第 2 章 ソラネズマブの反復投与時の薬物動態及び薬力学解析
2.3 方法
2.3.4 薬物動態解析
ソラネズマブのPKはNONMEMプログラム(Version VI)を用いて、母集団薬物動態解 析を行った。なお、日本人を対象とした試験と外国人を対象とした試験それぞれについて 母集団薬物動態解析を実施した。PKモデルとして2-コンパートメントモデルを仮定し、ソ ラネズマブのPKパラメータの推定を行った。また、ソラネズマブのPKに影響を及ぼす可 能性がある因子について検討を行った。母集団薬物動態解析におけるモデリングは図 2-1 に示す手順で実施した。
図 2-1. 母集団薬物動態解析におけるモデリングの手順
Define a structural and statistical model (no covariates)
Base Model Objective Function Mapping
Add each potential covariate individually to the base model.
Does the addition of the potential covariate cause a decrease in objective function of at least 6.635 points (2distribution, p<0.01) ?
Remove each covariate from the Full Model individually.
Covariate retained.
Final Model
Does the removal of the covariate cause an increase in the objective function of at least 10.828 points (2distribution, p<0.001) ? Base Model Development
Imprecise Parameter Estimates
YES
NO Covariate removed from analysis.
Covariate retained.
Covariate Selection
YES
NO Covariate removed from model.
Final Model Development
Selected Model Evaluation Technique(s) Build a model which includes all potentially significant covariates.
Full Model
Model Evaluation
Define a structural and statistical model (no covariates)
Base Model Objective Function Mapping
Add each potential covariate individually to the base model.
Does the addition of the potential covariate cause a decrease in objective function of at least 6.635 points (2distribution, p<0.01) ?
Remove each covariate from the Full Model individually.
Covariate retained.
Final Model
Does the removal of the covariate cause an increase in the objective function of at least 10.828 points (2distribution, p<0.001) ? Base Model Development
Imprecise Parameter Estimates
YES
NO Covariate removed from analysis.
Covariate retained.
Covariate Selection
YES
NO Covariate removed from model.
Final Model Development
Selected Model Evaluation Technique(s) Build a model which includes all potentially significant covariates.
Full Model
Model Evaluation
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2.3.4.1 基本モデルの構築
PK 解析モデルは基本モデルの構築から始めた。このプロセスには、PK 解析に用いるコ ンパートメントモデルの選択、PKパラメータの個体間変動の検討、残差変動の検討が含ま れる。
個体間変動は対数誤差を仮定し、それぞれのPKパラメータに対して個別に検討した。ま た、個体間変動の交互作用についても検討を行った。残差変動については、比例誤差、等 誤差モデル、及びこれらの混合モデルについて検討を行った。
基本モデルの検討の後、目的関数マッピングにより、解析結果が局所解に収束せず、適 切にPKパラメータが推定されていることを確認した。
2.3.4.2 共変量の検討
基本モデル構築の後、患者因子がソラネズマブのPKに及ぼす影響について検討した。検 討を行った因子を表2-1に示す。
表2-1. 母集団薬物動態解析においてPKパラメータに対する影響を検討した患者因子
患者因子 その他
日本人を対象とした試験 年齢 体重 BMI 性別
投与スケジュール
(1週間毎、1ヶ月毎、2ヶ月毎)
外国人を対象とした試験 年齢 体重 BMI 性別
病態(AD患者、健康成人)
投与量
投与スケジュール
(1週間毎、1ヶ月毎)
NONMEMソフトウェアを用いてそれぞれの患者因子がそれぞれのPKパラメータに及ぼ
す影響を検討した。患者因子が連続変量の場合、パラメータとの相関を以下の線形及び非 線形の式を用いて検討した。
P = Θ1 • (1 +Θ2•(COV – MED))
28 P =Θ1 • EXP(Θ2•(COV – MED))
P =Θ1 • (COV/MED)** Θ2
ここでPはPKパラメータ(CLやV等)の推定値、Θ1は推定されるパラメータの代表値、
Θ2は患者因子の影響の大きさを表す。また、COV は患者因子を、MED は患者因子の中央 値を表す。
以下の基準を満たしたときにその患者因子をモデル中に残すこととした。
NONMEMでのパラメータ推定及び共分散の算出が収束する
既知の情報と比較したとき、PKパラメータ及び誤差が妥当な値である
PKパラメータ及び誤差の精度が良好である
ベースモデルと比較したときの目的関数の差があらかじめ設定した基準である6.635 以上である(p<0.01)
臨床上意味がある変動である
患者因子を組み込んだパラメータの個体間変動が5%以上減少する
血漿中濃度の推定値と実測値が妥当である
血漿中濃度の推定値に対して重み付き残差をプロットしたとき、均等に分布する
2.3.4.3 フルモデル及び最終モデルの構築
前項の共変量の検討で有意であった患者因子をすべて組み込んで、フルモデルを作成し た。因子間での相関が高い、あるいは生理学的に関連があることが分かっている因子(例 えば体重、BMI、脂肪抜き体重など)については別に検討し、最も関連がある因子のみをフ ルモデルに組み込んだ。
フルモデルを構築した後、変数減量法により共変量候補の因子についての有意性を 1 つ ずつ確認した。すなわち、フルモデルから組み込んだ因子を 1 つ抜き、フルモデルと比較 したときの目的関数の差が10.828以上増加しない場合(p<0.001)、その因子は有意でない
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としてモデルから外すこととした。モデル中に残る患者因子がすべて有意であることが確 認できるまでこの手順を繰り返し、最終モデルを得た。
2.3.4.4 モデルの妥当性評価
2.3.4.4.1 パラメータ感度分析
目的関数マッピングによるパラメータ感度分析により、推定されたパラメータが局所解 で収束していないことを確認し、さらにパラメータの95%信頼区間を算出した22,23。最終モ デルにより推定されたパラメータのうち、特定のパラメータを±5、10、15、20、30、40%ず らした値で固定し、NONMEMにより他のパラメータを推定した。パラメータの値に対して 目的関数の変化をプロットし、多項式回帰によりフィッティングをして 95%信頼区間を得 た。χ2分布の自由度1を仮定すると、パラメータを動かしたときに目的関数が3.841変化す
る範囲が95%信頼区間と一致する。
2.3.4.4.2 レバレッジ解析
最終モデルに対して特定の患者のデータがパラメータの歪みをもたらしていないかどう かを確かめるためにレバレッジ解析を実施した。本解析において、患者をランダムにサブ セットに分けた。それぞれのサブセットには全患者の 10%が含まれる。全データからこれ らのサブセットデータを除いた(すなわち全体の 90%のデータが含まれる)レバレッジ解 析用のデータセットを 10 セット作成した。これら 10セットのデータセットを最終モデル
を用いて NONMEM によりパラメータを推定した。それぞれのレバレッジ解析用データセ
ットから得られたパラメータを、全患者のデータセットから得られたパラメータと比較し た。レバレッジ解析用データセットから得られたパラメータが、全患者のデータセットか ら得られたパラメータの 95%信頼区間(目的関数マッピングで算出)を外れた場合や、何 らかの系統的な傾向が認められた場合、特定のデータが最終モデルにひずみをもたらして いる可能性が考えられる。
30 2.3.4.4.3 Visual Predictive Check
最終モデルが用いたデータを正しく反映していることを確認するため、Visual Predictive
Check(VPC)を行った。VPCはすべてのパラメータの誤差、すなわち個体間変動や残差変
動を考慮してPKデータのシミュレーションを行う必要がある。シミュレーションにより得 られた血漿中濃度の分布を実際の血漿中濃度と比較した。