2 SCMビジネスモデルの他業種への適応
2.4 シミュレーション・モデル
2.4.1 製配販 3 層モデル
2.4.1.1 SCMモデルの設定
製配販(製造業、卸売業、小売業)の流通 3 層について、図 2-20に示す簡易モデルを ベースとした。
l 生産量は、消費需要量と連動はしておらず、製造業の計画値による。
l 製配販それぞれで在庫管理を行っている。
2.4.1.2 シナリオの定義
シミュレーションは、2年間の設定、小売業からの発注は週次を想定している。
図 2-20 製配販3層の全体モデル(As-Is)
メーカー
卸
小売業
アパ出荷検品
小売入荷検品 0h
S.小売在庫量 = S.小売在庫量 + S.アパ出荷量 S.アパ出荷量 = 0
アパ発注 0s 縫製注文受付
1h
S.縫製注文受付回数 = S.縫製注文受付回数+1 S.縫製受注量 = S.縫製受注量+S.アパ発注量
S.縫製トータル受注量 = S.縫製トータル受注量 + S.アパ発注量 生産計画
縫製出荷
S.縫製出荷回数 = S.縫製出荷回数 +1 縫製在庫管理
2h
S.縫製注文受付回数 = 0
アパ入荷検品 2h
S.アパ入荷量 = S.縫製出荷量
S.アパ在庫量 = S.アパ在庫量+ S.アパ入荷量 S.アパ入荷量 = 0
小売発注 2h
FAX FAX
発注ロット:定数
定期発注 (週次)
発注量確率変数 生産
定量発注
発注量設定
小売在庫管理
店頭対応
(消費需要)
S.消費需要量 = Floor( 消費需要量() * 季節変動(Months( ElapsedTime())) ) S.トータル需要量 = S.トータル需要量 + S.消費需要量
販売/売上 在庫補充/店
頭陳列 アパ在庫管理
(1) 製造業の生産
生産業務については以下を設定。
l 原則ラインをフル稼働する(定期的に同量の生産量がある)。
l 計画値の変更は行わない。生産計画値が生産量である。
l 計画値は、経験値として仮定。
部門 1 開始 生産計画
固定
S.縫製生産量 = S.縫製生産計画値 S.縫製生産計画値 = 250
図 2-21 生産プロセス(サブプロセス)
(2) 卸売業の在庫管理
在庫管理業務については以下を設定。
l 小売業からの発注に対して、全量対応できない場合は保有量のみ納品する。
l 卸売業在庫ゼロの際に、欠品回数カウントする。
部門 1
開始 発注量
分の在 庫あり
発注分 はない が少し ある No
在庫ゼロ
S.欠品回数 = S.欠品回数+1 S.アパ受注量 = S.小売発注量
S.アパ未出荷受注量 = S.アパ未出荷受注量 + S.アパ受注量 No
全量引当
S.アパ在庫量 = S.アパ在庫量 ‑ S.小売発注量 S.アパ即時出荷量 = S.小売発注量
Yes
ある分だけ引 当て出荷
S.アパ即時出荷量 = S.アパ在庫量 S.アパ在庫量 = 0
S.アパ受注量 = S.小売発注量 ‑ S.アパ即時出荷量
S.アパ未出荷受注量 = S.アパ未出荷受注量 + S.アパ受注量 Yes
図 2-22 在庫管理プロセス(サブプロセス)
(3) 卸売業の発注管理
発注管理業務については以下を設定。
l 不定期不定量発注。
l 安全在庫を下回った際に製造業に発注。
l 発注量は、小売業からの受注量に応じて変動(発注ロット数単位で受注量を下回らないように設定)。
l 小売業からの受注量がない場合は、安全在庫量の不足分のみ発注ロット数単位で発注する。
図 2-23 発注管理プロセス(サブプロセス)
部門 1
開始 在庫<安全在
庫 安全在庫量の
設定
S.アパ安全在庫量 = S.アパ週次平均出庫量 *(S.アパリードタイム‑1)
発注
S.アパ発注量 = ( Floor(S.アパ受注量/ S.アパ発注ロット数)+1 )
* S.アパ発注ロット数
発注なし No
Yes 受注量
>0 発注(安全在
庫分)
S.アパ発注量 = (Floor((S.アパ安全在庫量
‑ S.アパ在庫量)/ S.アパ発注ロット数)+1)
* S.アパ発注ロット数 No
部門 1 Yes
開始 在庫<安全在
庫 安全在庫量の
設定
S.アパ安全在庫量 = S.アパ週次平均出庫量 *(S.アパリードタイム‑1)
発注
S.アパ発注量 = ( Floor(S.アパ受注量/ S.アパ発注ロット数)+1 )
* S.アパ発注ロット数
発注なし No
Yes 受注量
>0 発注(安全在
庫分)
S.アパ発注量 = (Floor((S.アパ安全在庫量
‑ S.アパ在庫量)/ S.アパ発注ロット数)+1)
* S.アパ発注ロット数 No
Yes
(4) 小売業在庫管理
発注管理業務については以下を設定。
l 安全在庫量は経験値。一定量。
l 発注量は、発注ロット単位(一定量)。
部門 1
開始 安全在庫量の
設定
S.小売安全在庫量 = 40
在庫<安全在
庫 発注
S.小売発注量 = ( Floor(S.小売販売実績/ S.小売発注ロット数)+1 )
* S.小売発注ロット数
発注なし
S.小売発注量 = 0 No
Yes
在庫量計算
S.小売在庫量 = S.小売在庫量 ‑ S.小売販売実績
図 2-24 在庫管理プロセス(サブプロセス)
(5) 小売業販売管理(消費需要量)
販売管理業務については以下を設定。
l 店頭在庫<消費需要量の際に欠品カウント。
l 消費需要量がゼロ以上の際に販売実績とする。
部門 1
開始 店頭在
費需要量庫>消 売上実績
S.小売販売実績 = S.消費需要量
欠品カウント
S.小売販売実績 = S.小売在庫量 No
Yes 消費需
要量>0
売上なし S.小売販売実績 = 0 No
Yes
図 2-25 販売管理プロセス(サブプロセス)
2.4.1.3 消費需要量の設定
消費需要量は、シミュレータのジェネレータ機能によって発生させる。ここでは 、三つ のパターンで実施した。
(1) ユーザ定義
消費需要量のトランザクションは、ユーザ定義関数で発生させることができる。消 費需要量として、次の式を設定した。
消費需要量 = Floor( 消費需要量() * 季節変動(Months( ElapsedTime())) )
小売業
小売在庫量
消費需要量
シミュレーション番号2
0 20 40 60 80 100
図 2-26 季節変動を考慮した消費需要量の例
図 2-26の横軸は時間軸であり、シミュレート設定期間の 2 年間(104 週)を表し ている。
■季節変動関数
l 1年目と2 年目はほぼ相似の形で表現した。
l 2年目は、1年目にくらべ消費需要量が相対的に減少している。
図 2-27 季節変動関数の例
■消費需要量
l 消費需要量は、40〜80の量の間でランダムに発生させた。
図 2-28 ランダム変数関数の例
(2) 正規分布
消費需要量のトランザクショ ンを正規分布によるものとして、次の式を設定した。
消費需要量 = Floor(NormDist( S.平均販売量, S.店舗売上偏差)) S.平均販売量=40
S.店舗売上偏差=20
小売業
小売在庫量
消費需要量
シミュレーション番号3
‑20
‑40 0 20 40 60 80 100
図 2-29 正規関数による消費需要量変動
図 2-29で、消費需要量がマイナスになっている時期は、消費がゼロであったこと を意味している。この数値は、売上偏差の設定によって異なってくる(当然 のことな がら、平均販売量にも起因する)。
(3) ポアソン分布
消費需要量のトランザクションをポアソン分布によるものとして、次の式を設定し た。
消費需要量 = Floor( PoissonDist( S.平均販売量) ) S.平均販売量=40
ポアソン分布は二項分布をさらに制限した関数で、二項分布式の N を限りなく無 限に近づけるとともに確率をゼロに近づけたものである。日雑商品の売上については、
ポアソン分布をしていることが前提であるという論がある(「花王の製販同盟」、ダ イヤモンド社、1994年)。
定番商品の消費需要量の関数として利用することが可能である。
小売業
小売在庫量
消費需要量
シミュレーション番号6
0 20 40 60 80 100
図 2-30 ポアソン分布による消費需要量変動
2.4.1.4 生産量のシミュレーション
消費需要量を前項で設定したユーザ関数〔消費需要量 = Floor( 消費需要量() * 季節 変動(Months( ElapsedTime())) )〕でシミュレーションを行った場合に、生産計画値を①
300、②200、③250に設定した場合の在庫推移を次に示す。
◇S.生産計画値=300
消費需要量=Floor( 消費需要量() * 季節変動(Months( ElapsedTime())) )
在庫推移
アパ在庫量
縫製在庫量
シミュレーション番号2
0 200 400 600 800 1000
図 2-31 生産計画値=300の在庫変動
◇S.生産計画値=200
消費需要量=Floor( 消費需要量() * 季節変動(Months( ElapsedTime())) )
在庫推移
アパ在庫量
縫製在庫量
シミュレーション番号4
0 100 200 300 400
図 2-32 生産計画値=200の在庫変動
◇S.生産計画値=250
消費需要量=Floor( 消費需要量() * 季節変動(Months( ElapsedTime())) )
在庫推移
アパ在庫量
縫製在庫量
シミュレーション番号5
0 100 200 300 400 500
図 2-33 生産計画値=250の在庫変動
この結果から、このシミュレーションの条件においては、製造業者の在庫量は、生産計 画値が300では過剰在庫に推移していき、また 200では欠品が生じることがわかる。生産 計画値が250の場合、安定的な在庫量を維持できる。
製配販3層の As-Isモデルについて、次の点においてSCMの概念を含んだ To-Beモデ
ルを描いた。
l 生産量は、消費需要量と連動する。
l 卸売業−小売業間で在庫データを共有化する。
図 2-34 製配販3層の全体モデル(To-Be)
メーカ
卸
小売業
アパ出荷検品
小売入荷検品 0h
S. 小売在庫量 = S. 小売在庫量 + S .アパ出荷量 S .アパ出荷量 = 0
アパ発注 縫製注文受付 生産計画
縫製出荷
S. 縫製出荷回数 = S. 縫製出荷回数 + 1 縫製在庫管理 S .縫製注文受付回数 = 0
アパ入荷検品 S. アパ入荷量 = S. 縫製出荷量
S. アパ在庫量 = S. アパ在庫量+ S. アパ入荷量 S. アパ入荷量 = 0
FAX
発注ロット:定数 生産
発注量設定
小売在庫管理
店頭対応
(消費需要)
S .消費需要量 = Floor( PoissonDist ( S.平均販売量) ) S .トータル需要量 = S. トータル需要量 + S .消費需要量
販売/売上 在庫補充/店
頭陳列 アパ在庫管理
販売計画 メーカ
卸
小売業
アパ出荷検品
小売入荷検品 0h
S. 小売在庫量 = S. 小売在庫量 + S .アパ出荷量 S .アパ出荷量 = 0
アパ発注 縫製注文受付 生産計画
縫製出荷
S. 縫製出荷回数 = S. 縫製出荷回数 + 1 縫製在庫管理 S .縫製注文受付回数 = 0
アパ入荷検品 S. アパ入荷量 = S. 縫製出荷量
S. アパ在庫量 = S. アパ在庫量+ S. アパ入荷量 S. アパ入荷量 = 0
FAX
発注ロット:定数 生産
発注量設定
小売在庫管理
店頭対応
(消費需要)
S .消費需要量 = Floor( PoissonDist ( S.平均販売量) ) S .トータル需要量 = S. トータル需要量 + S .消費需要量
販売/売上 在庫補充/店
頭陳列 アパ在庫管理
販売計画