第 4 章 帰属理論
5.2.1. 調査手法(留学生)
アンケート調査で挙げられた教員の不適切行動について、留学生がどのよう に考えているのかをより深く理解するため、福岡県内の日本語学校に所属する、
あるいは以前所属しており、現在は専門学校に在籍している留学生19名に対し、
所属学校内の静かな場所で、日本語を用いて30分程度の半構造式のインタビュ ー調査を行う。19名の性別、年齢、日本語学習歴は表 5の通りである。まず、
回答者に不適切行動の例を提示するため、留学生と日本人学生から得られた教 員の不適切行動に関するアンケート調査の結果をカテゴリー化してまとめた表 を準備する(表 4)。この表では、回答者が理由づけを行う際、筆者による理由 づけの影響を最小限にするためカテゴリー化したラベルは伝えず、典型だと思 われる例のみを示しておく。また、親近感の不足についてはアンケート結果から は現れなかったものの、先に示したHsu(2013)の研究においては親近感の不足 が新たな不適切行動カテゴリーの1つと考えられているほか、学習意欲などに 与える影響が多くの研究で明らかとなっているため(Christophel, 1990; Frymier, 1994; Richmond, Gorham, & McCroskey, 1987)インタビューでの調査項目の1つ として加えることとする。
これらの行動について、留学生の学習にどのような影響があるのか、インタビ ューを行う。一回につき1、2名の留学生を対象に、準備しておいた教員の不適 切行動の表を示しながら、適宜例を加え「もし先生がこのようなことをしたら、
あなたの勉強に対するやる気や、授業に参加したいという気持ちに、何か影響が
ありますか」といった質問を行い、不適切行動に関する留学生の認識を調査す る。
また、インタビューと同時に、次の疑問の回答を得るために留学生に対して対 面調査を行う。
RQ3 RQ1で挙げられた教員の不適切行動のうち、留学生はどの行動を内的要
因に理由づけするのか。
対面調査では、留学生がそれらの行動をどのように理由づけするのかを明ら かにするため、外的理由、内的理由を表した11の理由づけを準備し、インタビ ューで使用した教員の不適切行動の例について、どれに最も近い理由づけを行 うか、筆者が口頭で具体的な例や説明を加えつつ対面式で調査を行う。これは、
日本語で調査を行うため、できる限り正確な回答が得られるように、留学生には 口頭による丁寧な説明が特に必要だと考えられるためである。インタビューと 対面調査を合わせて20〜40分程度の調査を行う。この理由づけは、帰属理論に 基づいて行われたKelsey ら(2004)による調査で作成、使用された理由づけの スケールに基づき、さらに日本語学校における留学生対象の研究であることを 考慮して筆者が作成したものである。インタビューに引き続き、1〜3 名ずつ対 面調査を行い、準備しておいた教員の不適切行動の表と、理由づけを表した用紙 を被験者に示しつつ、「このような先生の行動を見たら、どう思いますか。一番 近い気持ちはどれですか」というような質問を行う。
表4. インタビュー・対面調査用表
例 例
1 先生の説明を聞いても、授業の内容
がはっきり理解できない 17 突然怒ったり、激しく怒ったりする。
1人の学生をみんなの前で怒る 2 学生が掃除をすることや、授業中に
飲み物禁止、厳しい出席ルールなど 18 学生を小さい子供のように扱う
3
「国に帰ったほうがいい」などの言 い方や、学生のことを笑うような冗 談を言う
19 難しすぎたり、簡単すぎたりする授業
4 出身国や、成績によって差別する 20 授業の内容と関係ない話をする
5 分からないことをバカにする、えら
そうな言い方 21
先生がいつも正しいと思っている、日 本の常識は世界でも同じだと思って いる
6 理由を聞かずに怒ったり、知らなか
っただけなのに責められたりする 22 英語ができない学生がいるのに、英語 を使う
7 先生によって、教え方がバラバラだ 23 話すスピードが速すぎる、声が小さす ぎる
8 宿題やテストが多すぎる 24 学生が答えるのを待たない
9 先生にやる気がないように感じる 25 テストが不公平だったり、意味がない と思うテスト
10 質問に答えてくれない、宿題を返し
てくれない 26 セクハラのように思える言い方
11
宿題を忘れたり、遅刻した時に、罰を 与える。掃除をさせたり、真ん中の席 に座らせたりする
27 机に座る、あいさつを返してくれない
12 先生が1人で話しているような授業 28 前に書いた字が見えない 13 先生が好きな方法でだけ勉強させた
り、授業をする 29 遅刻する、時間を過ぎても授業が終わ らない
14 携帯電話を禁止するなど、先生が決
めたルールが理解できない 30 テストやレポートの説明が少ない
15 教えた内容が間違っている 31
学生には遅刻に厳しいのに自分は遅 刻する、前言ったことと違うことを言 う
16 授業がつまらない、寝てしまう 32 笑顔やアイコンタクトが少ない、あま り親しみやすくない
表5. インタビュー・対面調査対象者(留学生)
国籍 性別 日本滞在歴 年齢 日本語レベル L ネパール 男 3年1か月 30歳 中級
M カナダ 女 1年4か月 19歳 中級
N セネガル 男 1年4か月 19歳 中上級 O スウェーデン 女 1年4か月 21歳 中級 P スリランカ 男 1年10か月 23歳 中上級 Q ベトナム 男 1年10か月 22歳 中級 R ベトナム 男 1年10か月 22歳 中級 S ベトナム 女 1年10か月 20歳 中級 T ネパール 女 3年1か月 23歳 中級
U 韓国 女 8か月 20歳 上級
V 中国 女 1年10か月 34歳 上級
W インド 女 1年4か月 25歳 中上級
Y インド 女 1年4か月 23歳 中上級
Z 中国(香港) 男 1年4か月 27歳 中上級 AA アメリカ 女 1年10か月 32歳 上級 BB アメリカ 男 1年8か月 30歳 中上級 CC イタリア 男 3年1か月 27歳 中上級 DD イタリア 男 2年1か月 34歳 中級
EE タイ 女 1年4か月 25歳 中級