5.2.1 ファインディングチャートの作成と比較星の選定
はじめに、目的星 (KT Eri) の位置を確認するための星図 (ファインディングチャー ト) を作成する (Fig. 25)。星図はインターネット上にアーカイブされている DSS*5の データを用いた。また測光観測を行う際、同視野に入れる比較星(C)を選んでおく必要
*5Digitized Sky Survey. アメリカのSpace Telescope Science Institute (STScI)によるプロジェクト.
がある。これは後に差測光を行う時に使用するためである(詳しくは6.4章)。本研究では Tycho−2星表*6を参照し、比較星として
TYC.5325.1544.1 (B = 10.81, V = 10.24, R = 9.95, B−V = 0.57) を選んだ。
(KT Eri)
(C)
N
E
Fig. 25: ファインディングチャート. 視野角は30'×30'. 画像中央の星が目的星 (KT Eri)、加えて測光時に使用した比較星(C)も示す. Data from DSS.
5.2.2 CCDカメラの冷却
観測開始前にはCCDカメラを冷却する必要がある。CCDは装置の電源を入れた時 点で、熱的に発生する暗電流が各ピクセルに少しずつ溜まる性質がある。これをダークノ イズと呼び、その量は温度に強く依存し、一般にCCDチップを冷却することで、ダーク ノイズを抑えることができる。液体窒素を用いれば−70 まで冷却が可能で、CCDの ダークノイズは皆無に等しくなると言われている。しかし本研究で用いた冷却CCDカメ ラの冷却方式はペルチェ素子による一段電子冷却であり、スペック上外気温から−25 まで冷却可能となっている。さらに冷却が安定するまで数時間を要し、そのため観測開始 の数時間前から冷却を開始する必要がある。
ペルチェ素子とは電気を流すことで片面が冷え、反対側の面は熱くなるという性質を 持った半導体である。ペルチェ素子で低温を作り出すには、放熱側の熱を逃がす必要があ
*6Hipparcos衛星が観測した位置星表. 前身であるTycho星表の改訂版であり、限界等級約11等、約250 万個の恒星について記載されている.
り、冷却CCDカメラには冷却用のフィンやファンが組み込まれている。
5.2.3 天体の導入と撮像
天体の導入は、天文台が設置されている岡山理科大学 21号館屋上のずく下の階の制 御室から、ほとんどの操作を遠隔で行うことが出来る。測光システム、分光システムの天 体導入に用いたソフトは、ともにタカハシ社のTelescope Tracer 2000である。手順は以 下の通りである。
1. 導入前に赤道儀の電源を入れ、パソコン上で導入ソフトTelescope Tracer 2000を立
ち上げ、RS232Cケーブルを通じて赤道儀がパソコンとリンクしているかを確認す
る。さらに望遠鏡が天頂に向いていることを確認した上で、Telescope Tracer 2000 にて天頂設定を行う。
2. 次に目的天体の位置座標である赤経・赤緯を確認し、目的天体から近く(経験的には
〜10度以内)、3等級より明るい恒星(基準星)を導入する。これは一回の導入では確 実にCCD画面上の視野内へと目的天体を導くことが出来ないため、そこで近くの天 体を経由することで、導入精度を高めることが出来る。また現在、測光システムには ファインダーにビデオカメラ(50mm, F2.8)が用いられており(視野角約9.6度, 約7 等級まで写る)、制御室からモニターで確認しながら基準星を導入することが出来る。
3. 基準星がCCD画面上の視野内に納めることが出来たら、Telescope Tracer 2000の 望遠鏡が向いている位置情報を更新し、目的天体へと導入を行う。
4. 測光観測の場合は目的星と比較星が同一視野に収まっていることを確認し、各フィル ターで撮像を開始する。分光観測の場合は、目的天体を分光器のスリット部分に天体 を導いた上で撮像を開始する。撮像には両システムともに、SBIG社のCCDOPSと いうソフトを用いている。