作用部位・作用機序
(1)
1)作用機序6,29)
ベタニスは膀胱のβ3受容体に結合して、膀胱の弛緩作用を増強し、膀胱容量を増大させる。これにより、
膀胱は正常な蓄尿期の状態に近づき、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善す る。
ベタニスが膀胱のβ3受容体に結合すると、β3受容体の活性化を介して平滑筋の細胞内でアデニル酸シク ラーゼが活性化し、cAMPの産生が促進される30)。これにより、細胞質内のカルシウム(Ca2+)濃度が低下 し、膀胱平滑筋の弛緩(伸展)をもたらす30)。
<参考>正常な蓄尿期と過活動膀胱の蓄尿期の違い
蓄尿期には、交感神経終末よりノルアドレナリンが放出され、膀胱のβ3受容体を介して膀胱が弛緩する とともに、α1受容体を介して尿道が収縮する。排尿期にはノルアドレナリンの放出が抑制され、尿道が 弛緩するとともに副交感神経終末からアセチルコリンが放出され、ムスカリン(M)受容体を介して膀胱 が収縮する31)。
一方、過活動膀胱では蓄尿期においてもアセチルコリンが放出され、膀胱のM受容体に結合し、膀胱の 異常な収縮が起こる。そのため、過活動膀胱では、十分な量の尿をためられるだけの弛緩が起こらない。
2)抗コリン薬の作用機序
抗コリン薬は膀胱のM受容体に結合し、アセチルコリンがM受容体に結合するのを阻害する。これに より、アセチルコリンによって引き起こされる膀胱平滑筋の異常な収縮が抑制される。
薬効を裏付ける試験成績
(2)
1)β3アドレナリン受容体に対する刺激作用(in vitro)29,32)
[方法]
ヒトβアドレナリン受容体の各サブタイプを発現させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用い、
細胞内cAMP濃度を指標としてミラベグロン及び非選択的βアドレナリン受容体作動薬であるイソプロ テレノールの各βアドレナリン受容体サブタイプに対する刺激作用を検討した。
[結果]
ヒトβ3アドレナリン受容体を発現させた細胞において、ミラベグロンは濃度依存的な細胞内cAMP濃度 上昇作用を示した。
一方、ヒト β1及びβ2アドレナリン受容体を発現させた細胞においては、細胞内 cAMP濃度上昇作用を ほとんど示さなかった。
ヒト β アドレナリン受容体に対する刺激作用(in vitro )
被験薬
β1 β2 β3
EC50値
(nmol/L) IA EC50値
(nmol/L) IA EC50値
(nmol/L) IA
ミラベグロン -※ 0.1 -※ 0.2 1.5
[0.89-3.2] 0.8 イソプロテレノール 34
[23-50] 1.0 21
[10-42] 1.0 49
[39-61] 1.0 n=4 EC50値:4施行の平均値[95%CI] イソプロテレノール:非選択的βアドレナリン受容体完全活性薬。
EC50:イソプロテレノールによる最大反応の50%を惹起させる濃度。値が小さいほど作用が強いことを示す。
IA:Intrinsic activity(固有活性)。完全活性薬であるイソプロテレノールの最大反応を1としたときの相対値。値が大きいほど
最大反応が大きいことを示す。
※:未評価
-36- 2)膀胱組織内のcAMP濃度に対する作用(in vitro)33)
[方法]
ラット摘出膀胱平滑筋において、細胞内cAMP濃度に対するミラベグロンの作用を検討した。
溶媒又はミラベグロンは、摘出膀胱を含む2.5mmol/L 3-isobuthyl-1-methylxanthine含有Krebs溶液中に添 加し、10分間処理後に摘出膀胱組織内のcAMP濃度を測定した。
[結果]
ラット摘出膀胱において、ミラベグロンは膀胱組織内cAMP濃度を溶媒に比べて有意に上昇させた。
ラット摘出膀胱組織内のcAMP濃度に対する作用(in vitro)(n=6)
平均値±標準誤差(*:p<0.05、**:p<0.01、vs溶媒添加群の値、Dunnettの検定)
3)膀胱弛緩作用(in vitro)6) ラット膀胱平滑筋
①
[方法]
カルバコールによる持続性収縮を惹起させたラット摘出膀胱平滑筋において、収縮に対するミラベグロ ン及びイソプロテレノールの作用を検討した。1μmol/L カルバコールにより誘発したラット摘出膀胱の 持続性収縮が安定した後、被験薬を10分間隔で累積添加した。被験薬添加終了後、100μmol/Lパパベリ ンを添加し、その作用を100%としてEC50値及び最大弛緩率を算出した。
パパベリン:非特異的平滑筋弛緩薬。組織が弛緩しうる最大の反応(100%)を得るために添加した試薬。
[結果]
カルバコールにより持続性収縮を惹起させたラット摘出膀胱において、ミラベグロンは濃度依存的な弛 緩作用を示した。その効力及び最大反応は、非選択的βアドレナリン受容体完全活性薬であるイソプロ テレノールと同程度に強力であった。
持続性収縮:カルバコールにより、ムスカリン受容体が持続的に刺激され、平滑筋の収縮が続いている状態。
ラット摘出膀胱における弛緩作用(in vitro)
薬剤 EC50(μM)
(平均値) 95%CI 最大弛緩率 (平均値±標準誤差) ミラベグロン(n=5) 5.1[1] 3.1–8.4 94.0±1.0 イソプロテレノール(n=5) 1.4[3.7] 0.83–2.3 78.0±1.5
CGP-12177A※(n=5) >100[<1/19] N.D. 19.4±1.2
※:β3-AR agonist、[ ]:ミラベグロンを1としたときの効力比、N.D.:検出されず
ヒト膀胱平滑筋
②
[方法]
カルバコールによる持続性収縮を惹起させたヒト摘出膀胱平滑筋において、収縮に対するミラベグロン 及びイソプロテレノールの作用を検討した。0.1μmol/L カルバコールにより誘発したヒト摘出膀胱の持 続性収縮が安定した後、被験薬を10分間隔で累積添加した。被験薬添加終了後、100μmol/Lパパベリン を添加し、その作用を100%としてEC50値及び最大弛緩率を算出した。
[結果]
カルバコールにより持続性収縮を惹起させたヒト摘出膀胱において、ミラベグロンは濃度依存的な弛緩 作用を示した。その効力及び最大反応は、非選択的βアドレナリン受容体完全活性薬であるイソプロテ レノールに匹敵した。
ヒト摘出膀胱における弛緩作用(in vitro)
(n=4~6) 平均値±標準誤差
*(CGP-12177A) (β3-AR agonist) EC50値(μmol/L)
(平均値) 95%CI 最大弛緩率(%) (平均値±標準誤差) ミラベグロン(n=6) 0.78[1] 0.32-1.9 89.4±2.3 イソプロテレノール(n=4) 0.28[3] 0.051-1.5 85.6±2.7
CGP-12177A (n=5) >100[<1/130] N.D. 48.2±7.2
[ ]:ミラベグロンを1としたときの効力比、N.D.:検出されず イソプロテレノール
ミラベグロン CGP-12177A*
作動薬濃度(-log mol/L)
弛緩率
-38-
4)膀胱内圧上昇に対する作用7)
ラット静止時膀胱内圧
[方法]
ペントバルビタール麻酔ラットの膀胱内に生理食塩水を注入し、膀胱内圧が約6cmH2Oで安定した後、
ミラベグロン、トルテロジン及びオキシブチニンの静止時膀胱内圧に対する作用を検討した。
[結果]
ミラベグロン(0.003~3mg/kg iv)は0.03mg/kg iv以上で静止時膀胱内圧を低下させた。
一方、オキシブチニン(0.001~1mg/kg iv)及びトルテロジン(0.0003~0.3mg/kg iv)は明らかな静止時膀胱内 圧低下作用を示さなかった。
ペントバルビタール麻酔ラットにおける静止時膀胱内圧に対する ミラベグロン、トルテロジン及びオキシブチニンの作用
5)律動性膀胱収縮に対する作用34)
ラット
[方法]
ウレタン麻酔ラットの膀胱内に生理食塩水を注入することで惹起した律動性膀胱収縮の最大収縮時膀胱 内圧に対するミラベグロン及びオキシブチニンの静脈内投与時の作用を検討した。
[結果]
オキシブチニン(0.027~2.7mg/kg iv)は0.27mg/kg iv以上で最大収縮時膀胱内圧を低下させた。一方、ミ ラベグロン(0.03~3mg/kg iv)は3mg/kg ivでも最大収縮時膀胱内圧に影響を及ぼさなかった。
ウレタン麻酔ラットにおける律動性膀胱収縮に対する ミラベグロン及びオキシブチニンの作用(静脈内投与)
6)平均1回排尿量及び排尿回数に対する作用 脳梗塞ラット29)
①
[方法]神経学的欠損を示す脳梗塞ラット及び偽手術を施行したラットを用い、ミラベグロン 0、3、1 又は3mg/kg、オキシブチニン10mg/kg)又は対照(0.5%メチルセルロース)物質を3mL/kgをそれぞれ経口 投与し、平均1回排尿量を検討した。
[結果]脳梗塞ラットは、偽手術ラット(1.74±0.22mL)と比較して、排尿あたりの排尿量の有意な減少
(0.71±0.06mL)を示した。脳梗塞ラットでは、オキシブチニン(10mg/kg)が排尿あたりの排尿量を有意に
増加させた。ミラベグロン0.3〜3mg/kgは平均1回排尿量を増加させ、また、用量依存的に平均1回排 尿量は増加した。
脳梗塞ラットの平均1回排尿量に対するミラベグロンとオキシブチニンの効果
偽手術n=5、溶媒&ミラベグロンn=8、オキシブチニンn=7 平均値±標準誤差
無麻酔カニクイザル35)
②
[方法]無麻酔カニクイザルを用い、蒸留水(50mL/kg)を強制経口負荷した後8時間以内の平均1回排尿 量及び排尿回数に対するミラベグロンの作用を無麻酔・無拘束下において検討した。
[結果]ミラベグロン(0.3~3mg/kg po)は3mg/kg poで平均1回排尿量を増加させ、1mg/kg po以上で排尿 回数を減少させた。
無麻酔カニクイザルにおける平均1回排尿量 及び排尿回数に対するミラベグロンの作用
-40-
7)排尿機能に対する作用36)
[方法]
尿道部分閉塞ラットを用いて、無麻酔下でシストメトリー試験を実施し、ミラベグロン、トルテロジン 及びオキシブチニンの排尿前収縮回数及び残尿量に対する作用を検討した。
[結果]
ミラベグロン(0.1~3mg/kg iv)は残尿量には影響を及ぼすことなく、1mg/kg iv以上で排尿前収縮回数を減 少させた。
尿道部分閉塞ラットにおける排尿前収縮回数及び残尿量に対する ミラベグロン、トルテロジン及びオキシブチニンの作用 排尿前収縮回数
残尿量
作用発現時間・持続時間
(3)
該当資料なし