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現代農山村集落をめぐる議論と分析要件の提示

ドキュメント内 現代農山村における結婚に関する研究 (ページ 83-87)

第 5 章 農山村における生活集団の生活構造と集落の維持・存続

2. 現代農山村集落をめぐる議論と分析要件の提示

本節ではまず、2000年代以降に展開された現代農山村集落をめぐる議論を整理する。そ して、集団の生活構造を捉える分析要件を提示する。

2-1.2000年代以降の農山村集落をめぐる議論

まずは、大野晃の限界集落論を取り上げる。「限界集落」の定義を再度確認すると、「65 歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同 生活の維持が困難な状況に置かれている集落」(大野 2009:51)のことである。大野の定義

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では、集落間格差が拡大するなか、存続集落から準限界集落へ、準限界集落から限界集落 へと着実に移行する流れがあり、最終的には限界集落は消滅集落へと向かうものといなっ ている(大野 2009)。このコトバはインパクトも強く、シンプルでわかりやすい基準のた めに、マスコミや行政からの注目を集めたことは記憶に新しい。

さらに、大野は、山村における限界集落を中心に、高齢者の厳しい生活実態を描き出し ており、山村再生への道筋として、買い物・移動手段の早期確保、流域共同管理の組織化、

森林環境交付税の早期設立といった点を挙げている(大野 2008)。

インパクトの強さに関連すれば、農村計画分野の若手研究者による「撤退の農村計画」

があろう(林他 2010 )。「積極的な撤退」という長期的な国土再編構想のもと、過疎集落 住民の小都市への全戸移転を提案している(ただし強制ではないという)。この提案では、

全戸が同じ土地に移転できるため、人びとの地縁が維持され続けることを強調しているが、

農山村社会で暮らす人びとは、農業・農村生活を通じて、これまで共同性を維持してきた のである。「撤退」ありきの計画ではなく、より人びとの生活に寄り添った将来計画が望ま れると筆者は考える。

縮小再編成へと向かいながらも、集落の維持・存続への糸口を主体論的アプローチから 探る論者に、徳野貞雄、山下祐介、山本努が挙げられよう。徳野は、人口と世帯の減少を 前提とした縮小論的な視点を持ったうえで、農山村社会の将来像を、世帯・家族を中心に 描くことを強調する。他出子とその家族らの存在と関係性に着目しているため、世帯・家 族のあり方をもっとも重視している。集落の生活構造と集落構造の実態を把握することが、

こうした将来像を描くための第一歩であると規定する。よって、集落の実態を捉える際に、

集落住民の生活構造を十分に認識することなく、安易に算出できる高齢化率を第 1 の指標 とする傾向に大きな懸念を抱いている(徳野 2011b)。

山下もまた、限界集落論に懐疑的な見解を持つ。2007年には、過去7年間に過疎地域だ けで 191 の集落が消滅したという発表があったが、その内実は、ダム・道路による移転や 自然災害等であり、高齢化の進行によって集落が消滅するに至ったという事例は確認でき ていないことを主張する。山下はむしろ、過疎問題は、高齢化ではなく、少子化と世代継 承の問題のほうがより重要であるという見解を示す。子どもの誕生、その前提としての結 婚といった、これまでごく当たり前のように行われてきた家族再生産の不全にこそ、限界 の本質があるとみなしている(山下 2008,2009)。

山本は、定住、流入、流出という人の動きとその意識に着目している。山本によれば、

地域住民の定住意向はたいへん高く、その主な理由は、「自宅や土地があるから」と「地域 愛着」である。この結果をふまえると、林らの撤退計画を実現するには大いに無理がある ように思われる。また、過疎農山村にもUターンや結婚による人口流入は少なからずあり、

土着的人口供給構造の存在を確認している(山本 2008,2011)。

秋津元輝は、集落再生の基準に、文化的多様性の保全を挙げる。そのためには、少なく とも、その文化的多様性を継承していけるだけの人口規模と、生活を維持してゆくための

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収入が必要となる。過疎農山村集落にあたっては、いくつかの収入源を複合して生計を成 り立たせることが現実的であると、秋津は述べている。兼業機会が年々やせ細っているな かで、新しい就業を創出する機会が必要となってくるのだが、農村での新たなビジネスと して「スモールビジネス」を提唱している。特に農村でのスモールビジネスにおいては、

地域の資源を有効に利用すること(農産物直販や加工など)が妥当であるという(秋津 2008、 2009)。

一方、限界集落と称される集落に実際に住んでいる玉里恵美子は、高知県下の集落状況 を概観し、集落再生への模索として、①集落統合、②次世代による「集落リフォーム活動」、

③地域福祉活動による集落維持の 3 点を掲げ、その方法や問題点を探っている。ここでは

①と②について説明したい。

①については、いくつかの集落統合によって、活動の活発化や交流の広がりなどのメリ ットはみられている。だがやはり、氏子組織による伝統行事をはじめ、人びとの基礎的生 活の母体は、人びとが住む集落であることにすぎないという。玉里は、集落統合は、集落 機能の低下を抑え、機能を補完するものではないと指摘した。②については、集落の将来 は現在集落に暮らしている人たちのみで考えられるものではなく、他出している子どもた ちも交えたうえで考えなければならないという視点から、他出している子どもたちが一堂 に集まり、集落の今後を話し合う機会を設けることを提案する。これを玉里は「集落リフ ォーム活動」と呼んでいる。これは集落の活性化を目指すものではなく、集落の幕引きや 整理(他集落との合併)という可能性もないわけではない。重要なことは、家族できちん と話し合う行動そのものであるという(玉里 2009)。

以上、2000年代以降に展開されてきた現代農山村集落をめぐる議論について、簡単にで はあるが素描してきた。これらの議論からは、単純な線引きで集落の現状を語るのではな く、集落の生活構造と、外部とのつながりをみるということの双方が、現代農山村集落を 捉える視点としてはたいへん重要であることが導きだされる。ただし、外部とのつながり のなかでも、もっとも強いものは他出している子どもたちとの関係性であることは強調し ておかなければならない。

徳野、山下、玉里の見解から、世帯・家族、集落が農山村生活の基礎的単位であり、こ のなかの人びとの動き(これは山本の研究領域にあたいする)をふまえたうえで、家・集 落の現状と将来に対する認識について、集落全体(他出子を当然含む)で共有することが 必要なのではないかということが導き出せる。

2-2.分析要件の提示

これまで議論した内容を受けて、第 1 章図1-1 を基軸としつつ、生活集団としての集落 の生活構造を分析するための要件を6点提示する。

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(1)人口

在村人口は集落を測定する基礎的指標のひとつである。しかし在村人口のみで、集落展 望を論じることは安易である。現在集落には暮らしていないが、将来の担い手候補と成 り得る人材にも注視せねばならない。そこで本章では、将来の担い手候補となる10 代 以下人口と次世代再生産人口(20代と30代)に着目する。

(a)10代以下人口

大野は、高齢化率は集落の体力を測定するバロメーターであるとしているが、筆者は山 下の見解と同じように、むしろ少子化のほうにその重要度を置くことにする。そのため、

10代以下人口(0~9歳、10歳~19歳)10代以下人口には、在村の10代以下にくわ えて、他出している10代も含めることにする1

(b)次世代再生産人口

少子化と関連して、次世代再生産を担う人口―20代と30代―がどれほどいるかも重要 なポイントであろう。過疎地域においては、この世代の人口が他の世代と比べて少ない が、他出によるものなのか、それとも、その世代の人口自体少ないことによるものかを 明らかにすることも必要である。次世代再生産人口もまた、在村者と他出子を合わせる ことにする。(a)と(b)から、未婚化と少子化との関連をより的確につかむことができる。

(2)在村者の婚姻状況

在村者の婚姻状況を把握する。20代から60代男女を、未婚、既婚、離死別に区分する。

0~9歳、10代、70代、80代については婚姻状況を区分しておらず、「区分なし」と表記 している。

(3)世帯構成

人口だけではなく、人びとがどのような世帯構成のなかで生活を送っているのかという 点にも着目せねばならない。たとえば、高齢者の世帯構成が単独であるか、多世代同居 世帯であるかによって、高齢者の生活状況が違う。また、第3章、4章でも指摘したよ うに、現在では後継者未婚世帯が現在と将来の集落の安定性を左右するものとなってお り、集落の世帯構成を捉えることは必要不可欠である。

(4)就業構造

どのような就業構造によって人びとの暮らしは維持されているのか。現代農山村では、

農家といえども、農業所得のみで生計を立てているわけではない。世帯構成や年齢構成 が違うことによって、その世帯の就業構造形態が異なっていると考えられる。

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