第 4 章 事例研究
4.4 胃潰瘍 13 C診断薬(東京ガス)の開発事例
従来のイノベーションスタイルは、市場に顕在もしくは潜在的ニーズがあったの で、そのニーズに整合を取る形でイノベーションが行われた。これは、過去のさま ざまな事例から営業も開発・設計・製造も情報が比較的容易に取得でき、しかも経 験知も豊富であったので、比較的確度高く、また比較的容易にできたイノベーショ ンであった。これに対し、新しいイノベーショ ンスタイルは、図表−24 に示すよ うに、新たに市場を創造することである。これは、情報も極端に少なく、過去の経 験知もないことから、大変苦労するイノベーションである。経験知がほとんど無い ので、関係する企業・顧客等が協業という形でいろいろな経験知を共有するととも に、自由で豊かなコミュニケーションを行うことによってイノベーションを起こす ものであると言える。
東京ガスホームページhttp://www.ftken.com/medic/medic3.htmlより引用
図表−25 13C−尿素呼気テストの原理説明図
4.4.2 ビジネス形成・発展形態の解析
1980 年前半に、胃潰瘍の原因がH.ピロル菌によることが発表された。その性質 を調査しているうちに、天然ガスの主成分である炭素の同位元素が活用できるので はとの予測が立ち、フロンティア研究所を創設して、研究開発が開始された。1988 年パイロットプランがスタートし、13Cメタンを分離濃縮するプロセスを世界に先 駆けて開発した。東京ガスは、この低温精密蒸留法により13Cメタンを製造する会 社東京ガスケミカルをパートナーとして、新しいビジネス創造に着手した。
図表−26 開発経緯の概要
当時、石油ショックも終わり為替も安定し社内の資金が潤沢であったので、事業 として多角化が目指されており、天然ガスの新しい活用方法が模索されていた。一 方東京ガスケミカルは開発した低温精密蒸留法の活用拡大をめざしており、フロン ティア研究所の、値段が高く輸入に依存していた13Cのトレーサを自ら製造してビ ジネス化することを望んでいた。事業と親和性のある13Cの需要を広げるためには、
どうしても医療面、特に診断薬にターゲットを絞ることが必要と考え、診断薬のビ ジネスを重点的に実施していた大塚製薬に提案し、パートナー化をはかった。
こうしてビジネス創造にまい進することとなった。このプロセスを図式化すると 図表−
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となる。LNGの新しい活用方 法を考えたい。
診断薬のビジネス領 域を拡大したい。
駆動目標の合致 サービス業者 製薬会社
低温精密蒸留法を 活用促進したい。
原料製造業者
ヘリコバクター・ピロリ菌 有無の診断にC13活用
ラフビジネスモデルの創造
C13メタンの濃縮度を 上げなければならない 低温精密上流法を
開発
ビジネスモデル案の決定 市場の創生 更なる市場の創生
C13-尿素呼気テスト法を 提案
“場”
“場”
“場”
図表−
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ビジネス・形成図