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親育て支援(2)

-親育て支援の効果-

本章は、4節からなり、第1節では「問題の所在と目的」を述べ、第2節では、「A幼稚 園に通う園児を持つ母親の子育て意識の変容」、第3節では「B幼稚園に通う園児を持つ 母親の子育て意識の変容」として、それぞれ異なる内容の親育て支援を実施している二つ の幼児教育施設における母親の子育て意識について 2 年間にわたり質問紙調査を実施し、

親育て支援を利用することよって生じる母親の子育て意識の変容を「子育て意識尺度注1)」 を使用して分析する。さらに第 4 節では、第 2 節と第 3 節で得られた母親の子育て意識の 変容を親育て支援の効果と捉え、親育て支援の効果を検証する。

第 1 節 問題の所在と目的

第3章において、異なる幼児教育保育施設である幼稚園・保育所(園)・認定こども園に おける母親の子育て意識を「子育て意識尺度注1)」を使用して分析することによって、幼児 教育保育施設に通う園児の母親の属性である就業形態、子どもの数、核家族、祖父母同居な どの家庭環境の違いや園児が利用している幼児教育保育施設の親育て支援内容の違いが、

母親の子育て意識に影響していることを明らかにした。

本章では、専業主婦が多いという家庭環境が似通った幼児教育施設である二つの幼稚園 を対象とすることによって、親育て支援内容の違いにより生じるそれぞれの母親の子育て 意識の変容を明らかにし、親育て支援の効果を考察することを目的とする。

そのため第3章で取り上げたA幼稚園とB幼稚園において、2年間にわたる質問紙調査 を実施し、それぞれの分析から親育て支援の効果を検証する。

第 2 節 A幼稚園に通う園児を持つ母親の子育て意識の変容 1.親育て支援の実施内容

本園は2006(平成18)年度から3 年間、「幼児の健やかな心身の成長・発達を育むための 保護者の保育力を高める『親育てプログラム』とその評価システムの開発による、幼稚園の 教育課程及び地域子育ての在り方についての研究開発」という文部科学省教育研究開発指 定を受けている。その研究の概要は、「①3~5歳児の保護者に対する、幼稚園での『親育て プログラム』を開発し、親の育ちが幼児自身の変化につながることを明らかにする。②健や

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かな子どもの育ちを促す、親のあり方について、具体的な方策を探る。③地域の保護者の保 育力が周辺に広がりをみせるものとなるプログラムを提唱する。」であり、子育て支援事業 としては、「①保護者の自主的な保育への参加“きっずくらぶ”。②保育参観、保育参加。③ 行事等への自主的な参加。④子育て講座の開催。⑤子育て相談・子育て懇話会の実施。⑥ア ンケート調査の実施と各家庭へのフィードバック」の六つを掲げている。

2.親育て支援を利用する前と利用した後の子育て意識の変容(2006(平成18)年度)

(1)調査目的:幼稚園における親育て支援を利用することによる母親の子育て意識の変容 を明らかにする。

(2)調査方法

調査対象:A幼稚園に通う園児を持つ母親144名を対象とした。

1)実施期間:第一回目は2006(平成18)年7月、第二回目は2007(平成19)年3月に実施 した。

2)手続き:A幼稚園で実施された調査結果を使用させていただいた。

3)調査内容:第一回目、第二回目ともに、第3章 第2節 2.(4)調査内容と同様の 項目に加え、第二回目に「親育てプログラム」の利用の有無を尋ねた。

(3)調査の結果

1)配布数と回答数、有効回答数、有効回答率

配布数はそれぞれ144名であり、調査への同意を得られた回答者数は第一回目123名、

第二回目122名であり、有効回答数(有効回答率)は第一回目120名(83.3%)、第二回目107 名(74.3%)であった。なお、第二回目の有効回答者は、すべての有効回答者が「親育てプロ グラム」を利用していた。

2)子育て意識の比較結果

第一回目と第二回目で得られたデータを「よくある」を4点、「ときどきある」を3点、「ほ とんどない」を2点、「ない」を1点と得点化し、「子育て意識尺度注1)」で求められた六つの 下位尺度得点を次のように求めた。それは各下位尺度の項目得点を合計し、項目数で割り、

平均値を算出した。さらに第一回目と第二回目の下位尺度得点と標準偏差を求め、各下位尺 度得点をt検定した。結果は表2-2-1とおりである。

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表2-2-1 2006.7(N=120)と2007.3(N=107)の比較とt検定結果(A幼稚園)

2006.7実施 2007.3実施

下位尺度 平均 標準偏差 平均 標準偏差 t検定 第 1 因子 育児負担 2.72 .60 2.71 .59 n.s.

第 2 因子 育児肯定 3.27 .36 3.37 .33 n.s.

第 3 因子 育児相談 3.07 .74 3.07 .61 n.s.

第 4 因子 友人の支え 2.08 .72 2.21 .69 n.s.

第 5 因子 親族の支え 2.51 .88 2.50 .86 n.s.

第 6 因子 育児責任 2.38 .69 2.43 .58 n.s.

3)「親育てプログラム」の利用状況

このプログラムの利用状況は、「第3章 第3節 3 (4)親育て支援の利用状況から」を 参照のこと。

(4)考察

表2-2-1より、「2006(平成18)年7月から2007(平成19)年3月への子育て意識の変容」

について下位尺度で有意差は出なかったが、項目「A03子育てに余裕がなくなり、子どもに あたってしまう」に有意差の傾向(t(225)=1.68, P<.10)が見られ、平均得点が低くなって いる。このことは、子育てに余裕が出きたことによって子どもに当たることが少なくなった ことが示唆され、これは母親の子育て意識の肯定的方向への効果と推察される。さらに母親 が子育てに余裕が持てるようになったことに園が実施している親育て支援の影響が示唆さ れるのは、第二回目の回答者全員が、親育て支援策である「親育てプログラム」を利用して いることからうかがえるからである。

また項目「A42 預かる人は専門知識を持っていなくてもいいと思う」に顕著な有意差(t (225)=2.03,<.05)が見られ、得点が高くなっている。これは、子育て中の母親同士が専門家 でなくても子どもを預けたり預かったりすることを肯定的に捉えていることが示唆され、

さらに親育て支援の利用状況を踏まえると親育て支援を利用する機会が増えることにより、

母親同士の園での出会いが信頼関係につながり、このような効果が見られたのではないか と推察される。

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3.親育て支援を利用する前と利用した後の子育て意識の変容(2007(平成19)年度)

(1)調査目的:A幼稚園における親育て支援を利用することによる母親の子育て意識の変 容を明らかにする。

(2)調査方法

1)調査対象:A幼稚園に通う園児を持つ母親150名を対象とした。

2)実施期間:第一回目は2007(平成19)年6月、第二回目は2007(平成19)年12月に実施 した。

3)手続き:2006(平成18)年度と同じ要領であり、A幼稚園で実施された調査結果を使 用させていただいた。

4)調査内容:第一回目と第二回目とも2006(平成18)年度と同様の項目に加え、第二回目 に「親育てプログラム」の利用の有無を尋ね、さらに対応のあるデータとするため第一回 目と第二回目の調査用紙に印を担任に記入していただいた。

(3)調査の結果

1)配布数と回答数、有効回答数、有効回答率

配布数はそれぞれ150 名であり、調査への同意を得られた回答者は第一回目114名、第 二回目100 名であり、有効回答数(有効回答率)は第一回目110名(73.3%)、第二回目98 名(65.3%)であった。なお対応した有効回答数は 60 名であり、第二回目の対応した有効回 答者のすべてが「親育てプログラム」の利用者であった。

2)「親育てプログラム」の利用状況

「保育参観」については 94%、「保育参加」については、88%、「弁当参加」については

97%の利用であった。支援になったかどうかについては、図2-3-1、図2-3-2、図2-3-3、の

とおりである。また「子育てひろば」については80%が利用し、多い人は8回と回答して いる。「すこやか子育て相談」の利用者は11名であり、多い人は3回利用していた。「にこ にこ子育て講座」は75%が利用しており、4回利用した人は16名であった。

これらのプログラムをまったく利用しなかった人は11名であり、89%の人が何かの支援 策を利用していた。

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1.支援になった 64名(70%) 2.支援にならなかった 6名( 6%) 3.無回答 22名(24%)

図2-3-1 保育参観による支援の有無

図2-3-1よ「保育参観」を利用した人の70%が支援になったと回答している。

1.支援になった 63名(73%) 2.支援にならなかった 3名( 3%) 3.無回答 20名(24%)

図2-3-2 保育参加による支援の有無

図2-3-2より、「保育参加」を利用した人の73%が支援になったと回答している。

1.支援になった 78名(82%) 2.支援にならなかった 3名( 3%) 3.無回答 14名(15%)

図2-3-3 弁当参加による支援の有無

図2-3-3より、「弁当参加」を利用した人の82%が支援になったと回答している。

保育参加

1 73%

2 3%

3 24%

弁当参加

1 82%

2 3%

3 15%

保育参観

1 70%

2 6%

3 24%

89 3)子育て意識の比較結果

2006 年度同様に、第一回目と第二回目で得られたデータを「よくある」を 4 点、「ときど きある」を3点、「ほとんどない」を2点、「ない」を1点と得点化し、「子育て意識尺度注1)」 で求められた六つの下位尺度得点を次のように求めた。それは各下位尺度の項目得点を合 計し、項目数で割り、平均値を算出した。さらに第一回目と第二回目の下位尺度得点と標準 偏差を求め、各下位尺度得点をt検定したところ、各下位尺度に有意差はなかった。

次に対応ある 60 名の有効回答データを「子育て意識尺度注1)」における下位尺度得点と 標準偏差を求め、第一回目と第二回目の各下位尺度得点をt検定した。その結果は表2-3-1 のとおりであり、「第2因子 育児肯定」(t(59)=2.11,P<.05)と「第3因子 育児相談」

(t(59)=2.21,P<.05)に有意差があった。

表2-3-1 2007.6と2007.12(N= 60)の比較とt検定結果(A幼稚園)

2007.6実施 2007.12実施

下位尺度 平均 標準偏差 平均 標準偏差 t検定 第 1 因子 育児負担 2.86 .58 2.84 .60 n.s.

第 2 因子 育児肯定 3.31 .36 3.40 .34 t(59)=2.11*

第 3 因子 育児相談 3.15 .53 2.94 .74 t(59)= 2.21*

第 4 因子 友人の支え 2.04 .73 2.09 .66 n.s.

第 5 因子 親族の支え 2.41 .84 2.38 .82 n.s.

第 6 因子 育児責任 2.47 .55 2.49 .57 n.s.

*:P <.05

さらに「第 2 因子 育児肯定」の変容について詳細に分析するため、下位尺度得点を三つ の区分に分けた。その分け方は、2007(平成19)年6月の時点での「第2因子 育児肯定」の 平均得点の中央値=「3.40」と平均値「3.31」を求め、それを基準に「3.40」を中間得点区 分とし、それ未満を低い得点区分、残りを高い得点区分とした。その支援利用前(2007(平 成19)年6月)と支援利用後(2007(平成19)年12月)のそれぞれの「第2因子 育児肯定」

の下位尺度得点をt検定した結果が表 2-3-2 のとおりである。それによると、支援利用前

(2007(平成19)年6月)の時点で低い得点区分が、支援利用後(2007(平成19)年12月)

の時点で顕著な有意差(t(24)=3.19,P<.01)で、得点が高くなっていることが分かった。