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複数の希土類共添加タンタル酸化物薄膜の作製 と評価

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第4章 複 数 の 希 土 類 共 添 加 タ ン タ ル 酸 化 物 薄 膜 の 作 製

- 44 - スパッタ条件

Er2O3タブレット枚数 [枚] 3 Eu2O3タブレット枚数 [枚] 1

RF 電力 [W] 200

Ar ガス流量 [sccm] 15

アニール条件

時間 [min] 20

温度 [℃] 700, 800, 900, 1000

雰囲気 空気中

表 4-1 Er:Eu:TaOX薄膜の作製条件

Er 濃度 Eu 濃度 薄膜中の濃度 (mol%) 5.980 2.659 表 4-2 Er:Eu:TaOX薄膜中のEr,Eu濃度

図 4-1 Er:Eu:TaOX薄膜のPL測定結果

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図 4-2 Er:Eu:TaOX薄膜のXRD測定結果

4-3 Ce と Er 共添加タンタル酸化物薄膜の作製と評価

本節では発光が確認できたErとできなかったCeを共添加した試料の作製を行い、評価 を行った。Ceはテルビウム(Tb)と組み合わせることで、ピーク波長の長波長側へのシフト に加え、発光強度を増加させる増感剤としての役割を果たす報告がされている[4-1]。Ceが 他の元素、又は母材との組み合わせでも同じように働くのか確かめるために実験を行った。

作製は表4-3の条件に従う。

図4-3がPL測定結果になる。900℃でアニールした試料からのみ、550nm、670nm、850nm 付近にピークが出ていることが確認できた。また、最も大きい550nm付近のピークも

Er:TaOX薄膜に比べて、約30倍と非常に大きいピークとなっていた。その比較を図4-4に

示す。比較用のEr:TaOX薄膜は表4-4の条件にて作製を行った。ピークシフトは起きなか ったが、期待していた増感剤としての役割をCeイオンが果たしていると考えられる。

発光強度が強くなった原因を探るため、XRDにて結晶性の評価を行った。その結果を図

4-5に示す。900℃でアニールした試料より複数のピークが確認できた。PL測定で発光が確

認された試料も900℃でアニールした試料であったことから、発光と結晶性に関係があると 言えるだろう。データベースに照らし合わせた結果、六方晶のTa2O5であると思われる[4-2]。

この結果より、Ce:Er:TaOX薄膜ではタンタルの結晶性が重要だと言える。また、Ce:Er:TaOX

(0 0 3)

(2 0 0)

(2 0 3)

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薄膜の定性分析を行い、結果を表4-5にまとめた。Ce,Erの2種類の希土類が薄膜に添加し ていることが確認できた。Er:TaOXにCeを加えることは発光強度の増大に有効だと言える。

スパッタ条件

CeO2タブレット枚数 [枚] 1 Er2O3タブレット枚数 [枚] 2

RF 電力 [W] 200

Ar ガス流量 [sccm] 15

アニール条件

時間 [min] 20

温度 [℃] 600, 700, 800, 900

雰囲気 空気中

表 4-3 Ce:Er:TaOX薄膜の作製条件

スパッタ条件

Er2O3タブレット枚数 [枚] 3 RF 電力 [W] 200 Ar ガス流量 [sccm] 15

アニール条件

時間 [min] 20

温度 [℃] 900

雰囲気 空気中

表 4-4 Er:TaOX薄膜の作製条件

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図 4-3 Ce:Er:TaOX薄膜のPL測定結果

図 4-4 発光強度の比較

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図 4-5 Ce:Er:TaOX薄膜のXRD測定結果

Ce 濃度 Er 濃度

薄膜中の濃度 (mol%) 3.350 1.607 表 4-5 Ce:Er:TaOX薄膜の定性分析結果

4-4 Ce と Eu 共添加タンタル酸化物薄膜の作製と評価

ErとCeを共添加したCe:Er:TaOX薄膜でEr3+由来の発光がCeイオンによって増大する ことがわかった。その結果を受け、本節ではEr以外の希土類と組み合わせたときに同じよ うに発光が増大するのか確認するため、第2章で発光が確認されているEu:TaOX薄膜にCe を加え確かめることにした。試料作製条件は表4-6の通りである。

初めにPL測定にて発光特性の評価を行った。図4-6がその結果である。900℃でアニー ルした試料より、波長600, 620, 700nm付近にピークが確認できた。第2章の結果と比較 すると、Eu3+由来の発光と思われる。第2章のEu:TaOX薄膜では波長620nm付近の発光 強度が最も強かった。しかし、今回のCe:Eu:TaOX薄膜では波長700nm付近の発光強度が 最も強い結果となっている。その比較図を図4-7にまとめた。比較用の試料は図2-10より、

900℃でアニールした試料を使用した。第2章のEu:TaOXに比べると全体の発光強度は大

幅に低下していることが見て取れる。発光強度の低下はEu3+のもつエネルギー準位が交差 (0 0 3) (2 0 0)

(2 0 3)

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緩和を起こしやすいこと[4-1]が影響したこと、またCeイオンによるエネルギー移動によっ て、熱緩和が増えたのではないかと考えた。また、Ceを共添加したことでピーク波長が

620nmから700nmにシフトしている。つまり、CeとEuを共添加すると前節のCe:Er:TaOX

薄膜とは違い波長にも影響することが判明した。また、第2章Eu:TaOX薄膜では発光強度 の大小はあったものの、アニール温度に関わらず全ての試料から発光が確認できた。一方、

Ce:Eu:TaOX薄膜では900℃でアニールした試料でのみ発光していた。

今回も前節と同様に発光と結晶性が関係しているのではないかと考え、XRDにて結晶性 の評価を行った。その結果が図4-8である。900℃でアニールした試料から複数のピークが 確認された。データベースと照らし合わせた結果、六方晶のTa2O5ではないかと思われる

[4-2]。一方、800℃以下でアニールした試料はほぼピークが無く、結晶性は確認できなかっ

た。第2章のEu:TaOX薄膜では発光と結晶性は結び付けられなかったが、今回の結果では

結晶性と発光に関係があると考えられる。このことから、Ceイオンを仲介した共鳴エネル ギー移動が起きているのではないかと思われる。前節と合わせ、Ceを共添加することは薄 膜に大きな影響を与えることが伺える。

表4-7にCe:Eu:TaOX薄膜の定性分析の結果をまとめた。表4-7より、薄膜中にCeと

Euが添加されていることが確認できた。この結果からも薄膜中のCeの存在が発光特性に 影響を与えていると考えられる。

スパッタ条件

CeO2タブレット枚数 [枚] 2 Eu2O3タブレット枚数 [枚] 1

RF 電力 [W] 200

Ar ガス流量 [sccm] 15

アニール条件

時間 [min] 20

温度 [℃] 600, 700, 800, 900

雰囲気 空気中

表 4-6 Ce:Eu:TaOX薄膜の作製条件

Ce 濃度 Eu 濃度

薄膜中の濃度 (mol%) 2.808 1.533 表 4-7 Ce:Eu:TaOX薄膜の定性分析結果

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図 4-6 Ce:Eu:TaOX薄膜のPL測定結果

図 4-7 発光強度の比較

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図 4-8 Ce:Eu:TaOX薄膜のXRD測定結果

4-5 Ce と Tm 共添加タンタル酸化物薄膜の作製と評価

前節ではCeを添加したことで発光強度が下がってしまった。しかし、Ce:Er:TaOXのよ うに組み合わせ次第では有利に働く場合もある。本節ではさらにその可能性を探るため、

CeとTmを共添加したタンタル酸化物(Ce:Tm:TaOX)薄膜を作製し、評価を行った。表4-8 の条件に従い作製した。

作製した試料のPL測定を行い、図4-9にまとめた。測定結果より、900℃以上でアニー ルした試料から、波長800nm付近にピークが確認できた。第3章図3-4より、Tm3+由来 の発光と思われる。一方、800℃以下でアニールした試料からは発光が確認できなかった。

図4-10にTm:TaOX薄膜との比較を載せた。尚、比較に使用したTm:TaOX薄膜は第3章の

表3-2のアニール温度900℃の試料である。図4-10より、Tm:TaOX薄膜に比べ、Ce:Tm:TaOX

薄膜の発光強度は約40倍に増大している。今回の結果もCe:Er:TaOX薄膜と同じようにCe イオンの増感剤としての効果によるものと思われる。

試料の結晶構造を調べるためにXRDによる測定を行った。図4-11にその結果を示す。

この結果より、アニール温度800℃以下の試料では非結晶であると考えられる。一方、PL 測定で発光が確認されたアニール温度900℃以上の試料では斜方晶のTa2O5と思われるピ ークが確認された[4-3]。この結果より、発光にはTaOXの結晶性が関わっていると考えられ る。また、薄膜中の希土類の濃度を調べるために定性分析を行った。その結果を表4-9に示

(0 0 3) (2 0 0)

(2 0 3)

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す。薄膜中にCe,Tmが共に含まれることが確認できた。このことから波長800nm付近の 発光はTm3+由来と言えるだろう。また、Ceイオンによって強度が増大していることも同 じく言えるだろう。

スパッタ条件

CeO2タブレット枚数 [枚] 1 Tm2O3タブレット枚数 [枚] 1

RF 電力 [W] 200

Ar ガス流量 [sccm] 15

アニール条件

時間 [min] 20

温度 [℃] 700, 800, 900, 1000

雰囲気 空気中

表 4-8 Ce:Tm:TaOX薄膜の作製条件

Ce 濃度 Tm 濃度

薄膜中の濃度 (mol%) 1.263 1.020 表 4-9 Ce:Tm:TaOX薄膜の定性分析結果

図 4-9 Ce:Tm:TaOX薄膜のPL測定結果

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図 4-10 発光強度比較

図 4-11 Ce:Tm:TaOX薄膜のXRD測定結果 (0 1 0)

(4 1 1)

(0 1 2)

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4-6 Ce,Er と Eu 共添加タンタル酸化物薄膜の作製と評価

本章4-2にて、ErとEuの2種類を共添加し、黄色に発光する試料の作製を試みた。し かし、Eu3+由来の赤色発光がEr3+由来の緑色発光に比べて強かったため、期待していた黄 色発光は得られなかった。本章4-3にてCeを加えた試料からEr3+由来の波長550nmの緑 色発光が増大されたことを確認した。また、4-4ではCeを加えたことで逆にEu3+由来の発 光が弱くなることが判明した。これらの結果より、緑色発光の強度を改善し、黄色発光の 試料が作製できるのではないかと考え、CeとErとEuの3種類の希土類を同時に添加し たセリウム・エルビウム・ユウロピウム添加タンタル酸化物(Ce:Er:Eu:TaOX)薄膜の作製と 評価を行った。

試料は表4-10の条件に従い作製した。PL測定の結果を図4-12にまとめた。Er:Eu:TaOX

薄膜の測定結果である図4-1に比べて波長550nm付近のピークが改善しているのがわかる。

図4-1では波長620nm付近の発光が最も強かったが、図4-12では波長550nm付近のピー

クが最も強くなっている。また、肉眼でも黄色の発光を確認した。アニール温度依存性は これまで同様、アニール温度800℃以下の試料では発光が確認できなかった。しかし、

1000℃でアニールした試料からはアニール温度900℃に比べて非常に弱いピークしか確認

できなかった。この結果の検証を行うべくXRDにて結晶性の評価を行い、図4-13にまと めた。アニール温度800℃以下の試料にはピークがほぼなく、非結晶だと思われる。アニー

ル温度900℃以上の試料からは複数のピークが確認できた。最も発光強度が強かった900℃

の試料では六方晶のTa2O5が確認された[4-2]。また、1000℃の試料では六方晶のCeTa7O19

が確認された[4-4]。Ceが結晶化した1000℃の試料では発光強度が弱くなっていることか ら、発光には六方晶または斜方晶のTa2O5が必須と思われるが、Ceを結晶化させないのが 大切と見られる。Ceが結晶化することでイオン化し難くなり、エネルギー移動効率が低下 して発光強度の低下に繋がるのではないかと考えた。

表4-11に定性分析の結果をまとめた。Ce,Er,Euの3種類の希土類は薄膜中に含まれてい ることが確認できた。

スパッタ条件

CeO2タブレット枚数 [枚] 1 Er2O3タブレット枚数 [枚] 1 Eu2O3タブレット枚数 [枚] 1 RF 電力 [W] 200 Ar ガス流量 [sccm] 15

アニール条件

時間 [min] 20

温度 [℃] 700, 800, 900, 1000

雰囲気 空気中

表 4-10 Ce:Er:Eu:TaOX薄膜の作製条件

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