続いて、対外公表文「金融市場調節方針の変更について」の検討が行われた。その際、
日本銀行の金融政策が政府の経済政策の基本方針と整合的なものであるべきことに配慮し たものであるべきとの意見が三木委員から出され、これを受けた討議の結果、公表文に「適 切かつ機動的な金融政策運営を継続する」ことを盛り込み、公表文の 末尾を、「日本銀行 としては、物価の安定を確保するもとで、適切かつ機動的な金融政策運営を継続すること により、景気回復を支援していく方針である」とすることが決定された281。
Ⅶ.おわりに
本稿では、
1990
年代の金融経済情勢ならびに金融政策運営について、同時期に作成され た資料を活用しつつ、当時の日本銀行からみた認識を整理した。本稿作成作業を通じて確認できた点は次の通りである。第
1
に、1990年代は、金融政策 運営の考え方が透明性を重視する方向に変わっていった時期であった。これは、金融調節 の指標が公定歩合操作から市場金利誘導へと移行し、市場との対話が一段と重要性を増し たということが基本的な背景であるとみられるが、1998
年4
月に独立性と透明性を重視し た新日銀法が施行されたことも、透明性重視の流れを加速した。第2
に、透明性重視とい う変化を背景に、1990
年代後半(とくに新日銀法制定以降)は公表資料が充実している282。 このため、本稿で用いる資料も、とくに後半においては、公表資料中心となっている。第3
に、1990年代は金融システムへの配慮が金融政策運営において重要な時期であった 。こ のため、本稿の前編ともいえる「1980
年代における金融政策運営について」とは異なり、本稿では、不良債権の処理等を中心に金融システムの問題についても多くを記述すること となった283。
1990
年代における日本銀行の金融政策運営については、様々な評価 がありうるが、評価 の前提として、当時の認識を正確に確認する作業が重要だと思われる。 本稿ではあえて評 価には立ち入らずに、事実関係および当時の認識を整理し、バブル崩壊とデフレ発現の1990
年代に関する基礎資料を作成することに注力した。事実関係および当時の認識は時間 の経過とともに風化しがちであるため、今の時点で、これらの点をまとめておくことには、意味があると思われる。
281 執行部の原案では、公表文の末尾は「日本銀行としては、物価の安定を確保するもとで、こうした緩 和スタンスを継続することにより、金融面から景気回復を支援していく方針である」となっていた。
282 他方で、1990年代初から27年、1990年代末から17年しか経過していないこともあり、使えるアー カイブ資料には制約があった。
283 本稿では、「金融部門における不良債権問題の発生とその結果としての金融機関破綻が金融政策にど のような影響を与えたか」という問題意識に基づいて、金融システムの動向について言及した。このた め、例えば、いわゆる日本版金融ビックバン(1996年11月に内閣総理大臣が大 蔵大臣等に対して「我 が国金融システムの改革」検討を指示、1998年6月に 金融システム改革関連法案成立)などについては、
紙幅の都合もあり、言及は行わなかった。
64
図表
(図表 1 ) 景気関連
(図表 2) 物価関連
(図表 3) 為替、国際収支関連
(図表 4 ) 金利
(図表 5) 金融面の動向
(図表 6) 資産価格
(図表 7 ) 海外
(図表 8) 1990 年代の主な出来事
65
図表
1 景気関連
(1)経済成長率
資料:「実質GDP前期比年率」内閣府(日本銀行調査統計局編『2001主要経済・金融データCD-ROM』)
(2)生産
備考:四半期、前年同期比
資料:「生産」経済産業省(日本銀行調査統計局編『2001主要経済・金融データ CD-ROM』)
66
図表
2 物価関連
(
1
)消費者物価備考:生鮮食品を除く総合。月次。 資料:「消費者物価指数」総務省
(
2
)卸売物価備考:総平均、月次 資料:「国内企業物価指数」日本銀行
(3)原油価格
備考:WTI価格、月次 資料:「External data」IMF
(
4
)雇用人員、DI
、全産業備考:四半期 資料:企業短期経済観測「経済統計月報」ほか日本銀行
89年4月 消 費 税 導入 (3%) 97年4月 消 費 税 率 引上 げ(5% )
67
図表
3 為替、国際収支関連
(
1
)為替レート(円/
ドル)備考:東京市場、17時時点の月中平均 資料:「経済統計月報」ほか日本銀行
(2)為替レート(円/主要通貨)
備考:年末 資料:「経済統計月報」ほか日本銀行
(
3
)国際収支備考:月次 資料:「国際収支統計月報」日本銀行