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民法第968条に次のような規律を加えるものとする。

民法第968条第1項の規定にかかわらず、自筆証書中の財産の特定に必 要な事項については、〔加除その他の変更の場合を除き、〕自書によることを 要しない。この場合においては、遺言者は、自書によらない部分がある全て の頁に署名し、かつ、これに印を押さなければならない。

【意見】

賛成する。但し、印については全て同一の印で押印する必要があり、契印 も必要であると考える。

また、「〔加除その他の変更の場合を除き、〕」の部分は、ブラケットを外し て導入すべきである。また、仮に当該部分を削除する場合には、財産の特定 に必要な事項の加除訂正の方法を、特則として明文で詳しく定めるべきであ る。

【理由】

1 「財産の特定に必要な事項」の自書性の緩和について

本提案においては、「財産の特定に必要な事項」すなわち財産目録の作成

についての自書性を緩和している。この点、「財産の特定に必要な事項」に ついては、部会資料17の3頁において不動産登記事項証明書や預金通帳 等を用いることも認められているのであるから、これらについては、自書 を必須としてなくても、遺言者の真意にでたものであることを明確化する 上で支障にならないと考えられるため、賛成する。

2 押印について

(1)本提案では、財産目録の作成についての自書性を緩和した場合、遺言 書本文と財産目録との一体性を確保し、方式緩和に伴い生じ得る偽造、変 造のリスクを軽減する観点からも、自書によらない部分がある全ての頁に 署名及び押印を要求している。

自書によらない頁への署名押印を要求する点については、遺言者の真意 を明確化するため必要かつ合理的であると考えるため、賛成する。この点、

「財産の特定に必要な事項」を記載した頁に自ら署名をすれば文書の同一 性を確保できることを理由に、かかる場合には押印は不要としてもよいと も考えられるが、自筆によることを要しないとすることによって偽造・変 造の危険性が増大することへの懸念もあることからすれば、自らの署名の 有無を問わず、押印も要求すべきである。

(2)他方で、押印の同一性については、本提案と異なり、偽造・変造がな いことを明確にするために、全て同一の印で押印する必要があると考えら れる。つまり、通常、遺言書を作成するときには、遺言者は、自身が保有 するすべての財産について遺言の内容を決め、すべての頁が整った後、一 気に全ての押捺を完了することが通常と考えられるから、全て同一の印で 押印するのが通常だと考えられる。それにもかかわらず違う印で押印され ているということは、偽造・変造の疑いが相当程度存在することを意味す るものではないかと思われる。このように、遺言書作成において、遺言書 の真正に関する紛争の危険性を増大させてまで、複数の印の押捺を認める だけでの合理的な必要があるとは考え難い。

(3)契印については、現行法のとおり遺言書全体が自書されている場合に は、自書によりその一体性を判断することが容易であるから、契印を必要

としない現行法どおりの取扱いでよいと思われる。しかし、財産目録につ いて自書がなされていない場合には、印章を冒用し記名の数文字のみを偽 造することによるページ差し替えをなるべく防ぐために、自書に代えてそ の一体性を確保する方法が必要であり、その方法として契印を要求するべ きである。自書性を緩和し、さらに契印をも要求しないとの立場をとると、

遺言書の一体性・真正性の確保がより困難になってしまう。

また、公正証書遺言の作成においては、法律上契印が要求されている(公 証人法39条5項等参照)。これに対し、遺言書の一部が自書されていない 自筆証書遺言の作成に契印を不要とすることは、専門的知識を有する者が 関与のうえ遺言書を作成する場合よりも、専門的知識のない者が遺言書を 作成する場合に形式が緩和されることとなるから、現行法との整合性がと れないようにも思われる。

3 加除訂正の方式について

(1)部会資料23-2の11頁において、「遺言の加除訂正の方式の場面の み財産目録の自筆を要求する必要は必ずしもないようにも思われるところ である」との説明がされた。具体的な方法としては、別紙として添付して いた財産目録を削除し、修正した財産目録を添付する方法で加除訂正を行 う場面で、旧財産目録を新財産目録のとおり訂正する旨の文言を自書し、

かつ、新たな財産目録の全ての頁に遺言者の署名押印をする方法が提案さ れている。

この点、加除その他の変更については、それがわかるように自書するこ とで遺言者の真意が明確になる。すなわち、加除訂正は自書部分が少ない 形で内容を変更できる方法であるため、例えば、部会資料23-2の方法 では、真の加除訂正後、勝手にページが差し替えられてしまった場合、署 名押印さえ偽造できれば遺言書の中身を大きく変更することが可能になっ てしまう。なお、上記1のとおり、財産の特定に必要な事項について署名 押印だけでよいとすると、加除訂正が行われていなくても、勝手に財産目 録のページを差し替えて署名押印を偽造することが試みられうる。しかし、

契印を要件とすることによって偽造をある程度までは防げる(前記2(3)

のとおり)ため、財産の特定に必要な事項についての加除訂正の自筆性を 緩和した場合と同じとは言えないと思われる。また、前回のパブリックコ メントにおいて、自筆証書遺言の方式緩和について、偽造及び変造のリス クを懸念する意見が寄せられたことからすれば、加除その他の変更につい て要件を緩和してしまうことで、偽造変造のリスクを高めてしまうことは 妥当ではない。加えて、加除その他の変更について、自書ができないなら ば、新たに遺言書を作成する対応をとることもできるため(「財産の特定に

必要な事項」の書類を活用すれば、自筆部分は現在よりも少なくて済む)、

緩和する必要もそれほど大きくはない。よって、加除その他の変更の場合 には全ての変更点について自書を必要としないという提案には反対する。

(2)仮に、本提案のとおり、加除その他の変更の場合には、財産の特定に 必要な事項についての自書を要求しないとする場合、せめて、部会資料2 3-2の参考資料のように、財産目録を削除する場合にも削除対象の財産 目録を廃棄しないで残す、自書された本文にも修正箇所を作る(加除印を 押印する)、等の方式を満たして修正すべきと思われるが、これらの方式を 民法968条および本提案の文言から読み取ることは困難である。よって、

財産の特定に必要な事項の加除訂正の方法を、特則として明文で詳しく定 めるべきである。