本稿の調査が行 われたのは、神奈川県立愛川高校 である(1)。以下、学校の概要、愛川町 の概況、調査方法 について述べ る。
3‑ 1.学校の概要
愛川高校 は 1983年 に開校 して以来、愛川町の唯一の県立高校 として地元を中心に広 く生 徒 を受入れ 、高等学校教育 を行 ってきた。 教育 目標 は 「豊かな心 を養 い健や かな身体 を培 う」である。学校の特色 として、 「①多様 な進路希望に対応 した学習指導 ・・・選択科 目の 多様化、② 資格取得 を 目指す教育、③地域学習の取 り組み ‑ ・伝統文化 (三増 の獅子舞、
海底和紙)、④部活動活性化」があげ られている。
クラス数 は、1学年 8クラス、2学年 6クラス、3学年6クラスの計 20クラスで、全校 生徒数は621人 (男 :352人、女 :269、2005年 5月現在)で ある。
生徒の居住地域 は、愛川町が 284人 (46%)、厚木市が 264人 (43%)、海老名市が 30 人 (5%)となってい る。クラブ活動 を行 っている生徒数 は、運動系が 106人 (17%)、文 化系が89人 (14%)である。
進路状況 は、第 20期生 (2005年 3月卒業)の場合、卒業生 180人の うち、進学は 68 人 (内訳 :4年制大学 ・16人、短期大学・10人、専門学校・40人、職業技術校 ・2人。38%)、 就職 は65人 (36%)、進学準備 ・家事 ・アルバイ ト等が47人 (26%)となっている。
(注 1) この節 は、『平成 17年度 学校要覧』 (神奈川県立愛川高等学校) を参照 した。
数字は四捨五入。
3‑2.愛川町の概況
愛川町は、 「神奈川 県中央北部に位置 し、都心か ら50km圏内、横浜か ら3 0km圏内に あ り、町 の西部 には丹沢 山塊 の東端 にあた る仏果 山を最高峰 とす る山並みが連 な り、東南 部 は相模川 と中津川 には さまれた標高 100m前後 の台地が広 が る中央部の くびれた"ひ
ょうたん形"の地形」(愛川町役場の
HP
よ り)を している。愛川町の もととなる愛川村 は明治時代まで潮 る。愛川町 としては戦前か ら歴史があるが、
昭和 31年 (1956年)に中津村 を合併 して以来、現在の愛川町 として発展 し、2005年 9月 に50周年 を迎 えた。
愛川町の人 口は、2005年 10月現在、42,773人である。昭和 41年 (1966年)に内陸工 業団地が建設 され、町の産業構造が変化 した昭和 45年代後半 (1970年代) よ り町の人 口 は右肩上が りで上昇 してきたが、近年 10年間はほぼ横ばいである。
平成 12年 (2000年)の国勢調査か ら産業別人 口を見る と、就労人 口、22,745人の うち、
製造業 :8,192人 (36%)、サー ビス業 :4,708人 (21%)、卸売 ・小売業 :3,675人 (16%)、 建設業 :2,481人 (11% )、運輸 ・通信業 :2,395人 (11%)、農業 :288人 (1%)であ り、
大都 市周辺 の製造業お よびサー ビス業を中心 とした産業地域の性格が見 られ る。
また、愛川町の外国人登録人 口は、平成 13年 (2001年) には 1,934人であったが、平 成 16年 (2004年)には、2,297人 と増加 してい る。町全体の人 口増加が横 ばいであるのに 対 し、外 国人登録者が増加 してお り、町全体の人 口の約 5%を占めてい る。 国籍別 で見る と、ペルーが最 も多 く、続 いて、ブラジル 、フィ リピン、タイ、 中国、 ドミニカ共和国、
カンボジア と続 く。この4年間の外国人登録者数 の推移 は以下の通 りである。「韓国 ・朝鮮」
「イ ラン」の国籍者が減少 しているが、他 の上位 の国籍者が増加 していることがわかる。
表 1.愛川町の外国人登録人 口 (平成 13年 と平成 16年) 国籍/午 平成 13年 平成 16
(2001年) (200 年
4年)
1 ペ ′レ‑ 7
76 832
2 ブラジ
ル 668 809
3 フィ リピン 55
105 4 タイ
65 95
5 中国
31 77
6 ドミニカ共和 63 68
7 カンボジア 55
56 8 韓国 .朝鮮
49 47
9 アル
ゼ ンチン 24 28
1
0 イ ラン 13 8
ll その他 135 172
総数 1, 934 2, 297
(注2)この節のデー タは、愛川町役場 の
H
3‑ 3.調査方法の概要
愛川高校 に在籍す るJSL生徒の 日本語能力 を把握す る調査は、2005年 9月 5日より同年 9月 29日まで、延べ 日数、17日間で実施 された。9月3日、4日の 「学園祭 :愛高祭 」も 含 め、連 日、朝 の授業時間か ら放課後 までの時間を利用 し、調査 が行われた。調査団 は、
早稲 田大学大学院 日本語教育研究科 ・日本語研 究教育セ ンターの教員お よび修 了生、大学 院生の 12名である。
調査方法は、主に以下の方法を とった。
① 「授 業見学」
教室で授業 を見学 し、授業 中に行われ る会話やや りとりを記録 した。
② 「授業で使用した資料 ・プリント類の収集と分析」
授業 中に担 当教員か ら配布 された資料や プ リン ト類 を、担 当教員お よび生徒本 人の許 可 を得 て、収集 した。 そのプ リン トに書 き込 まれ た生徒 の文章か ら授業 中 の理解度や 「書 く力」を分析 した。
③ 「生徒‑の個別のインタビュー」
生徒 を呼び 出 し、直接話 を聞 くイ ンタビュー を行 った。② の資料 を もとに、授 業 の こ とを聞いた り、中学時代の こと、家庭の こと、母語、 日本語 、学習、進路 の ことを聞 くな ど、多岐 にわたる話題 について聞いた。 ひ とりの生徒 につ き、複 数回のイ ンタ ビューを行 った。イ ンタ ビューの時間は、ひ とり30分か ら2時間ほ
どであった。イ ンタビューの間は、本人の許可を得て、録音 をす る場合 もあった。
イ ンタ ビューの場所 と時間は、放課後の 「会議室」「調査団控 え室 (生徒指導室)」
「廊下のベ ンチ」「教室」「廊下」な どであった。また、9月 3日、4日の文化祭 の ときには、会場 となった教室での活動や 日本人生徒 との議論 、や りと りも参与 観察 した。 またイ ンタビュー に 日本人生徒 が複数参加 して、いっ しょに議論 をす
ることもあった。 これ らの観察、会話、や りとりか ら、資料 を収集 した。
④ 「アンケートおよび課題提出」
「読む力」「書 く力」を見 るために、 「アンケー ト」形式の質 問紙 に 日本語 で回 答す るよ うに指示 した り、授業 中の話題 をもとに、テーマ を与 え、それ につ いて 回答 を書 くよ うに指示 し、生徒 自身の 「書いた もの」 を提出 させ た。 た とえば、
現代文で扱 った教科書の文、 「ふ しぎ とい うこと」を参考 に して、 「である」調 の 文体で 自分に とっての 「ふ しぎ とい うこと」を 自由に書 く作文課題 を与 えた り、
雑誌 の記事 を読み、その論 旨を踏 まえて 自分の意見を述べ る作文の課題 を与 えた りな どした。その よ うな方法で得 られた資料か ら 「読む力
」
「書 く力」を分析 した。⑤ 「担任へのインタビュー」
生徒 の担任や教科担 当教員 にイ ンタ ビュー し、生徒 の 日本語能力や学習状況、
家庭状況等 についで情報 を収集 した。 また、国語の作文な どを、本人 の許 可 を得
て、 コピーを入手 し、分析の材料 とした。
⑥ 「生徒とのメール、携帯での通信 」
生徒 によっては、メールや携帯で意 見交流や会話 をす ることがあ った。 その よ うな場合 は、母語 に関す る情報や個人的な内容 につ いて、学校 では聞けない多 く の情報を得た。
JS L
生徒の 日本語能力の把握 に際 しては、川 上研 究室が開発 した「 JSL
バ ン ドスケール」(中学 ・高校編) を使用 した。4技能別の枠組みは、「初 めて 日本語 に触れ る」 レベル 1か ら 「日本語母語話者に近い」 レベル8まで設定 され てい る。
表 2.