• 検索結果がありません。

仮説の設定

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 52-55)

45

46

仮説1:利益平準化の程度が高い企業は,利益平準化の程度が低い企業よりも,利益アナ

ウンス日後におけるIRVが小さい

仮説1の検証では,利益平準化の程度と株価変動リスクとの純粋な関係性について把握 することが主要な目的であり,両者の間には負の関係が存在することを検証する。したが って,仮説検証の方法は,IRVを従属変数,利益平準化尺度を主たる独立変数として,様々 なコントロール変数を組み込んだ重回帰分析を採用する。後述するが,仮説1の検証にあ たっては,中野・高須(2012)による分析モデルを参考にしている。しかし,中野・高須

(2012)の研究対象はあくまでも資本市場参加者の情報解釈であるため,中野・高須(2012)

の分析モデルから仮説1の検証に資する要素を抽出し,分析を行う。

4.2 利益平準化行動と株主資本コストとの関係

仮説1では,利益平準化の程度と株価の変動リスクとの関係について検証する。これは,

利益平準化によって経営者の持つ私的情報が市場に伝達され,将来の予見可能性を高める ことで企業の株価変動リスクが引き下がる,という筆者の想定に基づいている。

この想定に従えば,利益平準化の程度と株主の期待リスクプレミアムとの関係について も考察することができる。仮に,利益平準化行動によって株式の変動リスクが低減される とするならば,株主が負うリスクも当然小さくなる。すると,株主が企業側に要求するリ スクプレミアム(期待リスクプレミアム)も小さくなるため,企業にとっての株主資本コ ストが小さくなることになる。以上を纏めると,経営者の利益平準化行動が株主資本コス トを圧縮する効果を有する,という仮説が導かれる。この仮説は,理論研究において提唱 されてきた利益平準化行動のリスク引き下げ効果やGraham et al.(2005),須田・花枝(2008)

によるサーベイ調査の結果とも整合的なものである。本研究では,様々な推計モデルを用 いて株主資本コストの推定を行い,以下の仮説の検証を行う。

仮説2:利益平準化の程度が高い企業は,利益平準化の程度が低い企業よりも,株主資本

コストが小さい

仮説1と同様に,仮説2の検証も利益平準化の程度と株主資本コストとの関係性につい て把握することが主要な目的であり,両者の間に負の関係が存在することを検証する。し

47

たがって,仮説の検証にあたっては,株主資本コストを従属変数,利益平準化尺度を主た る独立変数として,様々なコントロール変数を組み込んだ重回帰分析を採用する。後述す るが,仮説2の検証にあたっては,Francis et al.(2004)による分析モデルを採用している。

利益平準化行動が,株価変動リスクの低減を通じた株主資本コストの圧縮効果を有する 場合,利益の質の向上という点だけではなく,企業価値の創造という点においても非常に 大きな意義を持つこととなる。第3.3.1項でも取り上げたが,株主価値たる企業価値の評価 に際して,株主資本コストは割引率として用いられている。したがって,分母である株主 資本コストが小さくなれば,解である企業価値は大きくなるため,両者の間には負の関係 が存在する。つまり,経営者による報告利益の平準化が,株価変動リスクの引き下げを通 じて株主資本コストを圧縮する効果を有する場合,当該企業の企業価値を高めることに繋 がる,という結論が導かれるのである。

継続企業の原則に則れば,経営者の第一義的な役割は企業価値の創造に尽きる。したが って,技術的会計政策の下で経営者が報告利益を平準化させると,企業価値の創造に繋が る,というストーリーは非常に興味深い。

48

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 52-55)