井上教授によると,質量・半径の推定は、以下の通りである.
質量𝑀1と質量𝑀2の星がそれぞれ中心から距離𝑎だけ離れて,互いの重心の周りを回転角 速度Ωで回っているとし,回転周期をΤとする.
また,連星の二つの星の質量,半径,観測される明るさ(地球上観測装置が受け取る単 位 面 積 あ た り 、 単 位 時 間 あ た り の 放 射 エ ネ ル ギ ー 量 ) を そ れ ぞ れ 𝑀1,𝑅1,𝐹1と 𝑀2,𝑅2,𝐹2とする.
ここで,質量の大きい方の星を星1とし,もう一つを星2とする.そして,この2つの 星とも,主系列星であると仮定する.主系列の星では,星の半径はその質量にほぼ比例す るので,
𝑅
1= (
𝑀𝑀1⨀
) 𝑅
⨀𝑅
1= (
𝑀𝑀2⨀
) 𝑅
⨀}
(1)と近似できる.ここで,𝑀⨀と𝑅⨀は太陽質量と太陽半径で,
𝑀⨀= 1.989 × 1030 [ kg]
𝑅⨀= 6.960 × 108 [𝑚]
図 9 連星間の様子
40 また,V-バンドでは,𝐹はほぼMの4乗に比例するので,
𝐹
1= (
𝑀1𝑀⨀
)
4𝐹
⨀𝐹
2= (
𝑀𝑀2⨀
)
4𝐹
⨀}
(2)と近似する.ここで𝐹⨀は太陽
それぞれの星の中心の,重心からの距離を𝑟1, 𝑟2とすると,
𝑟
1=
𝑀 𝑀21+𝑀2
𝑎 𝑟
2=
𝑀 𝑀11+𝑀2
𝑎
}
(3)
である。
それぞれの星の回転軌道は、円であると近似すると、これらの星の回転角速度Ωは,一定 値で,
Ω =
2𝜋T(4)である.
星1に着目すると,星1が重心の周りを回るときの遠心力は, 𝑀1𝑟1Ω2,一方𝑀2から受 ける重力は,
𝑀
1𝐺𝑀𝑎22で,両者はつりあっているはずだから,𝑀
1𝑟
1Ω
2= 𝑀
1𝐺𝑀2 𝑎2 (5)である.
ここで,𝐺は,万有引力定数で,
41
𝐺 = 6.67408 × 10
−11𝑚
3𝑘𝑔
−1𝑠
−2である.
(1)式を(3)式にいれ、さらに(2)式によりΩをΤに置き換えて整理すると,
𝑎 = [
𝐺(𝑀1+𝑀2)(2𝜋)2
𝑇
2]
1
3
( 6 )
を得る.
𝑇は,観測データより,
𝑇 = 81648.91584 [𝑠]
とする.
簡単のため,われわれ観測者は,2 つの星の回転面上の遠方にいると仮定する.すると,
片方の星があいての星を隠す食は,1周期の間に,星1が星2を隠す時と,星2が星1を 隠す時の2回起こる.ここで,星2が,星1の前を横切る方の食を食Ⅰ,星 1 が星 2 を隠 す方を食Ⅱと名付ける.又,この連星の観測には第 3 星の明るさも足されているので,そ の星を星3とする.
まず,食でないときの連星の明るさを𝐹0とすると,
𝐹
0= 𝐹
1+ 𝐹
2+ 𝐹
3(7)である.
食Ⅰの時は,星 1 の手前に星 2 がいるので,星 1 の明るさが星 2 に隠された分だけ暗く なる.
図 10 食Ⅰの様子
42 の円のどこからも同じ強度でやってくると近似すると,π𝑅22の断面積をもった星 2 で隠さ れた部分の強度は,
(
π𝑅π𝑅2212
) 𝐹
1となる.よって,食Ⅰの極小時の明るさを𝐹Ⅰとおくと,𝐹
Ⅰ= (1 −
π𝑅π𝑅2212
) 𝐹
1+ 𝐹
2+ 𝐹
3(8)である.
食でない時の連星の明るさ𝐹0からの減光量を△ 𝐹Ⅰとおくと,(5)(6)式より,
△ 𝐹
Ⅰ= 𝐹
0− 𝐹
Ⅰ= (
𝑅𝑅21
)
2𝐹
1(9)が得られる.
一方,食Ⅱの時は,𝑀2は𝑀1の後ろに隠れることになるので,食Ⅱにおける極小時の明る さ𝐹Ⅱは,
𝐹
Ⅱ= 𝐹
1+ 𝐹
3(10)となり,その減光量△ 𝐹Ⅱは,
△ 𝐹
Ⅱ= 𝐹
0− 𝐹
Ⅱ= 𝐹
2(11)となる.
ここで,△ 𝐹Ⅰと△ 𝐹Ⅱを比較する.
(1)(2)式を(9)(10)式に代入する.
△ 𝐹
Ⅰ= (
𝑀𝑀21
)
2𝐹
1(12)△ 𝐹
Ⅱ= (
𝑀𝑀21
)
4𝐹
1(13)となるから,𝑀1>𝑀2の時は,
43
△ 𝐹
Ⅰ> △ 𝐹
Ⅱすなわち,食Ⅰの方が食Ⅱより深い食(主極小)となることがわかる.
さて,食でない時の連星の等級をm0,食Ⅰの時の極小時の等級をmⅠとおくと,
𝑚
0= −2.5(log 𝐹
0− log 𝐹
∗)
(14)ここで𝐹∗は,V等級0の星の明るさである.
𝑚
Ⅰ= −2.5 (log 𝐹
Ⅰ− log 𝐹
∗)
であるから,極小時の等級の増加量△mⅠは,
△ 𝑚
Ⅰ= 𝑚
Ⅰ− 𝑚
0= −2.5 (log 𝐹
Ⅰ− log 𝐹
0)
= −2.5 log (
𝐹𝐹Ⅰ0
)
(15)となる.
今,
𝑓 =
𝐹Ⅰ𝐹0(16)
とおくと,𝑓は,
𝑓 = 10
−△𝑚Ⅰ
2.5 (17)
で求まる.
44
𝑓 =
𝐹
1(1 − π𝑅
2π𝑅
12) + 𝐹
2+ 𝐹
3𝐹
1+ 𝐹
2+ 𝐹
3=
𝐹1[1−(𝑀2𝑀1)2]+(𝑀2
𝑀1)4𝐹1+𝐹3 𝐹1+(𝑀2
𝑀1)4𝐹1+𝐹3 (18)
が得られる.
なお,食でないときの等級を
𝑚
0,
𝐹3に対応する等級を𝑚
3(=7.4等級)とすると,𝑚
0 −𝑚
3= −2.5[log(𝐹
1+ 𝐹
2+ 𝐹
3) − log 𝐹
3]
= −2.5 log
𝐹
1+ 𝐹
2+ 𝐹
3 𝐹3なので,
1 + 𝑔
𝑔 = 10
−𝑚02.5−𝑚3より,𝑔が求まる.
ここで,
𝑔 = 𝐹
3𝐹
1+ 𝐹
2とすると,
𝑓 =[1 + (𝑀2
𝑀1)2] + (1 + 𝑔) (𝑀2
𝑀1)4 (1 + 𝑔) + (1 + 𝑔) (𝑀𝑀21)4
が得られ,
𝓍= (
𝑀𝑀21
)
2(19)45 とおくと,(18)式から,
(1 + 𝑔)(1 − 𝑓)𝑥
2− 𝑥 + (1 + 𝑔)(1 − 𝑓) = 0
(20)が得られ,得られる2根のうち,0 ≤ 𝑥 ≤ 1の範囲の根として,
𝑥
Ⅰ=
2(1−𝑓)1(1 − √1 − 4(1 − 𝑓)
2)
(21)が求まる.これより,
𝑀2
𝑀1
= √𝑥
Ⅰ(22)の制限が得られる.
ちなみに,食Ⅱの極小における等級の増加量△ 𝑚Ⅱは,
△ 𝑚
Ⅱ= −2.5 log 𝐹
Ⅱ𝐹
0= −2.5 log
((1+𝑔)(1+𝑥1+𝑔
)+𝑔𝑥
22)(23)
となるはずである.
さて,今考えている連星では,2つの星が重心の周りを回っている.
図 11 連星と重心の回転の様子
46 連星の回転角速度Ωを用いると,
φ = Ω(𝑡 − t
0)
(24)と表すことができる.
φは,時間とともに増加するわけだが,2π増えるごとに,同じ位置関係にもどるので,
𝑛 =整数部分
(
2πφ)
とすると,
φ =2
π𝑛 + ∆φ
(25)とおくことができる.
そして,∆φが同じ時は,図上で同じ位置にいることになる.この∆φは,0 ≤ ∆φ ≤ 2πの値を とるが,これを2πで割って,
α =
∆φ2π(26)
を定義し,位相と呼ぶ. 範囲は0 ≤ α ≤ 1である.
(24)式を2πで割ると,
φ 2𝜋
=
Ω2𝜋
(𝑡 − t
0
) =
(𝑡−t0)𝑇 (27)
となるが,この星の整数部分と小数部分を分けると,
(𝑡−t0)
𝑇
= 𝑛 + 𝛼
(28)となり,少数部分が連星周期の位相に対応していることがわかる.
47 視線方向上で,星1の外周に,星2の外周が接した時から,食が始まると考えられる.そ の時,星1から見た観測者の方向と,星の方向との角度を∆φとおき,直角三角形𝑃1, 𝑃2, 𝑃3 を考える.
すると,観測者の方向から見て,2つの星が接する時なので,
𝑎 sin ∆φ
𝐸= 𝑅
1+ 𝑅
2(29)となる.
∆φ < 1だとして,
sin ∆φ
𝐸≃ ∆φ
𝐸(30)と,近似すると,(21)式は
𝑎 ⋅ ∆φ
𝐸= 𝑅
1+ 𝑅
2(31)と,近似される. (26)式より,
𝑎 ⋅ 2𝜋 ⋅ ∆α = 𝑅
1+ 𝑅
2(32)図 12 観測者からの食
48
𝑎 =
2𝜋∆α𝑅⨀ (𝑀1𝑀+𝑀2)⨀
(33)
を得る.
(6)式を少し変形した,
𝑎 = [ 𝐺(𝑀
1+ 𝑀
2) (2𝜋)
2𝑇
2]
13
= [
(2𝜋)𝐺𝑀⨀2𝑇
2]
1
3
(
𝑀1𝑀+𝑀2⨀
)
1
3
(6)’
と(34)式を連立させると,
𝑀1+𝑀2
𝑀⨀
= [
2𝜋𝐺𝑀⨀𝑇2(Δα)3𝑅⨀3
]
1
2(34)
が求まる.
最終的に,
𝑀1= 1
1 + √
𝑥
Ⅰ(𝑀1+ 𝑀2)𝑀2= √
𝑥
Ⅰ1 + √
𝑥
Ⅰ(𝑀1+ 𝑀2)が得られる.
49