• 検索結果がありません。

言葉以上のもの:オンラインの環境における 写真と文章の調和の重要性

ドキュメント内 ダイレクト・マーケティング研究 (ページ 30-42)

“More than Words: On the Importance of Pic-ture-Text  Congruence  in  the  Online  Envi-ronment”

( ,  24(1),  2010,  pp. 22-30)

Thomas J. L. van Rompay Peter W. de Vries Xaviera G. van Venrooij

 本稿は、オンラインの環境における写真と文 章の調和が、消費者の反応に与える影響につい て論じている。「情報処理の流暢性」に関する 最近の理論に基づくと、ウェブ上の写真的要素 と文章的要素によって創造される象徴的な意味 の調和は情報処理の流暢性を高め、購買態度の 形成を促進するとされている。象徴的な意味の 統合は入念な情報処理を必要とするため、本稿 では消費者の情報処理に反映される個人差の影 響について議論し、仮説を立てた。次に実験を 行い、被験者にオンラインのホテル予約サイト を評価してもらった。その際、「ホテルの外観 の写真」と「内容に関する記述」によって創造 される象徴的な意味が、調和している場合と調 和していない場合とを設定した。実験の結果か ら、写真と文章の調和は情報処理の流暢性を高 め、ホテルへの態度にポジティブな影響を与え ることが分かった。ただし、それは認知欲求度 の高い被験者のみに言えることだった。これら の結果は、ウェブ上の写真と文章の調和は消費 者の反応に影響を与えることを示し、オンライ ンの環境を慎重に考慮することの重要性を強調 している。

訳 ─── 加藤 祥子

目白大学社会学部専任講師

 消費者の感情的経験は、非常に大きな注目を集めている。例えば、Jin(2009)は3次元のヴァー チャル店舗で動画、アバター、製品の視覚化といったウェブサイト上の特徴を比較し、様相の豊 富さが消費者の評価や購買意図に与える影響について研究した。それによると、特に低関与の消 費者は様相の程度によって影響を受けやすいことが証明された。Finn  et  al.(2009)は、ウェブ サイトの視覚的訴求に加え、「次にどこをクリックすればよいのか」といったウェブサイトの明 瞭さも、サイトの評価に大きな影響を与えることを示している。消費者の感情的経験の重要性は、

いまだにオンライン上で買い物をすることにリスクを感じ躊躇している消費者がいるという発見

(Cho et al. 2006; Forsythe et al. 2006; Forsythe and Shi 2003)によって、さらに強調されている。

こうしたリスクは、オンライン上での購買意図にネガティブな影響を与えることが分かっている

(Forsythe et al. 2006)。このような発見は、ウェブサイトの知覚や消費者の選択の先行要因に対 する、研究者やオンライン上の売り手、ウェブ・デザイナーの注目をかなり高めた。オンライン 上の環境を慎重に考慮してデザインすることは、Featherman et al.(2006)や Finn et al.(2009)、

Jin(2009)などの先行研究の中でも、特に重要性が高いとされている。

 その際、ウェブサイトの要素が製品の評価にどのように影響を与えるかということを明確に理 解することが、最も重要であろう。過去の研究は、ウェブサイト上の視覚的訴求や美的要素など が消費者の製品評価に与える直接的な影響や、これらの要素がオンライン上で消費者の目的達成 をどのように助けるかということに焦点を当てたものがほとんどであるのに対し(例えば、Jin  2009; Finn et al. 2009)、最近の研究は、ウェブサイト上での製品の視覚化、サイトのレイアウト や色調といった要素も、象徴的意味を伝えることによって、消費者の選択に潜在的あるいは無意 識的に影響を与える可能性があることを示している(Valdez and Mehrabian 1994; Van Rompay  et al. 2005; Zhang et al. 2006)。

 また、オンラインの環境における複数の要素の様々な意味の間に、調和や斉合性があることが 重要であると立証されている(Moore et al. 2005; Shen and Chen 2007)。例えば Shen and Chen

(2007)は、ウェブサイトの主題に合致したバナー広告は、合致しないバナー広告よりも消費者 の好意的な態度を生じることを示した。小売店に関する研究でも、Mattila  and  Wirtz(2001)

は売り場の香りや BGM がその環境と調和している方が、調和しない場合よりも消費者は快適に 感じることを証明している。

 これらの研究結果は、消費者はオンライン上の環境をゲシュタルトのように(つまり、全体論 的に)知覚するということと、消費者の意思決定とは、オンライン上の要素が伝達する様々な意 味を統合する精緻化のプロセスの結果であるということを示唆している。特に興味深いのは、情 報処理の流暢性に関する最近の理論である(Reber  et  al.  2004;  Winkielman  and  Cacioppo  2001)。こうした提唱の核心は、消費者はオンライン上の情報をより流暢に処理できるほど、そ の情報への評価もよりポジティブになるということである。実際の店舗と同様に、オンライン上 の小売店は多くの異なった要素(例えば、色調、レイアウト、文章、画像)によって構成されて

おり、それらが象徴する意味は、消費者が意思決定を行うためには、情報処理されなければなら ない。その情報処理が比較的容易に行われれば、消費者の反応を得やすくなる。

 ウェブサイトは通常、製品の視覚化と説明といった視覚的特徴と文章から構成されるため、本 稿ではこれらの要素に関連する象徴的意味の適合または不適合に焦点を当てた。特に、ウェブサ イト上の製品の画像と説明によって伝達される意味が調和すると、調和しない場合よりも情報の 統合を促進し、情報処理の流暢性を高めることになると提言する。そして、情報処理の流暢性が 高まると、提示された製品やサービスに対する消費者の評価にポジティブな影響を与えると仮説 を立てた。この仮説を検証するために、ホテルの予約サイトを用いて製品の画像と説明を操作し、

実験を行った。

意味の調和と印象の形成

 マーケティング研究や消費者研究では、マーケティング的要素の複合によって表現される意味 の調和は、一般に製品やブランドの評価に先行する重要なものと考えられている(Erdem  and  Swait 2004; Van Rompay and Pruyn 2008)。例えば Van Rompay and Pruyn(2008)は、製品 のパッケージ上に書かれた文字の書体と製品の形状によって暗示される象徴的性質の調和が、ブ ランド知覚にポジティブな影響を与えることを示した。同様に Peracchio  and  Meyers-Levy

(2005)は、写真の志向性と広告のスローガンによって伝達される暗示的意味が調和すると、製 品への態度にポジティブな影響を与えることを示した。これに加え Childers and Jass(2002)は、

広告の中で訴求されるベネフィットは、広告に用いられる書体や画像、コピーによって暗示され る意味の間の斉合性が高まると、記憶されやすくなることを示した。

 意味の調和の影響に関する研究は多数あるにもかかわらず、情報の調和が消費者の反応に影響 を与えるプロセスについては、完全に理解されている状態にはほど遠い。また、ウェブサイト上 の言語的情報と視覚的情報によって伝達される暗示的意味の統合について研究したものは実質的 にはなく、例外的には広告研究で Peracchio  and  Meyers-Levy(2005)があるくらいである。広 告の領域では、調和の影響はユーモアやウィットに関連してときどき議論され、不調和は通常、

広告の視覚的部分の中の予期しない要素として扱われる。例えば Heckler  and  Childers(1992)

は、航空機の座席の快適さを強調した旅行の広告について説明している。座席に快適に座る人物 を描写するのが調和した状態と言えるが、代わりに人物を象に置き換えた調和しない状態を描写 することによって、座席が広いという快適さを強調して伝えることができた。このような「ユー モアに関連づけられた調和」の効果は、本稿で議論される「象徴的意味の不調和」とは区別され るべきものである。

情報処理の流暢性と情報の統合

 情報処理の流暢性の評価によれば、一般に簡単に処理される刺激はポジティブに評価され、好

意的な態度をもたらすとされている。Lee and Labroo(2004)はこの考えを拡張し、ある製品が 予測可能な文脈の中に提示され、より迅速に思い浮かべられると、消費者は製品に対してより好 意的な態度を持つようになることを示した。このような結果の根拠は、流暢な情報処理は精神生 理学の尺度でポジティブな経験とみなされる、という発見に結びつけられる(Reber  et  al.  2004; 

Winkielman and Cacioppo 2001)。ポジティブな経験はその後、手近な刺激に帰属され、ポジティ ブな評価を誘発する(Reber et al. 2004)。

 意味の調和もまた、情報処理の流暢性に影響を与える。例えば、オンライン上のショッピング サイトで、製品の説明などの文章と製品のサムネイルなどの画像によって様々な意味が暗示され る場面に遭遇すると、消費者は製品の質や適切性を評価するために、これらを統合して第一印象 を形成し、購買意思決定を行う。インターネット上で同じような製品やサービスを提供する多数 のウェブサイトに遭遇すると、消費者がそのサイトに見入るかどうかは、この第一印象とサイト の明瞭さによって決まると言ってよい。情報処理の流暢性はこの第一印象となる明瞭性を決定づ ける。ウェブサイト上の様々な要素によって暗示される情報が調和すると情報処理が容易にな り、明瞭な印象が形成される。

 上で述べたことに基づくと、製品に関する記述と製品の視覚化が調和的意味を暗示するような オンライン上のショッピングサイトは、情報処理がより簡単になるだろう。そして、流暢な情報 処理は、提供される製品やサービスへの消費者の態度にポジティブな影響を与えることが期待さ れる。

 しかし、消費者が情報処理に従事する程度やそれを楽しむ程度、または情報の精緻化の程度に は大きな差異があることを、多くの研究が示している(Cacioppo  and  Petty  1982)。多様な意味 の統合は念入りな情報処理を必要とするため、起こりうる影響はおそらく認知欲求度の低い消費 者よりも高い消費者のほうがより明白に現れるだろう。Peracchio and Meyers-Levy(2005)は、

広告の中の「写真の志向性とスローガン」の調和が製品の知覚に与えるポジティブな影響は、認 知欲求度の高い消費者のみに明白であることを示した。

 一方、不調和は情報処理を促進するという代替的仮説もある(Maheswaran  and  Chaiken  1991; Meyers-Levy et al. 1994)。つまり不調和は、通常は表面的な情報処理を行うような認知欲 求度の低い消費者に、その情報を十分に評価するためにはより念入りに処理する必要があるとい う合図を送っているといえる。

 このような見解に基づくと、不調和は消費者の認知欲求度にかかわらず、より念入りな情報処 理を促進することによって意思決定に影響を与えるといえる。これらの対照的な仮説を検証する ために、本研究では次のような実験を行った。

ドキュメント内 ダイレクト・マーケティング研究 (ページ 30-42)