1.仮説1 ( ①~⑥)について
(1)全体として
開発の初期段階において、開発対象の定義および開発成果の取り扱いについて詳細な規 定を規定するだけの活動を行うことは当該開発の成功と関係があることが分かった。一方 で、開発の進め方については詳細な規定による取り決めをすることよりもむしろ柔軟性を 持たせることの重要性が浮かび上がった。
これらを一言で表すと初期段階の活動として最終目的点(ゴール)についての両者によ る共通認識をしっかり持ちつつ、そこへの進み方については状況に応じて柔軟に進めるこ とが良いという結果であった。
(2)個々の仮説について
仮説1①では、開発対象の定義については Fisher 正確確率検定の結果、有意な差があ ることが示された。インタビュー調査の結果でも、実用化に成功した事例と、実用化に不 成功だった事例では、開発対象を定義するに際しての検討の経過は全く異なっていた。実 用化の成功事例は、両社の意向を擦り合わせるために事前に何度も打ち合わせが重ねられ ていた。また、技術的な内容についての検討が深く進められたことが、実用化の成功に至 ったことと結びついていると認識されていた。
他方、実用化の不成功事例においては、開発対象について充分検討の時間は割かれてお らず、検討もしっかりは行われておらず、成功事例と異なっていた。開発対象を契約上に 定義するに際しては、双方での協議を経て、合意に至って初めて契約書に明示されること から、詳細に規定される事例ほど事前の検討に多く時間が割かれていた。この検討過程に おいて自他の技術の差異も把握され、また、市場の状況なども見据えられる。これにより 開発成果のターゲットを詳細に規定可能となったと認識されていた。
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仮説1②は、費用負担についてはFisher正確確率検定で有意な差は認められず、仮説1
②は支持されなかった。インタビュー調査においても、共同開発に際しての各社の費用負 担については、実用化の成功例と不成功例の両者においても、大きな差異はなかった。成 功、不成功のどちらにおいても、その多くはそれぞれの担当部分を負担する規定か、均等 負担となっている。開発費の負担についての詳細な規定度自体は、開発の成否に大きな影 響を与えないことが伺えた。
仮説1③は、開発の実施細目についてはχ2検定による検定で有意な差が認められず、仮 説1③は支持されなかった。インタビュー調査でも、実用化の成功例と不成功例の両者に おいて、開発の実施細目を規定する過程には大きな差異はなかった。開発を進めるに際し ては、予測通りに進まないことも生じることから、事前に詳細に決め、そのとおり進める ことは必ずしも有効ではなく、ある程度の柔軟性が必要であることが浮かび上がった。
仮説1④は、開発の成果についてはFisher正確確率検定で、有意な差が認められた。イ ンタビュー調査では実用化成功例において、開発の成果を実用化まで進めるには、開発着 手時において最終ゴールが明確に見えている必要があることの認識で共通していた。また、
開発の着手前に成果の展開についても検討されていた。他方、実用化の不成功例において は、成果の取り扱いについて、十分な検討がなされていないことが分かった。インタビュ ー調査において、実用化の成功例と不成功例の間には成果の取り扱いについての事前検討 に費やした時間にも大きな違いがあり、開発成果の取り扱いを事前に検討することが実用 化の成功に関係することが指摘されている。
仮説1⑤は、開発の分担についてはFisher正確確率検定で有意な差が認められず、仮説 1⑤は支持されなかった。インタビュー調査でも、実用化の成功例と不成功例の両者にお いて、大きな差異はなかった。開発の分担は、共同開発者のそれぞれが、その専門分野を 分担することが自然に決められるケースが大部分であった。分担の詳細については検討さ れていなかった。これは、自社にない専門性を必要として第三者とアライアンスする共同 開発のそもそもの出発点を考えると、自然な流れである旨の指摘がインタビューに際して あった。
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仮説1⑥は、スケジュールについてはFisher正確確率検定で有意な差が認められず、仮 説1⑥は支持されなかった。インタビュー調査においても、共同開発に際しての各社のス ケジュールについては、実用化の成功例と不成功例の両者において、大きな差異はなかっ た。成功、不成功のどちらにおいても、その多くはスケジュール通りに開発は進められず、
スケジュールの詳細な規定自体は、開発の成否に大きな影響を与えないことが伺えた。
共同開発の初期段階において、技術的な面での検討を十分に実行し、事前に共同開発会 社間出の共通の目標設定をしっかりやっておくことが重要であることが分かった。同時に 開発を進めるに際しては予期できなかった課題に直面した場合にも対応できる柔軟性も必 要であることが分かった。これは一見すると矛盾するものであるが、共同開発の初期にし っかり取り決めるべきことと、そうすべきではない項目が併存するということになる。状 況変化への対応能力も大切であることから生じるものであろう。
2.仮説2について
(1)全体として
仮説2は全体として概ね支持された。アライアンスマネジメント能力に関する5つの柱 の活動について、重要であったとの認識度に関する数値は、成功例が不成功例を上回って いた。また5つの柱の項目の内で「調整」と「アライアンス企業文化の相性」が特に重要 となる点が浮かび上がった。
(2)個々の要因について 1)「調整」について
「調整」に関しては、これまで共同開発に際して意識されてきた企業間を超えた調整の 面だけでなく、自社内の調整が重要であることが分かった。実際に共同開発を進めるに際 しては直面する課題に対応するにためにアライアンス先企業の同意を得ることと同時に、
自社内の調整を行えることによって開発に際して目の前に現れる課題を超えることができ るようになると考えられた。
101 2)「連携企業間の文化的な相性」について
この観点も目に見えにくい点であるが、共同開発の成否に影響することが分かった。従 って、アライアンスマネージャーは企業文化の違いを把握し、それを乗り越えるために力 を発揮することにより、共同開発の成功確率を高めることが可能となるはずである。
3)「コミュニケーション」
「コミュニケーション」に関しては、すべての項目で成功と不成功との間での有意差が 見られなかった。これは意外な結果であった。「調整」等の活動に比べた際には、コミュニ ケーションの重要度は低いことが伺われた。
4)「信頼形成活動」について
信頼の重要性は多くの先行研究で検証されていたが「信頼形成活動」に関する項目の中 には有意差が認められないものがいくつかあった。ただし、「短期的にいかなる利点が発生 することが期待できないしても、パートナーとの関係を大事にする」あるいは「コスト情 報や不利益な情報を共有する。」といった事項はアライアンス先からすると、最も相手先 を信頼する要因となる事項であると言える。
5)「補完性」について
「補完性」に関する点でも有意差が認められないものがあった。補完性についてはそも そも同性質があるからこそアライアンスしているのであり、開発を進める後には補完性の 点を強く意識することはなかった可能性がある。
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