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結晶性と発光には直接の関係性がないのではないかと思われる。

第4章では複数の希土類を組み合わせ、TaOX薄膜に添加した試料を作製した。

Er:Eu:TaOX薄膜の作製では、波長 550nm 付近にピークを持つ Er:TaOX薄膜と、波長

620nm付近にピークを持つEu:TaOX薄膜を組み合わせたとき、どのような発光特性を示す

のか探った。900℃でアニールした試料から波長550nm と620nm にピークを確認した。

しかし、波長550nm付近のピークは620nm付近のピークと大きな差があることがわかっ た。また、波長620nm付近のピークもEu:TaOX薄膜のピークに比べると低くなっていた。

XRDでの結晶性評価では900℃以上でピークが確認されていることから、ErとEuを組み 合わせても結晶成長に大きな影響を与えないことがわかった。

CeとErを共添加したCe:Er:TaOX薄膜では、Er3+由来と思われる波長550nm付近に強 いピークを確認し、Erのみの試料と比べると約30倍の発光強度を得ることができた。

一方、CeとEuを共添加したCe:Eu:TaOX薄膜ではEuのみの試料と比べて発光強度が 低下した。しかし、波長700nm付近のピークが620nm付近のピークよりも強くなってお り、長波長側へのピークシフトが起きることが判明した。

CeとTmを共添加したCe:Tm:TaOX薄膜ではTm3+由来と思われる波長800nm付近に 強いピークが見られた。Ceを添加していないTm:TaOX薄膜と比較してみて約40倍の発光 強度を得ることができた。

更に複数の希土類を組み合わせることで、どのような発光特性を示すのか探るべく、Ce とErとEuを共添加したCe:Er:Eu:TaOX薄膜の作製をした。900℃以上の温度でアニール した試料からEr3+由来と思われる波長550nmとEu3+由来と思われる波長620nmにピーク を確認した。確認できる発光波長はEr:Eu:TaOX薄膜と同じであったが、波長550nm付近 のピークは改善されており、波長620nm以上の発光強度を記録した。また、肉眼でも2つ の波長が組み合わさったことで黄色に発光している様子が観察できた。

これらの試料をXRDにて結晶性の評価を行ったところ、Ceを組み合わせた試料はどれ も結晶性を有している900℃以上の試料にて強い発光があることがわかった。このことから、

結晶性と発光に強い関係があると考えられる。

第5章では希土類以外を添加したことで、どのような発光特性を示すのか探った。

Cr:TaOX薄膜では発光が確認できなかった。XRDにて結晶性評価を行ったところ、結晶

性が確認できるのは800℃以上の試料で、希土類添加TaOXに比べ低温で結晶性が表れてい た。先行研究を参考にCr添加量の調整を行うことで、発光が期待できる。

Cu:TaOX薄膜では 600℃と低い温度でアニールした試料と、900℃以上でアニールした

試料から波長450nm 付近に強い発光が確認できた。XRD の結果では700℃以上で結晶性 が表れていが、薄膜の結晶化を問わず発光が確認できている現段階では関係性については 不明である。今後、更に条件を詰めた上での実験が必要となるだろう。

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謝辞

本修士論文を作成するにあたり、この 3 年間の研究に取り組む中で数多くの方のお力添 えを頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。

指導教員の三浦健太准教授にはこの様な興味深く素晴らしいテーマを与えて頂いたこと、

また研究を行う上で必要な設備の提供と共に助言をしてくださったことに心より感謝を申 し上げます。

花泉修教授には実験を行う際の注意点、結果からわかることや課題・問題点など丁寧で 的確な対応で研究を充実したものにして頂き誠にありがとうございます。

宮崎卓幸准教授には、お忙しい中本論文の審査をして頂き誠にありがとうございました。

野口克也技術専門職員には持ち前の幅広い知識をもって研究室の様々な設備において丁 寧かつ的確なサポートをして頂き、研究を円滑に進めることができたことに大変感謝をし ております。

加田渉助教には大所帯の研究室をまとめて頂いた上に、生活面まで支えて頂き大変感謝 をしております。

修士1年の横田佑也氏、学部4年のホセイン・ゾバエ氏には、研究に際して真摯に取り 組むだけでなく、様々な意見を交わし研究に励むことができたこと、そして研究室での生 活においても親身に接して頂き楽しい日々を送ることができたことに大変感謝しておりま す。特に横田氏には、私が不在の際の研究を進めてくれたこと、また、研究内容について より深い議論ができたことに深く感謝しております。

修士 2 年の方々には些細なことでも相談に乗って下さり、お互いを励ましあうことで充 実した研究生活を過ごせたことに感謝しております。また、修士1年生と学部4年生の方々 も親しく接して頂き楽しく日々を送ることができたことに大変感謝しております。

最後に、私を支えてくださった両親と皆様にもう一度感謝の意を表し謝辞とさせて頂き ます。

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参考文献

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[1-2] 光劣化しない革新的アモルファスシリコン太陽電池の作製をめざして

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