の収益を控除する。
2 したがって、設問中の①、②、④、⑤はその取得原資が税金であることから運営 費交付金に基づく収益及び国又は地方公共団体からの補助金等に基づく収益以外の 収益として取り扱うことはできないものと考える。③の寄附金戻入財源は税金から の拠出でないこと、⑥の受託収入は対価性があることから、それぞれ控除できるも のと考える。
3 以上を整理すると次のとおりである。
収入の区分 損益計算上の費用から控除することの可否
① 資産見返運営費交付金戻入 控除できない
② 資産見返補助金等戻入 控除できない
③ 資産見返寄附金戻入 控除できる
④ 資産見返物品受贈額戻入 控除できない
⑤ 国からの物品受贈益 控除できない
⑥ 国からの受託収入 控除できる
Q76−3 独立行政法人会計基準に列挙されていない一般に機会費用と考えられ る、例えば独立行政法人間における資産の無償賃借などの場合に、行政サービス実 施コスト計算書に計上する必要があるか。
A
会計基準第76では機会費用を「国又は地方公共団体財産の無償又は減額された 使用料による貸借取引」「政府出資又は地方公共団体出資等の機会費用」「無利子又 は通常よりも有利な条件による融資取引の機会費用」の3種類と限定している。な ぜなら、機会費用は一般に広い概念であるが会計帳簿に基づくものではなく、通常 は財務会計上認識されることはない。しかし、独立行政法人においてはその制度趣 旨にかんがみ、行政サービス実施コスト計算書は主務省令で定める公表財務諸表の 一つに位置付けられるため、独立行政法人間の比較可能性の観点などから、会計基 準において制度的に範囲を限定するものである。したがって、独立行政法人会計基 準において列挙されている以外の機会費用を行政サービス実施コスト計算書に計上 する必要はない。
Q77―1
⑴ 行政サービス実施コストの計算上控除される法人税及び国庫納付額はそれぞれ 発生ベースによるものと解してよいか。
⑵ また、控除される法人税等の額は、税効果会計の「法人税等調整額」を加減した金 額となるのか。
A
1 法人税等については、損益計算書において税引前当期純利益から控除されるもの
であり費用性があるものと考えられ、行政サービス実施コスト計算書の業務費用に 含まれる(注解18第1項参照)。しかしながら利益の一部を国等に納付するもので あり最終的に国民の負担に属するものとはいえない。このため、一旦行政サービス 実施コスト計算書の業務費用に計上したうえで、控除することが適切と考えられる。
このように法人税等は結果的には行政サービス実施コストには含まれないことにな る。なお、業務費用に計上される法人税等の金額は、法人税等調整額についても加 減したものである。
2 国庫納付額には、利益処分としてのものと損益計算書上に費用として計上される ものがある。
利益処分として行われる国庫納付は、損益計算書に計上されないため業務費用に 含まれず、行政サービス実施コストには含まれない。また、損益計算書上に費用と して計上される国庫納付についても、一旦は、損益計算書上の費用として計上され 業務費用となるが、「(控除)法人税等及び国庫納付額」として控除される(会計基 準第76第4項参照)ことから、結果的には行政サービス実施コストには含まれな いことになる。
Q78―1 国又は地方公共団体財産の無償又は減額された使用料による貸借取引 に関し、減額された使用料による貸借取引とはどのような場合を想定しているのか。
また、民間における参考事例がないとき、どのようにしてその機会費用を計算する のか。
A
1 減額された使用料による貸借取引とは、国有財産法、物品の無償貸付及び譲与等 に関する法律において、国有財産及び国の物品を国以外の者に対して時価よりも低 い対価で貸し付けることができる場合が規定されており、これらの法律を根拠とし て減額された使用料による貸借取引が行われることを想定したものである。なお、
国の財産は、時価による譲渡及び貸付けが原則とされており、法律の規定によらず 時価よりも低い対価で貸付けが行われることはない。
2 国又は地方公共団体財産の無償又は減額された使用料による貸借取引の機会費用 とは、当該資産が市場によって提供されたとしたら支払うべきであろうコストと実 際の支払額との差額を意味するものであり、民間における参考事例がない場合であ っても何らかの合理的な仮定計算を行うことが必要である。
3 仮定計算の方法については、行政サービス実施コスト計算書に注記を行うことに より、客観性・透明性を確保するものとする。
Q78―2 行政サービス実施コスト計算書における政府出資又は地方公共団体出 資等の機会費用算定に用いる「一定利率」はどのように決定するのか。また、共通 の数値を策定し、各独立行政法人に通知するなどの周知は行わないのか。
A
1 政府出資又は地方公共団体出資等の機会費用は、当該出資額を市場で運用したな らば得られたであろう金額として計算すべきものであり、「一定利率」の数値として は、国債の利回りを参考に決定することとなるが、独立行政法人間の比較可能性が 重要であり、「一定利率」については、各独立行政法人が共通の数値を使用すること が望ましい。
2 具体的に使用すべき「一定利率」については、決算日における10年もの国債の 利回り(具体的には、決算日(当日が土・日曜日の場合は直前の営業日)における 10年国債(新発債)の利回りであり、日本相互証券が公表しているものによるも のとする。
Q78―3 施設費は固定資産を取得したときに資本剰余金に振り替えられるが、決 算日において負債として整理される預り施設費又は建設仮勘定見返施設費が存在す る場合、当該預り施設費又は建設仮勘定見返施設費も政府出資又は地方公共団体出 資等に含めて計算するのか。
A
預り施設費又は建設仮勘定見返施設費は、資本剰余金に転換する前段階のもので あり、国民から見た場合には既に負担が発生しているので、行政サービス実施コス トの計算対象と考えるのが適当である。
Q78―4 政府出資等の額が、期初と期末では異なる場合、どのように計算するの か。
A
期首(前期末)と期末の平均をとって政府出資等の額とする。
Q78―5 資本金200億円(全額現物出資)で、4月1日に設立された独立行政 法人において、機会費用算定に用いる「一定利率」を2%とすると、次のようなケー スでは当年度の政府出資等の機会費用はいくらになるのか。
① 現物出資財産の減価償却により、資本剰余金が△10億円発生した場合。
② さらに、施設費により9月末日に50億円の建物を増築し、当該年度において
△2億円の減価償却相当額が発生している場合。
A
計算例
前年度末 当年度末 政府出資金 200 200 資本剰余金 0 50 損益外減価償却累計額 0 △12
資本剰余金合計 38
政府出資等の機会費用 = (200+238)/2 × 2% = 4.38 億円
注:行政サービス実施コストとしては、損益外減価償却費が、別途、12億円 発生している。
Q78―6 国又は地方公共団体からの無利子又は低利融資を受けている場合の機 会費用の算定について、「通常の調達利率」とはどのような金利を用いればよいのか。
また、通常の調達利率は、期末時点での金利なのか、あるいは年間の平均金利なの か。
A
「通常の調達利率」とは、債券発行や借入金により資金調達を行っている独立行政 法人にあっては、当該債券及び借入金の調達金利の年平均利率によることとし、無 利子又は低利融資以外に資金調達を行っていない独立行政法人にあっては、決算日
(当日が土・日曜日の場合は直前の営業日)における10年もの国債(新発債)の 利回りであり、日本相互証券が公表しているものによるものとする。
第10章 附属明細書及び注記
Q79―1 附属明細書を作成する各明細には、具体的にどのような内容を考えてい るのか。
A
1 附属明細書の意義
⑴ 財務報告及び財務諸表において遵守されるべき基本的観点は基準の一般原則に 記述されているところであるが、一般的に「理解可能性」といった観点について も財務報告及び財務諸表には強く求められているところである。
⑵ この理解可能性からして、貸借対照表や損益計算書等についてはいたずらに複 雑とならないことが求められ、あまりにも詳細な情報は貸借対照表や損益計算書 等には表示されないこととなる。
⑶ しかし、そのような貸借対照表や損益計算書等の表示だけであると重要な情報 が十分に開示されなくなるおそれがあるため、これを補うために附属明細書及び 注記として詳細な情報が開示される。そのうち明細書形式が適切と判断されるも のが附属明細書である。
⑷ 附属明細書の作成に当たっては、このような附属明細書の意義を十分に考慮す ることが必要である。