第 5 章 外側広筋の筋線維走行方向推定実験
5.5 考察
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影 響 を与 えるものではなかったと考 える.
結 果 よ り , 本 研 究 で 開 発 し た 筋 線 維 走 行 方 向 推 定 法 によ り 電 極
③
の 貼 付 された皮 膚 下 を走 行 する筋 線 維 走 行 方 向 は,膝 関 節 屈 曲 位 におい て 36 [deg],膝 関 節 伸 展 位 において 24 [deg],電 極④
では膝 関 節 屈 曲 位 において 40 [deg], 膝 関 節 伸 展 位 において 26 [deg]であると推 定 された .この 結 果 が 実 際 の筋 線 維 走 行 方 向 と一 致 し ているのか無 侵 襲 で 証 明 することは不 可 能 である.し か し ,解 剖 学 の書 籍 に記 載 されている 外 側 広 筋 の画 像 か ら 推 測 され る筋 線 維 走 行 方 向 は本 研 究 の 結 果 と大 き な 差 異 はないように見 受 けられる. 図 28 に解 剖 学 の書 籍 に記 載 されている 外 側 広 筋 の画 像 を示 す.55
図 28 外 側 広 筋[文 献 36 より引 用 して改 変]
ま た , 外 側 広 筋 は 大 腿 骨 の 粗 線 外 側 唇 に 起 始 し , 大 腿 直 筋 と 共 同 の 腱 を 作 り 膝 蓋 骨 , 膝 蓋 靭 帯 を 経 由 し て 脛 骨 の 脛 骨 粗 面 に 停 止 し て い る 筋 である.本 研 究 の 結 果 は膝 関 節 の伸 展 に伴 い 停 止 部 が起 始 部 に 近 づ い て い る こ と を 示 唆 し て い る . 外 側 広 筋 は 膝 関 節 の 伸 展 に 作 用 す る 筋 で あり,この点 も筋 の解 剖 学 的 知 見 と一 致 している.
Zipp らは人 間 工 学 について研 究 する上 で満 足 な表 面 筋 電 図 を計 測 す ることができる電 極 貼 付 位 置 と電 極 貼 付 方 向 を決 定 するための lead line を提 唱 している[37].大 腿 部 では内 側 広 筋 の lead line が上 前 腸 骨 棘 と
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膝 関 節 の内 側 顆 とを 結 んだ線 であるとされている.Stensdotter らはこの 報 告 を 元 に 外 側 広 筋 の 表 面 筋 電 図 計 測 に お い て ,Zipp ら の 提 唱 す る lead line に対 して外 側 20deg の方 向 に表 面 電 極 を貼 付 している[38]. Zippらの提 唱 する lead lineと本 研 究 でマトリクス状 電 極 の貼 付 位 置 を 決 定 す る の に 用 い た 上 前 腸 骨 棘 と 膝 蓋 骨 上 縁 を 結 ん だ 線 と の 間 に は
20deg前 後 のずれが生 じている.本 研 究 では,上 前 腸 骨 棘 と膝 蓋 骨 上 縁
を結 んだ線 を基 準 線 と呼 ぶ.本 研 究 では基 準 線 から垂 らした垂 線 を 0deg とし,時 計 回 りに+域 を取 っている.図 26 の結 果 より,膝 関 節 屈 曲 位 にお いて筋 線 維 走 行 方 向 はおよそ 40deg である.Stensdotter らの電 極 貼 付 方 向 は,Zipp らの lead line と本 研 究 の基 準 線 との差 を考 慮 すると,
本 研 究 で推 定 した膝 関 節 屈 曲 位 での筋 線 維 走 行 方 向 と概 ね一 致 する.
しかし,膝 関 節 伸 展 時 においてはおよそ 20deg 程 ずれる結 果 となってい る.これは膝 関 節 伸 展 に伴 い外 側 広 筋 が収 縮 したためであると考 えられる.
また,この結 果 より,従 来 の電 極 貼 付 方 向 では関 節 運 動 に伴 い皮 膚 上 に 貼 付 した表 面 電 極 と筋 線 維 走 行 方 向 とがずれてしまっ ていた可 能 性 が示 唆 された.
本 研 究 では,本 実 験 において得 られた 3 秒 間 の表 面 筋 電 図 のデータを 0.1s刻 みのセグメント長 に分 けることで 30 回 の推 定 を行 うことができた.そ の 結 果 ,2 通 り の 推 定 結 果 を 得 る こ と が で きた . し か し なが ら , 結 果 とし て 30 回 中 25 回 以 上 推 定 できた組 合 せは 2 通 りしかなかったとも言 える.こ
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の原 因 については以 下 のことが考 えられる.
まず,本 研 究 では16 個 の電 極 から図 11 で示 す
, ,
が算 出 できる 全 て の 電 極 の 組 合 せ で 推 定 を 行 っ て い る . そ の た め ,
が⑦
⑥
⑥
⑦
⑥
⑩ , ,
の よ う な 組 み 合 わ せ で は , 推 定 結 果 が 5degから 45deg の範 囲 を超 えてしまったためであると考 える.また,少 なからず
モーショ ンアーチファク トの混 入 も 見 ら れた.これも 推 定 失 敗 の原 因 である と考 え る.今 後 ,推 定 に 用 いる差 動 信 号 の セグメ ント長 を 長 くす るか , ある いは,推 定 可 能 な回 数 の下 限 を 25 回 から下 げることで推 定 可 能 な組 み 合 わ せ の 数 は 増 や す こ と が で き る か ど う か , ま た そ の 場 合 ど の 程 度 ま で 下 げるのが妥 当 かについての検 討 は必 要 であると考 える.
さらに本 研 究 の被 験 者 は 1 名 のみである.また,電 極 を外 して再 度 電 極 を貼 付 し ての 再 実 験 ,あるいは別 の日 に再 実 験 を 行 う等 の再 現 性 につい ては得 られていない.しかしながら,本 研 究 では表 面 筋 電 図 を 0.1s のセグ メント長 で30個 に分 割 して推 定 を行 っている.表 面 筋 電 図 は時 系 列 信 号 であることから,30 個 の中 でまったく同 じセグメントは存 在 しないと考 えられ る.よって,異 なるセグメントを30個 用 いて推 定 を行 っていることから,本 研 究 では表 面 筋 電 図 のばらつきに対 する再 現 性 は 得 られていると考 える.
一 方 , 多 チ ャ ン ネ ル 表 面 筋 電 図 か ら 筋 線 維 走 行 方 向 を 推 定 し た 研 究 には,Farina ら[39]や Lapatki ら[40],そして服 部 ら[41]の研 究 がある.
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Farina や Lapatki らの研 究 では高 密 度 に電 極 を配 置 した多 チャンネル
電 極 を用 いて表 面 筋 電 図 を計 測 している.計 測 された表 面 筋 電 図 の2次 元 マップを作 成 し,作 成 した 2次 元 マップから筋 電 信 号 の伝 導 方 向 ,つま り 筋 線 維 走 行 方 向 を 推 定 し て い る . 服 部 ら の 推 定 法[41]で は , ま ず , 計 測 した表 面 筋 電 図 の空 間 的 な分 布 と時 間 波 形 の両 方 を考 慮 した 3 次 元 テンプレートを作 成 する.作 成 した 3 次 元 テンプレートを用 いて運 動 単 位 を同 定 し,得 ら れた運 動 単 位 の時 空 間 位 置 を記 録 する.記 録 された時 空 間 位 置 を 用 いて筋 線 維 走 行 方 向 を 推 定 し ている.そのた め , い ずれの方 法 から推 定 される筋 線 維 走 行 方 向 はどれも皆 ,計 測 に用 いる電 極 の電 極 間 距 離 や電 極 の 配 置 方 法 から 生 じ る多 チャ ンネル表 面 電 極 の 空 間 分 解 能 の影 響 を強 く受 けてしまう.
本 研 究 で開 発 し た 筋 線 維 走 行 方 向 推 定 法 では ,任 意 に選 択 し た 異 な る電 極 間 の差 動 信 号 の 相 互 相 関 関 数 のピーク値 の時 刻 を用 いて 筋 線 維 走 行 方 向 を推 定 し ている .そのた め,推 定 される筋 線 維 走 行 方 向 は計 測 に 用 いる電 極 の電 極 間 距 離 とサンプ リング周 波 数 の影 響 を 少 なか ら ず 受 け て し ま う . し か し なが ら , そ の 影 響 は 服 部 ら の 推 定 法 と 比 べ て 小 さ い . ま た,現 在 では高 性 能 な A/D 変 換 器 が数 多 く販 売 されており,本 研 究 で用
いた 10kHz のサンプリング周 波 数 を更 に上 げることも 可 能 である.よって,
本 研 究 で開 発 した 筋 線 維 走 行 方 向 推 定 法 の分 解 能 には,まだ向 上 させ る余 地 があると考 えられる.
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以 上 のことから,本 研 究 で開 発 した筋 線 維 走 行 方 向 推 定 法 は, 先 行 研 究 に おいて開 発 された 筋 線 維 走 行 方 向 推 定 法 から 推 定 される筋 線 維 走 行 方 向 は 計 測 に 用 い る 多 チ ャ ン ネ ル 表 面 電 極 の 電 極 間 距 離 か ら 生 じ る 空 間 分 解 能 の 影 響 を 強 く 受 け る た め 推 定 可 能 な 角 度 が 限 ら れ て し ま う と いう問 題 点 を改 善 することができたと考 える.