表3.3 実証実験において測定されたSr/Y-90放射能に対する不確かさ評価の一覧
AEntire A134 A137
No. Component ASr u % (k=1) u % (k=1) u % (k=1)
1 計数統計 1.39 0.79 0.88
2 効率外挿 1.34 1.02 2.13
3 ガンマ線スペクトロメトリ - 0.42 1.10
4 バックグラウンド 1.51 -
-5 試料設置再現性 0.90 2.33 - 1.10 - 2.40
6 試料位置 0.57 -
-7 測定時間 0.01 -
-8 分解時間 0.21 -
-9 不感時間 0.40 -
-10 核データ - - 0.17
Total %(k=1) 5.2 2.7 1.4 2.6
ベータ線放出率(s−1) 53.6 98.5 16.2 29.5
Total s−1 (k=1) 2.78 2.67 0.22 0.75
3.3.2 測定できる Sr/Y-90 放射能の Cs-134 と Cs-137 放射能に対する下限混在比
測定できるSr/Y-90放射能のCs-134とCs-137に対する測定下限比としての棄却限界(得られ る正味計数値が意味を持つレベル)を2.3節の式2.21で算出する。
σはCs-134とCs-137の不確かさの合成とし、kC はここでは両側信頼度が95.45%となる2.00 とする。式により計算される棄却限界は3.34 s−1であり、Cs-134とCs-137の合計のベータ線放 出率に対しては7.3 % であった。
3.3.3 実証実験による成果
実証実験で開発された測定法により、Cs-134とCs-137の混在試料中のSr/Y-90放射能を測定 した。その結果は、既知値よりも3.1 % 大きかった。この測定された放射能に対する不確かさは
5.2 %(k=1)と評価された。測定されたSr/Y-90放射能と既知値との差異は、測定の不確かさの
範囲内であり、一致したと言える。この結果から、本測定法がCs-134 とCs-137 の混在試料中の
Sr/Y-90 放射能を測定できることが実証されたと言える。
この不確かさ要因分析により装置に依存する主な不確かさ要因が、効率外挿、バックグラウン ド、ガンマ線スペクトロメトリであることが判明した。これらを低減することが、本測定法に用い る装置に対する課題である。
効率外挿による不確かさは、効率外挿曲線と測定点の間の残差と複数の効率外挿曲線の互いの差 異を考慮している。どちらの要素も、ベータ線計数効率が高くなり、最大計数効率での見かけ上の 放射能が真の放射能に近づくと、不確かさが小さくなる。
実証実験の場合の効率外挿図(Cs-134のみ)と河田[60]により求められた効率外挿図を図3.16 で比較する。実証実験で得られた効率外挿図の方が河田の場合よりも、y軸から離れたところまで しかプロットが届いていないことが明示されている(横軸の値が0.2のところに緑色の点線)。実 証実験の場合のベータ線計数効率75 % 程度に対して、河田の場合は85 % 程度にまで達している と見られる。
したがって、実証実験の場合よりも外挿の不確かさが小さい装置を実現するためには、ベータ線 計数効率の向上を図る必要がある。本章で用いた測定器では、プラスチックシンチレーション検出 器での蛍光を捉える光電子増倍管の立体角が小さく、ライトガイドによる導光は蛍光発生量を減弱 している可能性がある。特に低エネルギーベータ線による低波高領域における弱い蛍光が十分に計 数されておらず、全体の計数効率が低い原因である可能性がある。
また、実証実験の場合と河田の場合では、ガンマ線検出器が異なる。ガンマ線検出器の違いによ る外挿の不確かさへの影響についても検討する必要がある。
バックグラウンドによる不確かさは、実証実験での遮蔽が不十分であったために計数率が高く、
その変動が放射能測定の不確かさに影響した。光電子増倍管や前置増幅回路を設置した空間は遮蔽 することができなかった。実証実験の測定装置の遮へいを重厚にするためには、装置全体を囲むよ
図3.16 実証実験と過去文献の効率外挿図の比較(上:本研究の実証実験より、下:2004年 の河田氏論文より引用)
うに遮へいすることを考えることになる。図3.1に示したように実証実験で用いた装置全体のサイ
ズは幅56 cm、高さ70 cmである。このサイズの装置全体を遮へいするためには、遮蔽体のサイ
ズが大きくなり、実作業への負担が大きくなる。したがって、本測定法に用いる装置は小型化する 必要がある。