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V. 研究課題 2: 閉経後中高齢女性における習慣的な有酸素性運動が

5. 要約

本課題では, 閉経後中高齢女性において, 血漿Klotho濃度と有酸素性運動能力の関 係を横断的に検討した. その結果, 有酸素性運動能力と血漿Klotho濃度に関連がある ことが示された. すなわち, 本課題の結果より, 習慣的な有酸素性運動が血漿 Klotho 濃度を増加させる可能性が考えられる.

iii. 研究課題2-2: 有酸素性運動トレーニングが血漿Klotho濃度に及ぼす影響

1. 目的

課題2-1において, 血漿Klotho濃度が有酸素性運動能力と関連があることが示され, 習慣的な有酸素性の身体活動が血漿 Klotho 濃度に影響を与えている可能性が考えら れる. そこで, 研究課題 2-2 では, 閉経後中高齢女性における有酸素性運動トレーニ ングが血漿Klotho濃度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.

2. 方法 2. 1. 被験者

健康な閉経後中高齢女性19名を対象とした. 心血管疾患の既往歴のある者, 測定値 に影響を与える健康状態の者 (風邪, 怪我, 花粉症など), 測定条件を満たしていない 者 (測定前48時間以内に激しい運動を行った者, 測定前12時間以内に食事を摂取し た者) は除外した. また, すべての被験者は喫煙習慣がなく, ホルモン療法を受けて いない者であった. すべての被験者に実験内容および手順を説明し, 文書による同意 を得た. なお, 本研究は筑波大学の研究倫理委員会に諮り, 承認を得た上で実施した.

2. 2. 介入方法

12 週間の有酸素性運動を行った. 自転車運動およびウォーキングを中心とした有 酸素性運動を筑波大学および自宅にて週 3 日以上行った. 運動強度および時間は, 最 大心拍数の60%, 30分間から開始し, 徐々に最大心拍数の70-80%, 40-60分と強度およ び時間を増やした. 本研究では, 中高齢女性を対象とした先行研究において, 有酸素

性運動能力および動脈伸展性の増大が認められた運動プログラムを用いた (Miyaki et

al., 2012). なお, 被験者には, 介入前の食習慣を変えないように指示した.

2. 3. 測定項目および測定方法

研究課題2-1と同様の測定を行った. いずれの項目も介入前後に測定を行った.

統計処理はSPSS 21 (SPSS Inc.) を用いた. 測定データは平均値 ± 標準誤差で示し た. 介入前後の平均値の比較には, 対応のある t 検定を用いた. 関連性の検討には,

Pearsonの相関係数および偏相関係数を用いた. 統計学的有意水準は5%とした.

3. 結果

被験者の身体的特性は表2-3に示した. 平成24年度の厚生労働省の国民健康・栄養

調査では60代女性のBMIは平均22.8 kg/m2であり, 介入前の値と比較すると, 本検討

の被験者は比較的 BMI が高い集団であった. また, 60 代女性の総コレステロール, LDLコレステロールの平均値は, それぞれ215 mg/dL, 126 mg/dLであり, 本検討の被 験者は総コレステロール, LDLコレステロールが比較的高い集団であった. 12週間の 有酸素性運動トレーニング介入後に有酸素性運動能力は有意に増大した (P < 0.05).

また, BMI, 総コレステロール, HDLコレステロール, LDLコレステロール, グルコー スは介入後に有意に減少した (いずれもP < 0.01). 被験者の血行力学的特性を表2-4 に示す. 国民健康・栄養調査における60代女性の平均値 (収縮期血圧, 134 mmHg; 拡 張期血圧, 80 mmHg) と比較して, 収縮期血圧・拡張期血圧が比較的低い集団であった.

介入前後の血圧に有意差は認められなかったが, 心拍数は有意に低下した (P < 0.01).

介入後に血漿Klotho濃度は有意に増加した (P < 0.05; 図3-1). 介入前後における有酸 素性運動能力の変化量と血漿 Klotho 濃度の変化量には単相関分析では有意な相関関 係が認められなかったが (R = 0.105, P = 0.677), 偏相関分析により年齢, BMI, 血圧で 補正したところ, 有意な正の相関関係が認められた (β = 0.578, P < 0.05; 図3-3).

表2-3. 被験者の身体的特性

測定項目 介入前 介入後

n 19

年齢, 歳 61 ± 1

身長, cm 153.7 ± 1.3

体重, kg 55.3 ± 1.9 54.2 ± 1.6**

BMI, kg/m2 23.4 ± 0.7 22.9 ± 0.6**

総コレステロール, mg/dL 232 ± 6 220 ± 6**

HDLコレステロール, mg/dL 63 ± 3 58 ± 3**

LDLコレステロール, mg/dL 145 ± 6 133 ± 7**

中性脂肪, mg/dL 113 ± 20 116 ± 14

グルコース, mg/dL 94 ± 1 92 ± 1**

換気性作業閾値, mL/min/kg 11.8 ± 0.5 15.1 ± 0.5**

平均値 ± 標準誤差.

**, P < 0.01. 介入前との間に有意差あり.

表2-4. 被験者の血行力学的特性

測定項目 介入前 介入後

上腕収縮期血圧, mmHg 122 ± 4 120 ± 4 上腕平均血圧, mmHg 96 ± 4 92 ± 3 上腕拡張期血圧, mmHg 74 ± 3 72 ± 3 心拍数, bpm 61 ± 2 57 ± 1**

平均値 ± 標準誤差.

**, P < 0.01. 介入前との間に有意差あり.

350 400 450 500

Before After

K loth o , pg /mL

P < 0.05

3-2. Klotho .

± .

10 15 20 25 30

2 3 4 5 6

Klotho, pg/mL

VO2 at VT , mL/min/kg

3-3. Klotho

. , BMI, .

R = 0.105, P = 0.677 β = 0.578, P < 0.05

4. 考察

本課題では, 閉経後中高齢女性における 12 週間の有酸素性運動トレーニングが血

漿Klotho濃度に及ぼす影響を検討した. その結果, 閉経後中高齢女性において, 12週

間の有酸素性運動トレーニングにより血漿Klotho濃度が増加した.

先行研究において, 高齢者や Klotho 発現低下マウスにおける筋力と分泌 Klotho の 関連から, 加齢に伴う骨格筋量低下の要因として分泌Klothoは注目されていた. また, 研究課題2-1において, 閉経後中高齢女性における血漿Klotho濃度と有酸素性運動能 力の関連が示されたことから, 血漿 Klotho 濃度の低下が有酸素性運動能力の低下に 関連する可能性も考えられる. 本検討により, 閉経後中高齢女性において, 有酸素性 運動トレーニングが血漿 Klotho 濃度を増加させることが明らかになった. したがっ て, Klothoは骨格筋系を介して運動機能に影響するが, 逆に, 運動も Klothoに影響を 与える可能性が示された.

これまでに, 血中GH濃度の増加が血中Klotho濃度を増加させる可能性が示唆され ている (Sze et al., 2012). また, 中高齢者において, 日常的にランニングを行っている 人は運動習慣のない人に比べて, 安静時の血清GH濃度が高いことが報告されている (Hurel et al., 1999). さらに, マウスへの Angiotensin II 投与は, 腎臓における Klotho mRNAとタンパクの発現を低下させる (Mitani et al., 2002). また, 2型糖尿病患者に Angiotensin II type I receptor (AT1R) のブロッカーを投与すると, 血漿Klotho濃度が増 加することも報告されている (Lim et al., 2013). さらに, ラットにおける10週間の水 泳運動により腎臓におけるAT1R発現は低下する (Ciampone et al., 2011). これらのこ とから, 有酸素性運動トレーニングによるGHの分泌増加やAT1R発現抑制などによ

り血漿Klotho濃度が増加した可能性が考えられる.

5. 要約

本課題では, 閉経後中高齢女性において, 12週間の有酸素性運動トレーニングが血

漿Klotho濃度に与える影響を検討した. その結果, 12週間の有酸素性運動トレーニン

グにより, 血漿Klotho濃度が増加することが示された.

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