ユ)赤血球沈降母御は所謂非特異性の生物學的愚慮であるが,重し現時一般實地讐 家に弾く雁用せられて居るのは赤血球沈降反鷹が主として肺結核の早期診噺及びその 豫後判定の有力な袖助診断法の一と認められて居るからである。この反態の慮用に當 っては,赤沈速度測定値を正常値と比較考察しなければならなV・から,先づ必要なの は正常値の範園に關する知見である。然しこの赤沈速度は脈搏や賢聖,血堅其他の生 理的機能に罪する敷値と同様に手翰大きな個人的差違が認められるから,赤沈速度の 正常範圏を定めるには多歎の健康者の赤沈速度を測定し,其の結果を統計肇的に考察 しなければならないQ赤沈速度の正常値に就:ては多子の報告があり,しかも正常値の 範囲は報告者によって甚しく旺々であるが,是等の報告は多くは夫k多数の健康者を 観察し て得られた成績からの雫均値か,或は手均値±標準偏差の範團を以て正常値と
したものが多V・o
生艦の形態や機能の個人的偏差の多va測定値からNOrmを決定する事は,輩純に計 測歎の統計的塵理から得られた激値のみから決定さるべきものではなく,同時にこれ と讐學的経験的事實とを:互に照慮考察しつx研究を進める事によって次第に決まって 行くものと考へられるt從って統計學的数値によってNormを云爲する事によって 最後的決定は得られなV・が,併しこの・やうな統計學的数値を以て假りにNormを定め て置く事もやがて最も丹果なNormが決定される爲の一・階梯として許容さるべき事で あるのみならす叉,必要な事ではなからうか。以前は一般に集團観察から得られた 成績の手均値を以てNormとしたが,個入差の多V・生理的機能や形態のNormを箪一 の籔値で示さうとする事の無理な事は自明の事であり,從って現在は一定の範團を以 てNormを示す傾向となって居る。その範園を定めるのに或は標準偏差を用ひ,或は 李均誤差を用ぴ,或は確i率誤差を用ひる等諸家によって遜:々であるが,我國の生物統 計學の文献に於ては平均値と標準偏差(M±σ或はM±2σ)が最もPt k用ひられ て居る。併し,健康者群の赤沈速度を襯察するに其の分布曲線は正規曲線を示さす,
殆んど凡ての場合に強度の歪度を示して居るから,其の鉱脈を表はすのに算術手均と 一第 10 巻ユ53_
64 立野二女子讐學專門學校生徒の赤血球沈降速度に關する生物統計學的考察
標準偏差を用ひる事は不適當であって,斯xる場合は中央値と四分偏差による方が統 計學上安當と思はれる。何故ならば,算術耕牛及び標準偏差はその性質上曲線が正規.
か之に近V・時に代表値としての単婚があるからである。從って健康者の赤沈速度測定 成績から假にNormを定むる場合も標準偏差を以て範園を決めるのは當を得たものと は考へられなV・。本調査に於ても其の分布曲線は,30分値及び普通臨床上重要附せら れる1時間値:,2時聞値V・つれも甚しく大なる歪度を示しr3居るのであって・所謂健 康者群と見倣される生徒の中央値及び四分偏差は既に第9表に示した通りであるが第 第四表 生徒赤沈速度正常値 75表として示す。
沈降債
(Md−Q)一v(Md+Q)
(mm)
30分値
1時…間値 2時間値 24時問値
中等慣
O.976 一v 3.686
3,977N12.823 11.321・v31.369 71.994tv94.136 5.187tv14.239
それ故,假.にMd±Qの範圏をNormとす
れば各測定時の正常値の範園は既に第21i表に 示したが,便宜上第76表として示す。この内臨床上最も屡々用ひられる1時間値の
範團の一端は12.823mmであって,これは
Kraus−Wichmannが女子に就て正常と赤沈速度 促進との境界と認めた9−12mmに略k一致し て居りヲ他端は3・977mmであってンこれは一般に臨床家が3mm以下を半焼と見 徹して居る事實に一致して居る。2)赤n陪求沈降速度の診断下上め慣値が絶封的のものでなV・事は,里国や脈搏等が 軍猫には何等疾病の豫後や性質を決定し得ない事と同様である。赤沈速度の測定値が 假令正常値:の範團にあっても,必ずしも肺結核に罹患して居なv・と断定する事は出馬
ないし,正常値より或る二三促進して居っても必ずしも疾患者なりとは云ひ得なv・の である。この事は結核患者だりから得られる分布曲線と健康者だけから得られる分布 曲線とを重ね合せて比較して掌ると,二つの曲線が何れも主常値の範園の内外にまた がって居る事から観ても理解し得られる。帥ち・赤沈速度のNorm叉は正鴬値とはど こまでも赤沈速度だけに關するNormであって,それが直ちに個人全学のNormを意 味するものでもなければN Oimの範園内の個人が健康者であって国粋以外の個人が病 者なりと直ちに決定し得るが如き性質のものでもない事は,一一一maに統計学的のNorm
に就て:Bauer(r・r・)が云ったと同様である。併し結核罹患者は健康者群に比し丁沈降速 度夫なる傾向のある事は,融線を比較して観て結核患者群の曲線が健康者群の曲線
に比較して明瞭に右方にすれて居り,Md±Qを観ても結核患者群が速度大なる:方に すれて居る事序より槻て明かである。
一第 10 巻154一
立野S=女子醤學專門學校生徒の赤血球沈降速度に冠する生物統計學的考察 65
而して健康者群より得られた正常値の範園内に入る者の百分率を観るに,結核罹患 者は13,90%であるが,健康者群では58・06%である。生徒被槍者155名の中153 名に就き,胸部文線槍査を行ったが,赤沈遽度1時聞及2時間値に於て,正常値以
下のもの(Md±Q以下全部邸Norm未瀟のものをも含む)110名の中,胸部x線
不良(師ちC群)のもの3名,帥2.73±1.048%,正常値よりも門門大なるもの43 名中,胸部X線所見不良のもの6名自P,13.95±3.564%の割合であって,爾者の 聞には明らかに有意の差が認められる。次に,上蓮のi資料をばNorm範園内(邸Md±Q)と其の範園外(帥ち.Md−Q 以下及Md十Q以上)とに生徒被二者を別ちて,その丁丁の胸部x線所見不良者の 百分率を比較すれば,第77表に示す通りであって,爾者の間には明らかに有意の差 が認められる。
第77表 正常範園の内外に於ける胸部X線所見(C群)
・沈 降 償
正 常 範 園 内 正 常 範 園 外
1 ゴ時 間 値
N
88 65
n 2
Nのnに調 する%
7)
227土LO71
10.77±2.593
2 時 間 値.
N
86 67
Ll
Nのnに封ずる%
1
s1
1.16±O.779 11.94±2.672
之に依りて見れば,Norm丁丁の内か外かは其のまx疾病の示標とはならないが,
Normの範園内にあるものは範園外にあるものより結核罹患者を含む蓋然性小なる事 は確實に示すものと考へられる。
術,結核患者群のMd−Q−Md十(1の13・262一一77.872 mmを健康者群のMd 一
Q−Md+Q.の3・977r12.823 mmと比較して観ると,略13 mmが爾者の境界
となって居るが,この事はさきに略13mmを以てNormの限界と定めし事の安當 性を三々詰むるものと考へられる。
3)赤血球沈降速度は疾病によって攣動ずるのみならす,健康の歌態に於ても諸種 の要因によって影響される屯のであるから,測定値を意味付けするに當ってはこれ等 の要因を老骨に入れて其の判断を誤らない様に努むべきであらう。一般に室温の上 昇,妊娠(3ケ月後)等は赤沈速度を増加し,隣帯血液,初生児第1週,死二期,入 浴,高山等は赤沈遽度を減少せしめ,艦育運動や螢働tCよっては其の種類程度によっ て或は増加し或は減少するものと考へられて居り,撮食,飢餓,睡眠,月経等に就て は赤沈速度を促進するとも云ひ或は邊延するとも云はれ,未だ確定して居なV・。本調.
一第10管 155 一
66 立野=女子馨堺町門沙門生徒の赤血球沈降速度に辞する生物統計學的考察
査に於ては・内地人と非内地及び外國人の差違,年齢の影響,室内の温度,漁度の影 響及び寄宿,通學別に親た生活状態の差違等と赤沈速度との關係に就て調査したので あるが;年齢による影響はユ6歳より19歳迄に於ては年齢の進むにつれて赤沈速度 は減少する傾向が認められ(2時平滑は17歳以後に於てこの傾向が見られた),室内 の温度に就ては採血時並びに測定時室内の温度の上昇は赤沈速度を促進し,漁度はむ
しろ毒沈速度を邊延するが如きであるが明らかでない。其他に当ては影響は認められ
ない。
4)結核の早期診噺に重黒占を置く健康診断に出ては赤血球沈降速度測定,等温測憲 Mantoux氏「ツベルクリン1反慮槍査, X線楡査等が共に行はれる場合が多V・が,
是等各回査成績相互の關係に就ては,胸部X線所見に攣化あるものが必ずしも赤沈 速度大なりとは限らなV・。併じ一般に赤沈速度大なるときは胸部X線所見に攣化あ
る場合が多く,Mantoux氏反磨強陽性のものが必ずしもX線所見不良なりとは限ら なV、が・一般にMantOux氏反懸強陽性のものには胸部X線所見不良なものが多V、
と認められて居る。これ等の關係に就ては,本調査に於ても同様の結果が得られ,だ。
下学と赤沈速度との聞には一般に關係がなV・ものと認められて居るが,本調査に於 ては赤沈反回槍三三の四温を測定したのではなく,赤沈速度丁丁日とは一二日乃至十 日位前後して測定した四温成績ではあるが,これと赤沈速度との聞には矢張丁丁は認 められなかつk,o
伺,本調査資料よりMantoux干反慮,胸部X線所見,赤沈速度の三者の開係を 観ると,次のやうな結果が得られた。帥ち,MantOUX氏反慮の輕度陽性者は赤沈速度 の如何に拘らす,胸部X線所見の不良のものがなく,Mantoux反町中等度陽性者は 赤沈速度の促進せるもの即ち,Md十q(略1時間値13 mm,2時聞値32 mm)以 上のもののみに胸部X線所見の不良なものが認められ,Mantoux氏反慮彊度陽性の
ものに潤ては赤沈速度の大小に拘らす胸部X線に著明な攣化のあるものが認められ た。それ故集皆野診に於てMantoux氏反鷹槍査威績と赤沈反慮槍査成績とのみよウ 被槍者の健康状態を判定せんとする場合は,MantOUX氏反慮強度陽性者及び赤沈速 度13mm以上の中等度陽性者に就て,特に精下しなければならなV・ものと推考せら
れる。