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考察

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第 3 章 スプライシング制御因子の同定法の構築とその応用

第 7 節 考察

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するSMN蛋白質は不安定化が引き起こされていた。この結果は複合体の形成が 蛋白質の安定化に重要であり、疾患発症へと直結することを示唆している。

SMA治療として、このような機能蛋白質の安定化を目指す方法以外にも、本 研究のように選択的スプライシングを操作し、機能蛋白質の産生を促す方法が ある。RNAへの結合を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド「Nusinersen」

は本邦においても 2016 年 12 月に製造承認申請が行われ、日本初のアンチセン ス医薬品となる予定である。その治療標的にはhnRNPA1が選択されている。

これらのことを踏まえ、hnRNPA1のIRエクソン11領域への結合を阻害する 低分子化合物を発見することができれば、RESとは異なる作用をもつDM1患者 への治療薬候補になると考えた。hnRNPA1の結合阻害作用をもとに低分子化合 物のスクリーニングを行った。候補にはRESと同様に食品成分であるQuercetin

(QC)と前述のSMN2遺伝子のスプライシングを修正することが報告されてい る低分子化合物3種(VPA、HU、IP)で検討を行った。その結果、QCがhnRNPA1 の結合を強く阻害することを見出した。さらにこの作用はRES の添加では効果 が得られなかった(図 3-18)。この結果は RES のスプライシング調節作用は

hnRNPA1を介さないことを示すと同時に、CUGBP1への結合阻害作用は非特異

的なものではないことを示唆する。

Quercetin(QC)はリンゴ、タマネギ、茶、ブドウ、ブロッコリー、モロヘイ ヤなどの食品に含まれるポリフェノールである(図 3-19)。RES と同様に抗酸 化作用を含む多様な薬理作用を有しており、健康への有益な効果から健康食品 として幅広く市場に流通している。さらに細胞増殖抑制やアポトーシス誘導作 用をもつことから前立腺がんを含む抗がん剤として注目されている111-113)。ヒト での臨床試験も行われており、あらゆる可能性秘めた成分といえる。QC は hnRNPA1のC末端と結合し、transportin-1(Tnpo1) を介した細胞質から核への

3-19 QCの化学構造式と食品

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移行を妨げることで抗がん作用を示すことが報告されている114)。さらにQCは

hnRNP C の脱リン酸化作用も報告されており、スプライシング反応を調節する

可能性が示唆されていた115)。そこでhnRNPA1の IRエクソン11領域への結合 阻害を示したQCを用いて細胞内在性IRの選択的スプライシングの操作を試み た。そして、エクソン11の認識を促進し、スプライシング修正効果が確認され た。

以上の結果から、標的としたエクソンのスプライシングに関わる制御因子の 同定法を構築し、hnRNPA1を見出した。さらにその結合を阻害する薬物スクリ ーニングからQCを見出した。そしてQCが細胞内在性IRのスプライシングを 調節することを確認した(図3-20)。

スプライシング調節作用をもつ低分子化合物の多くはその作用が確認されて いるにも関わらず、スプライシングを変更する直接的な作用点は不明なものが 多い。

本研究では特定の因子に注目し、その結合を阻害する物質を探索した。見出 したQCは RESと同様に様々な生体内作用をもつことが知られているため、ス プライシング調節作用の発現には他の経路も同時に関与している可能性が考え られる。しかしながら、阻害作用が見られた低分子化合物をさらに最適化する ことができれば、より特異的な物質の発見につながると考える。

3-20 hnRNPA1の結合を阻害するQCとスプライシング異常の修正

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