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記述統計量と回帰モデルの推計結果

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 74-77)

7 分析結果

7.1 分析 1(仮説 1 の検証)

7.1.2 記述統計量と回帰モデルの推計結果

図表15のPanelAは,本分析で用いる各変数の記述統計量を示したものである。第5章

で述べた通り,IStSURPtはランク変数に変換したため,均等に分布している。また,利 益アナウンス日前のIRV(IRV-60-10,t)は,利益アナウンス日後のIRV(IRV+2+a,t)に比べて標準 偏差が極めて大きいため,より大きくばらついて分布していると推測できる。

図表15のPanelBは,変数間の相関係数を纏めたものである。対角線の左下がPearson

の相関係数,右上がSpearmanの相関係数を示している。まずは独立変数間の相関係数を確 認すると,どの変数間でも極めて低い値となっていることが分かる。したがって,分析に あたって,多重共線性の問題は発生してないと考えられる。

利益アナウンス日前後でのIRVの相関関係について目を向けると,IRV-60-10,tIRV+2

+10,tIRV+2+30,tでは,Pearsonの相関係数がそれぞれ0.1504,0.1748となっており,アナウ

ンス日前後でのIRV間の相関関係が強くないことが読み取れる。PanelAの記述統計量から,

利益アナウンス日前のIRV(IRV-60-10,t)が,利益アナウンス日後のIRV(IRV+2+a,t)よりも大き くばらついていることが読み取れたが,その影響が相関係数の低さに表れていると考える。

また,利益平準化の尺度(ISt)であるNT_ISとTZ_ISは,Pearsonの相関係数では0.7582,

Spearmanの相関係数で0.7577と,非常に強い正の相関を持っている。第5.1節で説明した

通り,これら2つの尺度は裁量的発生項目額をベースとして作成したものであり,相関係 数からも利益平準化の判別指標としての両者の近似性が確認できる。その一方でFOLS_IS

とLNW_ISは,Pearsonの相関係数で0.2745,Spearmanの相関係数で0.2748と,あまり強

い相関関係を持っていない。これら2つの尺度は,営業キャッシュ・フローをベースとし て作成したものであるため両者の間には類似性があると想定されたが,相関係数からは読 み取ることができない。

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図表●:記述統計量と相関マトリックス

図表15:記述統計量と相関マトリックス ) ここでは各変数の外れ値を除外せずに分析しの値を示している。

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図表16は,(33)式の回帰モデルを推定した結果である。PanelAは利益アナウンス日後 10日間のIRV(IRV+2+10,t)を,PanelBは利益アナウンス日後30日間のIRV(IRV+2+30,t)を従 属変数とした場合の推定結果を示している。なお,図表内の数値は重回帰分析における回 帰係数を,括弧内の数値は各回帰係数に対応するt値を,それぞれ示している。

図表16:(33)式による重回帰分析の結果

(注) 1) 図表内の数値は回帰係数,括弧内の数値はt値を意味している。

2) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%水準で統計的に有意であることを示している。(両側)

3) ここでは,各変数の外れ値を除外せずに分析を行った際の結果を示している。

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本分析では,中野・高須(2012)の回帰モデルをベースとして,仮説1「利益平準化の 程度が高い企業は,利益平準化の程度が低い企業よりも,利益アナウンス日後におけるIRV が小さい」の検証を試みる。したがって本研究では,利益平準化行動の代理変数であるISt

の回帰係数の符号に最も注目している。仮説1が正しいとすれば,コントロール変数を考 慮した上で,IStIRV+2+a,tとの間には負の相関が観測できる筈である。よって,図表16 ではIStの予測符号を負としている。なお,利益サプライズの程度が大きければ大きいほど 固有リターンも大きく変動すると考えられるため,SURPtの予測符号は正としている。

まず,裁量的発生項目額をベースとしたIS(NT_IS,t TZ_IS)は,2種類の従属変数(IRV+2

+10,tIRV+2+30,t)に対して1%水準で有意な負の値を示している。一方,営業キャッシュ・

フローをベースとしたISt(FLOS_IS,LNW_IS)は負の値を示したものの,どちらの従属 変数に対しても有意な値にならなかった。第5.1節でも述べた通り,営業キャッシュ・フ ローをベースとしたIStは実体的平準化の影響を受けている可能性が拭えないため,尺度と しての信頼性は相対的に低い。ゆえに,仮説1と概ね整合的な結果が得られたと考える40

しかし,ここで問題が1つある。8種類すべての組み合わせにおいて,モデルの説明力 が低い点である。IRV+2+10,tを従属変数とした場合の自由度調整済み決定係数を見てみると,

NT_ISで3.30%,TZ_ISで2.75%,FLOS_ISで3.15%,LNW_ISで2.75%の説明力しかない。

また,各変数のt値に目を向けると,切片のt値が他の独立変数のt値を大幅に上回ってい ることが分かる。これらの分析結果は,IRVの動きが極めて不規則であることを差し引い ても,(33)式で設定したコントロール変数が不十分であることを示している。そこで筆者 は,(33)式に新たなコントロール変数を加えることで回帰モデルの説明力をできるだけ高 め,利益平準化の程度とIRVとの純粋な関係について改めて判断を下すこととした。

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