第 3 章 筋電パターンの出現頻度による識別安定化フィルタ
3.4. 安定性の検証
3.4.3. 考察
表
7
各動作における誤識別の割合切断者の被験者
1
に関しては,筋電パターンを出力可能な前腕回内,手首掌 屈,5指握り,母指屈曲の4
パターン,切断者の被験者2
に関しては手首掌屈,手首背屈,
5
指握り,5
指開き,4
・5
指屈曲の5
パターンに限定して計測を行っ た.図
29 識別された動作パターンの時系列 (切断者 1
全試行)図
30 識別された動作パターンの時系列 (切断者 2
全試行)図
31
識別された動作パターンの時系列(
切断者1
代表区間)
図
32 識別された動作パターンの時系列 (切断者 2
代表区間)切断者での実験結果を見ると,手首の掌屈を手首の回内と誤識別している(図
31)
.図26
~図29
を見ると,識別される動作パターンを安定させることで,数 フレームのノイズ的な誤識別を修正することに成功している.しかしながら,場 合によっては誤識別した状態を安定維持してしまい,逆に識別率を低下させる 要因ともなることがわかった.図32
から,切断者2
に関しては4・5
指屈曲に バイアスしている傾向も見て取れる.結果的に,切断者1
は67.7
±3.66%
から72.6±3.73%へ,
切断者2
は38.5±5.83%から 70.9±7.61%への精度向上となった.
これらの結果により,筋電パターンを安定化させる目的は達成された.
筋電義手が実用的に用いられるためには,少なくとも
90%
の識別率が必要で あると言われている[54].従来の多自由度筋電パターン識別は,その識別率を実 現させるために,電極数の多さ[56][19]
や学習時間の長さ[42]
が問題となってい た.この観点から,本フィルタは,3チャンネルの少ない電極数と,1秒以下の 少ない学習時間で,回外・回内動作を除いた7
動作を識別対象とした際,90%
以 上の識別率が実現され,義手として有効に用いられる可能性が示唆される.しか しながら被験者によっては全動作の9
動作対象で90%
を超える識別率を出して おり,習熟により9
動作識別も実用的に運用できる可能性がある.切断者への適用については,被験者
1
に関して,従来手法の識別率が68%
で あったのに対し,提案手法では73%となり,有意差は見られなかったものの,有
意傾向である可能性が示唆された(p<0.06)
.被験者2
に関しては,38.5%
から70.9%への識別率向上となり,有意差が認められた(p<0.05).識別安定化フィルタ
は,特に多くの筋電パターンを識別し,識別が不安定になった際に有効なフィル タであるため,健常者に比べ識別クラス数の少なかった切断者
1
での実験では,効果が少なかった可能性がある.しかしながら,切断者は日常生活において,物 体を持ち上げるなど,定常的に力を入れて義手を使用する状況が多いため
[57]
, 筋電パターン識別が非常に安定となる本手法は有効に働くと考えられる.識別安定化フィルタによる報酬の入力誤り修正に関しては,報酬による識別 器の修正アルゴリズムについて述べる
4
章において検証する.第 4 章
オペラント学習を用いた
識別器修正アルゴリズム
第 4 章 オペラント学習を用いた識別器修正ア
ドキュメント内
博士(工学)の学位申請論文
(ページ 59-68)