見てみると、
国民健康保険事業特別会計、後期高齢者医療保険事業特別会計、介護保険事業特別会計の3会 計の合計金額で収入・支出の大宗を占めている。このことから、多くの自治体においてこれら 事業が行われていると推察される。そのため本分析では、その他の特別会計に関しては、国民 健康保険事業特別会計、後期高齢者医療保険事業特別会計、介護保険事業特別会計の3会計を 対象とすることとする。
公営事業会計(公営企業会計除く)の全体収支(平成 26 年度末時点)
出所)総務省「地方財政の状況」(平成
28
年3
月)以上のとおり、本調査では自治体の会計のうち、以下に挙げる6つを分析対象とし、「生涯 活躍のまち」の形成を通じて移住者が増えることによる収支への影響を分析していく。
○一般会計
○水道事業特別会計
○下水道事業特別会計
○国民健康保険事業特別会計
○後期高齢者医療保険事業特別会計
○介護保険事業特別会計
単位:百万円
(全体に 対する割合)
(全体に 対する割合)
国民健康保険事業会計 13,223,437 36% 13,086,663 36%
後期高齢者医療事業会計
(老人保健医療事業会計含む) 12,250,846 34% 12,121,108 34%
介護保険事業会計 7,886,143 22% 7,783,890 22%
収益事業会計 2,897,632 8% 2,907,730 8%
交通災害共済事業会計 7,820 0% 6,614 0%
農業共済事業会計 14,658 0% 13,990 0%
公立大学附属病院事業会計 2,242 0% 2,199 0%
収入 支出
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「生涯活躍のまち」形成により影響を受ける自治体の歳入・歳出項目の特定
<概要>
前節で絞り込んだ6つの会計を対象に、歳入・歳出のすべての項目について変動要因を検討 し、「生涯活躍のまち」の形成を通じて他地域からの移住者が増えることによって影響を受ける と考えられる項目を特定する。
2.3.3.1 各会計の歳入・歳出項目に係る「生涯活躍のまち」形成による影響の検討
(1) 一般会計
一般会計における歳入・歳出項目は下表のようなものが想定される。この中で、「生涯 活躍のまち」の形成を通じて移住者が増えることによって影響を受ける費用項目としては、
歳入については「市税」「地方交付税」、歳出については「扶助費」「(健康保険・介護保険 等の事業会計への)繰出金」が考えられる。
自治体財政(一般会計)の財政項目と移住者の増加との関係
出所)各地方自治体ウェブサイトより
NRI
作成(阪南市・綾川町など)歳入 歳出
地方税
その他自主財源
諸収入
分担金・負担金
使用料・手数料
財産収入
寄附金
繰入金
繰越金
地方交付税
国庫・都道府県支出金
地方債
その他依存財源
地方譲与税
利子割交付金
配当割交付金
株式等譲渡所得割交付金
地方消費税交付金
ゴルフ場利用税交付金
特別地方消費税交付金
自動車取得税交付金
国有提供市助成交付金
地方特例交付金等
交通安全対策特別交付金
人件費
扶助費
普通建設事業費
災害復旧事業費
物件費
維持補修費
補助費等
繰出金
公債費
積立金
投資・出資金・貸付金赤字: 移住者の増加の影響を受ける費用項目