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考察: 東北シャマニズムにおける

ドキュメント内 学位の分野 社会学 (ページ 47-84)

コミュニケーション行為の諸相

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本 章で は、 以 上 に述 べ て 来 た 事 例 を 踏 ま え て 、 第1 に 口 寄せ 巫 女 が宮 城 ・ 山 形 両 県 にお いて様々 な形 で 共 同 祭 祀 に 関 わっ て い る事 、 第2 に カ ミ オロ シ につ い て は 、 ど の 巫 女 に も ホトケ オ ロ シ と 同 様 の 明 瞭 な 韻 律 を 伴 な う地 域 と、 韻 律 を 伴 わ ない か 、 も しく は ホ ト ケ オ ヨシと は 異 なっ た 韻 律 を 持 つ 巫 女 が散 見 出 来 る 地 域 か お る 事 、そ し て 最 後 に 、 託 宣 の 記 録 や伝達 の仕 方 に も、 地 域性 が 見 ら れ る 事 、 とい う3 点 につ い て 、 考 察 を行 な う事 に す る。

第1節 口 寄 せ 巫 女 の 共 同 祭 祀 に つ い て

第2 章 にお い て 数 々 の 事 例 を 挙 げ て 来 た 通 り 、 こ れ 迄 の研 究で は 主 と し て 私的 領 域 に携 わると言 わ れて 来 た 口 寄せ 巫 女 も 、 宮 城県 の 内 陸 部 な ど のご く 一 部 を 除け ば 、宮 城 ・ 山形 両県の殆 ど 全域 に わ たっ て 公 的 性 格 を 持つ 様 々 な 共 同 祭 祀 に 関与 し てい る 事 が明 ら か と な った。 こ の段 階 で、 両 県 の 口 寄 せ 巫 女 、 即 ち シ ャ マ ン に分 類 さ れて 来 た女 性 巫 者 達 は 、 地 域的な 格 差 はあ る と は 言 え 、 ほ ぼ 全 般 にお い てプ リ ー スト 性 を 持 つ 、 と 結論 付け ら れ る だ ろ う。

しかし 、 単に 類 型 論 を 批 判 す る の み で は、 何 も 明 ら かに な っ た 事 には な ら ない 。 重 要 な のは、そ れ ら の共 同 祭 祀 の公 的 性 格 の 質 な の で あ り 、 こ れ ら が 各 地 域 の 社会 ・ 文 化 的 コ ン テクスト と ど う 関係 し てい る の か に つ い て 考 え な け れ ばな ら な い 。 こ こ で は事 例 の 中 で 折 に触れ述 べ て 来 た村 落構 造 の 問題 が 、 クロ ー ズ ア ップ され て 来 る で あ ろ う。 本 節 で は 、 巫 俗と村 落 構 造 との 関 係 性 に 関す る 問 題 に 踏 み 込 む 事 に す る。

1‑1 「 共同 祭 祀」 と は 何 か ?

以下 考 察 に 入 る が 、 先 ず 始 め に 、「 共 同 祭 祀 」 とい う語 に つ い て 説 明 し て お か ね ば な る まい。 こ の語 は序 論 で も 触 れ た 通 り 、 基 本 的 に は 佐 治 靖 の論 考 [ 佐 治 1988 ] か ら 借 用 し てい る(1)。 佐 治 は こ の語 を 用 い る 事 に 関し て 福 島県 下 で 見 ら れ る 「オ シ ン メ イ サ マ 」、 つ まりは宮 城 県 で は オシ ラ サマ 、 山形 県 で は トド サマ 、 オ コ ナ イ サ マ な ど と呼 ば れ る 大 抵 は 一対 から な る 呪 具 の 祭 祀を 執 り行 な う 人 物 と、 そ の 祭 祀 の 関 係 に つ い て 以 下 の よ う に 説 明 する。 即 ち 、 元 々 は 「祭 祀 」 とい う 言 葉 に は 「集 団 性 とい う要 素 が 加 味 され て お り 、 共 同 あるい は 集 団 とい うこ とば を あ え て 祭 祀 につ け る 必 要 はな かっ た 」 の だ が 、

オシ ン メ イ サ マ の 祭 祀 に は 、 オシ ン メ イ サ マ を所 持 ・ 信 仰 す る 個 人 ・ 家 のみ で お こ な う 祭 祀が 一 つ の か た ち と し て 見い だ せ る。 同 時 にそ の 一 方 、 … 信 仰 者 が 集 ま っ て 祭 祀 を 行 うも の も あ る わ け で あ る。 後 者 の 場 合 は 、 さら に一対 (あ るい は 一 ヶ 所 ) の オ シ ン メ イ サマ を 中 心 と し て 信 仰 者 が 集 い 祭 祀 をお こ な う も の と 、 複数 の オ シ ン メ イ サ マ を 持 ち 寄 り 信仰 者 が集 い 祭 祀 をお こ な うと い う 二つ の 形 態 が み ら れ る 。

こ うい っ た 実 態 を 踏 ま え る と 、 個 人 と 共 同 ・ 集 団 の祭 祀 とい う類型 が 、 よ り こ の 信 仰 を明 ら か に す る上 で 有 効 で は な い か と 考 え る の で あ る。そ うい っ た 点 に よ り「 共 同祭 祀 」 とい う 用 語 を 用い る 事 を ま ず断 っ て お く 事 に す る。

とい う事 に な る [佐 治 1988:フ]。

本論 文 で扱 っ てい る 口寄 せ 巫 女 の 巫 業 に 関 し て も、 個人 的 な 、 或 い は 家 単 位 の も の、 数 戸から 数10 戸 の 同 族 集 団 、 場 合 に よっ て は 集 落 規 模 の 祭 祀 ま で 、 か な り の ヴ ァ リ エ ー シ ョンが あ る事 は第2 章で 見 た通 り で あ る。

問題 は 、 佐 治 が 上 記 の よ うな 興 味 深 い 事 例 を 取 り 上 げ 、村 落 社 会 と 憑 霊 、 乃 至 は 「シ ャ ーマニ ッ ク な 」 とい う言 い 方 で シ ャ マ ニ ズ ム と の 関 係 に迫 っ て い る の に も 関 わ ら ず 、 そ こ での結 論 は 、「〈つ き〉 現 象 を とも な う 共 同 祭 祀 の もつ 、 伝 統 社会 の 中 で の 『 安 全 弁 』(2)と しての 役割 」[ 同:32‑33] の 摘 出 と い う、 既 にI.M./レイ ス[1971 →1977   (1985)] や 、 或 い はま たそ の 影 響 を受 け た研 究 者 達 が 各 地 の 憑 霊 カ ル ト に つ い て 行 なっ た の と 同 じ(3)、 や やあり 来 た り な も の に と ど まっ て い る点 に あ る。 村 落 社会 と シ ャマ ニ ズ ム の 関 係 に 言 及 す るので あ れ ば、 本 論 文 で 扱っ た よ うな 、 職 業 的 な 、 文 字 通 り の シ ャマ ン の 共同 祭 祀 へ の 関 与を含 め て論 じ ら れ な け れ ば な る ま い が、 以 上 に 挙 げ て き た 事 例 にお い て は、 少 な く と も 口寄せ 巫 女 達 に とっ て、 共同 祭 祀 は 決 し て 「安 全 弁 」 な ど で は な い ので あ る。

さて、 も う一 つ 、 筆 者 が以 前 か ら用 い て い た 「公 的 祭 祀 」 とい う語 に つ い て も 説 明 し て おく。F公j とF 私J の概 念 は 第1 章 で 詳 述 し た 通 り シ ャ マ ン /プ リ ー ス ト 論 の 文 脈 で 頻 繁に用い られ て い る から で あ る。

有賀 喜左 衛 門 は、『 日本 社会 民 俗 辞 典 』( 日本 民族 学 協 会 編 、 誠 文 堂 新 光 社 、1960) 中 の

「ワタ クシ ( 私 )J の 項 目記 述 の 中 で 両者 を 次 の よ うに 説 明 す る 。 即 ち 、「 奈 良 時 代 以 後 において も 、各 時 代 にお け る中 央 政府 と 、そ れ に た い し 、人 民 の 関係 す る側 面 と は 、『 公 』 と考え られ た。 だ か らこ れ に た い し て 、 個人 の 家 や 個 人 の 事 柄 は 、 す べ て 『 私』 の 意 味 を もつもの で あ っ た。」[ 有賀 1960   (1967):278] と。

本論文 は 、公 共 性 や 個 人 主 義 につ い て の検 討 を 直 接 の 目的 と し て い る 訳 で は な い の で(■4)、 このよ うな 一 般 的 な 概 念 設 定 に 基 本 的 に は 従 い た い と 思 う。 そ れ は 、 例 え ば シ ャ マ ン /プ リースト 論 の よ うな 場 に お い て 、 前 者 は 「 私 」的 領 域 、 後 者 は 「公的 」 領 域 に 携 わ る 、 と いうよ うな 記 述 がな され る場 合 、多 く の 場 合 何 等 の 説 明 も な さ れい ない 、 とい う事 に も 起 因する。 そ れ は 即 ち 、 そ うし た 論 者 達 は こ の よ うな 一 般的 分 類 に 従っ て い る とい う事 を示 してい る の で あ り 、 筆 者 もま た同 じ レ ヴェ ル で 議 論 を 展 開 す る 必 要 が あ る の で あ っ て 、 そ の上でシ ャ マ ン が 「公 」 的 と さ れ る よ うな 祭 祀 に 関 与 す る 事 例 を 提示 す る 事 が 、 本 論 文 の 一つ の 目的 で あ る か ら で あ る。 但 し 、 一 般 的 概 念 設 定 を本 論 文 の 議論 に 合 わ せ て 改 変 し た 筆者 自身 の概 念 規 定 も 、1‑2 にお い て 一 連 の 共 同 体 論 を 通 覧 し た 後 に 示 す 事 に し た い 。

とこ ろ で 、有賀 は 日本 社 会 の 特 徴 とし て「 公 私 の 混 在 」[同:279‑280] が 見 ら れ る 事 、「同 族団 の内 部 の 関 係 で も 、 本 家 に たい す る 関 係 は『 公 』 で あ り 、 末家 自身 の こ と は 『 私』 と する考 え方 が あっ た。」[ 同:282]事 、或 い は 武 士団 、同 族 団 、家( 親 子 関 係 が 問 題 と な る。)

のような 上 下 関 係 を 基 本 と す る 社 会集 団 と は 「 異 な る 平等 的 関係 の 社会 関係 」 を 持 つ 「 講 や組の 中 に も 同 様 の も の は 見 られ た し 、 家 関 係 で なく て 個 人 関係 に もそ うい うも の は 見 ら れた。」[ 同:234‑235] 等 の 点 を 挙げ て い る が 、 こ れ等 も ま た、 重 要 な指 摘 で あ る。

も う一 点 、 本 論 文 で 扱 っ た 大 部 分 の集 落 が 持 つ 輪番 制 の祭 祀集 団 の持 つ 公 的 性 格 へ の 言 及も引 用し て お き たい 。

部 落 全 体 の 氏神 鎮 守 の 祭 祀 組 織 を 簡 単 に 要 約 す る な ら 、一 は、司 祭 の 家 柄 が き まっ て 、 特権的 宮 座 を 構成 し てい た 場 合 で あ り 、 他 は 総 氏 子 組 織 であ っ て 、 そ の 中 か ら 氏 子 総 代 を選 出し た 場 合 で あ る が 、 こ れ ら はそ の 組 織 が 異な っ て い た。 し かし 後 者 の 場 合 で あ っ ても 、そ の 選 出 が 特 定 の 有 力 家 に 比 較的 固 着 す る 傾 向 が 強い 場 合 とも っ と広 い 範 囲 を 輪 番的 に交 替 して 当 る 場 合 と で は差 異 が あ っ た。 以 上 のい ず れ の場 合 で も 司祭 の 位 置 は 少 数者 が勤 め 、祭 事 を 執 行 す る こ とに よ り 、 部 落 全 部 の人 々 が祭 事 に 参 加 す る 意 味 を も つ こ と は同 様 であ り 、 司 祭 が 部 落 を 代 表 し た の で 、 そ こ に 公 の意 味 が あ っ た。 そ し て 後 者 の形態 は 平 等 対 等 的 な 家 関係 が 支 配 的 で あ る部 落 に 多 く 見 ら れ たこ と は 当 然 で あ る 言 同:236

こ うし て 、 同 族 制 と 講 組 制 は 、〈公 の 二 つ の 在 り 方 で あ る 〉、 とい う捉 え 方 が 出 来 る と 思う。 但 し 、 本 家 を 中 心 と し た 上 下 関 係 が 基 本 に あ る 同 族 制 と 、 家 同 士 の フ ラ ット な 繋 が りであ る講 組 制 と は 、そ の 構 成 原 理 が 根 本 的 に 異 な り 、 そ れ こ そ が 〈二 つ の 在 り方 〉 と い

う事に な る。

こ の よ うな 概 念 設 定 に 従い つ つ 、 本 論 文 で 取 り 上げ た 諸 事 例 を ど ち ら に 属 す る もの で あ るかに つ い て 考 え て み な け れ ば な ら ない 。 基 本 的 に そ の 境 界 は 宮 城県 本 吉 郡 唐 桑 町 の オ シ ラサマ ア ソバ セ の3 事 例、 大 沢 地 区 のK 家 と 小 鯖 第2 のS ・Y 家 、 及 び 小 鯖 第1 のI・T 家 を中 心 とす る 同 族 祭 祀集 団 と の 間 に 引 く 事 が 出来 る だ ろ う。 ま た 、 山 形 県 内 に つ い て 言 え ば、庄 内 地 方 に お け る家 単 位 の オ コ ナ イ サ マ ア ソ バ セ と 、 例 え ば 東 田川 郡 三 川 町 押 切 新 田 や土 口の 近 所 数 軒 か ら な る 祭 祀 集 団 の間 に 引 き 得 る だ ろ う。

但 し 、 唐 桑 町 周 辺 とそ の 他 の 地 域 で は 、「 家 」 と い うも の の 持 つ 意 味 が 異な る 事 が 考 え られる。 で は 、 こ こ で は 、 磯 田 進 の 「家 格 型 」 の村 落 構 造 に 関 す る 言 及 も 参 考 に な る 。 磯 田は、 家 格 型 の 村 落 につ い て 、「『家 』 を 媒 介 とす る身 分 的 ヒ エ ラル ヒ ー の 存 在 す る 村 落、

とい うこ と が で き る。」とし 、「家 格 制 」とい う語 に 、「そ の 村 落 を 構成 す る 個 人 の 社 会 的 。

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