です。
第 3 章
認知機能低下予防と運動
第 3 章
認知機能低下予防と運動
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豊かな環境・しっかり運動⇒脳活性化 豊かな環境・しっかり運動⇒脳活性化
池谷裕二:脳はなにかと言い訳をする. 祥伝社. 2007
豊かな環境で飼育されたマウス
・海馬の神経細胞が増加
・できごとの記憶がよくなる
仲間と一緒
遊び道具
ランニングエクササイズで中年マウス海馬の神経細胞新生が増加 血中コルチコステロンは変化せず、BDNFとBDNF受容体が増加
Wu C et al. J Appl Physiol 2008;105:1585-1594
©2008 by American Physiological Society
新生神経細胞数未熟神経細胞数新生/未熟細胞数 コルチコステロン BDNFBDNF受容体 コルチコステロンBDNFBDNF受容体
0 50000 100000 150000 200000 250000
豊かな住環境+高活動群 豊かな住環境+低活動群 通常の住環境群
脳βアミロイド沈着部の面積
廻り車やトンネルなど 豊かな住環境で飼育
Lazarov O et al: Cell 120:701-713,2005
豊かな環境での楽しい運動が
老人斑(βアミロイド)を減らす
豊かな環境での楽しい運動が
老人斑(βアミロイド)を減らす
日課となった身体活動が 認知機能低下を防ぐ
日課となった身体活動が 認知機能低下を防ぐ
15 のコホート研究、健常中高年者 33816 名を 1-12 年追跡
1 0.65
0.62
リスクが約 35% 減
Sofi F, et al.: J Intern Med. 269(1):107-117, 2011.
中年期の余暇運動が アルツハイマー病を防ぐ
中年期の余暇運動が アルツハイマー病を防ぐ
Rovio S et al: Lancet Neurol 4:705-11, 2005
フィンランド CAIDE研究 1,449名
20年後調査
0.35
1
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
運動群 不運動群
リスクが1 / 3に 中年期
余暇の運動 20-30 分以上 息切れ・発汗
週2回以上
20 40 60 80 歳
運動 → 活性酸素消去増大 → タンパクのゴミ焼却炉向上
運動で海馬体積が増加し記憶が良くなる
120名の高齢者をランダムに2群に分け、
①有酸素運動群と②ストレッチ群で、1年間比較
運動群はストレッチ群に比べて1年間後に海馬体積が有意に増加
(有酸素群は約2%増加、ストレッチ群は約1%低下)
運動耐容能(体力)が増大するほど海馬体積が増え、海馬体積が増 大するほど記憶↑。血中BDNF濃度が高いほど海馬体積が増大
Erickson KI et al. PNAS 108:3017-3022, 2011
運動介入による認知機能改善効果
健常高齢者
運動介入のRCT11論文のメタアナリシス
効果大:運動機能 (指たたき試験)、聴覚刺激への注意 (数唱) 効果中:認知スピード (TMT-A, 符号問題)、視覚刺激への注意
Angevaren M, et al: Cochrane Database Syst Rev. 16;(3):CD005381, 2008
運動介入による認知機能改善効果
MCI
Gates N, et al: Am J Geriatr Psychiatry. 21(11):1086-1097, 2013.
14 の RCT 研究、 MCI or MMSE24-28 点 1695 名を分析
効果小:語流暢性 (前頭葉機能)
ペプチドホルモン 働き
BDNF
脳由来神経成長因子
神経細胞を成長させる シナプスを作る
IGF-1
インスリン様成長因子-1
神経細胞にブドウ糖を取り込ませる セロトニンを作らせる
BDNF受容体の数を増やす シナプスを強化する
VEGF
血管内皮成長因子
血管透過性を高める
血液−脳関門をこじ開ける FGF2
線維芽細胞成長因子2 シナプスを強化する
生田 哲:よみがえる脳.ソフトバンククリエイティブ、2010
これらは運動で産生される
運動で脳内に生成される物質
運動で脳内に生成される物質
1 日何歩
歩いてます?
1 日何歩
歩いてます?
自分か ら外出
誘われれ ば外出
外出し ない 60歳代 62.6% 28.8% 7.9%
70歳代 55.5% 30.4% 14.0%
80歳代 45.8% 25.6% 28.7%
健康日本21
目標 男性 : 7000 歩、女性 : 6000 歩 ( 1 日 1 時間)
内閣府:H16高齢者の日常生活に関する意識調査結果
まとめ 1 まとめ 1
・動物実験で、運動により BDNF 等の神経栄養因子が放 出され、海馬の神経細胞の新生、海馬体積の増加、記 憶力向上、アミロイドβに蓄積減少等の可能性あり。
・大規模な疫学研究結果より、中年期以降の、週 2 回以 上、 1 回 20-30 分以上、歩行より強い運動強度の運動の 実施が、認知症発症リスクを低下させる可能性あり。
・ヒトを対象とした介入研究でも、運動により認知機能の 向上や海馬体積が増加する可能性あり。
運動により
認知症の発症遅延 ( 発症予防 ) 効果が期待される
まとめ 2 まとめ 2
現状、運動で「認知機能低下を予防できる」可能性があるが
「認知症を予防できるかどうか」はまだ結論に至っていない。
運動による「認知機能低下予防」=「認知機能の低下を遅らせる」
⇒認知症の一番のリスク因子は加齢。どんなに運動をがんばっても 年を重ねれば、徐々に認知機能は低下し、認知症の発症率は高ま る。
運動により「認知機能低下を遅らせる」ことのメリット
例えば通常の生活を続けていると70歳で認知症を発症した人が、
運動等で生活を活発にし、80歳に発症を遅らせれば、認知症が重 度になる前に寿命を向かえることができる (健康寿命の延伸)
第 4 章
認知機能低下予防の実際
第 4 章
認知機能低下予防の実際
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対 象:愛知県大府市在住の65歳以上のMCI高齢者100名
(介入群50名、対照群50名) 評 価:認知機能、運動機能、画像検査
介 入:週2回、1回90分、6ヵ月間 (全40回)
1クラス対象者17名、PT1-2名、運動補助員4名 介入内容:多面的運動プログラム
ストレッチ、筋力トレーニング、有酸素運動、記憶や二重 課題などの認知課題を含めて脳活性化運動、行動変容技法による 運動の習慣化
38名/50名 (76%)が全介入の80%以上出席 対照群:健康講座を2回実施
鈴木隆夫:国立長寿医療研究センター認知症予防マニュアル
平成22年度 厚生労働省 介護予防実態調査分析支援事業
多面的運動プログラムによる
認知機能低下予防効果検証
平成22年度 厚生労働省 介護予防実態調査分析支援事業
多面的運動プログラムによる
認知機能低下予防効果検証
実践場面の図
・話しながら歩く
・引き算しながら歩く
例:110から3ずつ引き算をしながら歩く 例:7ずつ引く、6と8を順番に引く
・踏み台昇降をしながら、「脳を使う」
1人⇒計算をしたり、野菜の名前をあげる
2人⇒しりとり、2つ前の単語まで憶えて復唱
例: 「りんご、ゴリラ、ラッパ」→「ゴリラ、ラッパ、パパイヤ」
→「ラッパ、パパイヤ、ヤギ」・・・
認知課題を含めた脳活性化運動 認知課題を含めた脳活性化運動
鈴木隆雄:国立長寿医療研究センター認知症予防マニュアル
結果 結果
介入群で特に健忘型MCIの 該当者では
・全般的認知機能を維持
・記憶力向上
・脳の萎縮を予防
鈴木隆雄:認知症予防マニュアル
対 象:群馬県高崎市在住の65歳以上のSMC高齢者150名
(介入群75名、対照群75名) 評 価:認知機能、運動機能、生活機能
介 入:週1回、1回90分、3ヵ月間 (全12回)
1クラス対象者10-18名、健康運動指導士等2-3名
介入内容:運動習慣獲得を目的としたウォーキングプログラム
ストレッチ、レク、ウォーキング、行動変容技法による運 動の習慣化、グループ活動
出席率: 87.5%
対照群:健康講座を2回実施
SMC: subjective memory complaints
高崎市における認知機能低下の抑制効果に関する研究報告書
平成22年度 厚生労働省 介護予防実態調査分析支援事業
高崎市認知症予防プロジェクト
高崎市ひらめきウォーキング教室
平成22年度 厚生労働省 介護予防実態調査分析支援事業
高崎市認知症予防プロジェクト
高崎市ひらめきウォーキング教室
種類 具体例 見つける
課題
植物、人、場所等をみつける
・季節の花、野菜を見つける
・行き会った子どもを数える
・神社にお参りに行く
作る課題
芸術・趣味・創作活動
・俳句、短歌を作る
・花を摘み押し花にする
・スケッチ、絵手紙
・写真をとる
・山菜等をつんで料理を作る 交流課題
人と交わる
・すれ違った人にとびっきりの笑顔で挨拶する
・すれ違った方と世間話をする
ウォーキング課題の例 ウォーキング課題の例
目的を持って楽 しみながら歩く
継続
高崎市における認知機能低下の抑制効果に関する研究報告書
repeated measured ANCOVA 共変量:年齢、性別、教育年数
図4 I-ADL
11.0 11.5 12.0 12.5
前 後
得点 介入群
非介入群
全体では、認知機能(言語流暢性)、
生活機能、QOL、運動機能(TUG) が向上
MCI群では、うつ傾向(GDS)、認知 機能(TMT-B, 符号問題)が向上
生活機能(老研式活動能力指標)
p=0.010 p=0.041
p=0.001
言語流暢性
15 16 17 18
前 後
個数 介入群
非介入群
うつ傾向/GDS
2 3 4 5 6
前 後
項目数
介入群 非介入群
(MCI)
Maki Y, et al. J Am Geriatric Soc 60 (3); 505-510, 2012.
対象:茨城県利根町在住の65歳以上1888名を3年間追跡 介入:睡眠、栄養、運動
睡眠:夜間睡眠の改善、短時間の昼寝 (30分以内)
栄養:EPA、DHA、銀杏葉エキス、リコピンを含むサプリメント 1日2回、1回3粒
運動:1回1時間、月6回運動講座+ホームプログラム 1クラス50-70名 (フリフリクラブボランティア)
ボールやスカーフを用いた軽運動 相互マッサージ
筋力トレーニング
フリフリグッパー体操 (右図)
結果:記憶力、筋力、持久力、GDS (うつ気分)が改善
認知症移行率:介入群; 3.1%、非介入群; 4.3% 千葉県茂原市:http://www.city.mobara.chiba.jp /kenkou/hokeniinnkai.html
朝田 隆: Modern Physician 28 (10); 1490-1493, 2008.
認知症予防介入:利根プロジェクト
認知症予防介入:利根プロジェクト
対象:大分県宇佐市安心院町の65歳以上のMCI高齢者32名
(介入群18名、対照群14名) 介入:調理 (栄養指導含む)、レク、運動等の複合プログラム
1グループ8-10名+保健師+看護師 週1回、9:00-15:00
午前:会費集金、昼食の献立決定、買い物、昼食調理
午後:踏み台昇降、ケアビクス (スポーツインストラクター指導) 参加者が考えたレク (囲碁、ゲーム、トランプ、折り紙、連想 ゲーム、クロスワードパズル)
結果:介入群で記憶力、言語が有意に改善 脳血流SPECTにて、脳血流の改善
介入2年後:介入群16名が正常化 (89%)、対照群3名がAD発症 介入6年後:介入群2名 (11%)がADとVDへ転換
山田 達夫: Dementia Japan 25 (2), 112-119; 2011.
認知症予防介入:安心院プロジェクト
認知症予防介入:安心院プロジェクト
まとめ:運動による認知症予防のポイント まとめ:運動による認知症予防のポイント
・対象者が「できる」、「やってみたい」と思う
⇒適切な運動強度、頻度
⇒なじみの活動、役割
・小集団で行う
・主体性 ( 住民主導 ) と習慣化 ( 継続性 )
・グループの組織化と地域への普及
・結果評価の実施
・ファシリテーターやサポーター等のボランティアの育成
矢冨直美: 地域型認知症予防プログラム実践ガイド. 57-63, 中央法規出版, 2008.