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第二章 犬の後十字靱帯の前外側帯および後内側帯の機能解剖

2.2. 材料および方法

2.2.1. 実験手順

本 検 討 は 、 他 の 目 的 の た め に 安 楽 死 さ れ た 健 常 ビ ー グ ル 犬 ( 北 山 ラ ベ ス 、 伊 那 市 、 長 野 県 ) の 左 後 肢 、12 肢 を 使 用 し て 行 っ た ( 日 本 大 学 動 物 実 験 委 員 会:承 認 番 号 AP13B004、2013 年 )。 本 検 討 で 使 用 し た ビ

にCaCLの 大 腿 骨 付 着 部 付 近 の 解 剖 学 的 特 徴 を 詳 細 に 観 察 し た(n=12)。

観 察 は 、2 人 の 研 究 者 に よ っ て 行 わ れ 、 そ れ ぞ れ が 解 剖 学 的 特 徴 を 確 認 し て 記 録 し た 。 本 検 討 で は 、 性 別 、 年 齢 、 体 重 に 関 係 な く 、 取 得 順 に 最 初 の 6 肢 で CrLB を 評 価 し 、 残 り の 6 肢 で CdMB を 評 価 し た 。

ま ず 、 最 初 の 6 肢 に お い て は 、CdMB の み を 付 着 部 で 切 除 し 、 大 腿 骨 側 と 脛 骨 側 に お け る CdMB の 付 着 部 の 面 積 お よ び 位 置 を 客 観 的 に 測 定 し た 。次 い で 、各 々 の 膝 関 節 の 角 度 に お い て 、CrLB の 形 態 的 特 徴 を 記 録 し た (n = 6)。 そ の 後 、CrLB を 2 本 の 線 維 束 に 等 分 割 し 、 膝 関 節 可 動 時 に お け る 両 線 維 束 の 配 列 の 変 化 を 記 録 し た 。さ ら に 、CrLB 全 体 お よ び 各 線 維 束 の 張 力 を 客 観 的 に 測 定 し た (n=6)。

残 り の 6 肢 に お い て は 、CrLB を 切 除 し 、CrLB の 大 腿 骨 側 と 脛 骨 側 の 付 着 部 の 面 積 と 位 置 を 客 観 的 に 測 定 し た 。 次 い で 、CdMB を 4 本 の 線 維 束 に 等 分 割 し 、膝 関 節 可 動 時 の 各 線 維 束 の 配 列 の 変 化 を 記 録 し た 。 さ ら に 、CdMB 全 体 お よ び 各 線 維 束 の 張 力 を 客 観 的 に 測 定 し た(n=6)。

最 後 に 、 残 存 し た CrLB ま た は CdMB を 切 除 し 、 各 々 の 付 着 部 の 面 積 と 位 置 を 測 定 し た( 各 n= 6、合 計 n=12)。な お 、CaCL 全 体 の 張 力 は 、 CrLB と CdMB を 切 除 す る 前 に 測 定 し た 。

2.2.2. CaCL の 大 腿 骨 側 お よ び 脛 骨 側 の 付 着 部 領 域 の 形 態 の 観 察 過 去 に ヒ ト で 報 告 さ れ た 方 法 に し た が っ て(Hara et al., 2009)、CaCL

の 大 腿 骨 付 着 部 領 域 の 形 態 を 観 察 し た 。 次 い で 、 大 腿 骨 内 側 顆 内 側 面 に お い て 、 ヒ ト で 認 め ら れ る medial intercondylar ridge お よ び medial bifurcate ridge と 呼 ば れ る 骨 隆 起 の 存 在 の 有 無 を 確 認 し た (n=12)。 こ れ ら の 骨 隆 起 は 、ヒ ト で 関 節 鏡 視 下 で PCL の 解 剖 学 的 再 建 術 を 行 う 際 の 目 印 と な っ て お り 、medial intercondylar ridge は 大 腿 骨 付 着 領 域 の 近 位 、medial bifurcate ridge は CaCL の 前 方 と 後 方 の 付 着 部 を 分 け る 位 置 に 存 在 す る 骨 隆 起 で あ る (Lopes et al., 2008)。

脛 骨 付 着 部 領 域 の 形 態 も 、過 去 の ヒ ト で の 研 究 を 参 考 に し て(Tajima et al., 2009) 観 察 お よ び 記 録 し た (n=12)。

2.2.3. CrLBCdMB の 付 着 部 の 面 積 お よ び 中 心 点 の 位 置

本 検 討 で は 、過 去 の 犬 で の 報 告 に し た が っ て(Heffron and Campbell, 1978)、CaCL を 2 つ の 帯 に 分 割 し 、 脛 骨 側 に お い て 頭 側 に 位 置 す る 帯 を CrLB、 尾 側 に 付 着 し て い る 帯 を CdMB と 定 義 し た ( 図 2-1)。CrLB お よ び CdMB 以 外 の 帯 が あ れ ば 、 そ の 帯 の 形 態 と 走 行 を 記 録 し た 。

大 腿 骨 側 に お け る CrLB ま た は CdMB の 付 着 部 の 面 積 と 中 心 点 の 位

ト ウ ェ ア (Image J; 米 国 国 立 衛 生 研 究 所 (NIH)、Bethesda、 メ リ ー ラ ン ド 州 、 米 国 ) を 用 い て 、 各 帯 の 付 着 部 の 面 積 を 客 観 的 に 測 定 し た 。 大 腿 骨 側 に お い て は 、CrLB 付 着 部 の 面 積 を 顆 間 窩 領 域 の 面 積 で 除 す る こ と に よ っ て 面 積 比 を 算 出 し た 。 さ ら に 、CdMB 付 着 部 の 面 積 を 、 関 節 軟 骨 の 領 域 を 除 い た 大 腿 骨 内 側 顆 内 側 面 の 面 積 で 除 す る こ と に よ っ て 面 積 比 を 算 出 し 、 各 帯 の 面 積 を 比 較 し た ( 図 2-2 A , B)。

脛 骨 側 に お い て も 、各 帯 の 靱 帯 線 維 を 骨 付 着 部 か ら 0.5 mm 残 し た 部 位 で 切 除 し 、 残 存 し た 靱 帯 線 維 を カ ラ ー イ ン ク で 染 色 し た 。 次 い で 、 脛 骨 側 の 付 着 部 に 垂 直 な 位 置 で 写 真 を 撮 影 し 、Image J を 用 い て 各 帯 の 付 着 部 の 面 積 を 客 観 的 に 測 定 し た 。 脛 骨 側 で は 、 各 帯 の 付 着 部 の 面 積 を 、 膝 窩 切 痕 と 関 節 軟 骨 を 含 む 近 位 脛 骨 の 尾 側 面 の 面 積 で 除 す る こ と に よ っ て 面 積 比 を 算 出 し 、 各 帯 の 面 積 を 比 較 し た 。( 図 2-2C)。

さ ら に 、 ヒ ト で の 研 究 を 参 考 に し て (Lorenz et al., 2009)、Quadrant 法 を 用 い て 各 帯 の 付 着 部 の 中 心 点 の 位 置 を 客 観 的 に 測 定 し た 。最 初 に 、 前 章 と 同 じ 方 法 で 各 帯 の 付 着 部 の 中 心 点 を 求 め た 。CrLB に お い て は 、 測 定 用 の 格 子 状 グ リ ッ ド の 近 位 側 と 遠 位 側 を 顆 間 切 痕 の 近 位 縁 お よ び 遠 位 縁 に 重 ね 、 次 い で 、 グ リ ッ ド の 内 側 と 外 側 が 内 外 側 の 大 腿 骨 顆 の 関 節 軟 骨 縁 に 接 す る よ う に 配 置 し た ( 図 2-3A)。CdMB に お い て は 、 グ リ ッ ド の 近 位 側 を 窩 間 切 痕 の 近 位 端(Blumensaat’s line)に 重 ね 、次 い で 、 グ リ ッ ド の 頭 側 、 尾 側 、 遠 位 側 を 大 腿 骨 顆 の 関 節 軟 骨 縁 に 接 す

る よ う に 配 置 し た (Reichert et al., 2013)( 図 2-3B)。 い ず れ に お い て も 、グ リ ッ ド に X-Y 座 標 軸 を 設 置 し 、各 帯 の 中 心 点 の 位 置 を 客 観 的 に 測 定 し た (Kawaguchi et al., 2013; Bernard et al., 1997)。

脛 骨 側 の 各 帯 の 中 心 点 の 位 置 も 、Quadrant 法 の 変 法 に 基 づ い て 客 観 的 に 測 定 し た(Takahashi et al., 2006)。ま ず は 、脛 骨 側 に お け る 各 帯 の 中 心 点 を 求 め 、測 定 用 の 格 子 状 グ リ ッ ド を 重 ね 合 わ せ た 。そ の 際 に は 、 脛 骨 の 近 位 側 、 遠 位 側 、 内 側 、 外 側 の 骨 端 に 接 す る よ う に グ リ ッ ド を 設 置 し た 。 さ ら に 、 グ リ ッ ド に X-Y 座 標 軸 を 設 置 し 、 各 帯 の 中 心 点 の 位 置 を 客 観 的 に 測 定 し た (Takahashi et al., 2006)( 図 2-3C)。

2.2.4. 膝 関 節 可 動 時 に お け る 各 帯 内 の 線 維 束 の 配 列 の 変 化

最 初 に 、過 去 の ヒ ト で の 報 告 を 参 考 に し て(Hara et al., 2009)、CrLB の 靱 帯 線 維 を 内 側 と 外 側 の 2 つ の 線 維 素 束 に 等 分 割 し た ( 図 2-4)。 次 い で 、CdMB の 靱 帯 線 維 を 、 頭 側 、 内 側 、 外 側 、 尾 側 の 4 つ 線 維 束 に 等 分 割 し た ( 図 2-4)。 各 帯 の 分 割 は 、 大 腿 骨 お よ び 脛 骨 を 捻 転 さ せ て 各 帯 を 直 線 状 に し て か ら 、 キ ャ リ パ ー を 用 い て 行 っ た 。 次 い で 、 前 章

本 検 討 で は 、荷 重 測 定 器(ZTS-20N; 株 式 会 社 イ マ ダ 、豊 橋 市 、愛 知 県 、 日 本 ) を 使 用 し て 、 前 章 と 同 じ 手 法 で 靱 帯 線 維 の 張 力 を 客 観 的 に 測 定 し た ( 図 2-5)。 測 定 方 法 の プ ロ ト コ ー ル は 、 他 の ビ ー グ ル 犬 の 膝 関 節 を 用 い た 予 備 的 検 討 を 基 に 決 定 し た 。 最 初 に 、 大 腿 骨 と 脛 骨 の 角 度 が 180°と な る よ う に 固 定 し た 。ま ず は 、CaCL の 靱 帯 線 維 に フ ッ ク を か け て 、垂 直 方 向 に 0.1N で 張 力 を 加 え た 後 に 0 補 正 を 行 っ た 。次 い で 、垂 直 方 向 に 1 mm の 牽 引 し 、CaCL 全 体 、CrLB 全 体 、CdMB 全 体 、 そ れ ぞ れ の 帯 の 各 線 維 束 の 張 力 を 測 定 し た ( 図 2-5)。 さ ら に 、 大 腿 骨 と 脛 骨 の 角 度 が 、135°、90°、40°と な る 位 置 に お い て も 、 同 様 に 測 定 を 行 っ た 。全 て の 測 定 値 は 、大 腿 骨 と 脛 骨 の 角 度 が 180°に お け る CaCL 全 体 の 張 力 を 100% と し て 、 そ の 比 率 を 算 出 す る こ と で 評 価 し た 。

2.2.6. 統 計 学 的 分 析

本 検 討 で 得 ら れ た デ ー タ は 、 平 均 値 ±標 準 偏 差 と し て 示 し た 。 結 果 の 解 析 に は 、 統 計 分 析 ソ フ ト ウ ェ ア (GraphPad Prism 6; GraphPad Software,Inc., La Jolla, カ リ フ ォ ル ニ ア 州 、 米 国 ) を 使 用 し た 。 張 力 に 関 す る デ ー タ は 、 二 元 配 置 分 散 分 析 (two-way ANOVA) を 用 い て 比 較 し 、事 後 検 定 と し て Tukey の 多 重 比 較 を 行 っ た 。本 検 討 では、p <0.05 をもって有 意 差 ありと判 定 した。

図 2-1 犬の後十字靱帯(CaCL)の前外側帯(CrLB)と後内側帯(CdMB) 本検討では、脛骨側において頭側に付着している帯を前外側帯(CrLB:

赤色)、尾側に付着している帯を後内側帯(CdMB: 青色)と定義した。

後内側帯

前外側帯

図 2-2各帯の付着部の面積比の算出方法

各帯の付着部の面積比は、各帯の付着部に垂直な位置で写真を撮影し、イメージ ングソフトウエア(Image J)を使用して客観的に計測した。

(A)大腿骨側の前外側帯(CrLB)の付着部の面積(赤色)を顆間窩領域の面積

(青色の透明領域)で除することによって面積比を算出した。(B)大腿骨側の後 内側帯(CdMB)の付着部の面積(青色)を、関節軟骨の領域を除いた大腿骨内側 顆内側面の面積(青色の透明領域)で除することによって面積比を算出した。

(C)脛骨側では、前外側帯( CrLB: 赤色)または後内側帯( CdMB: 青色)の付 着部の面積を、膝窩切痕と関節軟骨を含む近位脛骨の尾側面の面積(青の透明領 域)で除することによって面積比を算出した。

外側 内側

内側 頭側

図 2-3 各帯の付着部の中心点の位置の測定方法

前外側帯(CrLB)と後内側帯(CdMB)の付着部の中心点の位置をQuadrant法また はその変法を用いて測定した。

(A)大腿骨側における前外側帯(CrLB)の測定方法:測定用の格子状グリッドを、

顆間切痕の近位縁および遠位縁、内外側の大腿骨顆の関節軟骨縁に接するように配 置し、上図の座標軸を用いて測定を行った。(B)大腿骨側における後内側帯

(CdMB)の測定方法:グリッドを顆間切痕の近位端(Blumensaat’s line)、大腿骨 顆の頭側、尾側、遠位側の関節軟骨縁に接するように配置し、上図の座標軸を用い て測定を行った。(C)脛骨側の測定方法:脛骨の近位側、遠位側、内側、外側の 骨端に接するようにグリッドを配置し、上図の座標軸を用いて測定を行った。

A B C

外側 内側 頭側 内側

図 2-4 各帯内の線維束の分割方法

前内側帯(CrLB)の靱帯線維は、内側と外側の2つの線維束に等 CdMB

頭側

尾側 外側 内側

外側 内側 前外側帯

後内側帯

図 2-5 靱帯線維の張力の測定方法

本検討では、荷重測定器(ZTS-20N; 株式会社イマダ)を使用して、後十字 靱帯(CaCL)全体、前外側帯(CrLB)全体、後内側帯(CdMB)全体、両 帯の各線維束の張力を客観的に測定した。

(A)実際に測定を行っているところ、(B)模式図。

A B

2.3. 結 果

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