渡邊 晃紘・土山 秀樹 医療法人いずみ会 阪堺病院
Key words:退院支援・家屋調査・介護保険 サービス調整
【はじめに】
今回、第4腰椎圧迫骨折後遅発性麻痺を呈し、
長期の床上安静期間を経過した症例を通して、
在宅への全人的復帰を目指した退院支援を経 験したため、報告する。
【症例報告】
80代女性、エレベーター付きマンション9 階にて独居で生活されており、基本的日常生 活活動(以下ADL)は独歩にて自立。X年4月中 旬に自宅で転倒し、5月初旬に立位・歩行困難 となり加療目的で当院入院。
理学療法開始時点で体幹・両下肢全体的に徒 手筋力テスト2~3レベルの著名な筋力低下認 め、立位保持困難。一時は歩行器歩行自立す るも、6月下旬より臀部痛増強し起立困難とな る。その後「第4腰椎圧迫骨折後遅発性麻痺」
と診断され、主治医より安静度床上安静へ変 更となる。㋆下旬後方除圧固定術施行。
【経過・評価】
6月下旬に疼痛出現後、坐骨神経痛様の所見 を認め、画像所見上、第4腰椎の圧潰、L4、L5 神経根の圧迫を認めた。術後は疼痛消失し、
下肢の筋力・ADLは徐々に向上したが改善は緩 徐であり、杖歩行自立時点でのFunctional reach test(以下FRT)10cm、Timed up and go test (以下TUG)29秒57であり屋内移動の基準 は満たすも、転倒カットオフ値を大きく下回 る状態であった。
家屋調査にて、機能的自立度評価法(以下 FIM)117点であり、入浴・移動・段差昇降に減 点項目を認め、手段的ADLはFrenchay Activities Index(以下FAI)で7点であった。
家屋調査時に実施した「ロコモ25」の回答で は退院後の生活について不安な項目が散見さ
れた。
家屋調査後、自宅環境を想定した段差昇降・
独歩・立ち上がり等の介入を行い、退院直前 のFRTでは18cm、TUG15秒15となる。静的・動 的共に転倒リスク軽減を認め、入浴・段差昇 降の実用性が向上したことでFIM122点に向上 する。退院直前に再度実施したロコモ25の回 答では主に屋内活動における不安を感じる動 作・活動項目が減少していた。
【退院支援】
理学療法開始時点で娘家族との同居を提案 するも、本人と家族の意向で自宅退院方向と なる。機能改善・ADL向上には長期間の介入が 必要であると判断し、介護保険サービスの利 用を目的に新規に要介護3認定を受ける。
その後の家屋調査を本人、介護支援専門員、
改修業者同伴で行い、トイレ補高・浴室戸な どの改修、シャワーチェア・ベッド柵などの 福祉用具レンタル・家具配置転換を行い、上 肢支持が得られにくい家事はヘルパーを利用 することを提案した。
また、退院までの期間で、機能訓練に並行 し、自宅環境を想定した介入を行った。結果、
9月中旬に本人の希望に沿い杖歩行での自宅 退院となる。退院後は当院訪問リハビリ利用 にて、機能的に不十分である部位には引き続 き介入を行い、家事動作の自立・活動範囲の 拡大を支援することとし、1か月間でFAIにて 23点まで手段的ADLの改善を認めた
【考察】
高齢者の転倒後症候群として精神的トラウマが 活動性の制限要因となり、自信喪失・不安を訴 える症例は転倒者の 50%に及ぶと報告されて おり、高齢になるほど傾向が顕著に出るとされ ている。今回、退院前に本人同伴で家屋調査や サービス調整行い、家屋内障壁の確認や改善を 行った。また、自宅を想定した動作訓練や、退 院後も訪問リハビリにて生活支援を行うことが 精神的な負担軽減に至ったと考えられる。
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25. 2型糖尿病患者に対し、教育入院 にて運動療法・運動指導を行いその後 血糖コントロールが改善した一症例
山口陽平・田口厚介・武内康浩 公益財団法人 浅香山病院
Key words:糖尿病・行動変容・運動指導
【はじめに】
当院では、2015 年より血糖コントロール不 良の糖尿病(以下 DM)患者に対して教育入院 クリニカルパス(以下パス)に沿って多職種で の DM 患者教育に取り組んでいる。薬物療法・
食事療法と共に、理学療法士として運動療 法・運動指導を行うことで退院後も血糖コン トロールが改善し、運動の行動変容ステージ
(以下ステージ)の変化とともに日常の身体 活動量(Physical Activity:PA,歩数/日)が増 加した症例を担当したので報告する。
【症例紹介】
症例は 40 歳代の女性。診断名は 2 型 DM(腎 症1期)、併存症に高コレステロール血症・高 脂血症がある。現病歴として 10 数年前に糖尿 病と診断され、食事療法を行い、血糖コント ロールはできていた。しかし、仕事を始めた ことで食生活が乱れて、体重が増加し、血糖 コントロール不良となり教育入院となった。
投薬はアマリール・ジャヌビア・メトグルコ・
ランタス。仕事はデスクワーク中心で勤務は 週 6 日。通勤は車。週 1 回は仕事上 4.0Mets 程度の活動を行っている。
【理学療法評価】
身長 163.8cm、体重 90.4kg、BMI33.69(肥 満Ⅱ度)、身体機能異常なし、ADL・IADL 自立、
初回の運動に対するステージは熟考期であっ た。検査データより空腹時血糖 326mg/dl、
HbA1c11.3%と血糖コントロール不良が認め られた。
【運動指導内容・経過】
本症例は 2 週間のパスであり、運動指導は 月・水・金曜日の計 6 回行った。パス期間中、
身体活動量計(KENZ ライフレコーダーGS)を
終日装着し、歩数・活動量をデータ測定した。
熟考期には運動療法の指導・実施(レジスタン ストレーニングと有酸素運動)、スモールチェ ンジアプローチ(日常生活内でわずかに行え る活動に注目した技法)を行った。また達成 できる目標(普段の歩数の+2000 歩)を設定 し、できる自信をつけていただいた。ステー ジが準備期となり、熟考期のアプローチを継 続し、負荷量の増加、症例が希望された仕事 場でできるチューブエクササイズを作成し指 導した。また最終日に身体活動量計のデータ を用いてフィードバックを行った。
【結果】
2 週間パスで、PA は 1〜2 回目の熟考期では 平均 3335 歩、3 回目より平均 6106 歩と PA 増 加した。4~6 回目の準備期では平均 8206 歩 であった。パス終了後 3 カ月の PA は 8000~
10000 歩を維持できた。検査データの変化と して、初回・最終・3 ヶ月後の順に記載して いく。空腹時血糖 326 mg/dl・104 mg/dl・128 mg/dl、HbA1c11.3%・8.8%・6.7%と改善、
体重も 90.4kg・88.6kg・87.0kg と減少し、退 院後も血糖コントロールが維持できた。
【考察】
今回、パス中とその後 3 ヶ月時点で血糖コ ントロールが改善・維持できた。症例にステ ージに合わせ運動指導・生活指導を行ったこ とで、パス後 3 ヶ月に準備期から行動期へと 変化した。武井らの研究では、短期間でのス テージの変化率は塾考期から準備期への変化 が 75%に対し、準備期から行動期への変化は 50%と低くなる傾向がある。行動期の基準は 望ましい運動を開始することであり、急激な 身体活動の増加による疼痛出現や、達成困難 な目標による運動中断が起こる可能性がある。
本症例が準備期から行動期に移行できた理由 として、準備期で段階的な身体活動の増加が 推奨されているので、症例に合った目標設定 と生活に合わせた運動指導を行えたことで退 院後も改善・維持できたと考えられる。