(df=3,836) 因子 育児経験 ①0~4年(N=307) ②5~7年(N=306) ④10年以上(N=120) F
M SD M SD M SD M SD ①-②①-③①-④②-③②-④③-④
第1因子 自己の強さ 3.530 .5884 3.585 .6151 3.788 .6588 3.680 .5131 2.421
第2因子 生き甲斐・存在感 4.469 .4452 4.462 .4352 4.507 .4397 4.182 .5617 2.641 * ** * * 第3因子 協調性 4.081 .5803 4.110 .6243 4.253 .5577 4.000 .6211 1.073
第4因子 自己制御 3.894 .6021 3.913 .5578 4.074 .4963 3.880 .6122 .968 第5因子 自分の親への感謝 4.324 .6435 4.195 .7342 4.318 .6854 4.237 .6946 .598 第6因子 子どもに対する責任感 4.282 .5977 4.276 .5911 4.152 .6927 4.000 .6383 1.794 第7因子 柔軟さ 4.000 .6806 3.817 .5506 3.671 .6832 3.671 .5836 .864
グループ間 有意差検定 (df=3,837)
③ひとり親(N=33)
因子 家族形態 ①核家族(N=748) ②両親同居(N=41) ④ひとり親同居(N=19) F
115
表3-5-6より、「生き甲斐・存在感」の 1 因子で有意な差が認められた。「①核家族」「② 両親親族同居」「③ひとり親」では「生き甲斐・存在感」において、「④ひとり親親族同居」
より有意に得点が高かった。
(8) 近所(車で10~15分位)に実家の有無の場合
近所(車で10~15分位)に実家が「あり(有)」「なし(無)」に分け、有無のちがいによ って、下位尺度得点にどのような影響があるかを見た。近所に実家の有無別の各因子におけ る下位尺度得点を t 検定した結果は、表3-5-7に示した。
表3-5-7 近所に実家の有無のちがいによる下位尺度得点の有意差検定結果
** P <.01 * P <.05
表3-5-7より、「自己の強さ」「協調性」「柔軟さ」の 3 因子で有意な差があることが分 かった。「実家あり」では、「自己の強さ」「協調性」「柔軟さ」において、「実家なし」より 有意に得点が高かった。
(9) 近所(車で10~15分位)に友人の有無の場合
近所(車で10~15分位)に友人が「あり(有)」「なし(無)」に分け、その有無のちがい が、下位尺度得点にどのように影響しているかを見た。近所に友人の有無別の各因子におけ る下位尺度得点を t 検定した結果は、表3-5-8に示した。
M SD M SD
第1因子 自己の強さ 3.603 .611 3.493 .571 2.68 **
第2因子 生き甲斐・存在感 4.492 .438 4.438 .457 1.74 第3因子 協調性 4.132 .570 4.046 .591 2.14 * 第4因子 自己制御 3.934 .587 3.872 .604 2.14 第5因子 自分の親への感謝 4.335 .638 4.297 .662 .85 第6因子 子どもに対する責任感 4.259 .633 4.280 .574 .51 第7因子 柔軟さ 3.816 .686 3.716 .658 2.15 *
(df=839) 因子 実家 実家あり(N=403) 実家なし(N=438) t
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表3-5-8 近所に友人の有無のちがいによる下位尺度得点の有意差検定結果
*** P <. 001 ** P <.01
表3-5-8より、すべての因子で有意な差が認められた。「友人あり」では、「自己の強さ」
「協調性」「自己制御」「自分の親への感謝」「子どもに対する責任感」「柔軟さ」の6因子に おいて、「友人なし」より有意に得点が高かった。
第4節 考察
1.親育て尺度について
子どもを持ち親になることによって育つ心理的発達を「親育ち」とし、幼稚園、保育園、
認定こども園に在籍する園児の母親に、先行研究を参考にして 7 因子と各因子に 8 項目を 想定した質問紙調査を実施し、841 名より回答を得た。その結果「自己の強さ」「生き甲斐・
存在感」「協調性」「自己制御」「自分の親への感謝」「子どもに対する責任感(主に健康への 関心)」「柔軟さ」の 7 因子が抽出され、下位尺度の計 51 項目によって構成された尺度を
「親育ち尺度」と命名した。そして先行研究より想定された「視野の広さ」8 項目のうち 1 項目は「自己の強さ」へ、2 項目は「生き甲斐・存在感」へ、2 項目は「協調性」へ、1 項目 は「子どもに対する責任感」への項目になり、2 項目は因子負荷量が|.35|であり、|.40|に 満たないため除いている。さらに先行研究の柏木他(1994)や及川(2005)、高橋他(2009)の
「視野の広さ」に対応する「Ⅳ-29 協力することの大切さが分かるようになった」「Ⅳ-36 他人への気遣いができるようになった」の 2 項目と、柏木他(1994)の「自己制御」に対応す る「Ⅳ-28 人との和を大事にするようになった」「Ⅳ-21 他人の立場や気持ちをくみとるよ うになった」「Ⅳ- 7 他人の迷惑にならないように心がけるようになった」「Ⅳ-42 自分の 分をわきまえるようになった」の4項目の計6項目に対して、本研究では内容から「協調 性」と命名した。このことから、現代の子育て環境の中で就学前の子どもを持つ親が「子ど
M SD M SD
第1因子 自己の強さ 3.598 .582 3.368 .595 4.72 ***
第2因子 生き甲斐・存在感 3.598 .433 4.348 .481 3.85 ***
第3因子 協調性 4.158 .546 3.846 .638 6.11 ***
第4因子 自己制御 3.947 .570 3.747 .658 3.80 ***
第5因子 自分の親への感謝 4.359 .623 4.163 .719 3.41 ***
第6因子 子どもに対する責任感 4.305 .590 4.149 .633 3.04 **
第7因子 柔軟さ 3.812 .652 3.597 .717 3.71 ***
因子 友人 友人あり(N=403) 友人なし(N=438) t (df=839)
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もを持つことによる親育ち(心理的発達)」として、先行研究の「視野の広さ」と「自己制 御」から成り立つ「協調性」が育つと捉えていることが分かった。
この「親育ち尺度」の下位尺度得点が一番高かったのは「生き甲斐・存在感」であり、次 いで「自分の親への感謝」「子どもに対する責任感」「協調性」「自己制御」「柔軟性」「自 己の強さ」の順であった。この「生き甲斐・存在感」からは、就学前の子どもを持つ親にと っては子どもが親の生き方の中心にあることがうかがえ、「自分の親への感謝」からは、森 本恵他(2000)が母親の影響について「母親との関係が女性の生き方に関連していることが 言える」や「母親の生き方から受ける感情により母性意識が形成されることが考えられる10)」 としていることにつながるものがあると考察された。
2.「親育ち尺度」と属性別分析について
「親育ち尺度」と回答者の属性別分析を実施した結果、施設のちがいによる分析より、幼 稚園が「子どもに対する責任感」において、保育園と認定こども園より有意に得点が高かっ た。このことについて、幼稚園児の母親は専業主婦率(73%)が高いことから、子どもに関わ る時間が多いことがうかがえ、「子どもに対する責任感」が育っていると推察される。一方 保育園が「自己の強さ」「自己制御」「柔軟さ」において、幼稚園より有意に得点が高かった ことから、保育園児の母親は、就業率(98%)も高いため、育児と就業の両立をさせれば「自 己の強さ」「自己制御」「柔軟さ」の 3 因子が育っていると推察される。
学歴のちがいの分析から、「自己の強さ」「協調性」「自己制御」「柔軟さ」の 4 因子で有意 な差があり、「中学・高校卒」がこれらの 4 因子において、他のすべての区分より有意に得 点が高かった。しかし、この結果は一概に学歴のちがいだけから生じていると見るのでなく、
佐藤淑子が「父親と母親の職業生活及び家族生活と家事・育児行動11)」において、「高学歴 無職」と「高学歴有職」、「低学歴無職」、「低学歴有職」のグループに分けて有意差を求めて いることを考慮すると、学歴別就業形態別といった他の属性との分析を合わせて判断する 必要性があると考えられる。
就業形態のちがいの分析から、「常勤」「非常勤」は「自己の強さ」において、「専業主婦」
より有意に得点が高かったことから、就業することによって、「自己の強さ」が育つと推察 される。一方非就業の「専業主婦」では「子どもに対する責任感」において、「常勤」より 有意に得点が高かった。これは、施設のちがいによる分析で幼稚園が保育園より「子どもに 対する責任感」が高かった理由に、「専業主婦」率の高さが影響していることが示唆された ように、子どもと向き合う時間の長さが責任感を増大させていると推察される。また「非常
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勤」では「柔軟さ」において、「専業主婦」より有意に得点が高かったことから、職場や子 どもを通じた対人関係では「柔軟さ」が育つことが考えられる。
子ども数のちがいの分析から、「子ども3人以上」では、「自己の強さ」「協調性」におい て「子ども1人」と「子ども2人」より有意に得点が高かったことから、子どもを多く育て る中で、「自己の強さ」「協調性」「柔軟さ」が育っていると推察される。
育児経験年数のちがいの分析から「10 年以上」では、「自己の強さ」「協調性」「自己制御」
「子どもに対する責任感」の 4 因子のすべてにおいて、「0~4 年」より有意に得点が高かっ たことをはじめ、「5~7 年」とでは「自己の強さ」「生き甲斐・存在感」「柔軟さ」において、
「8~9 年」とでは「自己の強さ」「生き甲斐・存在感」「子どもに対する責任感」「柔軟さ」
において、有意に得点が高かった。このことから育児経験年数と、有意差がなかった母親の 年齢を併せ考慮すると、親育ちは母親の年齢に関係なく、育児経験年数の長さとともに親が 育っていくものと考えられる。
近所に実家の有無のちがいの分析から、「実家あり」では「自己の強さ」「協調性」「柔軟 さ」において、「実家なし」より有意に得点が高かったことから、実家が近くにある場合は、
実家との関係性を含め、対人関係において「自己の強さ」「協調性」「柔軟さ」が育つと推察 される。
近所に友人の有無のちがいの分析から、「生き甲斐・存在感」以外の、6 因子「自己の強 さ」「協調性」「自己制御」「自分の親への感謝」「子どもに対する責任感」「柔軟さ」におい て、「友人なし」より「友人あり」が、有意に得点が高かったことから、親育ちの得点が高 い母親には友人が多いことなどが明らかになった。
以上、本研究においては、841 名もの回答者に基づき、親育ち尺度を構成した。この構成 は多いデータ数と質問項目の精査により、群のデータ数が多く属性の分析に安定した結果 が得られた。そして親育ちの心理的発達は、保育施設の特徴のちがいや母親の就業形態のち がいなどで異なることや、親育ちには母親の年齢よりも育児経験年数や友人の存在が影響 していることが明らかになった。
第5節 まとめと今後の課題
本章は、「子ども・子育て新制度」に謳われている「子育て支援の質の向上を進める」こ とに着目し、「親育ち」の視点を含む質問紙調査を実施した。その結果、7 因子からなる「親 育ち尺度」を提示するとともに、回答者の属性別分析によるちがいを明らかにした。今後の
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課題として、学歴の相違で必要と考えられた分析をはじめ、今回分析に至らなかった「パー トナーの属性と育児関与に関する項目」から、父親の育児関与が「親育ち」にどのような影 響を与え、さらに「親育ち」が母親の養育態度にどのような影響があるのかなどを明らかに し、「親が育つ効果的支援内容」を提言したい。
【引用文献】
1) 大豆生田啓友 2016 「地方発の保育・子育て支援の新たな可能性」『発達』146号
ミネルヴァ書房 p.2
2) 小池由佳 2003 「子育て支援」の二つの側面~「少子化対策」と「親育ち」~ 『県
立新潟女子短期大学研究紀要』 第40号 pp.33-35
3) 山縣文治 2002 『現代保育論』 ミネルヴァ書房 p.38
4) 山縣文治 2000 子どもを見る目は変わったか 『発達』84号 ミネルヴァ書房 p.70
5) 汐見稔幸 2000 無免許運転?の親を励ます 『発達』84号 ミネルヴァ書房 p.72
6) 大日向雅美 2003 子育て支援は「親育ち支援」『そだちの科学(1)』日本評論社 p.129
7) 柏木恵子・若松素子 1994 「親となる」ことによる人格発達:生涯発達的視点から親
を研究する試み 『発達心理学研究』 第 5 巻 第 1 号 pp.72-83
8) 及川裕子 2005 親性に関する研究―乳幼児の親性の因子構造と背景要因の検討―
『埼玉県立大学紀要』Vol.7 p.2
9) 永井知子・富田喜代子・朴信永・寺薗さおり・加藤孝士 2015 親育ちに影響を与える
要因の検討(1)―親育ちの構成要因の検討―『日本保育学会第68回大会要旨集』p.99
10) 森本恵・中嶋由香里・山地健二 2000 大学生女子の結婚、出産、育児および就業に関
する意識調査 『高知医科大学紀要』第 16 号 p.9
11) 佐藤淑子 2012 父親と母親の職業生活及び家族生活と家事・育児行動 『鎌倉女子大
学紀要』第 19 号 p.31