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 95)商業手形制度が企業の信用経費を肥大させ ているとの認識がフランスで一般化していたこと については,本稿,10頁,を参照.

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れる必要はなく,介入の範囲を債券市場や不動

産市場など「諸市場一般」(march6s en g6n6ral)

に広げる方が,各市三間の金利の調和を図ると いう観点からしても望ましい,というものであ

る.

 以上のような諸原則  評定員ボステル=ヴ ィネーの言葉を借りれば「大胆な主張」  は,

しかし,そのまま実施方式のなかに持ち込まれ たわけではない.実施方式では,かなり重要な 部分で原則の修正が行われている.原則の修正 は,一部はすでに諸原則そのもののなかに含ま れていた.素案では,中期手形および長期の不 動産手形を適格証券リストに含める理由が次の

ように説明されている.

   一部の信用や長期資産を体現する手形の   取得を優i署すれば,一部の金融(輸出,住   宅,等々)を助成したり,諸銀行による流   動資金の長期運用への『転換』を助成する   結果となる可能性がある.通貨政策の観点   からみても,たしかに,配分された信用総   量はもっとも重要な要素である.ある種の   伝統を考慮せずに,あるいはまた,一部の   信用を特別扱いすることになる政治的・経   済的なある種の要請を考慮せずに,再金融   に関する規則を策定するのは非現実的とい

  うものであろう96).(傍点は引用者)

 住宅建設や輸出の振興はフランスの経済政策 の基軸をなしており,それを無視することはで きない,また,フランスの信用全体に占める住 宅建設信用や輸出信用の重要性を考えれば,通 貨政策の観点からもそれらを無視することはで きない,というのである.かくて総裁府は,

中・長期の手形を受け入れることが「選別」を 意味し,それが適格証券の「中立性」原則と抵 触することを自ら認めていたのである.

 原則の重大な修正は適格証券の認定に関して も行われている.すでに述べたように,素案に は,理論上は「すべての健全な証券」が「媒体」

96)Supports et modalit6, doc. cit6.

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たり得るという原則が示されていた.しかし同 じ素案は,そうした場合には,それらの手形が 自動的に再金融の対象になると受けとられ,発 券銀行の行動の自由が制約されるおそれが出て くる,という.そして,そうした不都合を避け るために,従来からの「流動化承認」(accords de mobilisation)制度をそのまま存続させ,事前 に「媒体」として適格な証券と不適格な証券に 振り分けるとしている.

 ところで,中期手形については,フランス銀 行は流動化承認業務をクレディ・ナショナル,

クレディ・フォンシエ,フランス国立貿易銀行,

国家市場中央金庫などの準公的金融機関に委託 してきた.これを同行自身が直接行うようにす れば,これらの金融機関の介在は不要になり,

手形に付される署名数を2名に減らすことがで きる.また,その結果として,これらの金融機 関は中期信用領域における既得権を失い,一般 の銀行と同じ条件のもとにおかれることにな る.つまり,まさにマルジョラン報告が求めて いた状況そのものが生まれることになる.しか

し素案は,そうした場合には,準公的金融機関 なかでもフランス国立貿易銀行と国家市場中央 金庫の経営が圧迫されるとして97),判断を保留

している.

一般評議会審議(1973年4月一7月)

 一般評議会における審議は,以上のような総 裁府提案にもとづいて行われた.審議で最大の 焦点になったのは,中央銀行政策における「選 別」の是非と手形に付される「署名数」である.

いずれについても,準公的金融機関のあり方と フランス銀行の新しい政策路線が深くかかわっ

ていた.

「選別」を非とする総裁府提案には,とくに労

 97)1968年度の国家市場中央金庫の業務実績に もとづいて推計すると,3名署名制度が廃止された 場合には,短期業務については業務額で四分の一,

収益で7パーセント,それぞれ減少するという.

Nombre de signatures exgig6es, doc. cit6.

働組合に近い評定員たちが強く反発した.ヴァ ントジョルは素案全体を評して,「問題の量的 側面に力点がおかれすぎている」,「金融諸手段 が量的に十分かどうかだけでなく,それらの手 段が,とくに計画化の枠組みのなかで定義づけ られている一般的諸目標の達成に寄与できるよ うに,適切に選別されているかどうかを問題に すべきである」(傍点は引用者)という.グッ ソーはさらにはっきりと「信用の選別を許さず,

通貨の創造を統制することになる,グローバル な政策に反対する」といいきっている.ドゥロ ールも,明言は避けたものの,次のように疑問 や論点を提示する.新しい政策が経済面にもた らした効果を未だ評価することのできない現時 点では,問題を厳密に論じることはできない.

総裁府は,一方で「信用の選択的管理という考 え方を放棄する」といいながら他方で適格手形 の事前承認を継承するとしており,議論に一貫 性がない.アメリカの事例をみても,信用の選 択的管理は通貨当局にとって「景気政策の有用

な手段になっている」98).

 これにたいして,「選別」に反対し素案支持 を明言したのはバールとピエールニプロソレッ

トの2人である.なかでもピエール=プロソレ ットは,グッソーの発言を批判して次のように 述べている.

   フランスではすでに  とくにここ20年     選別を行ってきている.多分,少しや   りすぎたきらいがある.フランス銀行はそ   うしたことを行うにはもっとも不適当な位   置にあったようにみえる.実際,ものごと   の進化をあまりに個別の視点からみようと   するあまり全体をみず,総通貨の過度の膨   張を許しているきらいがある.…銀行シス   テム以外でも多くの選別が行われている.

  低家賃住宅(H.LM.)をめぐる政策,クレ   ディ・アグリコル,経済社会発展基金

  (F.D.E.S.)による貸付,等々.フランスで

98)以上については,PVCG,10 et 17 mai 1973.

  は選別は数多くの国家介入を通じてなされ   ており,財政に負担をかけている.基本的   に収益性以外の基準で選択がなされる選別   が,諸銀行のレヴェルで行われるのは適切   とはいえないであろう.諸銀行は営業上の  観点から,しかも分散的に管理されている.

  仮に諸銀行が選別という基準のもとで業務   を遂行するようにしたいのであれば,こう   した2つの性格を考慮したうえで,経済の   仕組みを根本から変える必要があるだろ

  う.・9)

 国庫局長として新定款の作成に直接関与して いただけに当然ともいえるが,財務省の最高の 実務責任者が,戦後フランスの基本政策ともい

うべき選別政策を明確に批判していることは注 目に値する.

 他方の署名数に関しては,評定員たちの発言 は一様に慎重であった.「いくつかの機関の営 業勘定の問題は重要ではあるけれども,重大と いうほどではない.肝心な問題は多分,無用な 形式主義の排除と経費の削減のはずである」

(バール発言)  このような理解では,評定 員たちはみな一致していた.しかし問題は,ペ ルーズが繰り返し力説していたように,経営問 題を通じて準公的金融機関の存在そのものが,

あるいはそうした金融機関が重要な位置を占め る「フランスの金融システムの伝統的構造」そ のものが揺ぐおそれがあった点にある.かくて 署名数の削減には,信用選別政策の継続に執着 する労働組合系の評定員にもまして,準公的金 融機関の長たちが強く抵抗することになった.

ペルーズは次のようにいう.ドゥブレの改革に よって生まれた流れを加速させ,「それぞれが はっきりした専門性をもつ専門〔金融〕機関制 度から,すべての銀行が相互に競争し経済のさ まざまな部門に関与する制度へと」移行させる つもりなのであろうか.仮にそうだとすれば

「慎重」でなければならない,と.クラピエも,

99)乃∫4.,17mai 1973.

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素案の「哲学」はペルーズのいう方向を向いて いるようにみえるとして,「最大級の懸念」

(les plus grandes craintes)と「最大級の留保」

(les plus expresses r6serves)を表明した.2人

はユニバーサルバンキングへの流れを警戒して

いたのである100).

 興味深いのは準公的金融機関を主管する国庫 局長のピエール=プロスレットの態度である.

彼は代案を提出することによって,政治が絡む この問題を先送りしょうとした.代案は,(1)3 名署名を残す,(2)ただし,ホテル金融から中小 企業金融へと業務領域を広げつつあるホテル商

主業信用中央金庫1・1)(Caisse Centrale du Cr6dit H6telier, Commercial et Industrie1.以下,「ホテル信

用中央金庫」と略称)を新たに中期手形の事前 承認代行機関グループに加える,というもので ある.中期信用に関与できる機潤の数を増やす ことによって準公的金融機関間の競争を促すと いうのが,この提案の趣旨であった102).

 かくて,署名数の削減に積極的に賛意を表明 したのはボステル=ヴィネーとフェリーだけに とどまった.2人は,問題を準公的金融機関の 経営問題から切り離し,あくまでも信用負担の

 100)乃∫4.,10mai l973.

 101)この準公的金融機関は業務領域の拡張を 1938年に認められ,それにともなって旧来の「ホ テル信用中央金庫」(Caisse Nationale du Cr6dit H6telier)から「ホテル商工業信用中央金庫」へと 名称を変更した.

 102)以上については,PVCG,26 avril et lO mai

1973.

 103)乃げ4.,10et 17 mai 1973.ボステル=ヴィネー

は2月8日の一般評議会でも,「割引であろうと貨 幣市場への介入であろうと,フランス銀行の操作 に必要な署名数がなぜ多くなければならないのか まったく理解できない.…いっかこの問題に取り 組むべきであろう」と発言していた.なお,この 発言には,次席副総裁のラットルが「流動化手形 に必要な署名数の問題については,数年前に経済 財務省と何度も長期にわたって意見交換をしたこ

とがある.この件に関する決定事項は  それが 必要だとしての話であるが  銀行システムに影 響が生じるためにかなり複雑である」と答えてい

た.乃ゴ4.,8f6vrier 1973.

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