3 学校建築物とその周辺の被害
3.4 周辺地域における一般家屋被害率 3.4.1 調査手順と被害状況
3.4.2 調査地域被害率の地理的傾向
本節では,3.4.1 項に示した調査結果の地理的な傾向を示す。調査地域は,断層におよそ 直交する東西方向 2 通り(南ラインと北ライン)で表される。南ラインおよび北ラインに 沿った調査地域の家屋被害率の変遷をFigure 3.4-8に示す。なお,各地域における詳細情報 はTable 3.4-1に示す通りである。Figure 3.4-8では,前節で「全壊」に分類された建物を赤 色,「半壊」に分類された建物を黄色,「無被害」に分類された建物を緑色で表している。
Figure 3.4-8より,大まかな傾向として,断層に近いほど無被害に類された建物の率が減少 し,全壊に分類された建物の率が増加していることが分かる。
ただし,調査地域①および⑧の被害率は,断層線直交方向の調査地域ライン上に見られ る被害率の増減傾向から僅かにはずれ,全壊率が相対的にやや低くなっている。①および
⑧の調査地域は,幹線道路沿いに商店が立ち並ぶ地域が近接した住宅街(集落)であった という共通点を持っていることから,地理的な被害率傾向を断層線からの距離だけで単純 に比較できない原因(貧富の差など)に基づく影響が特異的に現れているものと考えられ る。実際に,Figure 3.4-9はUNOSAT衛星写真から推定された被害が甚大な地域を表してい るが,必ずしもある線に沿って距離に比例/反比例するような被害程度分布にはなってい ない。
このFigure 3.4-9に,本調査チームの調査地域および被害率グラフを重ねて示したものが Figure 3.4-10である。Figure 3.4-10より,UNOSAT衛星写真から推定された被害がDamage Areaに分類されていない地域および Limited Damage Area(黄色) に分類されている地域 では本調査チームの調査結果による全壊率が 60%以下であるのに対し, Moderate Damage Area(橙色) および Extensive Damage Area(赤色) では本調査チームの調査結果による 全壊率が 80%を超えている。また,本調査チームが被害率の調査対象とした一般住宅の被 害率においては,UNOSAT 衛星写真から推定された Moderate Damage Area(橙色) と Extensive Damage Area(赤色) とに有意な差は無く,いずれの箇所でも壊滅的な被害を 受けた集落を目にすることとなった。
Figure 3.4-8 断層線(黒点線)直交方向に並べた調査地域の被害率
Table 3.4-1 一般家屋の被害調査結果
全壊 半壊 無被害 総計 全壊 半壊 無被害
⑦ 15 3 4 22 68 14 18 Bantoul第2小学校
⑥ 7 3 5 15 47 20 33 Kowen小学校
⑤ 58 1 1 60 97 2 2 Pacar小学校
① 13 3 2 18 72 17 11 ManWonukromo高校
② 67 2 1 70 96 3 1 Putren小学校
④ 47 1 1 49 96 2 2 Bawuran小学校
⑭ 5 1 7 13 38 8 54 Pandak中学高
⑬ 16 3 9 28 57 11 32 Peni小学校
⑫ 5 1 7 13 38 8 54 Baklan小学校
① 15 1 1 17 88 6 6 MuhammadiyahJetis中学校
⑧ 7 5 1 13 54 38 8 Imogiri役場
⑩ 15 2 2 19 79 11 11 Wukirsari小学校
270 26 41 337 80 8 12
備考:
詳細調査対象建物名
合計
累計(戸数) 百分率(%)
北 ラ イ ン
南 ラ イ ン 調査 位置
地 域
Figure 3.4-9 UNOSAT衛星写真から推定された被害地域(震源位置はUSGSによる)
(http://unosat.web.cern.ch/unosat/asp/)
Figure 3.4-10 UNOSATからの被害推定と調査地域の被害率
3.4.3 ガジャマダ大学(UGM)による公共建築物の応急危険度判定結果との関係 本調査チームの被害率調査結果をより広い視点から検討するにあたり,今回の調査に協 力をお願いしたガジャマダ大学(UGM)の調査グループより提供していただいた被害調査 速報(Rapid Assessment Result Teknik Sipil UGM)による被害率分布を,参照として紹介する。
本調査チームが調査した箇所は,BANTUL県PANDAK郡,同県BANTUL郡,同県JETIS 郡,同県IMOGIRI郡,同県SEWON郡,同県PLERET郡に含まれている(Figure 3.4-11)。 これら6つの郡について,ガジャマダ大学(UGM)の被害調査速報による被害率分布を「学 校建物」と「学校建物以外」に分けて示すとTable 3.4-2およびTable 3.4-3のようになる。
Figure 3.4-11 調査地域が含まれる郡の名称
Table 3.4-2 ガジャマダ大学の被害調査速報による学校建物の被害率 使用可能(緑色) 要注意(黄色) 危険(赤) 総計
建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率 PANDAK 15 65.2% 7 30.4% 1 4.4% 23 100%
BANTUL 17 33.3% 20 39.2% 14 27.5% 51 100%
SEWON 0 0% 4 66.7% 2 33.3% 6 100%
JETIS 1 100% 0 0% 0 0% 1 100%
IMOGIRI 2 10.5% 5 26.3% 12 63.2% 19 100%
PLERET 2 15.4% 8 61.5% 3 23.1% 13 100%
Table 3.4-3 ガジャマダ大学の被害調査速報による学校以外の建物の被害率 使用可能(緑色) 要注意(黄色) 危険(赤) 総計
建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率 PANDAK 11 42.3% 8 30.8% 7 26.9% 26 100%
BANTUL 22 40.0% 21 38.2% 12 21.8% 55 100%
SEWON 1 20.0% 2 40.0% 2 40.0% 5 100%
JETIS 1 25.0% 3 75.0% 0 0% 4 100%
IMOGIRI 3 27.3% 1 9.1% 7 63.6% 11 100%
PLERET 0 0% 1 50.0% 1 50.0% 2 100%
ちなみにTable 3.4-2およびTable 3.4-3の被害程度の分類は,応急危険度判定のように「危 険(赤色)」「要注意(黄色)」「使用可能(緑色)」で判定されている。被害速報という性質 上,調査建物数の総計が 1 桁の地域も数多くあり,このデータを元に言及できる内容は殆 ど無いと言わざるを得ないが,比較的調査建物数の多い地域であるBANTUL郡,PANDAK 郡,IMOGIRI郡の調査データを参照すると,Figure 3.4-12に示したグラフのようになり,断 層に近い郡のほうが「危険(赤)」と判定された建物が多いこと,学校建物を特別に耐震性 を持たせて建設しているわけではないことが読み取れる。
被害程度の判定基準が異なることや,調査地域のサンプリングが郡全体の被害程度を表 すのに適切でない可能性を考えると,本調査チームによる一般住宅の被害率調査結果
(Figure 3.4-8)とガジャマダ大学による応急危険度判定結果(Figure 3.4-12)を単純には比 較できない。それでも敢えて比較するならば,本調査チームによって「全壊」と判定され た率が,ガジャマダ大学による応急危険度判定で「危険(赤色)」と判定された率よりも,
総じて高いことが指摘できる。その原因として,優先的に応急危険度判定がなされる箇所 は幹線道路沿いなど街区の要衝付近であった可能性が高く,またそのような地域は,調査 地域⑦の Bantul 通り沿いあるいは調査地域②の北部商店街の被害率に見られるように,比 較的健全な建築物の多い集落であるために,幹線道路から奥に入った一般住宅の集落を中 心に調査した本調査チームの被害率よりも,被害程度の小さい建物が多い結果となったの ではないかと推察される。
Figure 3.4-12 ガジャマダ大学の被害調査速報による応急危険度判定結果の例
4.おわりに
未完