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第 6 章 実験結果及び考察

6.4 腰部圧縮力

6.4.2 腰部圧縮力最大値

6章 実験結果及び考察

6章 実験結果及び考察

79 かったためである.

静止立位時にも1000[N]程度の腰部圧縮力が確認された.そこで,静止立位時と体幹 が屈曲した際の腰部圧縮力を比較してみる.おもりの質量を変化させた場合,0[kg]で

は2.7~3.0倍,5[kg]では3.2~3.5倍,10[kg]では3.8~4.0倍,15[kg]では4.4~5.0倍の

腰部圧縮力が働いたことが確認された.こうした比較は,腰部圧縮力に関する知識の無 い者でも動作時における腰部圧縮力を容易に理解することを可能とする.したがって,

本手法は腰部圧縮力を一般に周知する際に有用であると考える.

以上のことから,本研究で得られた知見は日常生活における腰部障害の防止や労働環 境における労働災害の防止,持ち上げ動作を補助するパワーアシスト装置の開発などに 役立てることができると考える.さらに,本手法は腰部障害を防止するためには最適な 質量や持ち上げ速さ,姿勢を解明するために有用な手法であることが示された.

6章 実験結果及び考察

図6.59 腰部圧縮力の最大値

図6.60 腰部圧縮力最大値とおもり質量の相関

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000

0 5 10 15

A (3.0s) B(3.0s) A (1.5s) B(1.5s) (n=7 ± S.D.)

motion type

compression force[N]

load mass[kg]

compression force[N]

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7 章 結 言

本研究では,腰部障害防止の実現を目的として,主に腰部圧縮力を指標として持ち上 げ条件間での差異を比較,検討することにより,持ち上げ動作における体幹の特性を明 らかにした.その結果,以下の知見が得られた.

・筋張力

持ち上げ動作の実験から,腹直筋はおもりを持ち上げる際には活動がほとんど見られ なかったこと,外腹斜筋はおもりを持ち上げる際には活動がほとんど見られなかったこ と,内腹斜筋はおもりを持ち上げる際には活動がほとんど見られなかったこと,脊柱起 立筋はおもりを持った直後に活動が大きくなったことが分かった.

これらのことから,持ち上げ動作時の腰部圧縮力に影響を与える筋は脊柱起立筋であ ることが明らかとなった.

・受動要素

持ち上げ動作の実験から,椎間板の発揮するモーメントは関節モーメントの1%以下の モーメントしか発揮していないこと,腹圧モーメントは関節モーメントの2~3%の値し か発揮していないこと,靱帯の発揮するモーメントは関節モーメントの1%以下のモー メントしか発揮していないことが分かった.

これらのことから,持ち上げ動作時の腰部圧縮力には受動要素は大きな影響は与えな いことが明らかとなった.

・腰部圧縮力

持ち上げ動作の実験から,本実験で用いた腰部圧縮力算出手法が有用であること,おも りを持ち上げた直後に最大値を記録すること,おもりの質量を増加していくと腰部圧縮力 も増加していくこと,持ち上げ速さを速くすると腰部圧縮力が増加することが確認された.

これらのことから,腰部障害を防止するためには最適な質量や持ち上げ速さ,姿勢が存 在し,腰椎障害による腰部障害を防止できることが示唆された.

これらの知見は日常生活における腰部障害の防止や労働環境における労働災害の防 止,持ち上げ動作を補助する装置などの開発に役立てることができると考える.

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鐙 邦芳,Panjabi, M.M., のための解剖とバイオメカニクス-

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