5-1 ショットキー障壁材料の選定
今回Co,Au,Ptの3種類の金属を用いてn-Siを基板にしたショットキー障壁フォトダイ
オードを作製した。障壁高さが低いCo(0.57eV)の暗電流値は、Au(0.8eV)やPt(0.9eV)のそ れと比べて非常に大きい結果となった。しかし、AuとPtではAuの方が小さくなった。障 壁高さだけを考えるとPtの方が低くなるはずである。その原因の1つとして、障壁高さが あくまで逆方向飽和電流を決定する 1 つの要因であるということが考えられる。また、逆 方向電流は多数キャリアが支配的であるが、少数キャリアがまったく関与していないわけ ではないというのも1つの原因と考えられる。
Fig.5-1-1 飽和電流密度の理論値と実測値
58 5-2 量子効率について
水素終端処理によって量子効率の改善が見られた。
Fig.5-1-2 からわかるように、報告されているものと比較しても紫外利用域でフラットな値
を得ることが出来た。その理由として、水素終端処理による表面再結合の低減と impact
ionizationの2つが考えられる。impact ionizationとは入射する光のエネルギーが半導体
のバンドギャップより十分大きいと、本来光子 1 つあたりが生成できる電子正孔対の数は 最大でも 1 つであるが、エネルギーが大きいために価電子帯から伝導体に励起された電子 は大きなエネルギーを持つことになる。その電子がさらにSi原子に衝突することで電子が 発生する。そのためFig.5-2-3にあるように外部量子効率が1を超える。Siのバンドギャッ
プが1.12eVに対して、350nmの光のエネルギーは3.7eVと非常に大きいため、それ以下
の波長では外部量子効率が1を超えてくる。
Fig.5-1-2 報告されているものとの比較
Fig.5-1-3 impact ionizationの例
0%
10%
20%
30%
40%
50%
200 300 400 500 600 700 800
外部量子効率 η
波長 λ[nm]
5min
Au(15nm)/n-Si Au(12.5nm)/n-Si
59
0%
20%
40%
60%
80%
100%
200 300 400 500 600 700 800
外部量子効率 η
波長 λ[nm]
sample(Au/n-Si)
pn型フォトダイオード sample(Pt/n-Si)
次に、pn接合型の紫外線フォトダイオードとの比較をFig.5-2-4に示す。
pn接合型と比較すると、外部量子効率が約半分であることがわかる。この原因としてあげ られるのが金属膜の反射である。pn接合型は半導体部に直接光が入射することに対し、シ ョットキー型は電極(金属)部に光が当たる。原理で述べたように、金属の反射率は非常 に高い。そのため、照射された光の大部分は反射(ロス)となってしまう。
Fig.5-1-4 pn接合型との比較
Fig.2-7-2 金属の光反射率12)
0
20 40 60 80 100
200 400 600 800 1000
反射率 R[ % ]
波長λ[nm]
Ag Au
Pt推測値
60
そのため、ショットキー型のセンサに置いて、光の反射率を低減できれば大きく性能改善 されると考えられる。そこで、本研究ではナノメッシュ電極構造と無反射構造の 2 つにつ いて検討した。光の反射は急激な屈折率の変化によるものであり、これをFig.5-1-5のよう な構造で滑らかなものにしてやると、屈折率も滑らかに変化するため、反射率が低減出来 る。
ナノメッシュ電極構造に関しては、実験結果にあるように格子幅が約200nmものもができ た。電子線描画の分解能は大体レジスト膜厚と同じかそれ以下である。今回、金属膜のリ フトオフも行わなければならなかったため、レジスト膜厚が必然的に厚くなってしまう。
そのため、紫外光の侵入深さは100nm以下であるが、それだけ微細なパターンを作るのは 難しい。また、パターンが微細であるため、描画中の近接効果なども考慮しなければなら ない。それが理由で、設計値は Line/space=50/350 にもかかわらず、出来たサンプルは設 計値とは大きくずれた結果となった。また、ドーズ量や設計値によっても大きさが異なる ことから、目標とする大きさのパターンを作るためには、各種条件出しが必要となる。
Fig.5-1-5 無反射構造概略図17)
(b)50μC/𝑐𝑚2(×70000) (a)47.5μC/𝑐𝑚2(×70000)
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第六章 まとめ
一般的にSiフォトダイオードは紫外線領域において、光の侵入深さが100nm 以下に浅 くなり、キャリアの表面再結合損失が大きくなるため感度が低下する。本研究では紫外線 用センサとしてショットキー障壁型Siフォトダイオードの特性改善に関する研究を行った。
フォトダイオードの、暗電流(逆方向飽和電流)を出来るだけ低くするための適切な金属 の選、水素終端処理による性能改善、表面反射を減らすためのナノメッシュ電極の形成を 行った。以下にその結果をまとめる。
1. ショットキー電極材料の選択
n型Siとショットキー障壁を形成する金属として、障壁高さの異なるCo,Pt,Auの3種 類のフォトダイオードを作製した。暗電流(VR=0.5V)はCo/n-Siでは57.3μA/𝑐𝑚2,Pt/n-Si では14.2μA/𝑐𝑚2,Au/n-Siでは3.53μA/𝑐𝑚2となった。以下の実験はAu,Ptを用いた。
2. 水素終端処理の影響
水素終端処理のダイオード特性への影響を調べた。ショットキー障壁形成前に水素終端 処理を行ったフォトダイオードでは、外部量子効率も紫外領域(λ=300nm)では約 29%に、
可視光領域(λ=600nm)では約30%になった。可視光領域ではほぼフラットな値を得ること ができ、紫外領域では若干低下する特性となった。水素終端されていないものと比べて、
300nmで約2.23倍、600nmで約1.25倍となった。また、報告されているもの比べて紫外
領域での量子効率の低下を顕著に抑えることが出来た。
3. ナノメッシュ電極構造の作製
ショットキー電極をナノメッシュ構造にした。フォトダイオードの表面反射を減らすた めに、紫外光の侵入深さからナノメッシュの窓サイズを200nmと設計し、電子線リソグラ フィと金属のリフトオフにより作製した。ほぼ格子幅が設計通りのナノメッシュ構造電極 が形成可能であることが確認できた
4. 今後の課題
ナノメッシュ電極について、今回 20μm×20μmサイズで作製したが、今後は特性測定方 法や描画条件などを考慮した上でサンプルを作製する。
保護酸化膜に関して、有効面積などの理論について検討する。
62
謝辞
本研究を行うにあたり直接ご指導いただいた伊藤和男准教授に心から御礼申し上げます。
主査をしていただいた花泉修教授、副査をしていただいた尾崎修二准教授に深く感謝いた します。
また、実験の援助と様々な助言を頂きました野口克也技官に深く感謝いたします。
最後に電子デバイスシステム第二研究室の皆様に御礼を申し上げます。
63
参考文献
1. 「光センシング技術の技術動向」(オプトロニクス社)
2. 「発光と受光の物理と応用」(培風館)
3. R.Korde and Jon.Geist : ”Quantum efficiency stability of silicon Photodiodes “ Applied Optics,26, (1987)
4. Sheng S.Li, Fredrik A.Lindholm, C. T.Wang
”Quantum yield of metal-semiconductor“ J.Appl.phys,43, (1987)
5. S.M.ジー:「半導体デバイス」(産業図書)
6. G. W. Trucks , K.Raghavachari, G.S.Higashi and Y.J.Chabel
“Mechanism of HF Etching of Sillicon Surfaces:A Theorecal Understanding of Hydrogen Passivation” Phys.Review, 65, 504(1990)
7. 原田 整 : 「水素終端Si(100)上におけるCoSi2のエピタキシャル成長」
高知工科大学 電気・光工学コース
8. 「半導体産業の発展とucs12年の成果」(半導体基盤技術研究会)
9. 星 智広 : 「ショットキー障壁MOS-FETの作製と特性評価」
群馬大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 修士論文 平成15年3月 10. 東京テクノロジー : BeamDraw Users Guide
11. 須田 正彦 : 「ショットキー障壁MOS-FETの作製と特性評価」
群馬大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 修士論文 平成17年3月
12. 「理科年表 平成22年」(国立天文台)
13. 飯田 修一 その他「物理定数表」(朝倉書店)
14. 金属と光についてhttp://www.valtech.to/photo/36112/hikari.htm
15. 織茂 寛和 : 「反応性イオンエッチングの異方性制御によるSi微細構造の作製」
群馬大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 修士論文 平成14年2月
16. 加藤 秀規 : 「ショットキー障壁を用いたSi紫外線センサの研究」
群馬大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻 修士論文 平成22年3月 17. 表面無反射構造作製技術の開発http://www.ostec.or.jp/tec/area/a/a.html
本研究に関する学会発表
1. 田邊 彰悟,加藤 秀規,野口 克也,伊藤 和男 2010 AMDE 2. 田邊 彰悟,加藤 秀規,野口 克也,伊藤 和男 2012 応用物理学会
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付録
補正係数βについて
本研究は平成21年度の加藤秀規氏の修士論文と、私の卒業論文の延長線上にある。この 2つの論文内において、受光感度と量子効率の計算が間違っていた。そのため、これを訂正 した計算値を本論文に掲載している。
文字の定義 試料から決定
IP [A]: 光電流(測定値), Apd [cm2]: 試料の受光面積(∅2.1mm), 光パワーメーター(TQ8214)から決定
PSi [W]: 光強度(測定値), ASi [cm2]: Siセンサの受光面積(∅8mm)
S1336-8BQから決定
P13 [W]: 光強度(測定値), A13 [cm2]: 受光面積(5.8mm × 5.8mm)
光パワーメーターのSiフォトダイオードはλ=400nm以下に感度を持っていない。その ため、以前の論文では仕様書と可視光領域で測定した値の比から光強度を推測していた。
しかし、400nm以下を S1336-8BQ で測定しなおした所、推測値とは違う値となった。そ のため、21 年度の論文は間違った値で計算していたことになる。それを正しい光強度を用 いて再計算するために補正係数βを導入した(実験方法の項参照)。また、受光感度につい ても21年度の論文ではそれぞれの面積を考慮していなかったため再計算した。βはPSiの 測定値を使用して計算したデータをP13に置き換える係数である。
β[−] = P 13 [W]/A 13 [cm 2 ]
P Si [W]/A Si [cm 2 ]
〈Before〉
受光感度[A/W] = P I
P[A]
Si
[W]
量子効率[%] = 受光感度 × hc qλ × A A
Sipd
=
I
PP
Si× qλ hc × A A
Sipd