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第 4 章 不完備情報ゲーム 37

4.7 課題

演習4.1 武藤[12]の事例4-2 (p. 126)を展開形ゲームとして表現せよ.[正解: 図4-3.]*20

演習4.2 (最重要) 武藤の図4-3のゲーム(p. 127)において,プレーヤーAの情報集合での A の信念が (r,1−r)で与えられている.このとき Aの期待利得をrの関数としてもとめ,その期待利得が最大になるよ うな行動をrの値におうじて決定せよ.[正解: 本文p. 128第4パラグラフ.]

演習4.3 (最重要) 武藤の図4-3のゲーム(p. 127)において,プレーヤーAの情報集合での A の信念が (r,1−r)で表されている.強いタイプのBと弱いタイプのBのとりうる行動の組(4つある)のそれぞれに たいして整合的なA の信念をもとめよ.[正解: 本文p. 128第5パラグラフからp. 129.]

演習4.4 (最重要) 武藤の図4-3のゲーム(p. 127)において,強いタイプのBが「参入する」をとり,弱いタ イプのBが「参入しない」をとるような完全ベイジアン均衡をもとめよ.[正解: (Aの行動,強いBの行動,

弱いBの行動,A の信念)の組が(阻止,参入する,参入しない,(1,0))となるのが均衡.本文 p. 130ケー ス2を参照.演習4.8の類題.]

演習4.5 (最重要) 武藤の図4-3のゲーム(p. 127)において,強いタイプのBが「参入しない」をとるよう な完全ベイジアン均衡は存在しないことをしめせ.[正解: 強いBが参入しなければ利得は0で,参入すれば 利得は1または3となり,いずれにせよ参入したほうが利得が高い.本文pp. 130-1ケース3, 4を参照.] 演習4.6 (完全ベイジアン均衡と弱支配される戦略) [武藤IV章 練習問題1 (135頁)から]次の展開形ゲーム (演習3.7と同じ)の完全ベイジアン均衡を求め,弱支配される戦略は含まれないことを確かめよ.

正解例. Player 2の情報集合における信念を(r,1−r)とする.ただしrはこの情報集合が実現したという条件のもとで

Player 2が上の点にいる確率である.この信念のもとでPlayer 2dを選ぶことが直ちに分かる.上の点でも下の点で

もdを選ぶ方がeを選ぶより利得が高いからである.[詳細: dを選んだときの期待利得は3r+ 2(1−r) =r+ 2.eを選 んだときの期待利得は2r+ 1(1−r) =r+ 1.よってrの値にかかわらずdの方が高い利得を与える.]

このとき,点1におけるPlayer 1の最適な選択はaである:

• aをとれば1の利得は(Player 2dをとるため) 4

• bをとれば1の利得は(Player 2がdをとるため) 1

• cをとれば1の利得は3

*20演習4.1–4.5は演習4.9の類題である.

Player 1の上記の行動と整合的なPlayer 2の信念は(1,0)である.情報集合の下の点に至らず上の点には至るため.

以上から完全ベイジアン均衡は,「1はaを,2はdを選び,Player 2の情報集合における信念は(1,0)となる」よう な行動と信念の組み合わせである.この均衡には弱支配される戦略e(eがdに弱支配されることは演習3.7の正解例を 参照)は含まれない.

リマーク4.1 上記の解答例より長くなるが,Player 1がaを選ぶケース,bを選ぶケース,cを選ぶケースに分けて考え てもいい.いずれのケースでもPlayer 2はdを選ぶことから,Player 1がaを選ぶケース以外は場合分けの条件が不合 理であることがしめせる.

演習4.7 (最重要; 完全ベイジアン均衡と逆選抜) [武藤IV章 練習問題2 (135頁)から] 次の図の左側のゲー ムは,武藤の図4-4 (133頁)の中古車市場の展開形ゲームと同じ構造を持つ.*21 終点にはPlayer 1の利得

とPlayer 2の利得をこの順序で記入している.このゲームの完全ベイジアン均衡を求め,2Gはnを,2Bは

(0,2) (2,3) (4,1) (−1,3)

(1,1) (0,0) r h

l h

l b

b n

2B n 2G (1/2)

(1/2) Nature

1−r 1

(0,2) (2,3) (4,1) (−1,3)

(1,1) (0,0) r= 0h

l h

l b

b n

2B n 2G (1/2)

(1/2) Nature

1−r 1

bを,1はlを選ぶ(すなわち「良いタイプのPlayer 2 は持ち込まず,悪いタイプのPlayer 2のみが持ち込

み,Player 1は低い価格で買う」となる)ことを確かめよ.

正解例. Player 1の情報集合における信念を(r,1−r)とする.ただしrはこの情報集合が実現したという条件のもと

でPlayer 1 が上の点にいる確率で,1−rは同条件のもとでPlayer 1 が下の点にいる確率である.この信念のもとで

Player 1lを選ぶことが直ちに分かる.上の点でも下の点でもlを選ぶ方がhを選ぶより利得が高いからである.[詳

細: hを選んだときの期待利得は2r−1(1−r) = 3r−1.lを選んだときの期待利得は4r+ 1(1−r) = 3r+ 1.よって rの値にかかわらずlの方が高い利得を与える.]

このとき,点2GにおけるPlayer 2の最適な選択はnである:

• nをとれば2Gの利得は2

• bをとれば2Gの利得は(Player 1がlをとるため) 1 また,点2BにおけるPlayer 2の最適な選択はbである:

• nをとれば2Bの利得は0

• bをとれば2Bの利得は(Player 1がlをとるため) 1

2Gと2Bの上記の行動と整合的な Player 1の信念は(0,1)である.情報集合の上の点に至らず下の点には至るため.

以上から完全ベイジアン均衡は,「1はlを,2Gはnを,2Bはbを選び,Player 1の情報集合における信念は(0,1) となる」ような行動(図の右側のゲームに赤い矢印で示している)と信念の組み合わせである.この均衡で「2Gはnを,

2Bbを,1lを選ぶ」ことは明らか.

差替 え予 定

*21最初にNature (自然)Player 2のタイプ(属性)を選び(確率1/2で良いタイプG,確率1/2で悪いタイプBとなる),

Player 2は自分のタイプを知った上でb(bring;持ち込む)またはn(not;持ち込まない)を選択し,Player 1Player 2 (タイプを知らずに)bという選択のみを知ったうえで,h(high;高い)またはl(low;低い)を選ぶ.Player 2の情報集合は点 2G(タイプGに対応)と点2B(タイプBに対応)であり,Player 1の情報集合は左から3列目の2点からなる集合(Player 2 の選択bに対応)である.

演習4.8 (重要) [梶井松井練習問題5.2で差替え予定]渡辺『図解雑学ゲーム理論』203 頁の展開形ゲームで

「どちらの属性も資格を取得しない」(能力の高い金太郎も低い金太郎も資格を取らない)ような完全ベイジア ン均衡(ベイズ完全均衡)が存在することをしめせ.

正解例. 渡辺208頁の最終段落にある主張をしめす問題である.演習4.4の類題である.*22どちらの属性の金太郎も資格 を取得しないとすると,有資格者にたいする情報集合(点有高と点有低からなる情報集合)には到達しない.到達しない情 報集合における信念はいかなるものも戦略と整合的であるから,*23 それを(r,1−r)とする.ただしr はこの情報集合内 の点が実現したという条件のもとでの点有高が実現する条件付き確率,1−rは点有低が実現する条件付き確率である.

一方で,無資格者にたいするホヤの情報集合(点無高と点無低からなる情報集合)におけるホヤの信念は (s,1−s) = (1/2,1/2)となる(s= 1/2は点無高の条件付き確率,1−s= 1/2は点無低の条件付き確率;この情報集合には確率1で 到達し,点無高も点無低も確率1/2で到達することに注意*24).よってこの情報集合におけるそれぞれの行動にたいする ホヤの期待利得は以下のようになる.

• 1100万円を選んだときの利得: 12×100 +12×(−150) =−25.

• 900万円を選んだときの利得: 12 ×0 +12×50 = 25.

したがって,ホヤは900万円を選ぶのが最適.

有資格者にたいする情報集合に戻ろう.ここでホヤが1100万円を選んでしまうと,能力の高い金太郎は資格を取るほう が有利になってしまい(取れば利得1050,取らなければ利得 1000),題意に反する.よってこの情報集合ではホヤが900 万円を選ぶはずで,たとえばホヤの信念を(0,1)とすればたしかにホヤにとって900万円を選ぶのが最適となる(この信 念のもとで1100万円を選んだときの利得は−150,900万円を選んだときの利得は50).*25

いずれの情報集合でも900万円を選ぶというホヤ商事の以上の行動を前提として,金太郎の最適な行動を求めよう:

• 能力の高い金太郎は資格を取らないのが最適(取れば利得は950,取らなければ利得は1000).

• 能力の低い金太郎は資格を取らないのが最適(取れば利得は550,取らなければ利得は900). これらの戦略にたいするホヤの信念の整合性はすでに検討した.

以上をまとめると,以下で記述される均衡が問題の条件を満たす:*26

• 能力の高い金太郎も低い金太郎も資格を取らない.

• ホヤ商事はいずれの情報集合でも900万円を選ぶ.

• 有資格者にたいする情報集合での信念(0,1);無資格者にたいする情報集合での信念(1/2,1/2).

差替 え予 定 演習4.9 (重要) [梶井松井図5.7の利得修正で差替え予定]渡辺『図解雑学ゲーム理論』209頁の展開形ゲー ムには完全ベイジアン均衡(ベイズ完全均衡)が存在し,そのいずれの均衡においても「どちらの属性も資格 を取得しない」(能力の高い金太郎も低い金太郎も資格を取らない)となることをしめせ.*27

正解例. 渡辺208頁の第2段落にある主張をしめす問題である.演習4.1–4.5を複合した問題はこの問題の類題である.

有資格者にたいする情報集合(点有高と点有低からなる情報集合)におけるホヤの信念を(r,1−r)とする(rは点有高 の条件付き確率,1−rは点有低の条件付き確率).この情報集合におけるそれぞれの行動にたいするホヤの期待利得は以 下のようになる.

*22一般に,属性のちがいが行動のちがいに現れる均衡を「分離均衡」と呼び,行動のちがいに現れない均衡を「一括均衡」と呼ぶ.

205頁にしめされた均衡は分離均衡で,この問題であつかう均衡は一括均衡である.

*23均衡において到達しない情報集合では,任意の信念が戦略と整合的であるとみなす.武藤129頁参照.

*24 ゲームの初期点から均衡経路(均衡戦略のしめす経路)に沿って1単位の水を流したと想像するとよい.どちらの属性も資格を 取得しないばあい,点無高には1/2単位,点無低には1/2単位の水が流入してくるはずである.各点の条件付き確率はその点に おける流入量をこの情報集合全体への流入量で割れば求まる.いまの場合,この情報集合全体には合計1単位の水が流入している から,1/21/2がそのまま点無高と点無低の条件付き確率になる.たとえば点無高の条件付き確率は 1/2+1/21/2 = 1/2となる.

(やや高度—かつ,テキストによって定義が一定しない—であるが,もし情報集合が均衡経路上にないばあいは,その情報集合のす べての点に通じるような適当な点(先祖)から,1単位の水を均衡戦略のしめす部分的経路に沿って流したと想像するとよい.ギ ボンズ(1995)『経済学のためのゲーム理論入門』[5, 180-182頁]を参照.)

*25より一般的にはr2/3のとき900万円を選ぶのが最適.演習4.9参照.

*26 すでに述べたように,有資格者にたいする情報集合での信念はこれ以外も考えられる.

*27渡辺の古い刷には誤植がある.能力の高い金太郎にたいする利得は上から1050, 950, 1100, 1000となるのが正しい.

• 1100万円を選んだときの利得: 100r−150(1−r) = 250r−150.

• 900万円を選んだときの利得: 0r+ 50(1−r) = 50−50r.

したがって,ホヤ が900万円を選ぶのが唯一の最適となる必要十分条件は: 250r−150<50−50rから,300r <200, つまりr <2/3である.また,ホヤ が1100万円を選ぶのが唯一の最適となる必要十分条件はr >2/3である.

無資格者にたいする情報集合(点無高と点無低からなる情報集合)におけるホヤの信念を(s,1−s) とする(sは点無高 の条件付き確率,1−sは点無低の条件付き確率).この情報集合におけるそれぞれの行動にたいするホヤの期待利得は以 下のようになる.

• 1100万円を選んだときの利得: 100s−150(1−s) = 250s−150.

• 900万円を選んだときの利得: 0s+ 50(1−s) = 50−50s.

したがって,ホヤ が900万円を選ぶのが唯一の最適となる必要十分条件は上と同様に,s <2/3である.

以下では金太郎の戦略を(t, t)と表し(ただしtは能力の高い金太郎の選択,tは能力の低い金太郎の選択),そのすべ ての場合を考える.

• 金太郎の戦略が(取る,取る) のばあい.整合的な信念におけるr= 1/2となり (脚注*24の,1単位の水を初期 点から流す比喩を思い浮かべよう),sは任意となる(脚注*23参照).ところがr= 1/2<2/3から,有資格者に たいする情報集合でのホヤの最適な行動は900万円を選択することのみである.よって能力の高い金太郎は資格 を取らないのが最適となる(取ると利得は950,取らないと利得は1100または1000). これは場合分けの条件に反 する.

• 金太郎の戦略が(取る,取らない)のばあい.整合的な信念におけるr= 1,s= 0となる.*28ところがr= 1>2/3 から,有資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動は1100万円を選択することであり,s= 0<2/3から,

無資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動は900万円を選ぶことである.よって能力の低い金太郎は資格 を取るのが最適となる(取ると利得は1050,取らないと利得は900). これは場合分けの条件に反する.

• 金太郎の戦略が(取らない,取る)のばあい.整合的な信念におけるr= 0,s= 1となる.ところがr= 0<2/3 から,有資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動は900万円を選択することであり,s= 1>2/3から,

無資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動は1100万円を選ぶことである.よって能力の低い金太郎は資 格を取らないのが最適となる(取ると利得は850,取らないと利得は1100). これは場合分けの条件に反する.

• 金太郎の戦略が (取らない,取らない)のばあい.整合的な信念におけるrは任意,s = 1/2となる.ところが

s= 1/2<2/3から,無資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動は900万円を選択することである.こ

こでもし有資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動が1100万円を選択することであるとすると,能力の 高い金太郎は資格を取るのが最適となる(取ると利得は1050,取らないと利得は1000). これは場合分けの条件に 反する.よって,有資格者にたいする情報集合でのホヤの最適な行動は900万円を選択することであり,そのため にはr≤2/3であればよい.

以上の考察から,考えられる均衡は最後の場合のみであり,以下で記述できる:

• 能力の高い金太郎も低い金太郎も資格を取らない.

• ホヤ商事はいずれの情報集合でも900万円を選ぶ.

• 有資格者にたいする情報集合での信念 (r,1−r),ただしr ≤ 2/3; 無資格者にたいする情報集合での信念 (1/2,1/2).

これが実際に均衡であることをしめすには,(すでに信念の整合性とホヤ商事の選択については確認済みなので)能力の高 い金太郎も低い金太郎も資格を取らないことを確認すればよい:

• 能力の高い金太郎は資格を取らないのが最適(取れば利得は950,取らなければ利得は1000).

• 能力の低い金太郎は資格を取らないのが最適(取れば利得は850,取らなければ利得は900). 演習4.10 オークションにかかわる演習を追加予定.

演習4.11 オークションにかかわる演習を追加予定.

*28 この戦略に整合的な信念においてr= 1となることをしめそう.この戦略のもとで有資格者にたいする情報集合の上の点に至る 確率は1/2で,下の点に至る確率は0である.したがって条件付き確率に直すと,r=1/2+01/2 = 1,そして1r=1/2+00 = 0 となる.

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