感染性で培養陽性の眼内炎の発症率は 0. 5% である。トリアムシノロンアセトニドを投与す る場合は,常に適切な無菌化手段を用いるべきである。また,感染症が生じた場合に直ち
7 薬物との相互作用 アムホテリシン B
アムホテリシン
Bとヒドロコルチゾンの併用に心肥大及びうっ血性心不全が続発した症例 が報告されている。カリウム除去薬類を参照のこと。
抗コリンエステラーゼ類
抗コリンエステラーゼ剤とコルチコステロイド類との併用は,重症筋無力症患者における 重度の筋力低下を生じることがある。可能な場合には,コルチコステロイド療法開始の少 なくとも
24時間前に抗コリンエステラーゼ剤の投与を中止すべきである。
抗血液凝固薬
通常,コルチコステロイド類とワルファリンとを併用投与すると,ワルファリンに対する 反応が阻害されるが,これに相反する報告もいくつかある。したがって,凝固指数を頻繁 に測定して,必要な抗血液凝固効果を維持すべきである。
抗糖尿病薬
コルチコステロイド類は血中グルコース濃度を増大させることがあるため,抗糖尿病薬の 用量調節が必要なこともある。
抗結核薬類
イソニアジドの血清中濃度が低下することがある。
CYP 3A4
誘導物質(例えばバルビツール酸塩類,フェニトイン,カルバマゼピン,リファンピン)
肝臓ミクロソーム薬物代謝酵素活性を誘導する,バルビツール酸塩類,フェニトイン,エ
フェドリン,リファンピン等の薬剤は,コルチコステロイド類の代謝を促進することがあ
り,そのため,コルチコステロイド類の増量が必要になることもある。
28
CYP 3A4
阻害物質(例えば,ケトコナゾール,マクロライド系抗生物質)
ケトコナゾールは,ある種のコルチコステロイドの代謝を最大
60%低減させ,コルチコス テロイドの副作用のリスクを増大させることが報告されている。
コレスチラミン
コレスチラミンは,コルチコステロイド類のクリアランスを増大させることがある。
シクロスポリン
シクロスポリンとコルチコステロイド類とを併用すると,双方の活性が上昇することがあ る。この併用によるけいれんが報告されている。
ジギタリス
ジギタリス配糖体を投与されている患者は,低カリウム血症による不整脈のリスクが増大 することがある。
経口避妊薬を含むエストロゲン類
エストロゲン類は,ある種のコルチコステロイドの肝代謝を低減させてそれらの効果を高 めることがある。
アスピリン及びサリチル酸塩類を含む
NSAIDsアスピリン又は他の非ステロイド性抗炎症薬とコルチコステロイド類との併用は,胃腸に おける副作用のリスクを増大する。アスピリンは,低プロトロンビン血症において,コル チコステロイド類と注意深く併用するべきである。コルチコステロイド類との併用により,
サリチル酸塩類のクリアランスが増大することがある。
カリウム除去薬類(例えば,利尿剤類,アムホテリシン
B)
コルチコステロイド類をカリウム除去薬と併用投与する際は,低カリウム血症が発症しな いか患者を綿密に観察すべきである。
皮膚試験薬類
コルチコステロイド類は,皮膚試験薬類に対する反応を抑制することがある。
タンパク毒素類並びに生ワクチン類及び不活性化ワクチン類
長期間コルチコステロイド療法を受けている患者は,抗体反応の抑制により,タンパク毒
素類並びに生ワクチン類及び不活性化ワクチン類に対する反応が低下することがある。コ
ルチコステロイド類は,弱毒化生ワクチンに含まれているいくつかの微生物の複製を増強
することもある。
29 8.
特定個体群における使用
8.1.
妊婦
8.2.
催奇形効果:妊娠カテゴリー
D[警告及び使用上の注意,
5.10を参照のこと]
ヒトにおける多くのコホート研究及び症例対照研究は,妊娠初期の間の妊婦におけるコル チコステロイドの使用により,口蓋裂あり又はなしの口唇裂の率がおよそ
1例
/胎児
1,000名から
3~
5例
/胎児
1,000名に上昇することを示唆している。
2件の前向き症例対照研究は,
子宮内で母親からのコルチコステロイド類に曝露された胎児は,出生時の体重が低下する ことを示した。
トリアムシノロンアセトニドは,ラット,ウサギ,及びサルにおいて,催奇形性であった。
ラット及びウサギにおいて,トリアムシノロンアセトニドは,吸入用量
0.02 mg/kg以上で 催奇形性であり,サルにおいて,トリアムシノロンアセトニドは,吸入用量
0.5 mg/kg(ヒ トにおける推奨用量の
1/4倍及び
7倍)で催奇形性であった。ラット及びウサギにおける 用量依存性催奇形効果には,口蓋裂並びに/あるいは内部水頭症及び軸骨格欠損が含まれて いたが,サルで認められた効果は頭蓋奇形であった。このような効果は,他のコルチコス テロイドでも同様であった。
妊娠期間中,コルチコステロイド類は,胎児に対して予想される利益が予想されるリスク を上回る場合にのみ,使用すべきである。妊娠中にコルチコステロイド類を投与された母 親から生まれた幼児については,副腎機能低下症の徴候を注意深く観察すべきである。
8.3.
授乳期間中の母親
コルチコステロイド類は,母乳内に分泌される。複数の報告は,母乳中の各ステロイドの 濃度が母親の血清濃度の
5~
25%であり,したがって幼児の
1日当たりの合計用量は小さ く,母親の
1日当たりの用量の
0.2%未満であることを示唆している。母乳を介して幼児が ステロイド類に曝露されるリスクは,母親及び幼児の双方にとって授乳により得られる既 知の利益と対比して,考慮すべきである。
8.4.
小児における使用
小児におけるコルチコステロイド類の有効性及び安全性は,小児でも成人でもほぼ同様で あり,コルチコステロイド類の作用機序に基づいている。
小児におけるコルチコステロイド類の有害効果は,成人の場合と同様である[有害事象,
6を参照のこと] 。
成人の場合と同様に,小児患者についても,血圧,体重,身長及び眼圧を頻繁に測定する ことにより注意深く観察し,感染症,心理社会的障害,血栓塞栓症,消化性潰瘍,白内障,
及び骨粗鬆症の有無を臨床的に評価するべきである。コルチコステロイド類の全身投与を
含め,何らかの経路でコルチコステロイド類により治療されている小児は,成長速度の低
30
下を経験することがある。成長に対するコルチコステロイド類の負の効果は,低全身用量 でも認められているが,研究レベルで
HPA軸抑制(すなわち,コシントロピン刺激及び基 礎コルチゾン血漿濃度)のエビデンスはない。したがって,いくつかの通常使用される
HPA軸機能の試験法よりも成長速度が,小児における全身性コルチコステロイド曝露のより高 感度な指標となる。何らかの経路でコルチコステロイド類により治療されている小児の成 長過程をモニターし,長期間の治療で予想される成長への影響を,得られる臨床的利益と 対比して考慮し,他の治療法の可能性も考慮すべきである。コルチコステロイド類の成長 への影響を最小限にするため,小児には用量を漸増して最小有効量とすべきである。
8.5.