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第 4 章

4.3 実験結果ならびに考察

4.3.1 試料の特性評価

original HA discの焼結温度と見かけ体積との関係を図25に示す。焼結温度の上昇に伴い、

円板の収縮率が増加した。これは、焼結により円板内部が緻密化されたことを示す。また、各 焼結温度におけるoriginal HA disc表面のSEM写真を図26に示す。

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図25 : 焼結温度と見かけ体積比との関係(未焼結の円板の見かけ体積を100%とした)

(a) (b)

(c)

図26 :未焼結(a)、1300 oC(b)、1400 oC(c)焼結後のoriginal HA discのSEM写真

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焼結温度の上昇に伴い、円板表面も緻密化されている様子が確認された。ここで、内部、

表面ともに緻密な円板ほど細胞実験に用いるには適しているが、HA は高温で焼結すると CaOなど他の結晶相が析出してしまう恐れがある[59][60]。

original HA discのXRDパターンを図27に示す。焼結前ならびに1300 oCで焼結した円板

からは、HAの回折パターンのみが得られた。一方、1400 oCで焼結した円板からは、HAの他 に CaO の回折パターンが得られた。この結果から、結晶相が変化しない最高の焼結温度は

1300 oCであることが分かった。しかし、HAを高温で焼結すると含有イオンが変化してしまう恐

れもある[59]。一方、original HA discのFT-IRスペクトルを図28に示す。未焼結の場合と比べ て、1300 oCで焼結した場合の方がOH-のピークが若干小さかったものの、両スペクトルの間で 大きな違いは見られなかった。以上の結果より、以降の実験では、結晶相や含有イオンに影 響がない範囲での最大焼結温度である1300 oCで作製した円板をoriginal HA discとして用い た。

次に、表面研磨後のHAならびに-Al2O3のoriginal discのSEM写真を図29に示す。SEM で観察する限りでは、両円板の表面形態に大きな違いは見られなかった。また、両円板の粗さ プロファイルを図30に、粗さプロファイルから算出した各表面粗さの値を表19に示す。粗さプ ロファイルを見る限りでは、両円板の粗さ曲線要素の平均長さは同程度であった。

図27 : original HA discのXRDパターン

(温度は焼結温度を示す)

図28 : original HA discのFT-IRスペクト ル(kは複素屈折率の虚数部、温度は焼結 温度を示す)

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加えて、Ra、Ry、Rzにおいても両円板の間で有意差は見られなかった。以上の結果より、本実 験においてoriginal HA discとoriginal -Al2O3 discとの表面形態ならびに表面粗さの違いを 考慮する必要はないと結論付けた。

(a) (b)

図29 : HA(a)ならびに-Al2O3(b)のoriginal discのSEM写真

(a) (b)

図30 : HA(a)ならびに-Al2O3(b)のoriginal discの粗さプロファイル

表19 : HA(a)ならびに-Al2O3(b)のoriginal discの表面粗さ. Raは算術平均粗さ、Ryは最 大高さ、Rzは十点平均粗さを示す(mean ± SE)

試料 Ra [m] Ry [m] Rz [m]

HA 2.35 ± 0.14 14.71 ± 1.69 6.61 ± 0.83

-Al2O3 2.35 ± 0.29 16.93 ± 3.12 7.54 ± 1.58

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