3. 空間図形と三角比
3.6 第3章の補足
1. 36
◦, 72
◦などの三角比
A. 36◦,72◦,72◦の三角形を考える
18◦に関する三角比を考えるため,まず,右図の二等辺三
1 1
1
x
A B
C
A B
C
D
•は36◦を表す
72◦ 72◦
•
•• 72◦ 72◦
•
||
||
||
| |
角形ABCについてBC,ACの長さを求めよう*24.
ここで,右図の奥のように∠Aの2等分線と辺BCの交点 をDとする.このとき,
∠DAC=∠DCA=36◦
より△DACは二等辺三角形になる.また
∠ADB=∠ABD=72◦
より△ABDも二等辺三角形になる.これらより,CD=AD=AB=1が成り立つ.
さらに,△CAB
∽
△ABDであるから,CB:AB=AB:BDが成り立つ.よって,AB2 =CB×BDであ るので,BD=xとおくと1×1=(1+x)×x ⇔ x2+x−1=0 x>0であるから,解の公式よりBD=
√5−1
2 と求められる.これより BC=BD+1=
√5−1 2 +1=
√5+1 2 となる.また,AC=BD=
√5+1
2 である.
B. 36◦の三角比とその周辺
△ACDに着目し,右図のように.点Dから辺ACへ垂線DHを引く.
√ 1 5+1
2
A B
C
D H
72◦
•
•
|||
|||
直角三角形DCHに,余弦の定義を用いて cos 36◦= CH
DC =
1 2CA
1 =
√5+1 4
さらに,三角比の相互関係sin2θ+cos2θ=1を用いて sin236◦=1−cos236◦ =1−
( √ 5+1
4 )2
=1− 6+2√ 5
16 = 10−2√ 5 16
であり,sin 36◦>0であるから,sin 36◦=
√
10−2√ 5
4 である.
また,これらよりtan 36◦= sin 36◦ cos 36◦ =
√
10−2√ 5 1+ √
5
=(計算省略)=
√ 5−2√
5である.
*2418◦に関する三角比を求めるためには,ABの長さはいくつでもよい.ここでは,考えやすくするため1とした.
202
【練習82:36◦とその周辺の三角比】
sin 36◦=
√
10−2√ 5
4 ,cos 36◦=
√5+1
4 ,tan 36◦=
√ 5−2√
5を利用して次の三角比の値を求めよ.
(1) sin 54◦,cos 54◦,tan 54◦ (2) sin 126◦,cos 126◦,tan 126◦ (3) sin 144◦,cos 144◦,tan 144◦
【解答】
(1) 54◦ =90◦−36◦であるから,『90◦−Aの三角比』(p.158)より次のよう ◀
A
B
C 36◦
54◦ に求めることができる.
sin 54◦=cos 36◦=
√5+1 4
cos 54◦=sin 36◦=
√
10−2√ 5 4 tan 54◦= 1
tan 36◦ = 1
√ 5−2√
5
(2) 126◦=90◦+36◦であるから,『90◦+θの三角比』(p.171)より次のよう ◀
1 1
−1
P(x,y) P′(−y, x)
36◦ 126◦
x y
O に求めることができる.
sin 126◦=cos 36◦=
√5+1 4
cos 126◦=−sin 36◦=−
√
10−2√ 5 4 tan 126◦=− 1
tan 36◦ =− 1
√ 5−2√
5
(3) 144◦=180◦−36◦であるから,『180◦−θの三角比』(p.170)より次のよ ◀
1 1
−1 (−x,y)
P′
P(x,y)
36◦ 144◦
x y
O うに求めることができる.
sin 144◦=sin 36◦=
√
10−2√ 5 4 cos 144◦=−cos 36◦=−
√5+1 4 tan 144◦=−tan 36◦=−
√ 5−2√
5
—13th-note— 3.6 第3章の補足· · ·
203
C. 72◦の三角比とその周辺
今 度 は△ABDに 着 目 し ,右 図 の よ う に .点Aか ら 辺BDへ 垂 線
√5−1 2
A 1 B
C
D H′
72◦
|||
|||
AH′を引く.直角三角形ABH′に,余弦の定義を用いて cos 72◦= BH′
AB =
1 2BD
1 =
√5−1 4
さらに,三角比の相互関係sin2θ+cos2θ=1を用いて sin272◦=1−cos272◦ =1−
( √ 5−1
4 )2
=1− 6−2√ 5
16 = 10+2√ 5 16
であり,sin 72◦>0であるから,sin 72◦=
√
10+2√ 5
4 である.
また,これらよりtan 72◦= sin 72◦ cos 72◦ =
√
10+2√ 5
√5−1
=(計算省略)=
√ 5+2√
5である.
【練習83:72◦とその周辺の三角比】
sin 72◦=
√
10+2√ 5
4 ,cos 72◦ =
√5−1
4 ,tan 72◦ =
√ 5+2√
5を利用して次の三角比を求めよ.
(1) sin 18◦,cos 18◦,tan 18◦ (2) sin 108◦,cos 108◦,tan 108◦ (3) sin 162◦,cos 162◦,tan 162◦
【解答】
(1) 18◦=90◦−72◦であるから,『90◦−Aの三角比』(p.158)より次のよう ◀
A
B
C 18◦
72◦ に求めることができる.
sin 18◦=cos 72◦=
√5−1 4
cos 18◦=sin 72◦=
√
10+2√ 5 4 tan 18◦= 1
tan 72◦ = 1
√ 5+2√
5
(2) 108◦=180◦−72◦であるから,『180◦−θの三角比』(p.170)より次のよ ◀
1 1
−1
P′(−x,y) P(x,y)
72◦108◦ x y
O うに求めることができる.
sin 108◦=sin 72◦=
√
10+2√ 5 4 cos 108◦=−cos 72◦ =−
√5−1 4 tan 108◦=−tan 72◦=−
√ 5+2√
5
204
(3) 162◦=90◦+72◦であるから,『90◦+θの三角比』(p.171)より次のよう ◀
1 1
−1
P(x,y)
P′(−y, x)
72◦ 162◦
x y
O に求めることができる.
sin 162◦=cos 72◦=
√5−1 4
cos 162◦=−sin 72◦=−
√
10+2√ 5 4 tan 162◦=− 1
tan 72◦ =− 1
√ 5+2√
5
2. 第 1 余弦定理
三角形の2つの角と2辺の長さの間に次の関係式が成り立つ.
c b a
A B
c=bcosA+acosB
これを,第1余弦定理 (first cosine theorem)という.
Aが鋭角のときは,線分AB上に垂線CHをひいて(Aが直角の時
c a b
A B
C
H はHとAが一致する)
(右辺)=bcosA+acosB=AH+BH=AB=c=(左辺)
となり成立する(Aが直角の時はacosA=0なのでAH=0).
【暗 記 84:第1余弦定理の導出】
上の続きとして,Aが鈍角のときも第1余弦定理が成り立つことを証明せよ.
【解答】 直線AB上に,右欄外の図のように垂線CHをひくと ◀
c a b
A B
C
H
(右辺)=bcosA+acosB
= −bcos(180◦−A)+acosB
= −AH+BH=AB=c=(左辺) ■
第1余弦定理
△ABCにおいて次の等式が成り立つ.
c b a
A B
C
A
C B c=bcosA+acosB
b=acosC+ccosA a=ccosB+bcosC
この定理は,ある角から見たときに左右2つの辺を向かい
bcosA acosB b a
A B
の辺に押しつぶす感じで覚えると良い.
ま た ,上 の 暗 記 例 題 の よ う に 自 分 で 垂 線 の 引 け る な ら ば , 公式を覚えなくてもよい.
—13th-note— 3.6 第3章の補足· · ·