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防災に活かせる罹災データの蓄積

ドキュメント内 日本損害保険協会 (ページ 48-74)

第5章  まとめ

5.2  防災に活かせる罹災データの蓄積

損害保険業界は、保険を通じて耐震対策を検討するうえで有効な罹災情報を豊富に蓄積 しているのではないかとの期待から、これらの情報の提供を求める声が多い。確かにデー タ件数の絶対量は多いが、耐震対策を検討するうえで期待されるような詳細情報までの蓄 積体制は十分にできていないのが現状である。

しかし、同様の期待は今後さらに高まることが予想されるため、建築業界や行政等と連 携を取りながら、何らかの蓄積体制を整備していくことも検討していくべき課題であると いえる。

参  考  資  料

資料1 地震の基礎知識    

   資料2 耐震基準の変遷    

   資料3 明治以降の主な地震の震源と被害状況    

   資料4 建築物の耐震改修に関する法律    

   資料5 主な耐震診断ソフトの機能一覧    

   資料6 気象庁震度階級表    

   資料7 専門用語集

   参考資料1 地震の基礎知識

1 . 地 震 発 生 の し く み

地震は地球内部の岩盤中(地殻)に蓄積されたひずみが大きくなって限界に達すると、

弱い部分が急激に破壊してずれることによって発生するが、このことは、1960 年代末か ら登場したプレートテクトニクス理論によって説明されている。

この理論は、地球の表面は十数枚のプレートと呼ばれる厚さ数十 km の岩盤に覆われ ており、これらのプレートが相互に別々の方向に移動することによりプレートの境界でプ レート間の押し合いやもぐり込みが起こり、この力が開放されたときに地震が発生すると いうものである(図 1 参照)。

地震が多発する地域は、世界的に見るとこのプレートの境界部分に集中しており、日 本を含む環太平洋地域は、最も地震の多い地域の一つとなっている。

図 1   世 界 の プ レ ー ト の 分 布2 1 )

日本列島付近では、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート および北米プレートがひしめき、世界でも有数の地震多発地帯に属している。

太平洋プレートは、ほぼ東南東の方向から年間約8cm程度の早さで日本列島に近 づき、日本海溝から沈み込んでいる。また、フィリピン海プレートは、ほぼ南東の方 向から年間約3〜7cm程度の早さで日本列島に近づき、相模トラフ、南海トラフな どから沈み込んでいる。さらに東北地方の西側ではユーラシアプレートが日本列島に 近づき、日本海の東縁で沈み込んでいる。

日本列島周辺で発生する地震は、過去の地震の記録などから、海溝などに沈み込む

プレートに直接関係して発生する海溝型地震と内陸部の比較的浅い地殻に生じる直 下型の地震の二つに大きく分けられる。

日本列島の地下にはプレートの沈み込みに影響されて、一般に東西方向ないし、北 西‑南東方向に強い圧力がかかっており、この圧力が限界に達すると地殻の弱い部分 が破壊され、地震が発生する。これが直下型の地震である。なお、この地殻の破壊面、

すなわち岩盤内のすべり面が断層である。

この断層面の移動は、圧力や張力を受けた方向により、大きく縦ずれ断層と横ずれ 断層に分類され、さらにお互いのずれの向きにより、縦ずれ断層は正断層と逆断層に、

横ずれ断層は右ずれ断層と左ずれ断層に分類される(図 2 参照)。

図 2   断 層 の 分 類

2 . 地 震 波 の 種 類

断層の破壊に伴う振動によって発生する波が地震波である。地震波は地下を伝わり地 表に到達するが、この地震波は、大きく実体波(Body Wave)と表面波(Surface Wave)

に分けることができる。

(1)実体波(Body Wave)

実体波はP波(Primary wave)とS波(Secondary wave)の二種類の波がある。

a.P波(Primary Wave)

地震の際に最初に地表面に到達し、カタカタと小刻みにゆれる振幅の小さい波で ある。

この波は岩石の体積の変化の反発にともなって生じる縦波で、振動方向が波の進 行方向と一致し、粗密の状態変化が伝わる。

なお、P波の速度はS波の2倍程度で、平均約6km/秒で地中を伝わる。

b.S波(Secondary Wave)

地震の際にP波に遅れて到達する振幅の大きい波である。この波は岩石の変形の 反発によって生じる横波で、振動方向が波の進行方向に直角で、ねじれの状態変化 が伝わる。

(2)表面波(Surface Wave)

これに対して表面波はおもに地表付近にエネルギーが集中して伝わる波で、ラブ波

(Love Wave)とレイリー波(Rayleigh Wave)の二種類がある。これらの波は地震 の際に実体波よりもさらに遅く到達する船酔いに似た長周期の波である。

3 . 地 盤 と 建 物 被 害 (1)地盤種別

地盤を構成する地層を地質学的に見ると、約 200 万年前から 7000 万年前までに形成さ れた層を第三紀層(一般に岩盤と呼ばれる)と呼び、第三紀層以後、現在に至るまでに 形成された層を第四紀層と呼んでいる。第四紀層はさらに約 200 万年前から約 1 万年前 までに堆積した洪積層と約 1 万年前から現在までの間に堆積した沖積層に分類される。

地層は堆積年代が古いほど、長い間に堆積した地層の重みで圧縮されたり、締め固め られたりするために強固なものとなるが、第四紀層の中でも特に沖積層は若い地層であ り、主に海面下や谷底を埋めた堆積物からできているため、非常に柔らかい。

地震による建物被害は、建物の立地する地盤の条件によって大きく異なることが知ら れており、過去の地震による建物被害の分布から、川沿いに発達した平野や扇状地など の軟弱な沖積地盤では建物被害が多く、台地、段丘などの硬い洪積地盤や岩盤上での被 害が少ないことが分かっている。

図 3   地 盤 の 模 式 図2 4 )

(2)地盤による建物の揺れの違い

地盤には、地盤の固さや地層の厚さにより、固有の振動周期(卓越周期)があり、一

般に地盤が柔らかいほど、また地層が厚いほど長い周期になる。例えば洪積層の台地で ある東京山の手の卓越周期は 0.3 秒〜0.5 秒程度であり、沖積層の下町では 0.5〜1 秒程 度である。

過去の地震による建物被害の状況を見ると、建物の構造と地盤の状況に密接な関係が あることが分かる。第2章において、建物の固有周期と地盤の卓越周期が一致したとき に共振という現象により振幅が次第に大きくなることを述べたが、言いかえれば卓越周 期の長い沖積層においては固有周期の短い剛構造の建物が有利であり、一方、卓越周期 の短い洪積層においては逆に固有周期の長い柔構造の建物が有利であるということにな る。

   参考資料2 耐震基準の変遷

わが国では、古来から繰り返し大地震に見舞われ、その度に建築物に大きな被害をもたら してきたが、明治以前は建物の耐震化については、あまり対策が講じられてこなかった。

建物の耐震化について技術的な観点で本格的に論じられるようになったのは明治以降で あり、その歴史はわずか100年余りに過ぎない。

その間、数々の震災を教訓にして耐震化に関する研究が飛躍的に発展してきた。ここでは、

耐震基準にを中心にこれまでの変遷を述べる。

(1) 濃 尾 地 震 と 建 築 物 の 耐 震 研 究 の は じ ま り

明治以前は木造建築がほとんどであったことから、市街地では一度火災が起こると大火 になることが多かった。

明治に入ると欧米の耐火性に優れたれんが造や石造りの建築が普及したが、1891 年に 発生した濃尾地震では、これらのれんが造や石造の建物に甚大な被害が生じた。これは比 較的地震の少ない欧米の建築基準をそのまま倣ったもので、地震の多い日本の地理的環境 が考慮されていなかったためであった。

この濃尾地震をきっかけとして、建築界の動向は次第に建物の耐震性を科学的に評価す る研究的なものが重視されるようになり、翌1892年には文部省内に震災予防調査会が設 立された。

(2) 関 東 大 震 災 と 市 街 地 建 築 物 法

1923 年に発生した関東大震災では、れんが造、石造に加えて近代構造である鉄骨造や 鉄筋コンクリート造のビルまで壊滅的な被害を与えたため、翌1924年に市街地建築物法 が大きく改正された。

構造に関する主な改正点は、鉄骨造ではブレースや壁の設置の義務付け、帳壁と鉄骨の 緊結の義務付け等、鉄筋コンクリート造では主筋の継ぎ手長さの規定、梁鉄筋の複筋化、

柱の小径の強化、柱鉄筋比の規定などであり、全体として構造の強化・剛性を高くするこ とに主眼がおかれた。

また、地震荷重として水平震度を0.1以上とする条項が加えられ、実質的に世界最初の 耐震規定となった。これは、地震時に建築物に作用する地震力を水平に作用する力に置き 換え、建物重量の0.1倍相当以上の水平力が作用したときに、柱や梁などの部材各部に生 じる応力度が許容応力度以下になるように設計するものであった。なお、このときの水平 力は時間の経過にかかわりなく一定の静的な力として扱われた。

ドキュメント内 日本損害保険協会 (ページ 48-74)

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