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理論

ドキュメント内 博士(工学)の学位申請論文 (ページ 41-45)

第 3 章 筋電パターンの出現頻度による識別安定化フィルタ

3.1. 理論

筋電の出現頻度による識別安定化フィルタでは,ニューラルネットワークに より識別された筋電パターンを一定数バッファに保存しておき,バッファに含 まれる各識別動作パターンの割合を元に出力を決定する平滑化フィルタである.

一般的に筋電波形には移動平均などの平滑化処理が行われるが

[23]

,ニューラル ネットワークで識別された出力は離散的な姿勢となるため,単純な平滑処理は 用いることができない.このフィルタでは,まず筋電波形を計測しベクトルemg に保存する.ベクトルemg

3

チャンネルの筋電計から計測された時系列デー タが格納されている.次に特徴抽出関数GFEによって,ベクトル emg からベク トルemgの周波数分布を示す特徴ベクトルxが抽出される.

𝒙 = 𝐺

FE

(𝐞𝐦𝐠) (5)

この特徴ベクトルxを特徴量としてニューラルネットワークの入力層に入力し,

結果として異なる手の姿勢に対応した出力層のいずれかのノードが発火し,識 別が行われる(図

13).ここで,ニューラルネットワークの出力層における出力値

をベクトルl,識別する筋電パターンの数をMとすると

𝒍 = {𝑙

1

, 𝑙

2

, 𝑙

3

, … , 𝑙

𝑀

}

where 𝒍 = 𝐺

SG

(𝒙 ∙ 𝒘

1

) ∙ 𝒘

2

(6)

と表される.最終的な

BP

ニューラルネットの出力識別筋電パターンをyとする と,識別結果を出力する関数GPRは式(6)より

𝑦 = 𝐺

PR

(𝒍) (7)

𝑦 = 𝐺

PR

(𝐺

SG

(𝒙 ∙ 𝒘

1

) ∙ 𝒘

2

)

となる.ここで,義手の動作パターンの

ID

mi,特徴ベクトルxiを持つ筋電パ ターンが

BP

ニューラルネットにより miとして識別される際のベクトル xの集 合をXiとすると

𝑦 = {

𝑚

1

(𝒙 ∈ 𝑿

1

) 𝑚

2

(𝒙 ∈ 𝑿

2

) 𝑚

3

(𝒙 ∈ 𝑿

3

)

⋮ ⋮ 𝑚

𝑀

(𝒙 ∈ 𝑿

𝑀

)

−1 otherwise

(8)

と記述できる.また,このときのGPR

⋂ 𝑿

𝑖

𝑀

𝑖=1

= 𝜙 (9)

を満たすよう識別を行う.これ以外の場合,すなわち式(9)を満たさない場合も しくはいずれの出力層ノードも発火していない場合,識別不能として y には-1 が代入される.筋電パターンmiが義手のどのような姿勢に割り当てられるかは あらかじめ実験者によりプログラミングされる.

本研究で構築したアルゴリズムは,リングバッファに保存した一定時間の筋 電パターンの時系列データを参照し,時系列に含まれる筋電パターンの割合を 元に出力を決定するものである.一定時間にバッファされる筋電パターンの数 をNとすると,ある時刻tにおけるリングバッファbufft

𝐛𝐮𝐟𝐟

𝑡

= {𝑦

1

, 𝑦

2

, 𝑦

3

, … , 𝑦

𝑁

} (10)

と表される.bufftの構成要素である yi には筋電パターンの

ID

が記憶されてい る.この後,次の制御周期で再び筋電計測が行われ,新たな筋電パターンyの識 別が行われたtl秒後,リングバッファbuff

𝐛𝐮𝐟𝐟

𝑡+𝑡l

= {𝑦

2

, 𝑦

3

, 𝑦

4

, … , 𝑦

𝑁

, 𝑦}

= {𝑦

1

, 𝑦

2

, 𝑦

3

, … , 𝑦′

𝑁

}

(11)

と更新される.リングバッファ

𝐛𝐮𝐟𝐟

𝑡+𝑡l中に含まれる筋電パターンmiの数si

s

𝑖

= ∑ 𝛿

𝑦′𝑘,𝑖

𝑁

𝑘=1

∵ { 𝛿 = 0 (𝑦

𝑘

≠ 𝑖) 𝛿 = 1 (𝑦

𝑘

= 𝑖)

(12)

と表される.これより,リングバッファbuff中に含まれる筋電パターンmiの占 める割合pi

𝑝

𝑖

= 𝑠

𝑖

𝑁 (13)

となる.提案するアルゴリズムではまず,筋電パターンが単一の動作であるか,

複数の動作を含むかを判別する.ここで,最大許容する筋電パターンの同時出力 数をcとすると

{ 𝑐𝑝

𝑖

≤ 𝑁 (𝑐 + 1)𝑝

𝑖

> 𝑁

∴ { 𝑝

𝑖

≤ 𝑁 𝑐 𝑝

𝑖

> 𝑁

𝑐 + 1

(14)

が成り立つ.単一動作の場合c

1

であるので,リングバッファbuff の半数以 上が任意の筋電パターンmpであれば,単一動作であると判断し,筋電パターン mp に対応付けられた動作を義手に出力する.最終的に義手に出力される動作 o を,同時に発現する動作数の最大値をcとして記述すると

𝑜

= {

𝑚

𝑖

(𝑝

𝑖

≥ 0.5) 𝑚

𝑖

, 𝑚

𝑗

, 𝑚

𝑘

( 1

𝑐 + 1 ≤ 𝑝

𝑖

, 𝑝

𝑗

, 𝑝

𝑘

< 0.5) 𝜙 (𝑝

𝑖

< 1

𝑐 + 1 )

(15)

となる.ここで,出力する動作oが複数の場合,実際には同時に出力されず,mi

から mkが順に出力されることとなる.また,式(15)をフローチャートで表した ものが図

16

である.本研究で提案する識別安定化フィルタを,識別結果の時系 列 buff を引数としてフィルタ結果としての義手への出力 o を出力する関数GTS

として定義すると

𝑜 = 𝐺

TS

(𝐛𝐮𝐟𝐟) (16)

のように記述できる.

16 識別安定化フィルタのアルゴリズムのフローチャート

ここで,具体的に実装する際の,同時に発現する動作数の最大値cについて考 察する.まず,2.2.2 節で述べられた対象とする動作パターンのうち,同時に発 現する可能性がある動作パターンは限られる.例えば五指を握りながら手首の 掌背屈を行うことはありうるが,手首を背屈させながら掌屈させることは手首 を動かすための筋を拮抗状態にしていることを意味し,現状の筋電義手は拮抗 制御を行っていないため,識別する必要のない状態である.このことを踏まえ,

複合動作としては前腕の回内または回外と,手首の掌屈または背屈と,指のパタ ーンいずれか,という

3

つのパターンの同時識別が最大である.この場合c

3

となるが,複合動作としてはc

2

の場合も含む.そのため式

(14)

より,リング バッファbuffに複数の筋電パターンmp1,mp2

, ...を含む場合,少なくともリング

バッファbuff

1/4

より多くを占めた筋電パターンmp1mp2

, ...

をすべて出力す る.

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