7−2.CKD-MBD
5 腎代替療法に関する詳細な情報提 供と詳細な説明,準備の内容
腎代替療法を受けなければならない可能性の説明 は,患者にとって不安感,恐怖感,絶望感などを与 えることがしばしばである.したがって,受容しや すい情報提供の内容にすることが,まずは必要である.
腎代替療法に関する詳細な情報提供とはどのよう な内容を指すのか.具体的にその内容を明記してい る資料は少ない.日本腎臓学会,日本透析医学会,
日本移植学会,日本臨床腎移植学会が合同で作成し ている小冊子「腎不全 治療選択とその実際」13)
においては,次のように記載されている.
ESKDに対する治療手段について,血液透析,腹 膜透析,生体腎移植,献腎移植があることをまず説 明し,次に,体質,体調,ライフスタイル,年齢,
腎疾患,合併症,生活環境,そして社会環境などの 状態にふさわしい最適な治療を受けることを勧める.
どのような治療法があり,それぞれにどのような 特徴があるのか,わかりやすい説明をすることが情 報提供の第一歩と思われる.また,どの治療法を選 択してもほかの治療法に移行できることも記載され ており,この点も重要な情報提供のポンイトである.
腎代替療法に関する詳細な説明と準備に関して も,その内容に関して明記した資料は少ない.「腎 不全 治療選択とその実際」13)においては,各腎 代替療法の特徴を,腎機能,必要な薬剤,生命予後,
表 2 腹膜透析ガイドライン11)
腹膜透析導入に際しては,血液透析,腹膜透析,
さらに腎移植に関する十分な情報の提供を行い,
同意のもと決定する.
腹膜透析の有用性を生かすために,患者教育を行 い,計画的に導入する.
CKD ステージ G5(GFR 15.0 mL /分/ 1.73 m2未満)の患者で,治療に抵抗性の腎不全症候が 出現した場合,透析導入を考慮する.
CKD ステージ G3b ~ 5 診療ガイドライン 2017(2015 追補版)
96 9.透析・移植医療 97
心血管系合併症,QOL,生活の制約,社会復帰率,
食事・飲水の制限,手術内容,通院回数,旅行・出 張,スポーツ,妊娠・出産,感染の注意,入浴,メ リットとデメリットに分けて比較表を作成し説明し ている.また,医療費と社会福祉サービスに関する 情報も詳細な説明と準備にかかわる内容であると思 われる.この辺りの内容が詳細な説明と準備に相当 するのではないかと考える.
文献検索
キーワード: 腎,透析,移植専門医間の連携システムの構築,
CKDステージG4,5患者の治療法の選択,説
明~開始時期,指導時期の提言
参考文献
1)山縣 邦弘,八木澤 隆,中井 滋,他.わが国のend stage kidney disease(ESKD)の現況.透析会誌.2012;45:
1067-76,2012
2)日本透析医学会編.図説 わが国の慢性透析療法の現 況(2015年12月31日現在).日本透析医学会統計調 査委員会,東京,2016.http://docs.jsdt.or.jp/overview/in-dex.html.
3)日本移植学会・日本臨床腎移植学会.腎移植臨床集計 報告(2016)2015年実施症例の集積と追跡調査結果.
移植.2016;51:122-44.
4)日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキン ググループ透析非導入と継続中止を検討するサブグルー プ.維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセ スについての提言.透析会誌.2014;47:269-85.
5)八木澤隆:わが国における先行的腎移植の現況と展望. 変貌する腎移植,高橋公太編,pp19-27,日本医学館, 東京,2012.
6) Kohei N, Sawada Y, Hirai T, et al. Influence of dialysis dura-tion on the outcome of living kidney transplantadura-tion. Ther Apher Dial. 2014;18:481-8.
7) Tasaki M, Saito K, Nakagawa Y, et al. 20-year analysis of kidney transplantation: a single center in Japan. Transplant Proc. 2014; 46:437-41.
8) Goto N, Okada M, Yamamoto T, et al. Association of Dialy-sis Duration with Outcomes after Transplantation in a Japa-nese Cohort. Clin J Am Soc Nephrol. 2016;11:497-504. 9)日本腎臓学会編.CKD 患者を専門医に紹介するタイミ
ング我が国の慢性透析療.CKD診療ガイド 2012.40-3,東京医学社,東京,2012
10)日本腎臓学会編.CKD のフォローアップ:成人.CKD 診療ガイド2012.44-6,東京医学社,東京,2012 11)第一章 導入.2009年版 日本透析医学会.腹膜透析ガ
イドライン.透析会誌.42(4):289-91,2009 12)日本透析医学会編.維持血液透析ガイドライン 血液
透析導入. 透析会誌.2013(4);1107-55,2013 13)腎移植推進委員会編.腎不全 治療選択とその実際.
P1-45,2012
参考 先行的献腎移植申請・登録制度
2012年,日本腎臓学会,日本移植学会,日本透析医学会, 日本臨床腎移植学会,日本小児科学会の5学会は協議を重 ね,先行的献腎移植の形式で献腎登録が申請できる基準を 作成した.申請時から1年以前後で腎代替療法が必要にな ると予測される進行性腎機能障害例で,
1.成人例ではeGFR 15mL /分/ 1.73m2未満,
2. 小児例と現在腎移植後で腎機能低下が進行してきた例で はeGFR 20mL /分/ 1.73 m2未満
1206
CKD ステージ G3b ~ 5 診療ガイドライン 2017(2015 追補版)
96 9.透析・移植医療 97
4 腎代替療法に関する詳細な情報提 供,詳細な説明と準備を行う時期
腎代替療法に関する詳細な情報提供と詳細な説 明,準備を
CKD
ステージのどの段階から行うこと が理想的であるかについては,さまざまな意見があ る.個々の症例の年齢,腎疾患,合併症,生活環境,そして社会環境によっても理想的な情報提供あるい は説明のタイミングは若干異なると考えられる.
日本腎臓学会の
CKD
診療ガイド2012
10)では,CKD
ステージG4
で進行性に腎機能が低下する場 合には,腎代替療法に関する詳細な情報提供が必要 であると記載されている.CKDステージG4,つま
り,eGFRが30 mL /
分/ 1.73 m
2未満になった段階 から必要であると記載している.腎代替療法に関する詳細な情報提供をしてから,
さらに腎機能が低下した段階で詳細な説明と準備が 必要な段階に至る.2009年に発表された日本透析 医学会の「腹膜透析ガイドライン」では11),「透析 導入を考慮するのは
GFR 15.0 mL /
分/ 1.73 m
2未満 であり,その前に腹膜透析の有用性を生かすため に,患者教育を行い,計画的に導入すること」と記 載されている.また,日本透析医学会より
2013
年に発表された 血液透析導入に関する「維持血液透析ガイドライ ン:血液透析導入」12)においては,「血液透析導入 前の診療期間において,保存的治療を含めたESKD
治療について詳細な説明と腎代替療法に関する情報 を提供することをすすめる時期は,GFR 15~30 mL /
分/ 1.73 m
2」と記載されている.移植医療に関しても,透析療法と同様に考え,透 析療法と同様のタイミングで詳細な情報提供と詳細 な説明,準備を行うことが必要である.ただし,透 析療法と移植医療では一つ大きな差異がある.それ は特に
PEKT
に関して当てはまることであるが,少 なくともCKD
ステージG4
の間にドナーに対して も詳細な情報提供と説明を開始し,そして次のス テージでドナーも移植前準備が必要な点である.5 腎代替療法に関する詳細な情報提 供と詳細な説明,準備の内容
腎代替療法を受けなければならない可能性の説明 は,患者にとって不安感,恐怖感,絶望感などを与 えることがしばしばである.したがって,受容しや すい情報提供の内容にすることが,まずは必要である.
腎代替療法に関する詳細な情報提供とはどのよう な内容を指すのか.具体的にその内容を明記してい る資料は少ない.日本腎臓学会,日本透析医学会,
日本移植学会,日本臨床腎移植学会が合同で作成し ている小冊子「腎不全 治療選択とその実際」13)
においては,次のように記載されている.
ESKDに対する治療手段について,血液透析,腹 膜透析,生体腎移植,献腎移植があることをまず説 明し,次に,体質,体調,ライフスタイル,年齢,
腎疾患,合併症,生活環境,そして社会環境などの 状態にふさわしい最適な治療を受けることを勧める.
どのような治療法があり,それぞれにどのような 特徴があるのか,わかりやすい説明をすることが情 報提供の第一歩と思われる.また,どの治療法を選 択してもほかの治療法に移行できることも記載され ており,この点も重要な情報提供のポンイトである.
腎代替療法に関する詳細な説明と準備に関して も,その内容に関して明記した資料は少ない.「腎 不全 治療選択とその実際」13)においては,各腎 代替療法の特徴を,腎機能,必要な薬剤,生命予後,
表 2 腹膜透析ガイドライン11)
腹膜透析導入に際しては,血液透析,腹膜透析,
さらに腎移植に関する十分な情報の提供を行い,
同意のもと決定する.
腹膜透析の有用性を生かすために,患者教育を行 い,計画的に導入する.
CKD ステージ G5(GFR 15.0 mL /分/ 1.73 m2未満)の患者で,治療に抵抗性の腎不全症候が 出現した場合,透析導入を考慮する.
CKD ステージ G3b ~ 5 診療ガイドライン 2017(2015 追補版)
96 9.透析・移植医療 97
心血管系合併症,QOL,生活の制約,社会復帰率,
食事・飲水の制限,手術内容,通院回数,旅行・出 張,スポーツ,妊娠・出産,感染の注意,入浴,メ リットとデメリットに分けて比較表を作成し説明し ている.また,医療費と社会福祉サービスに関する 情報も詳細な説明と準備にかかわる内容であると思 われる.この辺りの内容が詳細な説明と準備に相当 するのではないかと考える.
文献検索
キーワード: 腎,透析,移植専門医間の連携システムの構築,
CKDステージG4,5患者の治療法の選択,説
明~開始時期,指導時期の提言
参考文献
1)山縣 邦弘,八木澤 隆,中井 滋,他.わが国のend stage kidney disease(ESKD)の現況.透析会誌.2012;45:
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3)日本移植学会・日本臨床腎移植学会.腎移植臨床集計 報告(2016)2015年実施症例の集積と追跡調査結果.
移植.2016;51:122-44.
4)日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキン ググループ透析非導入と継続中止を検討するサブグルー プ.維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセ スについての提言.透析会誌.2014;47:269-85.
5)八木澤隆:わが国における先行的腎移植の現況と展望.
変貌する腎移植,高橋公太編,pp19-27,日本医学館,
東京,2012.
6) Kohei N, Sawada Y, Hirai T, et al. Influence of dialysis dura-tion on the outcome of living kidney transplantadura-tion. Ther Apher Dial. 2014;18:481-8.
7) Tasaki M, Saito K, Nakagawa Y, et al. 20-year analysis of kidney transplantation: a single center in Japan. Transplant Proc. 2014; 46:437-41.
8) Goto N, Okada M, Yamamoto T, et al. Association of Dialy-sis Duration with Outcomes after Transplantation in a Japa-nese Cohort. Clin J Am Soc Nephrol. 2016;11:497-504.
9)日本腎臓学会編.CKD 患者を専門医に紹介するタイミ ング我が国の慢性透析療.CKD診療ガイド 2012.40-3,東京医学社,東京,2012
10)日本腎臓学会編.CKD のフォローアップ:成人.CKD 診療ガイド2012.44-6,東京医学社,東京,2012 11)第一章 導入.2009年版 日本透析医学会.腹膜透析ガ
イドライン.透析会誌.42(4):289-91,2009 12)日本透析医学会編.維持血液透析ガイドライン 血液
透析導入. 透析会誌.2013(4);1107-55,2013 13)腎移植推進委員会編.腎不全 治療選択とその実際.
P1-45,2012
参考 先行的献腎移植申請・登録制度
2012年,日本腎臓学会,日本移植学会,日本透析医学会,
日本臨床腎移植学会,日本小児科学会の5学会は協議を重 ね,先行的献腎移植の形式で献腎登録が申請できる基準を 作成した.申請時から1年以前後で腎代替療法が必要にな ると予測される進行性腎機能障害例で,
1.成人例ではeGFR 15mL /分/ 1.73m2未満,
2. 小児例と現在腎移植後で腎機能低下が進行してきた例で はeGFR 20mL /分/ 1.73 m2未満
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