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考察

ドキュメント内 修 士 学 位 論 文 (ページ 87-92)

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7.2 準静的計算方法について

結果を見ると,ヒーコンスイッチ,タブレット2,タブレット3,タブレット 4を除く視認目標点は注視することができていた.しかし,全体的に実際のヒト と比べて身体の姿勢変化が小さかった.それぞれの視認目標点の結果を詳しく 見ていく.

まずナビセンタは首を視認目標点側に回旋して視認している結果となった.

ナビセンタの位置は,官能評価から見ても比較的見やすい位置にあり,首の回旋 と眼球の動きで視認する結果は自然であるといえる.

ヒーコンスイッチは首を回旋して視認しようとしていたが,視認するに至ら ない結果となった.また,実際のヒトは体幹を傾けて視認していたが,シミュレ ーションでは体幹の姿勢変化はあまり見られなかった.これは,姿勢を探索する にあたり,評価関数の視認率の値の増加よりも眼球負荷や身体負荷の値の増加 の方が大きくなったためであると考えられる.

サイドミラー(右)もナビセンタと同様に首を回旋させて視認を行っていた.官 能評価を見てもサイドミラー(右)はナビセンタと同等の見えやすさであり,自然 な姿勢であるといえる.

サイドミラー(左)は運転者から最も遠い位置にあるが,首を大きく回旋させて 視認を行っていた.しかし,ナビセンタやサイドミラー(右)に比べて評価関数の 値は小さくなっていた.これは,2つに比べて眼球運動が大きくなっていたため であるといえる.

タブレット 1 もナビセンタと同様に首を回旋させて視認を行い,評価関数の 値も大きい結果となった.

タブレット 2 は首の回旋に加えて若干ではあるが体幹を傾けて視認しようと していたが,視認目標点にはわずかに届かない結果となった.

タブレット3,4はほぼ同じような結果となり,首は回旋していたが体幹の姿 勢変化はほとんど見られず視認目標点を視認できないという結果になった.こ れは,ヒーコンスイッチと同様に評価関数の視認率の値の増加よりも眼球負荷 や身体負荷の値の増加の方が大きくなったためであると考えられる.

以上より,眼球と視認目標点との間に障害物がない場合は首の回旋と眼球運 動で視認することができていたが,障害物がある場合は視認するのに必要な体 幹の姿勢変化が起こらなかったため視認できないという結果になった.これは 身体運動を探索するにあたりローカルミニマムに陥っているからである.よっ て,評価関数の視認率の重みや遺伝的アルゴリズムの突然変異係数などを調整 し,視認目標点を視認させることを第一に身体運動生成を行う必要があるとい える.

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7.3 妥当性検証実験について

定性的評価に関しては,動力学的計算方法での身体運動生成が上手くいかな かったため,比較をする前に整合性がとれているかの判断がついてしまったが,

シミュレーションで作成したアニメーション上に実測のマーカ点を表示するこ とによって,定性的に妥当性を評価できることがわかった.

次に,定量的評価に関してだが,結果の表を見ると実測に比べてシミュレーシ ョンの身体運動が少なかったのにもかかわらず,誤差率は5%を超えている部分 がいくつかあるものの全体的に小さい値となった.これは,そもそも視認目標点 を見るために行う身体運動が少ないことが要因として挙げられる.しかし,これ はあくまでも原点からの距離で比較したものである.シミュレーション結果の 画像を見ると,実測に比べて身体の傾きが少ないことから,実際には視野判断モ デルにおける X 座標の誤差が多くを占めていると考えられる.そこで,座標の 各軸の誤差率にどの程度の差があるのかを検証するために,各軸における誤差 率および実測値との差分を算出した.結果をTable 7.1,7.2 に示す.なお,11 マーカ分全ての結果をまとめるとデータ数が膨大になるため,頭部,鎖骨,右手 首,左手首の4つに絞った.この表を見ると,やはりX軸における誤差率があ きらかに高いことがわかる.しかし,誤差率は真値の絶対値の大きさに大きく影 響を受ける.そこで,実測値との差分も見ると,Z軸における誤差率より大幅に X軸と Y 軸の差分が大きい結果となった.X軸の差分が大きいのはシミュレー ションの体幹の姿勢変化が少なかったためであると考えられる.現に,身体運動 の大きいヒーコンスイッチやタブレット 4 などの差分は,身体運動の小さいナ ビセンタなどに比べて大きい値となっている.Y軸の差分については,頭部や鎖 骨の値がほぼ同じことから系統誤差であることが推測できる.また,左手首と右 手首の Y 軸における差分が小さいことから,シミュレーションよりも実際のヒ トの姿勢が後方に傾いていたと考えられる.

よって,生成する身体運動をより実測値に近い値にするには,身体を現状より も大きく動かすようにパラメータ調整をする必要があるといえる.具体的には,

視認率と姿勢の規範の重みを下げ,意志モーメントや意志力などの重みを上げ ることでより大きく身体を動かすことを期待できる.しかしながら,本研究の目 的である身体負荷最小かつ視認率最大は,そもそもトレードオフの関係になっ ているので,引き続きより良いパラメータの組み合わせを試行錯誤的に模索し ていく必要がある.それに加えて,視認目標点を確実に見させるためには視認率 の重みが大きい必要があるので,その兼ね合いも考える必要がある.また,今回 はシミュレーション内でのマーカ座標を被験者の写真から算出する方法を用い たため,必ずしも正確な位置にマーカ位置を定義しているとは言えない.よって,

より正確にマーカ位置を定義する方法を模索する必要がある.

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Table 7.1. 各軸における誤差率

誤差率[%]

視認目標点 RFHD CLAV

X Y Z X Y Z

ヒーコンスイッチ 141.31 8.08 7.70 13.26 9.63 4.90

サイドミラー(左) 10.07 10.70 2.67 2.08 9.94 3.97

サイドミラー(右) 10.06 8.56 3.96 5.93 9.89 3.44

ナビセンタ 14.20 8.63 2.01 9.09 9.50 3.53

タブレット 1 6.42 9.28 3.88 2.86 10.02 4.16

タブレット 2 31.55 9.63 3.67 0.46 9.70 5.21

タブレット 3 53.42 9.73 3.17 7.19 10.13 2.87

タブレット 4 199.57 4.32 9.35 21.82 9.13 4.48

誤差率[%]

視認目標点 LWRA RWRA

X Y Z X Y Z

ヒーコンスイッチ 14.18 1.40 5.87 2.15 1.90 6.81

サイドミラー(左) 6.52 1.91 6.15 0.39 2.54 6.35

サイドミラー(右) 18.55 0.93 7.23 3.31 1.14 7.82

ナビセンタ 11.15 0.74 7.29 5.09 1.51 5.73

タブレット 1 14.71 1.36 5.10 1.77 1.68 7.15

タブレット 2 17.46 1.30 4.19 1.51 2.03 5.36

タブレット 3 11.14 1.05 5.87 2.27 1.92 6.52

タブレット 4 19.51 0.93 6.30 2.57 1.64 6.20

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Table 7.2. 各軸における差分

誤差[mm]

視認目標点 RFHD CLAV

X Y Z X Y Z

ヒーコンスイッチ 213.9 150.3 79.1 35.6 178.7 37.2

サイドミラー(左) 32.0 203.2 28.6 6.2 185.0 30.4

サイドミラー(右) 38.6 164.0 42.7 17.1 184.2 26.5

ナビセンタ 47.8 161.6 21.7 25.5 176.0 27.1

タブレット 1 20.7 174.4 41.4 8.5 186.7 31.8

タブレット 2 85.4 179.3 38.7 1.3 180.1 39.3

タブレット 3 127.4 182.1 33.9 20.5 189.0 22.2

タブレット 4 233.7 79.3 95.6 54.7 168.5 34.2

誤差[mm]

視認目標点 LWRA RWRA

X Y Z X Y Z

ヒーコンスイッチ 24.3 20.6 41.5 9.9 27.8 48.0

サイドミラー(左) 11.5 28.0 43.4 1.8 37.1 44.9

サイドミラー(右) 30.9 13.7 50.5 15.4 16.8 54.6

ナビセンタ 19.7 11.0 50.8 24.1 22.1 40.8

タブレット 1 25.2 20.0 36.4 8.1 24.7 50.3

タブレット 2 29.2 19.1 30.1 6.9 29.6 38.3

タブレット 3 19.5 15.6 41.5 10.5 28.1 46.1

タブレット 4 32.2 13.7 44.4 11.8 24.0 43.9

次に,官能試験と評価関数の比較についてだが,グラフを見るとヒーコンスイ ッチ,タブレット 2~4 の評価関数の値が小さかった.これはいずれも視認目標 点を視認することができなかったものであり,評価関数の視認率の値が大幅に 小さくなったことが原因であるといえる.しかし,官能試験と比較してみると評 価関数の値と傾向がほぼ同じとなり,本システムで実験を行わずに視認性評価 を行える可能性を示唆することができた.しかし,現状では眼球と視認目標点の 間に障害物があると見えにくいという結果であるため,その中でも見えやすさ の強弱を算出する必要がある.そのためには,体幹を動かして視認目標点を除き こませるような身体運動を生成する必要がある.

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