1.検証方法の全体像
本研究においては、仮説1(①~⑥)を検証するためにアンケートを2件(アンケート 2,3)、インタビューを2件(インタビュー4,5)行った。
また、仮説2の検証に際してアンケートを1件(アンケート4)行った。
図8 検証方法の全体像
図8 筆者作成
63
アンケート2,3,4及びインタビュー4,5の概要は以下の内容である。
仮説1(①~⑥)の検証について
・アンケート2
フロントエンド段階で締結する共同開発契約の主要条項の詳細規定度および当該開発 の成功・不成功についての質問
・アンケート3
共同開発進行後に開発内容の見直しを行ったか、見直しは開発のどの段階であったか、
見直しを行った理由は技術的な問題か市場への適応性の問題か、等などについての質問
・インタビュー4
ロジステック回帰分析およびχ2検定(期待度数のマス目のうち20%以上が期待度数が 5未満であり、χ2検定に適していなかった際はFisher の正確確率検定)により示され た結果が何故そうなったのかの理由についての質問
・インタビュー5
共同開発進行後に直面した課題への対応等についての質問
仮説2の検証について
・アンケート4
共同開発のアライアンスマネジメントについての汎用モデル有効性についての調査
64 2.調査対象業界について
本研究の検証は、総合建設業A社(資本金:約600億円、従業員数:約8000名)の事 例を基に検証を進めている。
これまでの企業間におけるアライアンス、あるいは共同開発についての研究の多くは、
電機・自動車業界を検証対象として進められている。こうした業界においてのアライアン スの多くは、系列企業間によるアライアンスが前提となっている。系列企業間におけるア ライアンスをいかに上手く進めるかは大変重要な点である。
しかし、共同開発を有効活用することのニーズは特定の業界に限されるものではない。
企業間のアライアンス、共同開発は系列企業間においてのみ展開されるべきではなく、広 く業界を問わず、また企業規模の大小を問わず、どの企業においても活用する必要がある。
建設業者は、日本全国に約2万社に存在し、国内総生産における建設業の比率約6%(経 済企画庁経済研究所国民経済計算部企画調査課「国民経済計算年報」平成26年 )を占め ている。これは製造業の約3分の1にあたる比率である。建設業の活性化は日本の産業全 体にとっても大きな意味を持つ。
そこで、本研究においては非系列間の共同開発について総合建設業における事例を基に 検証を進めたものである。従って、本研究は建設業における共同研究についての研究結果 を示すものである。
(1)建設業における技術開発の特質
建設業を対象に開発についての研究が進められた例は殆どない。特に共同開発に特化し た例は見当たらない。そこで、以下に総合建設業における技術開発の特質を説明しておく こととする。
① 大手の総合建設業社の研究開発費
最大手の建設会社は、年間約100億程度あるいはそれを下回る位の開発費を投じている 業界である。
②開発の技術分野について
65
建設分野における開発となることは当然であるが、その分野は広範に及ぶ。建設工法に 関する工法についての開発はあるが、工法そのものについては永年の積み重ねの上にあ るので、中々革新的な技術開発成果は生まれ難い環境にある。こうしたことから、材料、
建設機械、ソフトウエア、バイオ関係など純粋の建設技術そのものでない分野の開発が 進められることが多い。
③系列企業について
総合建設業における技術開発は多岐に及んである。総合建設業においても系列企業は存 在するが、その数は少なく、この系列間における共同開発となると、その数は更に少な くなる。
④ジョイントベンチャーについて
建設業特有の形態としてジョイントベンチャー(共同企業体)という形態がある。ジョ イントベンチャーとは複数の企業が共同で工事を受注し、共同で施工を進める体制のこ とである。そうした形態があることから、水平間のアライアンスがイメージされやすい が、こと共同開発に関しては、水平間のアライアンスという形態はあまり行われていな い。これは同業間でのアライアンスでは共同開発の利点である補完性が生じにくい為で あると考えられる。こうしたことから総合建設業における共同開発は、その大部分はメ ーカーと進められている。なお、総合建設業の観点からすると、大きくは土木部門と建 築部門に二分される。受注においてジョイントベンチャーが進められるのは土木部門で の大工事のケースである。建築分野においてもジョイントベンチャーが行われるが、土 木部門におけるケースに比べるとその数や比率は小さい。
⑤受注体制
建設業自体は受注産業である点にも特質がある。製品は一般の消費者へ提供するのでな く、発注者へ引き渡す点に特徴がある。また、工場を自社内で持っていない点にも特徴 がある。
⑥一品生産
66
建設業のは一品生産である点にも特徴がある。もっとも上記のように開発の対象は建設 に用いる材料や機会であるケースが大部分であり、開発成果品自体は大量生産されうる ものであるケースが殆どである。
⑦成熟産業である
建設業自体は成熟産業である。従って、最近の技術開発において業界全体をカバーする ような革新的な技術開発は少ない。他の技術の組み合わせにより新規の製品を生み出す ケースも多い。
(2)総合建設業における共同開発における特徴
①アライアンス先の会社規模について
A社の共同開発の相手先企業の規模は、A社より更に大きい会社から零細企業に位置づ けられるものまで多岐に及んでいる。会社の規模ではなく技術のある会社とのアライア ンスを進んで行っている環境にある。初めての相手ともアライアンスを積極的に行う風 土がある。
②パワーの点について
総合建設業とメーカーとのアライアンスに際して、パートナーシップとの運営に関して パワー優位性が存在しないのかについては、その事案によって異なる。総合建設業はも っとも参画している企業の数が多い分野であり、最大手の企業においても建設業全体に 占めるマーケットは1%程度である。従って、メーカーからするとアライアンス先の総 合建設会社は納入先の1社になるとはいえ、市場の面からすると必ずしも大きくないと いうことができる。
もっとも全く影響がないとは言い切れない。専業化している分野では当該建設会社が 一定のマーケットを占めているケースもある。また、市場に送り出す初期段階で納入先 として有望である場合もあり得るからである。
③メーカーとの共同開発を行う風土
総合建設業の開発に際しての共同開発の比率は、特許出願の共同出願の比率から推測す ると、概ね約3割から6割位である。その大部分はメーカ―との共同出願である。総合
67
建設業とメーカーとの関係は、上記のパワーの点における面とも関係するが、発注者と 受注者という関係も保有している点にある。メーカー同士の共同開発の場合には、共同 開発に参画する企業のそれぞれが開発成果のある部分について製造・販売するケースが 大部分であろうが、総合建設業とメーカーのの関係においては、総合建設業である側は 製造販売を行わない点に違いがある。総合建設業側は開発された製品を共同開発先であ るメーカーから購入するという関係にある。つまり、共同開発者でありながら、発注者 と受注者との関係も兼ね備えているのである。この点にも大きな特徴がある。
もっとも、上記のパワーの点に際しても記述しているように、メーカー側は開発した 製品の販売先としても共同開発者である総合建設業の相手先を捉えていることは多い であろう。その反面で、建設業においては、大手企業であっても1社の保有するマーケ ットは非常に小さいことから、自動車業界における本体メーカーと下請けの関係とは異 なる面がある。
68
3.仮説1 ( ①~⑥ ) の検証方法
(1)検証の流れ
仮説1
(①~⑥)
についての検証の流れの概略は以下の内容である。(2)概要
分析方法として、上述の総合建設業のA社で実際に企業間アライアンスを進めた事例で ある101の事例をデータとして検証を行った。開発の着手時点の活動充実度が反映されて いる共同開発契約の主要条項を調査し、詳細規定度合を数値尺度化した。また、当該事例 の成功・不成功の調査を併せて行った。これらにより各条項の詳細規定度合と成否との関 連性及び詳細規定度合と成否の差を検証した。これに際してはロジステック回帰分析およ び χ2検定による分析を行った。なお、χ2検定の際に同検定に適さない結果であった場合
にはFisherの正確確率検定を用いて分析を行った。ソフトはSPSS Statistics19を使用し
た。その後にインタビュー調査(インタビュー4)を行い、ロジステック回帰分析およびχ
2検定(期待度数のマス目のうち20%以上が期待度数が5未満であり、χ2検定に適してい ない場合にはFisherの正確確率検定)により示された結果が何故そのような結果となった のかの理由について調査を行った。その後、共同開発の着手後に生じる課題や時期につい てのインタビューを行った(インタビュー5)さらにそこで得られた結果を基に、アンケ