企業 間情報 ネット ワー ク・シ ステ ムは新し いシ ステ ムであ り, 理論 よりも 実 態が先行し て きた 傾向 か強い。 少な くと も, マ ー ケテ ィン グ情 報‑y ステ ム 論 の中では,1 企 業 内 の情報シ ステ ムを取 り上げ て検 討はし てい るが, 複数 の企業が ネット ワ ー クで結 び付け られそ の間でどの様 な情報 交 換が 行 われ,
それがど のよ うに 意思 決定に 影響し てい るかを 研究し た例 はな い と思 われる。
企業間 情報 ネット ワー ク・シ ス テ ムは, 産業構造, 企 業 の活 動 の方 式 に,
さらに, そ こで 働い てい 志人 々に大き な影響を与え る。 こ の様 な認識があ り,
社会的な問題を多 く抱え てい る と多 くの人 が考えてい るに も拘 らず, 関係す る主 体が多 く多 面的 な問題 を抱 え てい るが故に, なかな か理論 的 な解 明は進 まなかった。
本研究では,情報ネット ワーク・システ ムと有効競争という視点からのア プ1・−チをおこなった。それも,公正取引委員会の活動をフィルターとし て 極めて狭い範囲での研究をし た。そ の結果,おおむね次 のようなことが,あ る程度はっきりし た。
・流通分野に対する独占禁止法の適用には√理論的に も現実的にも難しい 点が多 く, ミクp 経済学,経済法学から の理論的なアプローチに加え,
マーケテ ィング論,情報システ ム論 などからのアプローチ も不 可欠であ る。
・独占禁止法の流通への適用に於て,公正取引委員会が考えている多 くの ことは,理論的なつめがさらに必要であることに加えて√流通・マーヶ テ ィン グの実態をさらに正確に把握し てゆくことが望まれる。
・多 くの討論において,「情報」 概念を正確に定義し た論議がなさ れ て い ない。
・j情報システムの高度な発展に より,シ ステムの標準化が促進されると思 われ七いるが,実は非標準的な複雑な条件は温存され,高度な情報ジス テムに より効率的に処理されると予想し た方が正しいと思われる。
・独占的なネットワークとい う考え方が随所に出てくるが,流通活動と情 報システムの固有な性格さえ検討すれば,その様な状態が発生する可能 性は小さいと判断せざるを得ない。
。「情報の私的独占」なる言葉が多 くの場面で使われ
る。し かし,情報の 意味を正確に把握すれば, 「情報の私的独占」といった言葉を安易に使
うことは出来ないと思われる。
・これ までの万一ケテ ィソ ダ情報システ ム理論は,オフ ィスの内部でのシ ステ ムを念頭にし ていたが,今後は企業間情報ネットワーク・システム といった企業間の情報システムを考え てゆく必要がある。
・米国におけ る企業間情報ネットワー ク・システ ムの進展の度合ぽ, 日本 とそれほど差のあ るものではない。し かし, 独占禁止法上の取扱い方に 関し ては,日本は米国よりはるかに厳し い基準を公正取引委員会は考え ているようである。
以 上 の ような見通し が 付いた も のの,
うに は 至っ てい ない。 特に重 要な のは,
本論文でも,情報の正確な定義を行
たとえばデータ, インフォメーショ
情報ネットワーク・システムと競争阻害123y
, イン テ リ ジ ェ ン ス の区 別 を よ り正 確 に 行 う こ と であ ろ う。 こ の区 別は , 経 営 上 の 使 用 目的 に よ っ て 決 め ら れ る と思 わ れ る昿 個 々 の 目的 毎 に 区 分 が 代 わ る の で は 学 問的 な 概 念 とし ては 使 用 に 耐 え ら れ な い で あ ろ う。 今後 ,
「 情報 」 の 概 念 を 更 に 正 確に 定 義 し , よ り深 い 論 議 を 行 っ て行 き た い。
1) 涌 田lit. 情 報 シ ス テ ム の 分 野 で も 「 社 会 性 を 重 ん じ, 秩 序 あ る 行 動 の 中 で企 業 の競 争 原 理 を 働 か せ て ゆ く 」 こ と の 重 要 性 を 指 摘 し て い る 。 ( 涌 田 宏 昭 「 営 業 管 理 情 報 シ ス テ ム」, 涌 田 宏 昭 編 著 『 営 業 管 理 と 情 報 シ ス テ ム ④ 』 白 桃 書 房 , 昭 和53
年,11 頁 )2
) 通 商 産 業 省 産 業 政 策 局 商 政 課 『 流 通 シ ス テ ム 化 マ ニ ュ ア ル 』 流 通 経 済 研 究 所 , 昭 和46 年 。
通 商 産 業 省 企 業 局 『 流 通 シ ス テ ム化 基 本 方 針 』 大蔵 省 印 刷 局 , 昭 和46 年7 月 。3
) 通 産 省 は 流 通 シ ス テ ム 化 を 推 進 す る た め に 「 財 団 法 人 流 通 シ ス テ ム 開 発 セ ソ ク ー」 を 昭 和47 年 に 設 立 し た 。 流 通 シ ス テ ム 化 に 関 す る多 く の 諸 資 料 は こ こ に 蓄
積 さ れ て い る。 十 犬4
) 「 標 準 化 」 は , そ の 適 用 の 対 象 か ら 見 る と , 物 的 要 素 製 品, 材 料 , 工 具 な ど ) の標 準 化 と , 方 法 的 要 素 ( 作 業 方 法 , 事 務 処 理 方 法 , 管 理 方 法 な ど ) の 標 準 化 と い う 方 向 に 大 別 さ れ る 。 前 者 の 直 接 的 な 狙 い ぱ 最 少 手 段 の 最 大 活 用 で あ り,
後 者 の 狙 い ぱ 方 法 の 容 易 化 , 一 定 化 で あ る 。(『 経 営 工 学 便 覧J 丸 仏 昭 和50 年,56 頁 )5
) 荒川 は , 流 通 シ ス テ ム化 か も た ら す 問 題 点 を , 非 常 に 早 い 時 期 に 次 の よ うに 指 摘し て い る 。 「 寡 占 企 業 を 頂 点 と す る 垂 直 的 統 合 な い し 系 列 化 を 核 と す るい わ ゆ る マ ー ケ テ ィ ン グ ・ チ 十ネ ル 形 成 と , 国 民 経 済 的 視 野 か ら す る 流 通 機 構 の 最 適 設 計 と が ど の よ うに 調 整 さ れ う る か と い う 問 題 を 含 ん で い るj。( 荒 川 祐 吉 『 流 通 政 策 へ の 視 点 』 千 倉 書 房 , 昭 和48 年 ,69 頁 )6
) 田 村 正 紀 『 日 本 型 流 通 シ ス テ ム』 千 倉 書 房 , 昭 和61 年,130‑140 頁 。7
) 林 周 二 「 日 本 的VAN に 想 う こ と 」『 流 通 政 策 』1984 年9 丹。 。8
) 田 内 幸 一 『 マ ー ケ テ ィ ン グ』 日 経 文 庫 , 昭 和60 年,160 頁 。 ∧9)ISO
( 困 際 標 準 機 構 ) で は デ ー タ 通 信 の 規 格 と し てOSI (OP.enSystemInter‑connection
) を 設 定 し て い る。 こ こ で は, 情 報 処 理 ・ 通 信 の 分 野 の デ ー タ 構 造 とし て , ① フ ィジ カ ル 層 ( チ ャ ネ ル 構 成 , 起 動 ・ 停 止 条 件 , 速 度 , 電 圧 レ ベ ル , コ ネ ク タピ ソ 数 ・ 形 状 ), ② デ ー タ リ ン( ク層 ( 誤 り の 検 出 や 再 送 制 御), ③ ネ ット ワ ー ク層 ( 呼 び 制 御 手 順 , 信 号 の 定 義 , 割 付 , ル ¬ テ ィン グ,'"^ ケ ッ ト 順 序 制 御 ),
− ④y ラ こ/ス ポ ー ト 層 ( チ ャ ネ ル の 分 割 制 御 , 送 達 確 認 ), ⑤ セ ) シ3 ン 層 ( 送 信 権 制 御 , 中 断 通 信 の 再 開 方 式 ), ⑥ プレ ゼ ン テ ー シa ン 層 ( 文 字 ・ 図 形 ・ 圧 縮 ・ 暗 号 な ど の 符 号 表 現 ), ⑦ ア プ リ ケ ーシ ョ ン 層( 蓄 積 機 能 ・ 変 換 機 能 ) の7 層 に 分 こ けてい る 。 フ ィ ジ カ ル 層 に 近 い ほ ど 標 準 化 が 要 求 さ れ 又 標 準 化 が 技 術 的 に し や す
い。 日本では特許庁が昭和61年にこの方式のコンピュータを導 入することを決定 した。これに より, コンピュ ータの国際的な標準化 の推 進は 大幅に進む と評価さ
れた。10
) 『物 流問題に関する研究調査報告書− ジャスト・ イソ・ タイム物流シ ステ ム を中心とし てー 』流通政策研究所,昭和61年3 月11
)SMD に関し てはいろいろな資料があ るが, 一般に出版され てい る文献には次 のようなものがある。
通商産業 省産業政策局商政課『情報武 装型卸売業ビジ3 ン』通商産業調査会,
昭和60 年。 ト
田島義博 ・宮下正房『 日本的卸売経営 の未来』東洋経 済新 報社, 昭和61年。12
) コドラー『 マーケティング原理』529頁。13
) 花王以外 (ラ イオン,資生堂その他) の製品を主とし て取 り扱 う卸売 店で花王 の製品を も扱 ってい る卸売店を「代行店」と花王では呼 んでい る。14
) 「業 種VAN 構築すすむ商 社・卸問屋jNRISearch, 野村 総合研究所,1986 年7 月,11 頁。15
」Johnc.PanzarandRobertD.Willig,"EconomiesofScope,"AmericanEconomicReview,vol.71,no.2,1981,pp.268‑272.
これからの産業 のあ り方を考えると, 「範囲の径 済性」 の概念では不十 分であ るとの指摘 も成さ れてい る。 複数め経済主 体がネ ット ワ ークで 結び付け られるこ とに より得ら れる経 済的な効果を「連結の経済性」 と名付げ た考え方が出てきた。
① 投 入要素とし て, 情報, ノウハウを 含む
② 「共通」ではな く「共有」を考える。
③ 複数 の主 体間 の結び付きを考え る
(流通問題研究会『情報 ネットワーク社会の流通構造一 連 結の経済性を求め てー 』経済企画庁物 価局, 昭和61年3 月を参照されたい。) なお この研究会の 座長は一 橋大学 の宮沢健一 教授であ る。16
)Baumol,Panzar,andWillig, ContestableMarketsandtheTheoryofInd‑ustrySystem,"H.B.
ノ.,1982,p.xvi.17
) 今井賢一 『情報 ネットワーク社会』 岩波新書,1984 年,134 頁。18
)HenryMinzberg, Themanager'sjob:folkloreandfact. HarvardBusinessReview,July‑August1975,pp.49‑6119
) 田内幸一 『市場 創造のマ ーケティング』三嶺書房.1983 年,71 頁。20
) 片岡一郎監訳『現代 のマ ―ケテ ィング』丸善, 昭和49年6 月,149‑161 頁(Wi‑lliamLazer,MarketingManagement,JohnWiley&Sons,Inc.,1971
) インテ リジ ェン スとい う言葉はCIA (CentralIntelligenceAgency )に。見られ る様に, スパ イとい った暗い イタージを与えた。し かし , この 種の インテリジ , ソ スは ネガテ ィブ・ インテリジェンスとか カウンタ・ インテ リジre ンスと呼ばれ るものである。『同書』,162‑163 頁。21
)WilliamT.Kelley , MarketingIntelligenceforTopManager",Journal
情報 ネットV ー グ・シ ヌヽテ ムと競 争阻 害125ofMarketing,vol.29
(Oct.1965 ),p.19.22
) 野 村 順 一 『 カ ラ ー マ ー ケ テ ィン グ 論 』 千 倉 書 房 , 昭 和58 年 ,8 頁 。23
) 野 村 順 一 『 マ ー ケ テ ィ ン グ 論(9 版 )J 千 倉 書 房 , 昭 和59 年,373 頁 。24
)A.M.A の1985 年 の マ ー ケ テ ィ ン グ の 定 義 で は,"ideas.goods,andservices"
とい う 表 現 が と り 入 れ ら れ て い る。25
) 村 田 昭 治 監 修 『 マ ー ケ テ ィン グ 原 理 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社, 昭 和58 年 ,166‑206 頁
(PhilipKotler,PrincipalsofMarketing,Prentice‑Hall,Inc.1983,pp.468‑481
)26
) 『 卸 団 地 ニ ュ ー メデ ィア 対 応 調 査 研 究 報 告 書 』 流 通 政 策 研 究 所 , 昭 和61 年3 月 ,55 頁 。 調 査 は60 年12 月 , 卸 団 地1135 事 業 所 , 回 収531 サ ン プ ル(46.8 % )。27
) 『 情 報 化 に 関 す る 研 究 調 査 報 告 書 』 流 通 政 策 研 究 所 , 昭 和61 年3 月,134‑136 頁。 調 査 は 調 査61 年2 月 , 卸 売 業1000 社, 回 収 数172 件 で あ る。28
) 金 子 郁 容 「 情 報 社 会 の 現 在 」 『 エ コ ノ ミ ス ト 』81 年l 月7 日−2 月11 日 の 連 載。29
) 今 井 賢 一 『 前 掲 書 』44‑46 頁 。
今 井 は 新 し い 市 場 ・ 製 品 ・ 事 業 の 開 発 に は , ネ ッ ト ワ ー クB に よ る 情 報 交 換 が 重 要 で あ る と 強 調 し て い る。 筆 者 の 独 断 で は あ る が , 米 国 に お け る 企 業 間 の 情 報 交 換 は もっ と 過 激 に 行 わ れ て い る の で は な い か と 考 え る。 米 国 に お い て 日 常 茶 飯 事 とな っ て い る 企 業 の 買 収 は , 資 本 の 論 理 に 基 づ い た 強 制 的 な 情 報 交 換 の 方 式 と 考 え る こ と が 出 来 よ う。30
) 『 同 書 』202‑204 頁 。31
) 拙 稿 「 問 屋 の マ ー ケ テ ィ ン グ 情 報 シ ス テ ム」『 流 通 政 策jNo.23 (1986 年1 月 ).15‑22 頁 。
拙 稿 「 マ ー デ テ ィツ グ情 報 シ ス テ ム : 既 存 研 究 の サ ー ベ イ 」『 東 洋 大 学 昭 和60 年 度 特 別 研 究 報 告 書 』421‑445 頁 。
根 木 佐 一 『 マllIケ テ ィ ン グ 情 報 シ ス テ ム 研 究 』 お 茶 の 水 書 房,1984 年32
)WilliamT.Kelley,op.cit.33
)DonaldF.CoxandRobertE.Good, HowtoBuildaMarketingInforma‑tionSystem,"H.B.R.,May づune1967,pp.145‑154.34
)PhilipKotler,"ADesignfortheFirm'sMarketingNerveCenter, inSmithetal.eds,
,ReadingsinMarketingInformationSystem ,HoughtonMifflin,1968,pp.23‑29.p.Kotler,"TheFutureoftheComputerinMarketing,"J.
皿 。凡 ,Jan.1971,pp.11‑14.p.Kotler,PrincipalesofMarketing,Prentice‑Hall,1980.p.Kotler
,MarketingManagement (4thed. ),Prentice‑Hall,1980.GaryL.LilienandPhilipKotler,MarketingDecisionMaking,Harper&Row,1983.35
)RichardH.BrienandJamesE.StafFord, MarketingInformationSys‑tems, J.M ・,Vol.32 (July,1968 ),pp.19‑23.