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・膜厚の違いによる影響

膜厚が薄い薄膜では、分子間相互作用の到達距離を考慮しなければならない。

そこで、厚み e の薄膜を固体基板上に展開した時、薄膜が厚いときは、表面張力は fig1 よ り γs/pp/gと表すことができる。よって、表面の単位面積あたりのエネルギーF(e)を次式 で定義できる。

F(e)= γs/pp/g+P(e)+1/2ρge2 (3) ρ:ポリマー密度 g:重力加速度 e:ポリマーの膜厚

ここで、膜厚が薄い場合、P(e)は、ファンデルワールス力の効果を考えなければならない。

P(e)は、下の式(6)で表すことができる。

P(e)=A/12πe2 (4)

A は、エネルギーの次元をもつハマカー定数と呼ばれ、式(5)で表される。

A=π2PSP) (5)

αPと αSはポリマーとシリコン基板の単位体積当たりの分極率である。ポリマーが固体基 板よりも分極しやすい場合 αS<αPとなり、ハマカー定数は負となる。(3)式より P(e)と 1/2ρge2の項に着目すると、これらは膜厚によりそれぞれの大小が関係する。

(ⅰ) 膜厚が大きい場合、重力による効果が大きくなる。よって、P(e)<<1/2ρge2となり、

分子間力による影響 P(e)が無視でき、F(e)の曲率は正(F``(e)>0)となり薄膜は、準安定とな り脱濡れが起きにくい。

(ⅱ) 膜厚が小さい場合、分子間力による効果が大きくなる。よって、P(e)>>1/2ρge2とな り、重力による影響(1/2ρge2)が無視でき、F(e)の曲率は正(F``(e)<0)となり薄膜は、不安 定となり、薄膜内の膜厚方向に揺らぎが生じ、脱濡れがおきやすくなる。

・酸処理の有無による影響

シリコン基板を酸処理することで基板の表面を親水性に行うことで界面の特性が変化した。

表面を親水性にすることで、シリコン基板の表面にシラノール基(OH 基)の層が形成される。

この時、このシラノール基による層の分極率を α とすると α<αSPで、(5)式から A<0 となり、F(e)の曲率は、負となり、脱濡れが起きやすくなる。

・周縁隆起(rim)の大きさ

rim の大きさは、次式で定義される。

W=(η・h/k)1/2 (η:高分子の粘度、h:膜厚 k:摩擦係数) ※2 参考文献

この式から、膜厚 h が大きいほど rim の大きさ W は、比例して大きくなることが分かる。

三重大学大学院 工学研究科

・熱処理前後の X 線反射率測定結果による変化

熱処理後の膜厚変化は、PVME を添加したブレンド薄膜では、熱処理後における X 線反射率 測定結果のプロファイルが極端に変化した。これは、次の場合が考えられる。

1.PVME を添加したブレンド薄膜の試料は、熱処理後の光学顕微鏡の表面観察結果より脱濡 れの占める面積の割合が、大きくなる。そこで、Fig.28 と Fig.29 の結果から、脱濡れが起 きていると、基板表面に存在する薄膜の割合が減少し、試料表面における X 線の照射強度 が減少し、表面の粗さが増加したので、熱処理後でプロファイルが変化した。

2.PS 及び PVME の単独薄膜では、熱処理後の光学顕微鏡の表面観察結果より脱濡れの占める 面積の割合が、小さくなる。熱処理前後で比べると、Fig.28 と Fig.29 の結果より変化がな い。これは、基板表面に存在する薄膜の割合が変化せず、試料表面における X 線の照射強 度に変化がなく、表面の粗さにも変化がない。

・PS-PVME ブレンド薄膜の脱濡れによる形態や機構

基板上に展開した高分子薄膜の表面構造とバルク状態での基板上での表面構造には、違い がある。そこで、PS と PVME のブレンド薄膜を熱処理することで、脱濡れが起きやすくなる ことが分かった。また、PVME の添加量の違いにより、脱濡れの形態もしくは、占める面積 の割合が異なることも分かった。この時熱処理を行うことで薄膜内での PVME 鎖の変化が起 きていると考えられる。PS/PVME ブレンド薄膜を熱処理することで、相分離が起こり、空気 と接する表面側に PVME 鎖が分布する。また、空気側の表面ほどではないが、PVME 鎖は基板 側にも分布するようになる。これは、PVME が持つカルボキシル基と酸処理により形成した シラノール基との相互作用により PVME が偏析し、吸着が起きるからである。この時、高分 子と基板間の界面エネルギーが最小になることが知られている。界面エネルギーが最小化 することは、表面張力の低下につながり脱濡れが、起きやすくなると考えた。また、PS/PVME のバルク中における相図をもとに考察を行う。Fig.45 では、バルク中での状態を基に、ブ レンド薄膜における組成を考えた。一相領域では、相分離が起きにくい。また、二相領域 では、相分離が起き、脱濡れが誘発される。本研究では、φPS=0.9 から 1.0 の間で PVME を 添加したので、Fig.45 の相図から 110℃では、一相領域であるので、相分離が起きず、脱 濡れも起きにくい領域である。しかし、薄膜状態では、脱濡れが起きてしまい、二相領域 になっていることが分かった。また、120℃では、二相領域であるので、相分離が起き、脱 濡れが起きることが分かり、薄膜状態においても 120℃において二相領域となり、脱濡れが 起きていることが分かった。これらの結果より、薄膜状態では、バルク状態と比べて違う 状態を示し、相図とは異なる挙動を取り、PVME の添加量の違いで脱濡れの形態に違いが生 じた。また、PVME 単独薄膜では、相図と同様、一相領域で相分離が起きにくい領域で、脱 濡れが起きにくい。本研究では、熱処理後の表面に 10μm 程度の大きさの黒点が生じ、表 面の形態が脱濡れとは異なる形態を示した。

三重大学大学院 工学研究科

二相 領 域 1 1 4  

1 1 2   1 1 0   1 0 8   1 0 6  

υ 0

¥ 8 5 5 ω

仏 何

ω F H L 回 T c l  

1 0 4   一相領域

1 . 0   0 . 4  

の /wt %

PS 

F i g . 4 5  P S / P V M E

ブレンド系のバルク状態での相図

0 . 8   0 . 6  

0 . 2   1 0 2  

0 . 0  

三重大学大学院 工学研究科

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