第 5 章 ヒューリスティック法による有用性評価
5.5 評価の考察
以下では、機能に関する評価、使いやすさに関する評価、そして、作業支援範囲に ついて考察し、最後に考察をまとめる。
5.5.1 機能に関する評価についての考察
まず、色分けによる CADデータの解体順序や切断禁止箇所はわかりやすく、その CADデータと実際の機器を重ねて表示することで、指示書に記載された平面図よりも 直感的に機器のマーキング箇所を把握できることがわかった。ただし、解体する順序 の番号や切断禁止の警告を対応するCADデータ付近に補足的に表示させることで、さ らに直感的でわかりやすくなると考えられる。一方、実際の環境では今回のCADデー タに登録されていなかった配管や足場などがあることで周囲の状況が複雑になる場合 がある。そのような障害物がユーザと解体対象の機器の間に存在する場合には、実際 の機器の映像にCADデータを重畳表示する際に、機器とCADデータを直感的に対応 付けることが困難であるとわかり、今後の課題として残された。
また、解体途中の機器が写った映像の上に半透明のCADデータを重ね合わせ、スタ イラスペンでCADデータを操作することで切断が済んだ箇所を3次元CADデータと して記録する方法は簡単であり、切断箇所も正確に記録できることがわかった。この 際、解体記録として手書きメモを添付できる機能があればさらに有用であると考えら れる。さらに、そのCADデータを後に参照できることは有効であることがわかった。
その際、CADデータを自由に移動・回転・拡大できることは有効であることが示され た。また、ふげん発電所において開発されているCADデータを自由に切断できる機 能を利用することでより自由度の高い進捗状況の記録を行うことができると考えられ、
今後、CADシステムによって解体の進捗状況が管理される際には有効な手法となると 考えられる。
5.5.2 使いやすさに関する評価についての考察
まず、デバイスは携帯性がよいことがわかった。一方、デバイスやそのディスプレイ が小さく画面が見づらいということがわかった。一般的にデバイスの大きさと携帯性 は相反するものであり、適切なバランスが必要である。また、バッテリーの使用時間(4 時間)に関しては作業内容や条件によるため一概には判断できないことがわかった。ま た、スタイラスペンによるCADデータの操作は簡単で応答性もよいことがわかった。
課題としては、画面の表示内容の変化に気づきにくいという点が挙げられる。例えば、
変化した部分を一時的に点滅させたり、文字による説明を施したりすることで改善で きると考えられる。また、カメラがデバイスの背面についているため、使用時には腕 を水平まで持ち上げる必要があり、長時間使用すると疲れることがわかった。これは、
カメラに角度をつけることで改善されると考えられる。
5.5.3 作業支援範囲についての考察
CADデータを用いて現場で解体順序を確認する機能は、将来的には、事前にCAD システム上で解体手順を立案し、それに沿って現場で作業を行っているかどうかを確 認するためのチェックリストのような使い方や初心者への解体作業の教育や訓練への応 用が有効である可能性がある。
一方、CADデータとして解体記録を残すことで報告資料の作成や外部へのPRに有 効に利用できることが期待される。また、解体全体に占める解体計画の立案にかかる 労力はかなり大きいため、 解体物のデータ(重量・材料・切断後の大きさなど)と共に 利用し、解体シミュレーションを実行する機能を実現すればさらに有効な支援法とな りえることがわかった。
5.5.4 考察のまとめ
今回の評価により、3次元CADデータによる切断箇所や解体禁止箇所の表示は紙面 上の平面図に比べて直感的でわかりやすいということがわかった。ただし、ユーザと 対象とする機器の間に配管や足場などの障害物がある場合、拡張現実感技術を用いて 実際の機器とCADデータを重ね合わせて表示する際に、機器とCADデータを直感的 に対応させにくいという課題が残された。これは、CADデータに対象とする機器だけ でなく、その周囲の配管や足場などを含めて表示させ、それをユーザが自由に部分的 に表示・非表示を選択できるようにすることで解決できる可能性がある。また、今回、
解体の対象とした機器に接続された配管は4本と比較的少なく簡単な構造であった。し かし、機器によっては多数の配管が接続されており、複雑な構造のものもある。その ような場合に機器とCADデータを重ね合わせて表示させると、機器やCADデータの 表示が見にくくなる可能性が指摘されたため、今後、実際に調査する必要がある。ま た、ユーザが機器に近づいて詳しく切断箇所を確認したい場合、ラインコードマーカ がカメラ画像から消えてしまいCADデータが表示できない状況があった。これは近距
離でのトラッキングのために小さなラインコードマーカを用いることで解決できると 考えられる。
また、3次元CADデータとして解体記録を残すことは有用であることが示された。
これに、ふげん発電所で開発されているCADデータを自由に切断できる機能を組み込 むことでさらに、自由度の高い記録が可能となる。この機能を応用することで解体に 関するノウハウの蓄積や初心者への事前教育、さらに報告資料の作成や外部へのPR等 に利用できる可能性があることがわかった。